生体認証の種類
生体認証にはどのような種類があるのでしょうか。よく知られているものを8種類紹介します。
1.指紋認証:模様から判断する
指紋認証は生体認証の中では比較的古くから使われています。そのため、ほかの生体認証方法よりも技術が進歩しており、導入コストが低いのが特徴です。最近ではスマホのロック解除でも指紋認証が使われるようになったため、身近な存在に感じている人も多いでしょう。
指紋は人によって大きく異なり、別人の指紋で間違って認証されることはほぼありません。ただし、本人の指紋であっても汚れの付着や指紋の摩耗により、うまく認証できないことがあります。特に指をよく使う職業に携わる人は、そのようなエラーに見舞われるリスクが高いです。
2.静脈認証:血管の分岐点や方向から判断する
静脈認証とは、血管の形や分岐点、方向などから認証する方法です。認証精度が高いことから、最近では銀行のATMでよく使われています。
指紋と違って一生変わらないうえ、体内の情報であるため第三者に取得されることもありません。また、偽装も困難です。ただし、認証に必要な機器が高額なため、導入負担が大きいのが難点と言えます。
3.虹彩認証:目の動作から判断する
一般的に瞳や黒目と言われるものは、2つの部分に分けられます。1つは瞳の中心部にある瞳孔で、どのような人でも黒色をしています。もう1つはその周辺にある虹彩で、日本人の多くが茶色である部分です。
このうち、虹彩が生体認証に用いられます。虹彩には非常に細いしわが刻まれていて、これが人によって異なるためです。また、基本的に一生変化しないと言われています。右目と左目でも異なり、それぞれの目で認証できます。偽装やなりすましは困難なうえ、認証精度が非常に高いのがメリットです。また、接触しなくてよいため衛生面でも優れています。
4.顔認証:輪郭などから判断する
顔認証は、その名のとおり顔の形から判断して認証する方法です。具体的には、目や鼻といったパーツの位置や顔の輪郭を画像認識技術によって取り出し、それらの距離や角度、色の濃淡などから判断します。
虹彩認証と同様に接触する必要がなく、センサーの前に顔を寄せるだけで良いため衛生的な方法です。ただし、化粧や加齢によって顔が変わるとうまく認識できなくなることがあります。また、顔の見た目は重要な個人情報であるため、データの管理に細心の注意を払わなければならないのも課題と言えます。
5.音声認証:周波数から判断する
人間の声は口や喉の形状によって変わります。そして、それらの形状は人によってさまざまです。つまり、人の声は千差万別であるため認証に利用できます。
具体的には、周波数の分布を元に認証を行います。発話内容がどのようなものであれ、発声さえすれば認証可能です。必要な機器は基本的にマイクくらいであるためスマホでも簡単に利用できるうえ、通話による認証も可能です。ただし、風邪などの体調不良による声の変化や、雑音が紛れ込むことで正しく認証できないこともあります。
6.耳介認証:耳の形から判断する
耳の形からも個人を特定可能です。あまり知られていませんが、犯罪捜査などではよく利用されています。顔の見た目と違い加齢や化粧による変化も少ないため、比較的高い精度で認証可能です。指紋と違って汚れや怪我でエラーが生じることもありません。また、カメラで耳の形を撮影するだけであるため、簡便なのも特徴と言えます。
7.DNA認証:遺伝子から判断する
よく言われるとおりDNAは人体の設計図です。4種類の塩基が二重らせんを構築していますが、その塩基配列の一部分は人によって異なるため認証に利用できます。DNAはあらゆる細胞に格納されており、表皮や髪の毛、爪などのわずかな体のパーツから認証を行えます。
塩基配列を突き止めさえすれば非常に高い精度で認証可能です。しかし、1人の人間が持つ塩基の数が膨大であるため、認証に時間がかかります。瞬時に認証が完了するほかの生体認証方法と比べて不便です。この問題点を解決すべく、現在もさまざまな研究が進められています。
8.行動認証:習性から判断する
ここまで紹介した生体認証は、いずれも生来の身体的特徴を利用したものでした。しかし、後天的に獲得した無意識の習性を認証に使うことも可能です。
たとえば、代表的なのが筆跡です。印鑑を使う日本ではあまりなじみがありませんが、サインを利用する国では一般的に使われている認証方法です。文字を書く癖は安易に第三者が真似できないことから、信頼性の高い認証方法とされています。そのほか、パソコンのキーボードを打ち方やマウスの動かし方など、個人の癖が無意識に現れる行動が行動認証に利用されます。
生体認証のメリット
生体認証のメリットは主に利便性と安全性に分けられます。それぞれ見ていきましょう。
- 【利便性】
- パスワードのように記憶する必要がなく、ICカードなどの物理的な情報と違って持ち運ぶ必要もありません。紛失するリスクがないので管理の負担からも解放されます。さらに、認証が瞬時に終わるのも特徴です。画面を操作してパスワードを入力するような手間は必要ありません。
- 【安全性】
- パスワードであれば、その内容を第三者に知られてしまえば不正アクセスされることがあります。ICカードのような物理的な情報であれば、それを盗まれて悪用されることがあるでしょう。一方、生体認証ではそのようなリスクが低いです。特に虹彩認証や静脈認証では、虹彩情報や静脈情報を第三者が取得・悪用するのは非常に困難と言えます。
生体認証の種類ごとに特徴を理解し、最適な方法を採用しよう
生体認証は人間の身体的・行動的特徴を利用した認証方法です。パスワードやICカードを利用した従来の認証方法より安全性や利便性が高いことで注目されています。
代表的な生体認証方法は以下のとおりです。
- ■指紋認証
- ■静脈認証
- ■虹彩認証
- ■顔認証
- ■音声認証
- ■耳介認証
- ■DNA認証
- ■行動認証
それぞれの特徴を踏まえ、最適な方法を採用しましょう。