法人PCとは
法人PCとは、ビジネス利用を前提に設計・製造され、企業向けに提供されているパソコンのことです。家電量販店などで販売されている一般消費者向けの「個人向けPC」とは異なり、ハードウェア構成やサポート体制などに明確な違いがあります。
一見すると同等のスペックに見える場合でも、法人PCは長期間の安定稼働や高度なセキュリティ管理、大量導入時のキッティング(初期設定)のしやすさを考慮して設計されています。こうした特徴から、企業が従業員に支給する業務用デバイスとして、法人専用モデルが選ばれています。
個人向けPCとの違い
最も大きな違いは、OSのエディションです。個人向けPCの多くは「Windows Home」を搭載していますが、法人PCは「Windows Pro」が標準です。Pro版には、Active Directoryへのドメイン参加機能や、BitLockerによるドライブ暗号化、グループポリシーによる端末管理機能など、企業ネットワークでの運用に不可欠な機能が搭載されています。
また、ハードウェアの仕様変更(モデルチェンジ)のサイクルも異なります。個人向けは数か月単位でデザインや部品が変わることがありますが、法人PCは同一モデルを1年以上継続販売するなど、ライフサイクルが長く設定されています。そのため、追加導入時にも同じ仕様のPCを調達しやすく、管理コストの削減が可能です。
法人PCが求められる理由
企業活動において、PCの故障や情報漏えいは事業継続に関わる重大なリスクです。法人PCは、これらのリスクを最小限に抑えるための設計がなされています。
例えば、生体認証機能の標準搭載や、遠隔データ消去に対応したBIOS、物理的な衝撃に対する高い耐久性などです。また、万が一の故障時に翌営業日に修理対応を行うオンサイト保守など、ビジネスを止めないためのサポート体制が整備されている点も、企業から選ばれる大きな理由です。
法人PCのメリット
法人向けに特化したPCを導入することで、企業は管理工数の削減やリスク低減など、多くのメリットを享受できます。機器の購入にとどまらず、安定したIT環境を構築するための投資としての側面が強いといえます。
充実したセキュリティ機能
法人PCには、ハードウェアレベルでのセキュリティ機能が充実しています。TPM(Trusted Platform Module)セキュリティチップの搭載はもちろん、BIOSの改ざん検知機能や、覗き見防止フィルターの内蔵(プライバシーガード)、物理的なセキュリティロックスロットの装備などが一般的です。
指紋認証や顔認証(Windows Hello)に対応したモデルも多く、パスワードレスでの安全なログイン環境を構築できます。
長期サポートと保守体制
ビジネスでの使用は数年間に及ぶため、長期的なサポートが不可欠です。法人PCでは、標準で1年~3年の保証が付帯する場合が多く、オプションで4年~5年まで延長も可能です。
故障時にエンジニアが訪問して修理を行う「オンサイト修理」や、修理中の代替機貸出サービスなど、ダウンタイムを最小限にするためのメニューが豊富に用意されています。
一括導入・管理のしやすさ
企業では、数十台から数千台規模でPCを導入するケースも珍しくありません。法人PCメーカーでは、出荷時にOSのバージョン設定やアプリケーションのインストール、資産管理シールの貼付などを行ったうえで納品する「キッティングサービス」を提供しています。
これにより、情シス担当者が1台ずつ手作業で設定する必要がなくなり、導入作業の負担を大幅に軽減できます。さらに、同一モデルでPCを統一することで、ドライバ管理やトラブル対応もスムーズに行えるようになります。
業務に最適化された耐久性
営業職が持ち歩くモバイルノートなどでは、落下や振動への耐性が求められます。法人PCの多くのモデルは、MIL規格(米国国防総省が定める調達基準)などの厳しい耐久テストをクリアしており、堅牢性が担保されています。
キーボードの打鍵耐久性や防滴性能なども考慮されており、毎日のハードな業務使用に耐えうる設計となっています。
法人PCの注意点
多くのメリットがある一方で、導入に際してはいくつか注意すべき点もあります。これらを事前に把握しておくことで、スムーズな導入計画を立てられます。
初期費用が高めになりやすい
法人PCは、高品質な部品の使用やサポートの手厚さから、同等スペックの個人向けPCと比較して定価が高めに設定されていることがあります。ただし、TCO(総保有コスト)の観点で見れば、故障率の低さや管理コストの削減によって相殺される場合が多いでしょう。
導入台数に応じたボリュームディスカウントが適用されることもあるため、見積もりを取って確認することが重要です。
カスタマイズに時間がかかりやすい
BTO(Build to Order:受注生産)方式を採用しているメーカーでは、メモリやストレージ、OS構成などを柔軟に選択できます。一方で、注文から納品までに2週間~1か月程度のリードタイムが生じるケースも見られます。
特に、年度末やOSサポート終了前などの繁忙期は、通常より納期が延びやすくなります。導入時期を逆算し、余裕を持って発注を進めましょう。
納期が長期化しやすい
前述のように、カスタマイズ内容や発注時期によっては、想定以上に納期が延びることもあります。急な入社対応や故障によるリプレースなど、早急にPCが必要な場合には注意が必要です。
