福崎工場内の光景
渋谷工業㈱は国内有数の建築用金物サプライヤー、㈱シブタニのモノづくり業務を担う企業である。1970年にシブタニの製造部門を母体として発足した。プレス加工やダイカスト鋳造をメインにする企業は多いが、同社の強みはそれらの加工をはじめ、材料の手配から金型製作、組立まで社内で一貫して行えること。これによりオンリーワンで高品質の製品を多数、生み出している。
同社の生産管理の形態は、一般的な製造業のそれとは多少異なる。生産管理部門などで生産情報を一元管理するのではなく、製造現場でその業務を請け負った人(製品担当者)が生産計画立案から納品までを管理する。
「生産情報を一元管理にするか、個人管理にするかは、その企業の考え方しだいだと思います。当社が個人管理を採用しているのは、そのほうが責任の所在が明確になり、仕事がはかどるとの判断からです」と常務取締役の宮崎政幸氏は話す。
ただし、半世紀に及ぶ時代の変遷の中で、生産管理の内容は変わりつつある。初期の頃は、すべてが手作業で行われた。3枚、4枚つづりの加工伝票や納品書などを1つひとつ手書きして、それを関係各部署や協力工場などに配っていた。製品担当者は「いつ発注したか」などの情報をその人なりの書き方で記録したり、頭の中に入れたりしていた。
IT化に踏み出したのは1990年代の後半のことである。親会社との間で受発注のやり取りをするため、オフコン(オフィスコンピュータ)端末を導入した。その後、オフコン端末に市販のソフトウェアをインストールして、在庫管理と売上管理も始めた。
しかし、業容拡大に伴って、本格的な生産管理システムの必要性を痛感するようになる。とくに問題だったのは、希望納期通りにモノができず、顧客に迷惑をかける事態が生じたことである。「製造工程の進捗状況が把握出来ず、問題の工程の所在がわからなかったのです」(宮崎氏)。そこでシステムを刷新して、進捗管理が明確に把握できスムーズに問題工程の改善ができる生産管理システムの構築に取り組むことにした。