インターネット回線の冗長化とは
インターネット回線は一つのISP(インターネット・サービス・プロバイダ)と契約し、1回線で利用するのが一般的です。そのため、ひとたびネットワーク回線障害や通信障害が発生すればインターネット接続ができない、レスポンスが悪いなどの状況に陥り、さまざまな業務が中断してしまうでしょう。
障害が発生した際、瞬時に別の回線へと切り替えられれば接続が維持できるうえ、システム全体がストップする事態も回避できます。このようにシステムの機能を維持すべく、メイン回線のほかにバックアップ回線として複数の装置・通信回線を備えておくことこそが、インターネット回線の「冗長化」です。
インターネット回線の負荷を軽減し、耐障害性を向上させる冗長化の方法には「マルチホーミング」と「リンクアグリゲーション」があります。それぞれの違いを以下にまとめています。
- マルチホーミング:複数企業と契約し、接続経路(ISP)を複数個化
- リンクアグリゲーション:一企業との複数契約により、接続経路(ISP)を複数個化
インターネット回線を冗長化していれば、ネットワークになんらかのトラブルが発生した場合でも安全性を維持できるので安心でしょう。
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マルチホーミングの仕組み
インターネットの安定稼働と耐障害性を目的とする「負荷分散」には、2つの方法があります。第一に、サーバの負荷分散です。Webサイトのアクセス急増やサーバ障害に備え、サーバを二重あるいはそれ以上に増設し、アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)でそれぞれのサーバにアクセスを振り分けます。ADCは「ロードバランサ」や「L7スイッチ」とも呼ばれます。
第二に、ISPの二重化です。一つのISPに障害が発生した場合はもう一方のISPに切り替わるため、中断することなくインターネットを利用できます。
ここで、日本におけるインターネットの歴史からマルチホーミングをひも解いてみましょう。1990年代半ば、インターネットにアクセスするISPは一社のみ契約して利用するのが一般的でした。その後、「Microsoft Windows 95」日本語版の発売なども影響し、90年代後半からはビジネスにおけるインターネットの比重が増加します。そして2000年前後、大容量通信(ブロードバンド)が可能になったことで、インターネットはますます生活やビジネスに浸透します。このとき、より安定した接続を求めて複数のISPと契約・接続する企業が出てきました。これがマルチホーミングの起源です。
マルチホーミングの機能は当初、外部との接続部分であるルーターに設けられたり、ファイアウォールに追加されたりしていました。その後、専用機器も登場したことでマルチホーミングの導入企業は増加傾向にあります。
以下の記事では、マルチホーミングの仕組みをより詳しく解説しています。リンクアグリゲーションとの違いも解説しているので、マルチホーミングについて理解を深めたい方は参考にしてください。
リンクアグリゲーションの仕組み
リンクアグリゲーションは先述したとおり、一企業との複数契約により回線を冗長化する手法です。アグリゲーション(aggregation)とは集約を意味する英単語です。
例えば機器AとBの接続時に、回線を1本から2本へ変更したと仮定してください。回線が100Mbps(通信速度を表し、数値が多いほど高速)であれば、2本を集約して200Mbpsでの利用が可能です。トラブルなどで片方の回線が使用できなくとも、もう片方で100Mbpsの通信は確保できる仕組みです。
この仕組みはISPとの接続でも変わりません。一社のISPと100Mbpsで2回線契約した場合、ISPと100Mbps×2本=200Mbpsでインターネットを利用可能です。障害発生により利用回線が1本になっても、100Mbpsを確保できます。
ただしISP自体に障害が発生した場合、回線はすべて利用不可となるため注意しましょう。マルチホーミングの場合は複数社のISPをもつため、一社の回線が利用できない場合でも、もう一方のISP回線で事業を継続できます。
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インターネット回線を複数契約するメリット
マルチホーミングをはじめとしたインターネット回線の複数契約には、以下のようなメリットがあります。
- ●BCP対策や収益の確保につながる
- ●パフォーマンスが向上する
- ●コストを抑えられる可能性がある
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
BCP対策や収益の確保につながる
安定したサービスの提供はBCP(事業継続計画)対策にもつながります。インターネットがビジネスに不可欠な存在である以上、通信の確保は必須といえるでしょう。
自然災害や感染症の流行、テロ攻撃といった緊急事態への備えが事業の継続・早期復旧を可能にし、ひいては企業価値の維持・向上にもつながります。複数企業と契約して通信が確保できれば、可用性が高まるでしょう。機会の損失を防ぎ、安定して事業を継続できます。
パフォーマンスが向上する
インターネットの接続を同時に複数回線で行うため、通信の負荷分散とパフォーマンスの向上に効果的です。アクセスが集中しても安定したレスポンスを維持でき、機会損失や事業活動の停滞が防止できるでしょう。
コストを抑えられる可能性がある
SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)の契約により、サービス品質を保証するISPもあります。例えば帯域保証型(自社が利用できる回線の容量を保証する)は最大通信速度を維持でき、パフォーマンスも安定していますが、その分コストが高くなるのがネックです。
一方でベストエフォート型(帯域保証をしない)では通信速度が変動し、パフォーマンスも状況に応じて変化しますが、コスト面に関しては比較的リーズナブルといえます。また、双方の特徴をあわせもつ「バースト型」もあります。自社が必要とするセキュリティレベルや利用人数、やりとりするデータ量などを踏まえて検討すれば、複数社との契約でもコストを抑えた導入が可能です。
以下の記事では、マルチホーミングの導入メリットについて詳しく解説しています。インターネット回線の複数契約の一例として、どのような導入効果があるか具体的に知りたい方は参考にしてください。
インターネット回線複数契約のデメリットと注意点
インターネット回線を複数契約する場合のデメリットは、管理業務の負担が増えることが挙げられます。インターネット回線が増えれば、その分の有線・無線ルーターやONUを用意し各種設定やセキュリティ対策を行い、メンテナンスなどの実施が必要です。これにより1回線のみ契約している場合に比べ管理業務の負担は増えるので、導入前に管理体制を検討しておくとよいでしょう。
また、自社の設備や環境などによっては、複数回線の契約ができない場合があるので注意が必要です。例えば空いている配管がなく光回線用のファイバーが通せなかったり、インターネット回線のサービスエリア外だったりといったことが挙げられます。自社の環境を確認し、資料請求やベンダーへの問い合わせで複数回線契約が可能か確認しておきましょう。
インターネット回線冗長化の構成例
インターネット回線を冗長化するには、以下のような構成例があります。自社の環境に適した冗長化構成を選定するとよいでしょう。
- ■リンクアグリゲーション
- ・複数のONU・ルーターを同じアクセスポイントに接続し、回線を二重化する
- ・複数のONU・ルーターを別のアクセスポイントに接続し、地理的に冗長化する
- ■マルチホーミング
- ・一系統の回線とONU・ルーターで複数企業のプロバイダを契約する
- ・複数企業のプロバイダを契約し、一台のルーターを二台のONUと接続する
- ・複数企業のプロバイダを契約し、それぞれの回線・ONU・ルーターと接続する
インターネット回線を冗長化し企業活動を安定化しよう
インターネット回線冗長化すると、安定したネットワーク通信を維持でき、企業活動の安定が図れます。回線の負荷を軽減し耐障害性を向上させ、BCP(事業継続計画)対策やパフォーマンスの向上などにも効果的です。
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