温湿度管理システムとは
温湿度管理システムとは、温度や湿度をリアルタイムで測定・記録し、異常が発生した際に警告を出したり、自動的に環境を調整したりするシステムです。多くはIoT技術(※)を活用し、クラウドにデータを保存するタイプや、ローカル環境で管理するタイプがあります。
※IoT(Internet of Things)技術とは、センサーや機器をインターネットに接続し、データの収集・制御・分析を自動化する技術。遠隔監視や自動制御が可能になり、業務の効率化や精度向上が実現する。
温湿度管理システムの導入メリット
温湿度管理システムを導入することで、業務の効率化や品質管理の向上が期待できます。主なメリットは以下のとおりです。
メリット | 内容 |
---|---|
手動管理の手間を削減 | 従来の手動管理では、定期的に温湿度を測定し、紙やExcelへの記録が必要。温湿度管理システムを導入すれば、測定・記録・通知をすべて自動化できる。管理作業の負担が大幅に軽減される。 |
人件費・エネルギーコストの削減 | 手動管理では、1日に複数回、温湿度を確認する必要があり、人的コストがかかる。システムを導入すれば、記録作業が不要になり、管理担当者の工数削減による人件費の最適化が可能。 また、温湿度の変化に応じてエアコンや加湿器と連携し、自動調整を行うことで、無駄な電力消費を減らせる。 |
異常の早期発見・対応 | 異常が発生した際に、リアルタイムでアラート通知を受け取れる。製品や設備の損傷を未然に防ぎ、損失を最小限に抑えられる。 |
品質管理・監査対応の強化 | 食品業界のHACCP(食品衛生管理基準)、医薬品業界のGMP(適正製造基準)、物流業界のGDP(適正流通基準)など、各種法規制に対応するためには、温湿度管理の正確な記録が求められる。温湿度管理システムを導入すれば、自動でデータを記録・保存でき、監査時の報告資料作成も容易になる。 |
遠隔管理が可能 | クラウド対応のシステムを導入すれば、スマホやPCからリアルタイムで遠隔監視できる。工場や倉庫などの現場に行かなくても状況を確認できるため、管理の負担が大幅に軽減される。 |
温湿度管理システムの機能
温湿度管理システムには、以下のような主要な機能があります。
- ●リアルタイム監視:温度・湿度を24時間自動測定し、常に最新のデータを取得。
- ●アラート通知:設定した温湿度範囲を超えた場合、メールやアプリ通知で即座に警告。
- ●データ記録・レポート作成:過去の温湿度データを保存し、分析や監査対応に活用。
- ●自動制御:エアコンや加湿器と連携し、設定値を超えた際に自動で調整。
- ●クラウド対応:遠隔地からPCやスマートフォンを使ってデータ確認や管理が可能。
これらの機能により、作業の効率化や品質管理の強化が可能です。
温湿度管理システムの導入が進む業界・業種
温湿度管理システムは、主に温湿度の変化が品質や安全性に大きく影響する業界で導入されています。ここでは、温湿度管理システムの導入目的を業界・業種別に紹介します。
業界・業種 | 導入目的 |
---|---|
製造業 | 製品の品質管理、温度変化による不良品発生の防止。 例:食品工場の製造ラインの温湿度を管理し、品質を一定に保つ |
食品業界 | HACCP対応、食品の鮮度保持、衛生管理。 例:HACCP対応のために、冷蔵庫・倉庫の温湿度を自動記録する |
医薬品・病院 | 医薬品・ワクチンの適切な保管、GMP対応。 例:ワクチン保管のために、温湿度を遠隔で監視する |
倉庫・物流 | 温湿度管理が必要な商品の保管(例:生鮮食品・精密機器)。 例:倉庫内の湿度を管理し、カビや結露の発生を防止する |
研究施設・ラボ | 実験環境の維持、データの信頼性確保。 例:研究施設のラボで精密な温湿度管理を行い、実験データの正確性を確保する |
温湿度管理システムとIoT温度管理システムの違い
温湿度管理システムと似たものに、IoT温度管理システムがあります。両者は用途や計測対象が異なるため、それぞれの特徴を比較してみましょう。
温湿度管理システム | IoT温度管理システム | |
---|---|---|
計測対象 | 温度・湿度・CO2・VOC など | 温度のみ(GPS連携可能なものも) |
主な用途 | 工場・倉庫・研究施設・食品製造・医薬品保管(HACCP・GMP対応) | トラック・コンテナ・冷蔵配送・医薬品輸送(GDP対応) |
測定項目 | 温度・湿度・CO2・VOC・気圧など | 温度のみ(GPSを利用した位置情報の記録が可能なモデルも) |
異常通知の種類 | 温度・湿度の異常時にアラート通知(メール・アプリ・警報音) | 温度異常時にアラート通知(メール・GPS追跡による位置情報確認) |
