歯科予約システムとは
歯科予約システムとは、歯科医院における診療予約の受付や管理を効率化するためのシステムです。従来の電話対応や紙ベースの予約管理に代わり、Webや専用アプリ、LINEを通じて患者が自分で予約できるようにするなど、業務の自動化・省力化を実現します。
一般的な予約システムや他の医療機関向けの予約システムと比べて、特に歯科特有の業務や患者ニーズに最適化された機能が多く備わってる点が特徴です。例えば、診療チェアの空き状況に応じた自動予約調整や、治療内容に応じた所要時間の自動設定など、歯科ならではの運用に配慮された機能が搭載されています。
歯科業界での活用が進む背景
歯科予約システムの導入が進んでいる背景には、歯科業界特有の課題や環境変化が大きく影響しています。歯科医院では、診療内容や担当医によって必要な時間や設備が異なるため、予約の調整が非常に複雑です。これを手動で管理すると、手間や時間がかかりやすく、ミスや混乱の原因にもなります。また、直前のキャンセル対応も大きな課題です。当日や前日にキャンセルが出ても、空いた時間をすぐに埋めるのが難しく、機会損失につながることもあります。
さらに、スマートフォンの普及によって、24時間いつでも予約・変更ができるオンライン予約のニーズが高まっています。特に、平日日中に電話をかけづらいビジネスパーソンにとっては、「ネット予約できるかどうか」が歯科医院を選ぶ重要なポイントになることも。こうした背景から、予約の煩雑さ・キャンセル対応の負担・患者の利便性向上といった課題を解決する手段として、歯科向け予約システムの導入が進んでいます。
導入の波は中小規模の歯科医院にとどまらず、大規模な医療機関にも広がりはじめています。例えば、国立病院機構の基幹病院である東京医療センターでは、2024年12月に歯科口腔外科で予約システムの導入が始まりました。
参考:WEB予約システムの導入について|国立病院機構東京医療センター
歯科予約システムを導入するメリット
歯科予約システムの導入は、患者の利便性向上や医院側の業務効率化・収益面に大きなメリットをもたらします。患者との接点を最適化し、予約管理をデジタル化することで、現在抱えている日常業務の課題も解決できるでしょう。ここでは、導入によって得られる代表的なメリットを4つ紹介します。
患者の予約利便性が向上し、予約件数が増える
WebやLINEを活用したオンライン予約により、24時間いつでも都合のよいタイミングで予約が可能になります。電話での予約を負担に感じる人や、多忙なビジネスパーソンにも利用されやすくなります。結果として新規患者の獲得やリピーターの定着につながり、予約件数の増加が期待できます。
無断キャンセル・予約忘れを減らせる
システムから自動でSMSやLINEからリマインド通知を送ることで、患者の予約忘れを防止できます。特に、うっかり忘れが原因の無断キャンセルを減らす効果があります。キャンセル率が下がることで、空き枠のロスが減り、収益機会を逃さずに済みます。
また、以下のような歯科医院側のミス削減にも効果的です。これにより、患者満足度低下のリスク回避にもなつながるでしょう。
- ●スタッフの予約反映ミス:受付業務のひっ迫による、電話予約の台帳への反映し忘れ
- ●患者とスタッフの意見の食い違い:数ヶ月先の予約や時間変更などの際に起こる、スタッフと患者双方の認知の違い
受付業務の効率化につながる
電話予約が減少することで、受付スタッフの業務負荷を大幅に軽減できます。空き時間には接客対応や院内業務に集中でき、サービス品質の向上や受付業務の効率化に寄与します。また、予約状況をシステム上で一覧管理できるため、紙の台帳による煩雑な管理が不要です。
既存システムとの連携ができる
電子カルテやレセプトコンピューターと連携できるシステムを導入すれば、患者情報を何度も入力する手間が省けます。手作業による転記ミスや入力漏れのリスクも軽減され、正確な情報管理が可能にです。結果として、院内全体の業務効率と信頼性が高まります。
歯科予約システム導入時の注意点
歯科予約システムは多くのメリットをもたらしますが、導入にあたっては事前に注意すべきポイントもあります。システムを効果的に活用するには、現場の理解や運用体制の整備が欠かせません。ここでは、導入前後に注意すべき代表的なポイントを3つ紹介します。
スタッフ教育が必要
システムを導入しても、スタッフ全員が使いこなせなければ効果を発揮できません。研修やマニュアルを通じて、基本操作やトラブル対応の知識を共有することが重要です。操作に慣れるまでには一定の時間がかかるため、初期段階では十分なサポート体制を整える必要があります。
