IT点呼システムとは何か、導入が進む背景
運送業界では2022年以降、アルコールチェックの義務化が段階的に進み、点呼業務の負担が増えています。ここではIT点呼システムの基本的な仕組みと、導入が広がっている理由を整理します。
IT点呼システムが求められる背景
従来の対面点呼では、運行管理者が営業所に常駐し、出庫・帰庫のたびに運転者と直接対面する必要がありました。しかし早朝や深夜の出庫、複数拠点をまたぐ運行では、運行管理者が常に営業所にいるとは限らず、対面点呼の実施自体が難しい場面が少なくありません。
国土交通省は一定の要件を満たす営業所間で遠隔点呼を認めています。カメラやアルコール検知器を接続したIT点呼システムを使えば、離れた拠点からでも点呼が実施できます。人手不足が進む運送業界にとって、限られた人員で複数拠点の点呼を回すための手段として注目されています。運行管理者の資格を持つ人員が少ない事業所でも、営業所をまたいで点呼を担当できるようになる点も導入が進む理由のひとつです。
IT点呼システムの基本的な仕組み
IT点呼システムは、パソコンやタブレットに接続したカメラとマイクを使い、運行管理者と運転者がビデオ通話でやり取りする仕組みが基本です。あわせてアルコール検知器やカメラなどの周辺機器と連携し、点呼に必要な情報を自動で取得します。
取得した情報はシステム上に記録され、点呼簿として保存される仕組みが一般的です。手書きやExcel(表計算ソフト)での記録に比べて入力の手間が減り、記載漏れや後からの改ざんといったリスクを抑えられる点が特徴です。運行管理者が複数の営業所を兼務している場合でも、遠隔から点呼状況をまとめて確認しやすくなります。パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンに対応した製品もあり、営業所以外の場所からでも点呼状況を確認できる点も特徴のひとつです。
ビデオ通話によるIT点呼システムの遠隔点呼機能
IT点呼システムの中核となるのが、ビデオ通話を使った遠隔点呼機能です。ここでは遠隔点呼の仕組みと、あわせて確認される健康状態のチェック機能について説明します。
ビデオ通話で遠隔点呼ができる機能
遠隔点呼機能では、運行管理者のいる営業所と運転者がいる別拠点を映像でつなぎ、対面と同等の点呼を実施します。画面越しに運転者の顔色や表情、応答の様子を確認しながら、乗務の可否を判断する流れです。
国土交通省の遠隔点呼制度に対応したシステムでは、カメラの解像度や通信の安定性、記録の保存方法など一定の要件を満たす必要があります。要件を満たさないまま運用すると認められない場合があるため、導入時には自社の運行形態が制度の対象要件に合致しているかを確認したうえで選定することが重要です。営業所間の距離や回線環境によっても運用のしやすさが変わるため、事前に通信環境のテストを行っておくと安心です。映像や音声が途切れると本人確認が難しくなるため、回線速度に余裕を持たせておくことも大切です。
ドライバーの健康状態を確認する機能
健康状態確認機能では、ビデオ通話越しの目視に加えて、体温計や血圧計などの測定機器と連携し、数値データを自動で取り込めるシステムもあります。顔色や呼気の様子だけでなく、客観的な数値でも体調を把握できる点が特徴です。
測定結果は点呼記録とあわせて保存され、体調不良が疑われる場合には運行管理者へ通知される仕組みを備える製品もあります。運転者自身の申告に頼らず、日々の測定データを蓄積することで体調の変化にも気づきやすくなり、体調管理を仕組み化できる点がメリットです。過去の測定結果と比較して数値の変動を確認できる製品もあり、体調不良の予兆に早い段階で気づける可能性が高まります。測定結果を家族や産業医と共有できる機能を持つ製品もあり、日常的な体調管理に活用する事業所もあります。
点呼記録の自動保存と運転者情報の一元管理機能
点呼業務では記録の保存や運転者情報の管理も重要な業務です。ここでは記録の自動保存機能と、免許情報などの一元管理機能について説明します。