食品・医薬品・精密機器などの品質管理が求められる環境では、温湿度管理システムが適しています。一方、輸送中の温度管理が必要な場合は、IoT温度管理システムの導入を検討するとよいでしょう。
温湿度管理システムの選び方
温湿度管理システムを導入する際は、自社の用途に適したものを選ぶことが重要です。ここでは、選定時に押さえておきたい5つのポイントを解説します。
記録・監視の方式
温湿度管理システムには、主にクラウド型とローカル型の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社の運用方法にあったシステムを選びましょう。クラウド型とローカル型の違いを比較すると、以下のとおりです。
クラウド型 | ローカル型 | |
---|---|---|
データ保存 | クラウドサーバ(インターネット経由で保存・管理) | 施設内のサーバやPCに保存(外部アクセスなし) |
アクセス方法 | PC・スマホ・タブレットで遠隔監視が可能 | 施設内の専用端末からのみ監視可能 |
コスト | 初期費用は低めだが、月額5千円~3万円程度の利用料金が発生 | 月額料金は不要だが、サーバ・メンテナンス費用が必要 |
セキュリティ | 通信暗号化やID認証などの対策が必要(外部アクセスあり) | 施設内で管理するため、外部からのアクセスリスクが低い |
おすすめの用途 | リモート管理・複数拠点での利用・リアルタイム監視が必要な場合 | セキュリティ重視・施設内のみでの管理・インターネット接続なしで運用したい場合 |
遠隔監視や複数拠点での管理を行うなら、クラウド型が適しています。一方、セキュリティを重視し、施設内での管理を徹底したい場合は、ローカル型が選択肢となります。
対応センサー
システムによって対応するセンサーの種類が異なります。施設の用途に応じて、必要なセンサーが搭載されているかを確認しましょう。業界・施設ごとに適したセンサーを以下にまとめました。
用途・測定対象 | 導入が適している業界・施設 | |
---|---|---|
温度センサー | 温度管理(冷蔵庫・倉庫・工場など) | 食品・製造・医薬品・物流 |
湿度センサー | 湿度管理(カビ防止・乾燥対策) | 倉庫・ラボ・博物館・病院・食品・医薬品 |
CO2センサー | 換気状況の監視、室内環境の管理 | オフィス・学校・工場 |
気圧センサー | 圧力管理、密閉環境の測定 | 研究施設・クリーンルーム |
VOCセンサー | 揮発性有機化合物の検出(空気質監視) | 病院・実験室・製造業 |
食品・医薬品業界なら、温度センサーと湿度センサーが必須です。オフィスや工場なら、CO2センサーもあると便利でしょう。
導入コスト
温湿度管理システムの料金体系は、初期費用+月額料金の組み合わせが一般的です。価格帯によるシステムの特徴は以下のとおりです。
- ■10万円以下
- センサー単体や簡易的なデータ記録装置が中心で、温湿度の記録や通知のみ対応可能。
- ■10万~50万円
- 基本的な監視・記録機能を備えたシステム。クラウド連携はなく、シンプルな機能構成が特徴。
- ■50万円~100万円
- クラウド対応のシステムで、遠隔監視やアラート通知機能を搭載。複数拠点の管理にも適している。
- ■100万円以上
- IoT連携やAI解析機能を備えた大規模システム。工場全体の最適化や高度なデータ分析が可能。
必要な機能を確保しつつコストを抑えたい場合は、レンタルやサブスク型の利用も有効な選択肢です。一方で、長期間の運用を予定している場合は、買い切り型のほうが総コストを抑えられるケースもあります。自社の運用計画にあわせて、最適な料金プランを選びましょう。
連携可能なシステム
IoT対応の温湿度管理システムなら、ほかの機器や管理システムと連携し、自動化やデータの一元管理が可能になります。以下のようなシステムと統合できるかを確認しましょう。
- ■エアコン・加湿器
- 温湿度の変化に応じて空調設備を自動制御。省エネや快適な環境維持に貢献する。
- ■警報装置(アラーム・メール通知)
- 設定した温湿度範囲を超えた際に、アラーム音やメール・アプリ通知で即座に警告を発信。
- ■生産管理システム
- 製造工程や品質管理と連携し、温湿度の変化が製品に与える影響を管理。トレーサビリティの強化に役立つ。
- ■クラウドストレージ(Google Drive・AWSなど)
- 収集したデータをクラウドに保存し、長期間の記録管理やレポート作成を効率化。
すでに導入しているシステムとの連携が可能かどうかを確認し、業務の効率化やデータ活用の幅を広げることを意識して選びましょう。