既存業務との連携調整が必要
これまで紙の診療台帳や手書きの管理を使っていた場合、従来の業務フローを見直す必要があります。システムと現場の運用を無理なく組み合わせるためには、段階的な移行が有効です。スムーズな導入を進めるためにも、スタッフ間でのルール共有が欠かせません。
高齢者への対応が必要
高齢層の患者のなかには、Web予約に不慣れな人も多く見られます。すべてをオンライン化するのではなく、電話予約や窓口対応も並行して行える体制を維持することが重要です。デジタル化とアナログ対応を両立する仕組みづくりが求められます。
歯科予約システムの基本機能
歯科予約システムには、予約受付から患者管理、業務効率化までを支えるさまざまな機能が搭載されています。ここでは、システムに共通して備わっている代表的な機能を紹介します。
- ■Web予約・LINE予約機能
- 患者がパソコンやスマートフォンを使って、24時間いつでも予約できる機能。LINE連携に対応したシステムもあり、日常的に使い慣れたアプリから予約を完結できる。スタッフの電話対応の手間を減らし、予約機会の拡大も望める。
- ■自動リマインド通知
- 予約前日にメールやSMS、LINEなどで通知を送る機能。うっかり忘れを防止できるため、無断キャンセルの削減につながる。一部のシステムでは、GoogleカレンダーやOutlookと連携する機能を備えているものもあり、スケジュールの抑え忘れも防止できる。
- ■カレンダー表示・空き状況管理
- 予約枠や空き状況をカレンダー形式で一覧管理できる。診療日ごとの予約状況がひと目でわかるため、スムーズなスケジュール調整が可能。患者と受付スタッフで日程のすり合わせを何度も行う必要がないため、効率的かつストレスフリーな設計。
- ■患者情報管理
- 患者の氏名や連絡先、来院履歴、治療内容などを一元管理できる。予約情報と連動しているため、受付・診療・再来促進まで一貫した対応が可能。自院と患者の関係性向上にもつながる。
- ■キャンセル・変更受付機能
- 患者自身がオンライン上でキャンセルや変更を行える機能。医院側はリアルタイムで予約状況を把握でき、空き枠の再活用もしやすくなる。自動再公開機能がある場合、さらに機会損失の削減が見込める。
- ■ユニット・ドクター指定対応
- 診療ユニットや医師ごとに予約枠を個別管理。複数の拠点をもつ医療法人やドクターが多い医院でも、無理なく運用できる。患者側からの指名予約もできるシステムでは、リピート率向上にも効果がある。
- ■レポート・分析機能
- 予約件数やキャンセル率、来院時間の傾向などをデータとして可視化。経営改善や業務効率化に向けた意思決定に役立つ。自院の業績改善を目的としたリプレイスの場合には、特に便利な機能。
歯科予約システムを選ぶ際のチェックポイント
歯科予約システムは多機能化が進んでおり、製品ごとに特徴や強みも異なります。そのため、導入前には自院の課題や運用体制に適したシステムかどうかを見極めることが重要です。ここでは、比較検討時に確認しておきたい主なポイントを紹介します。
対応チャネルは適しているか
患者が使いやすい予約手段に対応しているかは、導入効果に直結します。Web予約やLINE連携、電話の自動応答など、複数のチャネルに対応しているシステムほど利便性が高まります。幅広い世代に対応できる設計かどうかを事前に確認しましょう。
必要な機能が揃っているか
リマインド通知やドクター指定、ユニット管理など、基本機能とオプション機能の両方をチェックすることが大切です。医院ごとの運営方針や診療スタイルによって、必要とされる機能は異なります。不要な機能にコストをかけないためにも、事前の整理が欠かせません。
電子カルテ・レセコンとの連携は可能か
電子カルテやレセプトコンピューターと連携できるかどうかは、業務効率に大きく影響します。連携機能があれば、患者情報の二重入力や転記ミスを防げます。すでに利用しているシステムとの相性も必ず確認しておきましょう。
操作性・UIは問題ないか
日常的に使うシステムだからこそ、誰でも直感的に操作できるUI設計が求められます。特に、ITに不慣れなスタッフが多い医院では、画面の見やすさやメニュー構成も重要です。デモ画面や無料トライアルを活用して、使用感を事前に把握しておくと安心です。
料金体系と費用対効果が適しているか
