株式会社アドバンスト・メディアは、AI音声認識エンジン「AmiVoice®」を軸に、コンタクトセンター向けソリューションや議事録作成支援、医療現場向けの音声入力ソフトなど、幅広い業界に向けた音声認識サービスを展開する情報・通信業の企業です。2024年3月期から2027年3月期を「BSR(Beyond Speech Recognition)拡大期」と位置づけ、CTI事業部・VoXT事業部・医療事業部・SDX事業部の第一の成長エンジン(BSR1)と、海外事業部・BDC本部の第二の成長エンジン(BSR2)を中心に事業を拡大しています。
2026年3月期通期の連結業績は、売上高70億63百万円(前期比+6.0%)と過去最高の売上高を更新しました。一方で営業利益は14億40百万円(同-0.2%)とほぼ横ばいにとどまったものの、経常利益は15億58百万円(同+1.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億39百万円(同+23.5%)と、いずれも過去最高益を記録しています。
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【株式会社アドバンスト・メディア(証券コード:3773 )徹底解説】AI音声認識「AmiVoice」は業務効率化ニーズをどう取り込むか
2026年3月期を振り返る市場・業界の変化
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調をたどりました。ただし、米国を中心とした通商政策の動向や国際情勢の緊迫化による資源価格への影響などから、先行きは不透明な状況が続いています。
こうした環境のもと、各企業では生産性向上を目的に生成AIをはじめとするAI技術を活用するニーズが高まりました。その結果、アドバンスト・メディアのAI音声認識エンジンAPI「AmiVoice® Cloud Platform(ACP)」の利用が進み、AmiVoice®を活用した各種製品の販売やサービス利用も堅調に推移しました。
同社は今後の次世代コミュニケーションを体現する新規サービスの市場投入や、プラットフォームビジネスの拡大に向けて、人材採用や開発への投資を進めています。生成AI活用ニーズの高まりは、音声認識関連事業者にとって追い風になっていると見られます。
業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社アドバンスト・メディア 2026年3月期 通期決算短信(PDF)
四半期の業績を振り返ると、2026年3月期第1四半期累計は売上高15億09百万円、第2四半期累計は31億75百万円、第3四半期累計は50億17百万円と積み上がり、通期累計では70億63百万円に達しました。前期(2025年3月期)通期の売上高は66億65百万円だったため、通期では6.0%の増収となり、過去最高の売上高を更新しています。
利益面では、営業利益が前期の14億42百万円から14億40百万円へと-0.2%のほぼ横ばいで着地しました。BSR1(第一の成長エンジン)では売上原価の増加や人材・開発への投資影響から1.1%の減益となった一方、BSR2(第二の成長エンジン)は赤字幅が縮小し、全体では小幅な減益にとどまっています。経常利益は金利上昇による受取利息の増加や円安の影響による為替差益の増加などにより、前期の15億39百万円から15億58百万円へと1.2%増益し、過去最高益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の計上などにより前期の14億08百万円から17億39百万円へと23.5%増益し、こちらも過去最高益です。財政状態は総資産166億51百万円、純資産140億16百万円となり、自己資本比率は84.2%と高い水準を維持しています。EPSは111.18円、1株当たり配当は33.5円、翌期の配当予想は22.0円となっています。
直近決算の重要ポイント
今回の決算で注目すべき点は、売上高・経常利益・純利益がいずれも過去最高を更新した一方、営業利益は-0.2%とほぼ横ばいにとどまったことです。BSR1では売上原価の増加や人材・開発投資の影響で減益となり、増収と減益が同時に進む構図となりました。
経常利益と純利益を押し上げた要因は、金利上昇に伴う受取利息の増加や円安による為替差益、投資有価証券売却益の計上といった営業外・特別損益の寄与が大きいと見られます。本業の稼ぐ力を示す営業利益が横ばいであった点は、今後の収益性を見るうえで留意すべきポイントです。
翌期の業績予想は、売上高100億円(前期比+41.6%)、営業利益15億円(同+4.2%)、純利益11億円(同-36.7%)となっています。売上規模の大幅な拡大を見込む一方、純利益は今期の一過性の利益要因が剥落する分、減益を織り込んだ予想と考えられます。
通期実績が示す収益モデルの現在地