サポート体制
導入後のサポート体制は、システムを安定運用するために重要な要素です。特に、異常発生時の対応スピードや、トラブル発生時の対応手段を事前に確認しておくことが大切です。
- ■24時間対応
- システム不具合や障害発生時に、いつでもサポートを受けられるか。業種によっては、夜間・休日対応の有無も確認が必要。
- ■日本語サポート
- 海外メーカーのシステムを導入する場合、日本語での問い合わせ対応が可能か。サポートのレスポンス時間や対応レベルも確認する。
- ■リモートサポート
- 設定変更やトラブルシューティングを遠隔で対応できるか。現場に行かずに問題を解決できるため、特に多拠点での運用には重要なポイント。
- ■保証・保守サービス
- センサーや機器の故障時に、交換・修理対応があるか。保証期間や、定期メンテナンスの有無も考慮するとよい。
サポートが手厚いシステムを選ぶことで、運用時のリスクを最小限に抑え、安心して長期間利用できます。特に、業務に直結する重要なシステムの場合、サポート体制を重視した選定がおすすめです。
おすすめの温湿度管理システムを比較
ここからは、主要な温湿度管理システムを紹介します。それぞれの機能や特徴を参考にして、自社に最適な製品を見つけてください。
Braveridgeの温湿度監視システム
株式会社Braveridgeが提供する「温湿度監視システム」は、Bluetooth技術とLPWA通信を活用し、長距離かつ省電力で温湿度データを送信できるシステムです。独自のワイヤレス技術により、リアルタイム監視や、異常時のアラート通知が可能。工場・倉庫・医薬品保管など、さまざまな環境で活用されています。防水・防塵対応のセンサーも提供しており、過酷な環境下でも安定した運用が可能です。
ステルテックの温湿度管理システム
株式会社ステルテックが提供する「温湿度管理システム」は、食品工場・物流倉庫・研究施設などでの利用に適したシステムです。温度・湿度をリアルタイムで監視し、異常時には即座にアラート通知を行います。温湿度データを記録・分析し、HACCPやGMPなどの規制対応をサポート。クラウド対応により、遠隔からのデータ確認や長期間の記録保存が可能。監査対応の負担を軽減できます。
OnDoll(オンドール)
株式会社コンピューテックスが提供する「OnDoll(オンドール)」は、医療・製薬業界に特化した高度な温湿度管理システムです。医薬品の保管環境の適正管理を目的とし、GMPやGDPへの対応を支援します。センサーを活用して、高精度な温湿度データを取得。クラウド上にデータを保存することで、監査対応や品質管理の強化が可能です。
みえーるど
ユーピーアール株式会社が提供する「みえーるど」は、IoT技術を活用したクラウド型の温湿度監視システムです。リアルタイムで温湿度データを取得し、異常時には即座にアラートを送信して品質管理やリスク管理を強化。遠隔監視機能により、PCやスマホからいつでもデータを確認できます。物流・倉庫・工場・食品製造など、温湿度管理が求められる多様な業界で活用されています。
KOKOCHI(ここち)
ベネックスソリューションズ株式会社が提供する「KOKOCHI(ここち)」は、空間の温湿度環境をリアルタイムで監視し、快適な環境づくりをサポートする温湿度管理システムです。温湿度だけでなく、CO2濃度や空気質のモニタリングも可能。クラウド連携により、遠隔監視・データ分析・レポート作成などの機能も利用できます。オフィス・工場・病院・介護施設など、人が長時間滞在する空間の環境管理に適しています。
温湿度管理システムの導入手順
温湿度管理システムの導入は、以下の手順で進めるとスムーズです。
- ■自社の管理基準を整理
- まず、自社で管理が必要な温湿度の範囲や監視頻度、必要なセンサーの種類を明確にする。
- ■各システムを比較検討
- クラウド型・ローカル型、対応センサー、コスト、サポート体制などを比較し、自社に最適なシステムを選定する。
- ■デモ・トライアル利用
- 多くのベンダーがデモ機や無料トライアルを提供しているため、事前に試して運用のしやすさを確認する。
- ■本格導入・運用開始
- システムの導入後、スムーズな運用ができるように管理者や現場スタッフ向けに運用ルールを策定する。
導入前に十分な検討を行うことで、システムの効果を最大限に活用できます。
まとめ
温湿度管理システムを導入することで、温湿度管理の自動化・効率化が実現し、品質管理の強化や法規制対応の負担軽減につながります。必要な機能・コスト・サポート体制を比較しながら、自社に最適なシステムを選びましょう。まずは、気になる製品の資料を請求して、製品の特徴を詳しく把握してみてください。