CADの意味と基本機能
CADは、Computer Aided Designの略で、設計や図面作成をコンピュータで行うためのソフトです。線を引く、図形を編集する、寸法を入れるなどの操作を正確に行えるため、手書きよりも効率的な作業が可能です。二次元CADは平面の図面を描く用途に適し、三次元CADは立体を表現して形状の確認や検証がしやすい点が特徴です。
二次元CADの基本機能と図面作成の流れ
二次元CADでは、線を描く、円を配置するなどの基本的な作図機能を使い、平面図などの図面を作成します。レイヤという仕組みで線の種類を分けることで、図面の見やすさが高まります。
形を整える編集機能、図形を整列させる機能、必要な寸法を追加する機能などを組み合わせて作業を進めるのが一般的です。手書きと比べて修正が容易で、正確さを保ちながら短時間で図面を仕上げられます。
三次元CADの基本機能とモデリングの考え方
三次元CADは、立体の形状をコンピュータ上で再現するための機能が中心です。立体のブロックを積み上げるようにして形状を作る「ソリッドモデリング」や、表面の形状を滑らかに表す「サーフェスモデリング」などの手法を用います。
形状が立体で確認できるため、組み立て時の問題点や干渉が早期に把握しやすくなります。試作品の作成前に設計の妥当性を確認できる点がメリットです。
CADで共通して備える編集・寸法・注記機能
多くのCADには共通して、図形の移動・複製・伸縮などの編集機能、図形の大きさを示す寸法機能、説明を補足する注記機能が備わっています。これらの機能により、設計を正確に伝える図面を作成できます。また、寸法のルールを統一することで社内の図面品質を保ちやすくなり、外部とのやり取りもスムーズになります。
二次元CADの代表的な機能
二次元CADは、建築図面や設備図、機械部品の平面図など、さまざまな設計現場で広く使われています。紙の図面から移行しやすく、図面の修正や流用もしやすいため、小規模なチームでも導入しやすい点が特徴です。ここでは、日常業務でよく使われる代表的な機能を整理します。
作図機能とレイヤ管理機能
二次元CADの基本は、線や図形を描く作図機能です。図形を分類して管理するレイヤ機能により、構造部分や寸法、文字情報などを分けて整理できます。レイヤを使うことで、複雑な図面でも必要な情報だけを表示したり、作業ごとに切り替えたりできます。図面のミスを減らすうえでも重要な機能です。
寸法・公差・注記を付与する機能
図面には、幅や高さなどの寸法、公差、補足説明が必要です。二次元CADでは、これらを自動で整った形式で配置できるため、読みやすい図面を作成可能です。寸法を変更した際に自動で再調整される機能もあり、図面全体の整合性を保ちやすくなります。作業者のスキルに依存せず、一定品質の図面が作れる点もメリットです。
印刷・出力と図面テンプレート管理機能
二次元CADでは、図面をPDFとして出力したり、印刷したりする機能も標準搭載されています。図面枠やロゴ、タイトル欄などを設定したテンプレートを登録しておくと、案件ごとに統一した形式で図面を作成できます。出力形式を統一することで、社内外で図面を共有する際のミスも抑えられます。
三次元CADの代表的な機能
三次元CADは製品の立体形状を画面上で再現し、組み立てや動作の検証を行うための機能が充実しています。設計段階で形状や干渉の問題を確認できるため、試作の回数を抑えやすく、製品開発の効率向上に役立ちます。ここでは三次元CADならではの代表的な機能を紹介します。
ソリッドモデリングとサーフェスモデリングの機能
三次元CADでは、形状を立体的に作るためのモデリング機能が中心となります。ソリッドモデリングは、部品の体積まで含めた立体を作成する手法で、強度計算や重量計算にも役立ちます。
一方、サーフェスモデリングは曲面の表現に優れており、自動車やデザイン性の高い製品に利用されます。用途に応じてモデリング手法を使い分けることで、品質の高い設計につながります。
アセンブリ機能と干渉チェック機能
複数の部品を組み合わせて製品を構成する場合、三次元CADのアセンブリ機能が重要です。部品同士を仮想的に組み立てて動作を確認でき、干渉チェック機能により接触や重なりを検出可能。実際の試作を行う前に問題点を洗い出せるため、開発コストや作業時間の削減に役立ちます。
図面自動生成と三次元モデルからの二次元展開
三次元モデルを作成すると、自動で平面図や断面図を生成できる機能があります。三次元モデルを基に二次元図面を展開できるため、図面の整合性を保ちやすくなります。立体の形状をもとに自動生成されるため、寸法の抜けや記載漏れを防ぎやすくなり、図面作成の効率が大幅に向上します。
CADの自動化・効率化を支える機能