点呼記録を自動で保存する機能
点呼記録の自動保存機能では、点呼時のやり取りや測定結果、実施時刻などがシステム上に自動で記録され、点呼簿として蓄積されます。手書きの点呼簿と異なり、記入漏れや文字の判読ミスが起こりにくい点が特徴です。
保存された記録は一定期間の保管が求められるため、検索や出力がしやすいシステムを選ぶと、監査や国土交通省の監査対応の際にも記録をすぐに取り出せます。クラウド型であれば、複数拠点の記録をまとめて一元的に確認でき、営業所ごとに紙の点呼簿を管理する手間も省けます。過去の記録を期間や運転者名で絞り込んで検索できる製品もあり、確認作業の効率化につながります。記録の保存先も社内サーバーではなくクラウド上になるため、バックアップの手間を省きながら紛失のリスクを抑えられる点もメリットです。
運転者の免許情報などを一元管理する機能
免許情報の一元管理機能では、運転者ごとの免許証番号や有効期限、保有資格などをシステム上でまとめて管理します。更新時期が近づいた運転者を自動で一覧表示する機能を備えた製品もあり、更新忘れの防止に役立ちます。
あわせて乗務経験や過去の点呼記録、健康診断の受診状況などを一括で確認できる製品もあります。紙の台帳で管理していた情報をシステムに集約することで、運行管理者の確認作業を効率化しやすくなります。複数拠点をまたいで運転者を配置する際にも、情報を照会しやすくなる点がメリットです。免許証の写真データをあわせて登録できる製品もあり、更新手続きの案内や確認作業をさらに簡単に進められます。運転者ごとに保有する免許の種類や条件も記録できるため、対応可能な車両の割り当てを検討する際にも役立ちます。
異常時のアラート通知を含む安全管理機能
IT点呼システムには、点呼時の異常を検知して知らせる機能も搭載されています。ここでは異常時のアラート通知機能と、運行管理者間での情報共有機能を紹介します。
異常があった場合にアラート通知する機能
アラート通知機能では、アルコール検知器で基準値を超える数値が測定された場合や、健康状態の確認で異常が疑われる場合に、運行管理者へ自動で通知が届きます。担当者が別の業務中でも異常を見落としにくい仕組みです。
通知方法はシステム画面上の表示に加えて、メールやアプリの通知機能で知らせる製品もあります。乗務前の段階で異常を検知できれば、事故につながる前に乗務を中止するなど、早い段階での対応につなげやすくなります。複数の運行管理者が同時に通知を受け取れる仕組みであれば、担当者が不在の時間帯でも対応漏れを防ぎやすくなります。通知の内容には測定数値や発生時刻もあわせて記録されるため、後から発生状況を振り返って確認する際にも役立ちます。
運行管理者間での情報共有機能
複数の運行管理者や複数拠点で業務を分担している場合、点呼記録や異常発生時の対応履歴を共有できる機能があると、引き継ぎの際の情報伝達がスムーズです。担当者が交代しても、過去の記録をさかのぼって確認できます。
一部のシステムでは、点呼状況をダッシュボード形式で表示し、複数拠点の実施状況をリアルタイムに一覧できる機能も備えています。管理者が営業所を巡回しなくても、全体の点呼状況を把握しやすくなり、異常が発生した拠点をすぐに特定して対応の指示を出せる点も特徴です。拠点ごとの点呼実施件数や未実施の運転者を色分けして表示する製品もあり、確認漏れを防ぐ工夫がされています。営業所間で対応方針を統一しやすくなる点も、複数拠点を持つ事業者にとってのメリットです。
IT点呼システムを選ぶ際のポイント
数あるIT点呼システムの中から自社にあった製品を選ぶには、いくつか確認しておきたい観点があります。ここでは運用形態との相性と、周辺機器・サポート体制の2つの着眼点を紹介します。
自社の運用形態に合った点呼方式か確認する
IT点呼システムには、同一営業所内での運用を想定した製品と、国土交通省の遠隔点呼制度に対応した製品があります。複数拠点をまたいで点呼を実施したい場合は、遠隔点呼の要件を満たしているかを必ず確認しましょう。
