振込代行サービスとは?定義と仕組み
振込代行サービスとは、企業が行う振込業務を専門事業者が代行するアウトソーシングサービスです。企業は振込先の口座情報と金額を代行業者に提供し、代行業者が一括して金融機関への振込手続きを実行します。
基本的な流れは以下のとおりです。
- 1.企業が振込データを代行業者のシステムに登録またはアップロードします。
- 2.企業が代行業者の指定口座に振込資金を入金します。
- 3.代行業者が登録されたデータに基づいて各振込先への振込を実行し、完了後に企業へ振込結果を報告します。
多くの振込代行サービスでは、Excel形式やCSV形式でのデータ取込み、全銀フォーマット対応やWebブラウザからの直接入力など、さまざまな方法で振込情報を登録できます。また、振込資金は信託管理されるケースが多く、安全性も確保されています。
振込代行サービスのメリット
振込代行サービスを導入することで得られる主要なメリットを4つのポイントに分けて解説します。
振込手数料の大幅削減
振込代行サービス最大のメリットは、振込手数料の削減効果です。一般的な銀行振込では、振込先銀行や振込金額によって手数料が異なりますが、多くの振込代行サービスでは振込先や金額に関わらず一律料金を採用しています。
例えば、他行宛て3万円以上の振込では、ATMで275円~880円程度、窓口では605円~990円程度の手数料がかかります。振込代行サービスでは190円~300円程度で済むケースが多く、最大で70~80%程度の削減効果を期待できます。
業務効率化の実現
複数の取引先への振込を個別に処理していた作業を一括で処理できるため、大幅な業務効率化を実現します。特に月末や給与日など、大量の振込が集中する時期には効果が顕著に現れます。
振込データの作成から実行まで、インターネット上で完結できるため、銀行窓口やATMへ出向く必要がありません。さらに、振込予約機能により、指定した日時に自動実行することも可能です。
人的ミスの防止
手作業による振込では、口座番号の入力ミスや振込金額の間違いなど、人的ミスが発生するリスクがあります。振込代行サービスでは、事前に登録した振込先情報を再利用できるため、入力ミスを大幅に減らせます。また、多くのサービスで口座名義の自動チェック機能や振込実行前の確認機能が提供されており、ミスを未然に防ぐ仕組みが整備されています。
セキュリティ強化
振込代行サービスでは、金融機関レベルのセキュリティ対策が施されています。振込資金は信託銀行で分別管理され、万が一代行業者が破綻した場合でも顧客資金は保護されます。また、SSL暗号化通信や多要素認証、アクセス制御など強固なセキュリティ対策により、不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に抑えています。
振込代行サービスの注意点
振込代行サービスには多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべき注意点もあります。
振込実行タイミングの制約
振込代行サービスでは、振込実行のタイミングに一定の制約があります。多くのサービスでは、振込指定日の前営業日14時までにデータ登録と資金入金の完了が必要です。
銀行窓口であれば当日14時まで当日振込が可能ですが、代行サービスでは翌営業日着金となるケースが一般的です。急ぎの振込が頻繁に発生する企業では、当日振込対応の有無や追加料金を事前に確認することが重要です。
初期設定と運用体制の構築
振込代行サービスを効果的に活用するためには、初期設定や社内の運用体制構築が必要です。振込先マスターの整備や承認フローの設計、担当者の権限設定など、導入時には一定の準備期間を要します。また、既存の会計システムや給与システムとの連携を行う場合は、システム改修やデータ連携の検証も必要になるケースもあるでしょう。
サービス停止リスクへの対応
振込代行サービスに依存することで、サービス障害やメンテナンス時に振込業務が停止するリスクがあります。重要な支払期日がある場合は、代替手段を事前に準備しておくことが賢明です。代行業者の経営状況やサービス継続性についても定期的に確認し、リスクマネジメントの観点から複数の代行業者との契約も検討する価値があります。
振込代行サービスの選定ポイント
自社に最適な振込代行サービスを選択するために、以下6つの重要なポイントについて詳しく解説します。
振込手数料
振込代行サービスの手数料体系は、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは振込先や金額に関わらず一律料金を採用するパターンで、もう1つは従来の銀行振込と同様に振込先や金額によって料金が変わるパターンです。
一律料金の場合、1件あたり190円~300円程度が相場となっています。自社の振込パターンを分析し、現在の振込手数料と比較して削減効果を試算することが重要です。また、初期費用や月額基本料の有無、組戻し手数料なども含めて総コストを評価しましょう。
対応可能な振込件数と処理速度
自社の振込件数に対応できるキャパシティがあるかの確認が必要です。振込代行サービスによって、1回に処理できる振込件数や月間の上限件数が異なります。給与振込で数百件、仕入先への支払いで数十件など、自社の振込パターンを分析し、ピーク時の処理能力に余裕があるサービスを選択しましょう。
また、データアップロードから振込実行までの処理速度も重要な要素です。大量のデータを短時間で処理できるかどうかは、業務効率に直結します。
入金から振込実行までのスピード
多くの振込代行サービスでは、振込指定日の前営業日までに資金入金とデータ登録を完了する必要があります。しかし、当日振込に対応するサービスもあり、追加料金で当日11時30分までの受付で当日振込を実現するものも。自社の支払いサイクルや急な支払い発生の頻度を考慮して、必要なスピード要件に対応できるサービスを選択しましょう。