初期費用・月額費用・オプション費用など、料金体系は製品によって大きく異なります。無料プランの有無や、来院数や予約件数に応じた従量課金制かどうかも比較のポイントです。費用対効果を正しく判断するには、長期的な運用を見すえた試算が必要です。
サポート体制・導入実績は十分か
導入時の初期設定支援や、運用後の問い合わせ対応など、サポートの質は運用の成否を左右します。歯科医院での導入実績が豊富な製品は、業界特有の課題にも対応しやすい傾向があります。安心して使い続けるためにも、サポート体制の充実度は見逃せません。
【レセコン・電子カルテ一体型】おすすめの歯科予約システム
レセコンや電子カルテと予約システムが統合された一体型サービスは、業務の効率化と正確性の両立に強みがあります。ここでは、受付・診療・会計までを一つの画面で操作できるなど、情報共有や操作性に優れた主要製品をご紹介します。
Sunny-XROSS
- 直感的な操作・使いやすさ・オンライン請求自動化で業務効率化
- Sunnyシリーズ6,000件超の実績と専任担当による安心サポート
- 外来診療・訪問診療を支えられる多彩で便利な機能を搭載
サンシステム株式会社が提供する「Sunny-XROSS」は、歯科医院の外来・訪問診療を支援する歯科用レセプトコンピューターです。オンライン請求や資格確認などDX対応機能を搭載し、シンプルな画面設計で誰でも扱いやすく、業務効率を向上。月額制で導入しやすく、診療報酬改定にも迅速に対応するため、安心して日常業務に活用できます。
julea
- 自宅・分院・訪問先などで利用できるので、スキマ時間を有効活用
- 初期費用なし、台数制限なしのシンプルな月額契約プラン
- 豊富な機能で事務作業を軽減!レントゲンなどとも連携可能
ピクオス株式会社が提供する「julea」は、クラウド型の歯科レセコンで、自宅や分院、訪問先からも利用できます。台数無制限の月額制で、カルテ作成から経営分析、介護請求まで幅広く対応。データは自動バックアップされ、安全な環境で保管されるため安心です。さらに予約システムや会計処理とも連携でき、事務作業の効率化と利便性を実現します。
Dentis
メドレー株式会社が提供する「Dentis」は、予約受付、電子カルテ、レセプト出力、会計処理までを一体管理できるクラウド型歯科業務支援システムです。Web問診やリコール通知、オンライン診療、キャッシュレス決済など、患者とのつながりを強化する機能を標準搭載しています。他サービス併用の必要がない点が便利です。
Apotool & Box
株式会社ストランザが提供する「Apotool & Box」は、予約から診療、会計、フォローまで一貫して管理できるクラウド型の歯科業務統合プラットフォームです。カレンダーによる視覚的な予約管理に加え、予約情報から患者リストやキャンセル率などのデータが自動蓄積され、経営分析や増患施策に活用できます。さらに、レントゲン画像や診療計画書などを患者情報と連携して保管できる点も他社との差別化要素です。
PROGRAMα
メディア株式会社が提供する「PROGRAMα」は、電子カルテと一体化し、集患と患者の継続通院促進を支援する歯科向けの予約・予定管理システムです。保険資格を一括自動チェックする機能も搭載されており、月初の確認業務を大幅に省力化。複数スタッフでの受付・診療体制で、業務の正確性とスピードを重視する歯科医院に適しています。
【多機能・予約特化型】おすすめの歯科予約システム
予約受付や患者対応に特化した多機能システムは、柔軟かつ高機能な運用が可能です。ここでは、特に予約周りの機能に強みのあるサービスをご紹介します。
メッセージ一元管理システム coco
- 使い慣れたツールと同じように利用できる圧倒的なシンプルさ
- お客様のメッセージを漏れなく管理し、見落としゼロを実現
- LINEやSMSの一斉配信により、レスポンスを高確率で獲得
株式会社cocoが提供する「メッセージ一元管理システム coco」は、LINE・SMS・メールの顧客対応を集約し、業務効率と顧客満足度を高めるAI接客プラットフォームです。シンプルな操作性とAI対応、柔軟なレポート機能を備え、導入から運用まで丁寧に支援。店舗型サービス業での接客力向上と売上拡大を後押しします。
DentNet
株式会社ジェニシスが提供する「DentNet」は、クラウド型の予約管理システムで、2003年のリリース以来全国約1,000医院で採用されています。メール・SMS・音声自動案内・LINEなど多様なリマインド手段を標準装備し、豊富な設定項目により医院ごとに柔軟なカスタマイズが可能です。
