ユーザーフォームの便利さを実感
2023年10月に運用を開始。現在、TPiCSで動いているのは材料の受発注、社内・社外に対する生産指示、在庫管理などだが、このうち成果が端的に現れているのが購買部門の発注管理である。「同部門では、今でも所要量計算値のチェックは行っていますが、人手で行っていた計算業務が自動化され、従来と比較して工数が4割ほど減ったという報告を受けています」(山根氏)。工数の削減に伴い、一人につき1~2時間ほど残業時間も減少しているという。
所要量計算を自動で動かすこと以外にも、TPiCSの便利さはいろいろ実感できている。自社独自の画面をつくれるユーザーフォーム機能はその1つ。通常のパッケージソフトウェアだと、帳票類を独自のレイアウトにしたり、画面項目を変えるには、相当な金額の追加費用が発生する。また、他人がつくるため、伝言ゲームのようになりがちで、出来上がったものに必ずしも満足できるかどうかはわからない。それに対し帳票作成の自由度に加え、ユーザー自身の手で入力フォームや検索パネルなどがつくれるのがこのユーザーフォーム機能の特徴である。「最初はSI会社さんにつくっていただきましたが、それを手本にして、次からはわれわれ自身の手でつくるようにしました。欲しい機能がその場でつくれるのは大きなメリットであり、それを社内ユーザーに使ってもらうなどして、輪を広げているところです」(総務部情報システム課係長の芝池保夫氏)。
変わったところでは所要量計算結果の即時二次利用も始めた。仕入れ先に流す発注情報は、従来は確定したものだけに限定していたが、仕入れ先の中には内示情報も知りたいという企業もある。そこでメインのデータベースで所要量計算を回した直後に、その情報を予備のデータベースにコピーし、情報共有できるようにした。また、現在、所要量計算は1日1回、早朝に行っているが、例えば注文が入ったその日に注文書が出せるよう、「午後にも回せないか」という要望も出ているという。「そういう要望が社内のさまざまな部署から出るようになったのは、今以上にTPiCSを活用していきたい、という意欲の表れでもあり、従業員の意識改革が進んでいることを実感しています」(山本氏)。
まだ、本格稼働して1年足らずだが、「組織の知識をシステムに落とし込み属人化を解消する」という当初の目標が現実味を帯び、TPiCSを共通言語にさらなる改善を目指す社内風土も芽生えてきたようだ。
本社工場内風景