そのため、すぐに導入したい場合は、メーカーが在庫を保有している「即納モデル」や「固定構成モデル」の活用も検討しましょう。必要な時期とスペックのバランスを考慮し、事前に代理店やメーカーへ納期を確認しておくことが重要です。
法人PCの選び方
法人PC選びにおいて最も重要なのは、「誰が」「どこで」「どのような業務に」使用するのかを明確にすることです。高性能なものを選べばよいわけではなく、業務内容に見合った最適なスペックと機能の見極めが、コスト最適化と生産性向上の鍵です。
業務内容に合わせたスペック選定
PCの基本性能を左右するCPUやメモリ、ストレージは、業務の快適さや生産性に直結する重要な要素です。担当業務の内容や利用シーンに応じて、必要十分なスペックを見極めましょう。
- ■CPU
- 一般的な事務作業であればCore i3やRyzen 3でも動作しますが、マルチタスクやWeb会議の快適さを考慮すると「Core i5 / Ryzen 5」以上が現在のスタンダードです。開発業務やデータ分析には「Core i7 / Ryzen 7」が推奨されます。
- ■メモリ
- Windows 11環境下では「8GB」が最低ラインですが、Teamsやブラウザ、Officeアプリを同時に開くと動作が重くなる可能性があります。快適な業務遂行のためには「16GB」を標準とすることをおすすめします。
- ■ストレージ
- HDD(ハードディスク)は起動や処理が遅いため避けましょう。高速な「SSD」が必須です。容量は「256GB」が一般的ですが、大量のデータを扱う場合は512GB以上を検討してください。クラウドストレージを活用する場合は、256GBでも十分なケースが多くあります。
形状・サイズの選択
PCの形状やサイズは、働き方や利用場所によって適したタイプが異なります。持ち運びの頻度や設置環境を踏まえ、自社の業務スタイルに合ったモデルを選びましょう。
- ■モバイルノート(12~14インチ)
- 1kg前後の軽量モデル。営業職やテレワーク頻度の高い従業員向け。持ち運びやすさと画面サイズのバランスがよい13~14インチが主流です。
- ■スタンダードノート(15.6インチ以上)
- テンキー付きのキーボードや大きな画面が特徴。経理・事務職など、主に社内で据え置き利用する場合に適しています。
- ■デスクトップ
- 拡張性が高く、同性能ならノートPCより安価。CADや動画編集などの高負荷作業を行う専門職や、固定席での業務向けです。省スペースな小型筐体モデルも人気です。
- ■2in1タブレット
- キーボードを取り外してタブレットとしても使えるモデル。現場作業やプレゼンテーションが多い職種、またはペーパーレス会議の端末として有効です。
セキュリティ機能の確認
社外への持ち出し機会が増えた現在、紛失・盗難対策は必須です。BitLockerによるディスク暗号化のためにTPMチップが搭載されているかは、必ず確認してください。Windows 11対応PCなら原則搭載されています。
また、生体認証(指紋・顔)があれば、外出先でのパスワード入力による盗み見リスクを減らせます。さらに、画面の視野角を狭めるプライバシーフィルター機能が内蔵されているモデルであれば、カフェや新幹線での作業時も安心です。
管理機能とサポート体制
情シス部門による管理負荷を下げる機能も重要です。Intel vProプラットフォーム対応PCであれば、電源オフの状態でもリモートでPCを起動し、パッチ適用やメンテナンスを行えます。
万が一のトラブル時に「翌日オンサイト修理」が可能か、海外出張先でもサポートが受けられるかなど、自社の運用体制に合った保守サービスが提供されているかを確認しましょう。
導入台数と予算のバランス
一度に大量導入する場合、メーカーや販売代理店との交渉によってボリュームディスカウントが適用されることがあります。
また、初期費用を抑えるためにリース契約や、PCをサービスとして利用する「DaaS(Device as a Service)」という形態を選択する企業も増えています。予算規模とキャッシュフローに合わせて最適な調達方法を検討してください。
拡張性とメンテナンス性
長く使うためには、後からメモリ増設やバッテリー交換ができるかもポイントです。最近の薄型ノートPCは、メモリが基板に直付けで増設不可のモデルも増えています。将来的に業務負荷が上がった際に対応できるよう、拡張スロットの有無を確認しておくと安心です。
また、インターフェース(USB Type-A/C、HDMI、有線LANなど)が必要数備わっているかもチェックしましょう。
OSとソフトウェアのライセンス
OSは、企業利用であれば「Windows 11 Pro」一択といってよいでしょう。Homeエディションではセキュリティポリシーの強制適用などができません。
Microsoft Office(Word, Excelなど)については、PCにプリインストールされた永続ライセンス版(Office Home & Business 2024など)を購入するか、サブスクリプション型の「Microsoft 365」を別途契約するかを検討する必要があります。近年はライセンス管理の容易さからMicrosoft 365への移行が進んでいます。
おすすめの法人PCメーカー比較