また、対応している車両の種類や運転者数の規模によって、必要な機能や料金体系が異なります。自社の営業所数や運転者数、運行スケジュールに合わせて、無理なく運用できる規模の製品を選ぶことがポイントです。深夜や早朝の出庫が多い事業所では、時間帯を問わず安定して稼働するかどうかもあわせて確認しておくと安心です。将来的に営業所や車両を増やす予定がある場合は、拡張のしやすさや料金体系の柔軟さも比較しておくとよいでしょう。
既存の周辺機器との連携やサポート体制を確認する
既にアルコール検知器や運行管理システムを導入している場合は、既存の機器やソフトとの連携が可能かを確認しておく必要があります。連携できないと、二重入力の手間が発生してしまう可能性があります。
加えて、導入時の初期設定や運用開始後のトラブル対応など、サポート体制も選定の重要な基準です。無料トライアルやデモを提供している製品であれば、実際の操作感を確認したうえで導入を判断できます。操作に不慣れな運転者が多い場合は、画面表示がわかりやすいかどうかも事前に確認しておくとよいでしょう。導入実績が豊富な提供会社であれば、同業他社での運用事例をもとに、自社に近い運用方法を相談できる場合もあります。契約前に問い合わせ窓口の対応時間や、電話・メールなど連絡手段の種類も確認しておくと、トラブル時にも慌てず対応できます。
遠隔点呼やアルコールチェックに対応する製品例
ここまで紹介した遠隔点呼、アルコールチェックの自動記録、点呼記録の保存といった機能を実際に備える製品を紹介します。
Cagou IT点呼
- 自動・遠隔・IT・電話・対面とすべての点呼に対応
- すべての点呼を年額30,000円からの低価格で利用可能
- アプリのガイドに沿って操作するだけで、点呼を実施可能
株式会社コアが提供する「Cagou IT点呼」は、クラウド型の点呼システムです。スマートフォンとアルコール検知器を連携させ、顔認証による本人確認とあわせてアルコールチェックの結果を記録できます。対面点呼、電話点呼、IT点呼に加えて、国土交通省が認定する業務前・業務後の自動点呼にも対応しています。ロボット型の専用端末を別途購入しなくても、市販のモバイル機器を使って運用を始められる点が特徴です。複数拠点をまたぐ運行管理や、遠隔点呼制度への対応を検討している事業者に向いています。
点呼+ (株式会社ナブアシスト)
- 多様な点呼方式をクラウドで一元管理。
- 顔認証やアルコール検知などの機能に対応。
- ロボット・PC・モバイルなど複数デバイスで運用可能。
アルキラーNEX (株式会社パイ・アール)
- 検知結果をクラウドへ自動送信し即時確認が可能。
- 顔認証や位置情報と連携し記録を管理できる。
- スマホアプリで直感的に操作できる設計。
DiSynapse IT-RC (株式会社情通)
- Webカメラを活用した遠隔点呼に対応。
- 点呼内容を動画で記録しデータとして保存可能。
- 他システムと連携し運行・労務情報を一元管理。
デジタル点呼マネージャー (株式会社インフォセンス)
- 遠隔点呼やIT点呼に標準対応。
- 点呼・車両・運転手情報をクラウドで一元管理。
- アラート通知や可視化機能で管理業務を支援。
e点呼PRO (東海電子株式会社)
- IT・遠隔・対面・電話など複数の点呼方式に対応
- 点呼計画とアラート機能で点呼漏れ防止を支援
- 顔認証や記録データ管理により点呼情報を一元化
まとめ
IT点呼システムには、ビデオ通話による遠隔点呼やアルコールチェックの自動記録、健康状態の確認といった機能が搭載されています。加えて、点呼記録の自動保存、運転者の免許情報の一元管理、異常時のアラート通知にも対応しています。自社の運用形態や既存機器との連携、サポート体制を確認したうえで、自社に合った製品を選定してください。無料トライアルなどを活用し、実際の操作感を確かめてから導入を判断することをおすすめします。