EPARK歯科台帳
エンパワーヘルスケア株式会社が提供する「EPARK歯科台帳」は、EPARK歯科やLINEなど複数チャネルからの予約を一元管理できる受付向けアプリ形式の予約管理システムです。大手予約サイト「EPARK」の関連会社が運営し、実績と信頼があります。予約日・診療内容・担当医・チェアといった情報をリアルタイムに可視化し、受付端末やタブレットから直感的に操作できる点が強みです。
ApoDent
株式会社ナルコームが提供する「ApoDent」は、スタッフのシフト管理や技工物納品状況管理機能を組み込んだ業務支援型予約システムです。専用アプリ「デンタルパス」を通じてWeb予約や診察券機能も提供し、家族単位での管理も可能。機能の幅広さと価格のバランスの良さが魅力です。
ジニー&myDental
株式会社DentaLightが提供する「ジニー&myDental」は、予約管理・患者CRMと診察券アプリを組み合わせたクラウド型システムです。24時間Web予約やメンテナンス・定期検診向けのリコール通知が可能で、予防歯科を重視する医院に適しています。
デンタマッププラス
ピクオス株式会社が提供する「デンタマッププラス」は、シンプル操作とタブレット最適化を重視した予約管理システムです。同社のクラウド型レセコンシステム「Julea」との自動連動も可能。チェアサイドでの予約入力対応や、画面表示が直感的でわかりやすく、スタッフのITリテラシーに左右されず使えます。
Airリザーブ
株式会社リクルートが提供する「Airリザーブ」は、店舗・サービス業向けに設計された予約管理システムです。医療機関専用ではないものの、歯科医院でも導入実績があり、診療科目別の受付枠設定や、ネット予約・電話受付の一元管理ができます。 無料プランから導入できる点が魅力で、シンプルな操作性とコストパフォーマンスを重視する歯科医院におすすめです。
【FAQ】歯科予約システムを選ぶ際によくある質問
歯科予約システムを検討する前に、できるだけ抱えている不安を解消しましょう。ここでは、導入前によくある質問とその回答をまとめました。自院に適したシステムを選ぶ参考にしてください。
- ■Q1:予約システムだけで運用できますか?
- 基本的な予約管理は可能ですが、電子カルテやレセコンとの連携でさらに業務効率が高まります。既存システムとの連携可否を確認しましょう。すでに一体化しているシステムであれば、歯科医院の抱えるさまざまな課題を一つで解決できます。
▶【レセコン・電子カルテ一体型】おすすめの歯科予約システムを確認する
また、以下の記事では、歯科向けの電子カルテやレセコンに焦点を当てて詳しく解説しています。予約システムと連携しやすい製品も紹介しているので、あわせてご覧ください。 - ■Q2:キャンセルが多くて困っています。対策は何かありますか?
- 自動リマインド通知やキャンセル待ち管理機能を活用すれば、無断キャンセルの削減が期待できます。システムを選ぶ際に、キャンセル対策の機能が備わっているか確認しましょう。それでもキャンセルの多い患者は、電話予約・院内予約のみに制限するなど、予約システムと既存フローのハイブリットも必要です。
- ■Q3:コストを抑えたいのですが、無料のプランでも問題ないですか?
- 無料プランは基本機能のみのケースが多く、導入目的によっては機能が不足することがあります。導入前に必要な機能を洗い出して比較しましょう。使用感を試したい場合には、無料プランやトライアルからはじめるという選択肢も有効です。
▶無料プランのある予約システムを見る - ■Q4:歯科予約システムは、なぜLINE連携できたほうがよいのですか?
- 患者が日常的に利用しているLINEと連携することで、予約・リマインド通知・キャンセル操作を手軽に行えるようになるからです。結果として予約率や再来率が高まり、医院側の業務効率や集患力の向上にもつながります。
まとめ
歯科予約システムは、単なる予約受付ツールにとどまらず、医院の業務効率化や集患・収益向上にも貢献する便利な歯科医院支援ツールです。オンライン予約やリマインド通知、患者情報の一元管理といった機能を活用することで、患者の利便性を高めながら、現場の負担も軽減できます。
導入を検討する際は、対応チャネル・連携機能・操作性・料金体系・サポート体制など、自院の運用体制と照らしあわせて選定することが重要です。ぜひ、この記事で紹介した情報を参考に、長期的に活用できる歯科予約システムを見つけてください。