近年のCADには、自動化機能や部品ライブラリなど、業務効率を高めるための仕組みが多数搭載されています。繰り返し行う単純作業を減らし、入力ミスや作業漏れを抑えやすくなることが特徴です。ここでは、日々の設計をスムーズにする主な効率化機能と、その活用イメージを紹介します。
CADマクロやスクリプトによる自動処理機能
CADマクロやスクリプト機能を使うと、よく行う作業を自動化できます。図面の一括処理や指定寸法の自動入力など、繰り返し作業が短時間で完了します。大量の図面を扱う環境では、作業のばらつきを減らせる点も利点です。業務に合わせて独自にカスタマイズできるため、現場に合う形で効率化を図れます。
テンプレートや部品ライブラリの活用機能
図面枠やよく使う部品を登録しておくことで、作業の標準化が進みます。部品ライブラリを利用すると、図形を繰り返し描く必要がなくなり、作業スピードが向上します。設計の品質を一定に保つためにも役立ち、社内での図面ルールを統一する効果も期待できます。
AIを活用した自動作図支援機能やエラー検出機能
近年は人工知能(AI)を活用したCADも登場しています。入力した形状をもとに自動で最適な図形を提案する機能や、設計ルールに反している部分を検出するエラー確認機能などが強化されているのが特徴です。AIにより、図面作成のミスが減少し、経験の浅い担当者でも精度の高い設計を行いやすくなります。
BIMやCAM連携など周辺ツールとつながるCAD機能
CADは単体で使うだけでなく、建築情報モデル(BIM)やコンピュータ支援製造(CAM)など、周辺ツールとの連携が進んでいます。設計データをそのまま下流工程に引き継げるようになることで、情報の入力し直しや伝達ミスを抑えやすくなり、設計から製造・施工までの流れをスムーズにしやすくなります。
BIM連携で建築情報を一元管理する機能
建築分野では、CADとBIMを連携させることで、建物の情報を一元管理できます。図面だけでなく、設備情報や仕上げ材料などの情報も合わせて管理できるため、施工時の手戻りを抑えやすくなります。複数の担当者が同じデータを共有するため、情報の更新漏れや誤解によるトラブルも減らせます。
CAM連携で製造データに変換する機能
製造業では、CADで作成した三次元モデルをCAMに送って、加工用のデータを作成することが一般的です。CADとCAMが連携することで、設計と加工の整合性が取りやすくなり、製造工程でのミスを抑えやすくなります。加工条件に応じた設計の見直しもしやすくなる点がメリットです。
シミュレーションツールと連携する解析機能
三次元CADのモデルを解析ツールに取り込むことで、強度や熱の伝わり方、流体の流れなどをシミュレーションできます。実際の試験前に問題を発見しやすいため、手戻りの防止に役立ちます。設計の初期段階で検証ができるため、開発全体の効率向上につながります。
業種別で求められるCAD機能の違い
CADに求められる機能は、業種や担当業務によって大きく異なります。同じCADでも、機械設計、建築土木、電気電子設計では重視するポイントが変わるため、自社の用途を明確にしておくことが大切です。ここでは代表的な3つの分野でよく求められる機能を整理しておきましょう。
機械設計向けCADで重視される機能
機械設計では、三次元のアセンブリ機能や干渉チェック、強度や動作を確認しやすいモデリング機能が重要です。部品点数が多くても整合性を保ちやすく、試作前に設計の妥当性を確認できます。部品ライブラリや自動化機能を活用することで、複雑な設計でも効率的に作業を進められます。
建築土木向けCADで重視される機能
建築や土木の分野では、図面の作図しやすさやBIMとの連携、構造計算との親和性が重要です。建物全体を多角的に管理する必要があるため、情報を統合しやすいCADが選ばれる傾向があります。図面の修正や設備図の調整なども頻繁に発生するため、編集の柔軟性も欠かせません。
電気電子設計向けCADで重視される機能
電気電子設計では、配線図や回路図を作成するための専用機能が必要です。配線の自動ルーティングや回路チェックなど、電気設計特有の作業をサポートする機能が重視されます。図面同士の整合性を保ちながら、複雑な回路でもミスを防ぎやすいことが求められます。
まとめ
CADには、二次元図面の作成から三次元モデルによる検証、AIを活用した自動作図まで、多くの機能があります。自社の業務に合ったCADを選ぶことで、作業時間の短縮やミスの軽減につながり、設計全体の品質向上にも寄与します。
この記事の内容を参考にしながら、自社に適した製品を比較してみてください。さらに詳しい機能や対応業務を確認したい場合は、複数製品をまとめて資料請求することで、最適な選択に近づけます。


