グローリーテクニカルソリューションズ(旧社名:グローリーAZシステム)のシステムの生産管理システムが順調に回り始めた。東西2つの拠点にTPiCSを導入。本社のある西宮事業所では、人の判断に頼らざるを得なかった自前の業務処理システムから、高度に自動化された生産管理システムへとレベルアップ。資材発注や生産展開、納期管理など個別受注生産の管理が円滑になった。今後、取り組みが本格化する全社の「生産改革」の中でも、TPiCSは大きな役割を果たすことになりそうだ。
旧システムは、複雑な製品構成は表現できず、親部品と子部品がズラリと並ぶ1階層であった。複雑な製品は、製品と使用ユニット品の構成、ユニットとその使用部品の構成のように途切れ、製品の生産計画から末端部品までの間は人がマニュアルで対応を行っていた。発注は人が在庫情報を紐解いて、該当在庫の要・不要を判断して登録。調達部品の納期日程も人が仕入先とやり取りして調整し、どうにか生産できるようにしていたシステムだった。
「旧システムは良い意味で人に判断をゆだねた柔軟性のあるシステムだったのです。それをそのまま自動化を前提とする新システムに再現するのは到底無理があります。しかし、当時はそんなことすら気づかなかったのです」(岩田氏)。
TPiCS研修会に参加し、そこから見直しを行ったところ、問題が山積みなのを実感した。そして、もう1つの重要な要素がわかってきた。約1年半かけて登録してきた4万点のアイテムコードは旧システムにならった体系で、そもそもこれらのコードは全社で認知されたものではなく一部だけで通用するローカルコードであった。そのため設計部門から試作用の部品の要求があっても、コードが違うので何の部品なのか分からないこともあった。「不必要なコードも整理し、約半年をかけて、何とか9000品種のマスター登録と製品構成表の登録を行うことができました」(岩田氏)。
そのころには、山盛氏は業務の運用マニュアル、山本氏は伝票など各帳票、伝票発行システム等の補完システムもでき上がりつつあった。また、購買部門との調整に使用する仕組は、TPiCSに用意されているExcel帳票を改良して「発注チェックリスト」を作り、そちらでTPiCSを補完することとした。
最後まで不安だったのは原価だった。「生産管理システムって正解がないんです。これが気持ち悪くてしょうがなかった。例えば銀行業務は、1日の入出金が終わると、伝票と現金を数えてぴったり合うまで1円たりとも逃さない。合うと、それこそ、そろばんのように『ご名算!』となるでしょ、これがないんです」なければ作る。TPiCS内にある原価をExcel上で比較する仕組みを作り、なぜ違うのかを研究するようにした。過去1か月の実績を半月かけて入力し、在庫状況を旧システムと比較すると200万円以上の違いがあった。1か月分の実績は量が多すぎ何が悪いのか全くわからないため、1日ごとに確認した。
そして2016年8月末に、旧システムでの注残や製番の引落残まで受け付け、旧システムの平行稼働なしに完全移行させた。細かいトラブルやオペミスはいろいろあったが、ティーピクス研究所の手厚いサポートもあり、新システムは稼働後、1日もシステムダウンせずに順調な稼働を続けている。稼働後は、仕入先への資材発注や生産展開、納期管理など、同社の業態である個別受注生産の管理が以前と比べて格段にスムーズになった。
後進の育成にも余念がない。2018年から生産管理部生産管理グループに加わった吉村真弘氏らにより、作業マニュアルも作成された。「Excelを使って帳票類が作成できるのは楽しい」と吉村氏は話す。
一方、同じTPiCSを活用しながらも、西宮事業所はVer4.0、東京事業所はVer3.2とバージョンが異なり、やり方も多少違う。今後、取り組みが本格化する「生産改革」では、ボーダレスに生産できる仕組みを構築する考えだ。
最後に、「TPiCSを導入した効果は?」と質問すると、意外にも「前に比べると、怒号が減ったなぁ」とあっさり。「もちろん、在庫金額が3割も減ったことも大きいけれども。もう1つ、『困難なテーマを成功に結び付けるのは先頭に立つリーダーの決してあきらめない熱いこころ(求める心)』なんです。これが、グローリーのDNAであり、今回のことを通じAZに移植できていたら嬉しいです」と、岩田氏は結んだ。