セキュリティ体制と資金管理
振込資金が信託銀行で分別管理されているか、万が一の代行業者破綻時に資金が保護される仕組みがあるかを確認しましょう。システムのセキュリティ対策として、SSL暗号化や多要素認証、IPアドレス制限、アクセスログ管理などが実装されているかも重要です。さらに、ISO27001やプライバシーマーク等のセキュリティ認証を取得しているかどうかも判断材料になります。
サポート体制と障害対応
導入時から運用時まで、充実したサポート体制があると安心です。電話サポートの受付時間やチャットサポートの有無、メールでの問い合わせ対応時間などを確認しましょう。特に振込業務は時間的制約があるため、迅速な障害対応や問い合わせ対応が可能かどうかは重要な選定ポイントです。
また、システム障害時の連絡体制や復旧見込みの情報提供方法についても事前に確認しておきましょう。無料トライアル期間がある場合は、実際のサポート品質を体験することをおすすめします。
既存システムとの連携性
現在利用している会計システムや給与システムとの連携可能性を確認しましょう。全銀フォーマット対応の有無や、CSV・Excelファイルの取込み機能、API連携の可否などがポイントです。特に全銀フォーマットに対応していれば、多くの会計システムや給与システムから直接データを取り込めるため、大幅な業務効率化を実現できます。
特定のシステムベンダーとの専用連携機能がある場合は、ワンクリックでのデータ連携も可能になります。導入前に既存システムとの連携テストを実施できるかどうかも確認しておきましょう。
おすすめの振込代行サービス比較
振込代行サービスを、主要な機能・手数料・対応実績などを踏まえて詳しく比較します。自社の支払い業務に合ったサービス選びの参考にしてください。
オンラインチャージGW『 doreca 』
- 一般的な銀行振込手数料よりも安いため、送金コストを削減可能
- 受取手段の多様化で利便性が向上し、利用者(従業員)の満足度向上
- 24時間365日、即時送金、受取後すぐに利用可能
BIPROGY株式会社が提供する「doreca」は企業が従業員や取引先へデジタルマネーで送金できるオンラインチャージゲートウェイサービスです。24時間365日の即時送金に対応し、銀行振込よりも低コストで資金移動を行える点が特徴です。また、給与のデジタル払いにも利用でき、多様な受取手段を提供することで利便性向上に貢献します。金融機関との接続は全銀協フォーマットに対応しており、既存システムとの連携負荷も抑えられます。
セゾンスマート振込サービス
株式会社セゾンパーソナルプラスが提供する「セゾンスマート振込サービス」は、初期費用・月額費用なしで利用できる法人向けの振込代行サービスです。振込手数料は1件286円(税込)で、全銀フォーマットの振込データをそのままアップロードするだけで処理が可能。資金は信託口座で安全に管理され、当日振込に対応するオプションも用意されているなど、スピードと安全性を両立したサービスです。
ウェブフリコム
株式会社フォーライフシステムが提供する「ウェブフリコム」は、初期費用・月額基本料なしで使える法人向けネット振込代行サービスです。パソコンから振込処理が完結し、銀行窓口に行く手間を省きながらコスト削減が可能。振込・給与振込の両対応で、繰り返しの振込業務を効率化します。
楽たす振込
株式会社ミロク情報サービスが提供する「楽たす振込」は、中小企業の仕入れ・経費支払いなどを対象とする振込代行サービスです。Excel/CSV/全銀ファイルの取込に対応し、MJSの会計システムとのワンクリック連携も可能。振込手数料は一律285円(税込)で、初期費用や月額基本料は無料です。
らくらく送金
GMOイプシロン株式会社が提供する「らくらく送金」は、オンラインで仕入費用やオフィス費用、公共料金などの振込を代行するサービスです。管理画面で簡単に振込操作ができ、ウォレットへの自動チャージ機能で入金の手間も削減可能。振込手数料は250円(月4件までは無料)で、コスト削減に役立ちます。
Fricomy@(フリコミーア)
株式会社USSサポートサービスが提供する「Fricomy@(フリコミーア)」は、初期費用・月額費用なしで、振込手数料190円(税込)という低コストが特徴の振込代行サービスです。CSVや全銀フォーマットでの一括データ登録に対応しており、日常的な振込業務を効率化できます。USSグループの信頼性とコストパフォーマンスの高さが特徴です。
たよれーる給与業務支援サービス
株式会社大塚商会が提供する「たよれーる給与業務支援サービス」は、給与明細の電子配信・管理を中心としたクラウドサービスです。給与計算処理後の印刷・封緘・仕分作業を代行し、従業員はWeb上で給与明細を閲覧可能。大塚商会の充実したサポート体制も魅力です。
ウェルネット送金サービス
ウェルネット株式会社が提供する「ウェルネット送金サービス」は、企業が顧客への送金や返金手続きをオンラインで効率化できるサービスです。銀行振込や各種現金受取の手続きが不要になり、従来のアナログな送金作業のコストや手間を削減します。24時間・土日祝日も含めて送金受取が可能で、ネット上で手続きを完結できる利便性が強みです。
まとめ
振込代行サービスを活用することで、振込手数料の大幅削減と振込業務の効率化を同時に実現できます。特に、振込件数が多い企業ほど効果は大きく、毎月のコスト最適化やミス防止にもつながります。給与振込や多様な支払業務がある企業にとっては、担当者の負担軽減や内部統制の強化にも役立つでしょう。
導入を検討する際は、自社の振込件数・業務フロー・必要な連携機能を整理したうえで、最適な1社を選定してください。適切なサービス導入は、経理部全体の生産性向上につながります。