アドバンスト・メディアの収益モデルは、CTI事業部・VoXT事業部・医療事業部・SDX事業部からなるBSR1と、海外事業部・BDC本部からなるBSR2の2本柱で構成されています。今期はBSR1が前年同期比4.6%の増収、BSR2が19.5%の増収となり、特にBSR2の成長率の高さが全体の増収を牽引した格好です。
自己資本比率84.2%という水準は、情報・通信業のなかでも極めて健全な財務基盤といえます。ストック型収益の比率も各事業部で上昇しており、CTI事業部は前期末77.1%から今期末82.9%へ、VoXT事業部は91.2%から96.7%へと拡大しました。ライセンス数の積み上げが継続的な収益基盤の強化につながっていると見られます。
一方で、本業の収益力を示す営業利益がほぼ横ばいにとどまっている点は、収益モデルが規模拡大の途上にあることを示していると考えられます。翌期は売上高100億円という大台を見込んでおり、BSRの拡大期の集大成として、増収と増益をどう両立させるかが焦点になります。
業界の注目ポイント
ストック型収益の拡大による事業基盤の安定化
アドバンスト・メディアは各事業部でストック比率の向上を進めており、CTI事業部は82.9%、VoXT事業部は96.7%、医療事業部は43.8%、SDX事業部は76.2%まで高まりました。ライセンス数も各事業部で着実に積み上がっており、継続課金型の収益構造が定着しつつあります。
音声認識市場全体でも、単発の導入案件からサブスクリプション型の継続利用へと収益モデルがシフトする傾向が強まっています。同社のストック比率の高さは、景気変動に左右されにくい安定的な収益基盤の構築につながっていると見られます。
海外事業部・BDC本部の成長がもたらす収益構造の変化
BSR2に属する海外事業部とBDC本部は、前年同期比19.5%の増収を記録し、全体の増収を大きく牽引しました。BDC本部は建設業界向けの工程管理プラットフォームの導入が進み、建設業界の人手不足を背景とした人材サービスも伸長しています。
海外事業部は大口顧客の利用増加により大幅増収となり、赤字幅も縮小しました。国内の音声認識市場に加えて、海外展開や建設・不動産業界といった新領域への展開が、今後の成長ドライバーとして重要性を増していくと考えられます。
次世代コミュニケーションサービスへの先行投資
同社はBSR拡大期の最終年度に向けて、次世代のコミュニケーションを体現する新規サービスの市場投入や、プラットフォームビジネスの拡大に向けた人材採用・開発投資を進めています。こうした先行投資は、短期的には営業利益率を押し下げる要因となっています。
生成AIの普及に伴い、音声認識を起点としたAI活用ニーズは今後も広がっていくと見られます。先行投資の成果が翌期以降の増収・増益にどうつながるかが、業界内でも注目されるポイントになるでしょう。
ITトレンド編集部の考察
今回の決算から見えるのは、アドバンスト・メディアが売上・経常利益・純利益で過去最高を更新する一方、本業の稼ぐ力を示す営業利益はほぼ横ばいにとどまったという二面性です。BSR2(海外事業部・BDC本部)の高い成長率が全体の増収を牽引しており、事業ポートフォリオの多角化が着実に進んでいる様子がうかがえます。
経常利益・純利益の押し上げには、受取利息の増加や為替差益、投資有価証券売却益といった営業外・特別損益の寄与が大きく、本業の利益率改善は道半ばと見られます。各事業部でストック比率が着実に上昇している点は、中長期的な収益基盤の強化につながる好材料といえるでしょう。
翌期は売上高100億円という大台を見込んでいるものの、純利益は今期の一過性要因の剥落により減益を予想しています。BSR拡大期の最終年度として、先行投資と収益性のバランスをどう取っていくかが、今後の業績を占ううえで重要な観点になりそうです。
まとめ
- 2026年3月期通期の売上高は70億63百万円(前期比+6.0%)と過去最高を更新
- 営業利益は14億40百万円(同-0.2%)とほぼ横ばい、BSR1は減益、BSR2は赤字幅縮小
- 経常利益は15億58百万円(同+1.2%)、純利益は17億39百万円(同+23.5%)といずれも過去最高益
- 純利益の伸びには受取利息増加・為替差益・投資有価証券売却益などの寄与が大きい
- 自己資本比率は84.2%、EPSは111.18円、1株当たり配当33.5円、翌期配当予想は22.0円
- 翌期は売上高100億円(同+41.6%)、営業利益15億円(同+4.2%)、純利益11億円(同-36.7%)を見込む
ITトレンド編集部
IT製品の比較サイト「ITトレンド」の編集部です。ITトレンドはイノベーションが2007年より運営している法人向けIT製品の比較・資料請求サイトで、累計訪問者数2,000万人以上、3,750製品以上を掲載しています。読者がIT製品・サービスを比較検討する際に役立つ情報や、システムを活用した社内の課題解決のヒントになる情報を日々発信しています。

