CAD運用でよく挙がる課題
CADを活用する現場では、設計スピードの遅さ、図面ミスの発生、データ管理の煩雑さといった課題が特に多く指摘されます。まずは、それぞれの課題がどのように生じているのかを整理します。
設計リードタイムが長くなりやすい
CADを使用していても、設計開始から図面完成までに時間がかかるケースは少なくありません。テンプレートが整っていない、設計ルールが統一されていないなど、作業が人によってばらつくことが大きな要因です。
さらに、日本では3D CADの活用率が約2割弱にとどまり、依然として2D CADが中心となっている現場も多いとされています。そのため立体的な検討が進めにくく、後工程で手戻りが発生しやすい傾向があります。
図面ミスや手戻りが発生しやすい
設計者ごとに図面ルールが異なっていたり、チェック体制が属人化していたりすると、図面の記載漏れや誤りが発生しやすくなります。紙ベースでのレビューが中心の場合、確認の抜けや共有不足も起きやすく、修正作業や再承認に時間がかかってしまいます。
データ共有・管理が煩雑になりやすい
CADデータが個々のPCやメール、紙媒体などに散在していると、必要なファイルを探すまでに時間がかかります。また、最新データが分からない、複数のバージョンが混在するなど、管理上のトラブルが生じやすくなり、設計全体の効率に影響します。
CADで設計スピードを高めるための解決策
設計リードタイム短縮には、テンプレートの整備、自動化の推進、3D CADの活用が重要です。ここでは具体的な対策を紹介します。
テンプレートと標準部品ライブラリの活用
テンプレートが整備されていない環境では、設計者によって図面の形式がばらつき、レビュー工数が増える要因になります。社内ルールを反映したテンプレートを用意しておくことで、統一された品質の図面づくりがしやすくなります。
さらに、頻繁に使う部品を標準部品ライブラリとして登録すれば、繰り返しモデリングする手間を削減でき、作業効率の向上につながります。
CADマクロや自動化機能の活用
CADに備わるマクロ機能や自動化ツールを活用すれば、注記挿入やプロパティ登録、命名処理といった定型作業の効率化が可能です。その分、設計者は構想設計など本質的な業務に集中しやすくなります。
自動化はヒューマンエラーの抑制にも有効で、手戻りの軽減にも貢献します。
3D CADの導入で検討回数を減らす取り組み
3D CADを導入すると、立体的な干渉チェックや組立動作の確認が行えるため、試作段階での大幅な修正を抑制できます。また、製造・品質・調達といった他部門との情報共有もスムーズになり、開発全体の連携が向上します。
CADでミスやバラつきを減らすための解決策
図面のばらつきやミスを抑えるには、ルールチェックや干渉チェックに加え、レビュー体制の標準化が欠かせません。これらを組み合わせることで、設計品質の安定につながる取り組みになります。
設計ルールチェック機能の活用
設計ルールチェック機能では、尺度や注記ルール、レイヤー構成、命名ルールといった項目を自動で検査できます。人による見落としを減らし、レビュー段階での指摘数を抑える効果が期待される仕組みです。
干渉チェックやシミュレーションとの連携
3Dモデルの干渉チェックを行うことで、部品同士の衝突や組立時の不具合を事前に把握できます。さらに、シミュレーションを組み合わせれば、強度検証や動作確認にも対応でき、試作工程での手戻り防止につながるアプローチになります。
図面レビューと承認フローの標準化
紙ベースのレビューは確認漏れが発生しやすい方法です。 CADと連動したレビュー環境を導入すると、承認履歴やコメントが記録として残り、確認漏れの防止に寄与する体制づくりが実現します。
CADデータ管理と情報共有の課題解決
データ管理が不十分な状態では、旧図面の誤使用や情報共有の不一致が起こりやすくなります。 適切な管理体制を整えることが、設計品質の維持とトラブル防止に向けた重要な基盤です。
PDM連携でCADデータ管理の基盤を整える
PDM(製品データ管理)を導入すると、図面・部品構成・承認状況・バージョン情報をまとめて管理できる仕組みが整います。誤ったデータを用いるリスクを抑えられるうえ、設計変更の影響範囲も把握しやすい体制づくりにつながります。
クラウド共有環境を構築してCADデータを安全に運用する
クラウドストレージを活用すると、社内外でデータを安全に共有しやすくなり、ファイル受け渡しに伴うトラブルを回避しやすくなります。メールやUSB利用によるリスクを抑えながら、アクセス権限や履歴管理にも対応しやすい運用環境の実現が可能です。
バージョン管理体制を整えデータ更新を可視化する
バージョン管理が不十分な場合、旧ファイルの誤使用が発生しやすく、品質面でのリスクが高まります。履歴管理機能を導入することで、変更内容・実施日・担当者を明確に記録でき、設計ノウハウの継承や再発防止にも寄与する取り組みになります。
人材スキルや教育の課題に対するCAD活用
設計業務では、スキル差や属人化が品質ばらつきの原因になりやすいため、教育体制や標準化された環境づくりが欠かせません。ここでは、設計者の育成と業務品質の底上げにつながる取り組みを紹介します。
CADトレーニングコンテンツや教育環境を整備する
日本では3D CADを十分に使える人材が不足している状況が指摘されています。eラーニングやトレーニング教材を活用し、設計者のスキルレベルを均一化する取り組みが効果的です。
操作ガイドやテンプレートで標準化を進める
操作方法や図面ルールが統一されていないと、品質のばらつきが発生します。操作ガイドや動画マニュアル、標準テンプレートを整備すれば、誰でも一定の品質で設計しやすくなります。
設計ノウハウをCADデータに蓄積する
過去の改善事例や製造現場の知見をCADデータに付加情報として残すと、設計ノウハウが蓄積されます。同じトラブルを繰り返しにくくなり、品質向上につながります。
課題別に選びたいCADツールのタイプ
企業の抱える課題に応じて、最適なCADツールの種類は変わります。ここでは、目的別の選び方を整理します。
自動化重視で選ぶCADや周辺ツール
定型作業が多い企業では、自動化機能・マクロ・API連携が強い製品が適しています。設計者の負担軽減と作業効率向上が期待できます。
IRONCAD
- フィーチャベースのダイレクトモデリング
- アセンブリ作業に拘束は不要
- トップダウン設計が簡単
コラボレーション重視で選ぶクラウドCAD
複数拠点や外部企業との協働が多い場合、クラウド型CADが有効です。リアルタイムでの共同作業や、安全なデータ共有が可能になります。
解析重視で選ぶCAE連携に強いCAD
強度検証・干渉チェック・軽量化など高度な設計検討が必要な場合は、CAEと連携しやすいCADが向いています。3Dモデルから解析データにスムーズに移行できる環境が整えば、試作回数の削減にもつながります。
まとめ
CADの活用で成果を出すには、まず「紙文化」「属人化」「情報共有不足」といった課題を整理することが大切です。そのうえで、テンプレート整備、自動化、3D CAD活用、PDM連携、教育体制強化など多方面から取り組むことで、設計スピードと品質を向上させやすくなります。
自社の状況に合ったCADを比較しながら、ぜひ資料請求をご検討ください。