ここからは、多くの企業で導入実績のある主要メーカーの法人向けPCを紹介します。メーカーごとに、コストパフォーマンスや堅牢性、軽量性、サポート体制などの特徴が異なるため、自社の業務内容や重視したいポイントと照らし合わせながら比較検討しましょう。
Lenovo(ThinkPad)
レノボ・ジャパン合同会社が提供するThinkPadシリーズは、法人向けノートPCの代表的なブランドです。高い堅牢性と信頼性を備え、長時間の業務利用や持ち運びを想定した設計が特徴。キーボードの操作性や耐久性にも定評があり、世界中の企業で採用されています。vPro対応モデルも豊富で、大規模展開やIT部門による一元管理にも適しています。
日本HP(EliteBook / ProBook)
株式会社日本HPが提供する法人向けノートPCシリーズ。EliteBookは高いセキュリティ機能と管理性を備えた上位モデルとして、大企業や情シス主導の運用に適しています。一方、ProBookはコストパフォーマンスに優れたスタンダードモデルとして、中小企業を中心に広く採用されています。MIL規格準拠の堅牢設計に加え、法人利用を想定した安定性と拡張性を備えています。
Dell(Latitude)
デル・テクノロジーズ株式会社が提供するLatitudeシリーズは、法人利用に特化したノートPCブランドです。堅牢性と安定性を重視した設計に加え、柔軟なカスタマイズ性が特徴で、業務内容に応じた構成を選択できます。vPro対応モデルやリモート管理機能も充実しており、グローバル展開やIT部門による一元管理を行う企業にも適しています。
富士通(LIFEBOOK)
富士通株式会社が提供するLIFEBOOKシリーズは、法人利用を前提に設計された信頼性の高いPCブランドです。超軽量モバイルノートからスタンダードノートまで幅広いラインナップを展開し、業務内容に応じた選択が可能です。国内メーカーならではのきめ細かなサポート体制と、日本の業務環境に配慮した設計により、安心して導入できます。
dynabook
Dynabook株式会社が提供する法人向けPCは、東芝時代から受け継がれる技術力と高い信頼性が特徴です。モバイルノートからスタンダードノート、2in1モデルまで幅広い製品を展開しており、多様な業務スタイルに対応できます。国内生産による品質の高さと、法人向けに整備されたサポート体制により、安定した運用を実現します。
パナソニック(Let's note)
パナソニック コネクト株式会社が提供するLet's noteシリーズは、法人向けモバイルPCとして高い評価を受けています。軽量性と堅牢性を両立した設計が特徴で、持ち運びの多い業務や過酷な利用環境にも対応可能です。長時間バッテリー駆動や豊富なインターフェースなど、ビジネス用途に必要な機能を備えています。
VAIO
VAIO株式会社が提供する法人向けPCは、国内生産による高い品質と信頼性が特徴です。ビジネス用途を前提とした堅牢設計や安定したパフォーマンスに加え、法人向けサポート体制も充実しています。モバイル性と実用性のバランスに優れたモデルが多く、中小企業を中心に導入が進んでいます。
Microsoft(Surface)
日本マイクロソフト株式会社が提供するSurfaceシリーズは、法人向けに設計された2in1デバイスを中心としたPCブランドです。Surface ProやSurface Laptopなど、モバイルワークやハイブリッドワークに適したモデルを展開しています。Windows 11やMicrosoft 365との高い親和性に加え、Copilot機能を活用したAI業務効率化にも対応します。
法人PC市場の動向
法人PC市場は現在、大きな転換期を迎えています。Windows 10のサポート終了を背景に、多くの企業でPCの入れ替えが進み、市場全体として更新需要が拡大しています。主要メーカーを中心に法人向けモデルの開発や提供が活発化しており、企業のIT環境刷新が加速している状況です。
なかでも注目されているのが「AI PC」の広がりです。NPU(Neural Processing Unit)を搭載し、端末上でAI処理を実行できるPCが登場したことで、業務効率や生産性の向上が期待されています。
マイクロソフトが提唱する「Copilot+ PC」をはじめ、AI活用を前提としたデバイスへの関心は今後さらに高まっていくでしょう。これからの法人PC選定では、従来の事務処理性能に加え、AI活用の可能性も重要な判断軸となります。
また、教育分野ではGIGAスクール構想に伴う端末更新が継続しており、法人PC市場にも一定の影響を与えています。価格を抑えつつ、堅牢性や耐久性を備えたモデルの開発競争が進んでいます。こうした動向を踏まえ、将来の利用シーンを見据えたスペック選定を行うことが重要です。
まとめ
法人PCの選定は、従業員の生産性向上や情報セキュリティの確保、IT管理コストの最適化に直結する重要な判断です。価格だけで比較するのではなく、自社のワークスタイルや業務内容、セキュリティ要件に適した製品を選ぶことが重要です。各メーカーの強みや特徴を把握したうえで、スペックやサポート体制、納期などを総合的に比較検討しましょう。
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