申請・手続きの概要
最初に、IT導入補助金申請の全体的な流れについて、概要を把握しておきましょう。まずは、申請を行う前段階として、自社の課題やその解決策を検討する前段階のフェーズがあります。その後、ITツールやIT導入支援事業者を決定して交付をおこなう交付申請フェーズに入ります。最後に、実際に実施した事業に基づき、実績報告をして補助金を請求するフェーズとなります。
IT導入補助金は、多くの補助金制度と同様に、申請すれば補助金がもらえるというものではなく、提出した申請書に対して採択審査があり、得点上位のものに補助金が支払われます。採択される可能性の高い申請書を作成するためには、IT導入支援事業者の協力が欠かせません。申請・手続きの流れを理解し、お互いに協力しながら申請手続きを進めるようにしてください。
- 1.申請の前段階のフェーズ
- ---要件定義を行う
- ---補助事業に対する理解を深める
- 2.交付申請フェーズ
- ---導入したいITツールからIT導入支援事業者を選定する
- ---申請マイページへの招待をうける
- ---必要書類の準備
- ---申請類型の決定
- ---経営診断ツールへの入力
- ---SECURITY ACTION自己宣言の実施
- ---交付申請書の提出
- 3.補助金を請求するフェーズ
- ---補助事業の実施
- ---事業実績報告
- ---事業実施効果報告
1.申請の前段階のフェーズ
IT導入補助金を使って効果の高いITツール導入を進めるためには、前段階のフェーズも重要です。具体的に申請前にどのような手続きが必要なのかを見ていきましょう。
要件定義を行う
IT導入補助金の申請を進めるうえで重要なことは、IT導入補助金ありきの導入ではなく、自社の課題とその解決策に基づきITツール導入を進めるという姿勢です。補助金ありきでITツール導入を進めても、自社の実情に沿わず、たとえIT投資に必要な額の1/2が補助されたとしても、投資額以上の効果が得られない可能性があります。
まずは冷静に、自社の現状を把握して問題点を明確にし、その問題点を解決するのに必要な要件を洗い出しましょう。このような要件定義が、IT投資の成功を左右します。
補助事業に対する理解を深める
つぎに、IT導入補助金に対する理解を深めましょう。公募要領が公開されていますので、熟読しておくことをお勧めします。特に、自社がIT導入補助金の申請対象となるのかは十分に確認しておくようにしましょう。
IT導入補助金の加点要素についても、しっかりと理解しておくようにしてください。たとえば、「おもてなし規格認証2019」を取得することは難しくありませんが、「地域未来牽引企業」の認定を受けるのであれば、ある程度の準備や手続きが必要です。
IT導入補助金の採択を受けることは決して難しくはありませんが、加点要素の有無が合否を決定する要素になることもあります。取得できる加点要素は確実に取得し、採択審査を有利に進めるようにしましょう。
2.交付申請フェーズ
実際に、IT導入補助金の交付申請をおこなうフェーズです。このフェーズでは、IT導入支援事業者の協力を得ながら、申請書を作成することが求められます。具体的な流れをみていきましょう。
導入したいITツールからIT導入支援事業者を選定する
事前に実施した要件定義にもとづき、導入したいITツールを選定します。そして、導入したいITツールを登録しているIT導入支援事業者を選定します。場合によっては、IT導入支援事業者を先に決定してから、ITツールを決定することもあるかもしれません。この場合、選択できるITツールが限られます。
したがって、できる限りITツールを選定してからIT導入支援事業者を決定するようにしてください。なお、ITツールやIT導入支援事業者は、IT導入補助金2019ホームページより検索できます。
申請マイページへの招待をうける
IT導入支援事業者から、「申請マイページ」への招待をうけます。申請マイページとは、IT導入補助金の採択を受けるために必要な申請書を電子化したWebページと理解してください。この申請マイページに、必要事項を入力し、申請書を仕上げていきます。
必要書類の準備
必要な書類を準備してスキャンし、マイページからアップロードします。具体的に必要となる書類は以下の通りです。
- 法人の場合
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- 個人事業主の場合
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- ・運転免許証または運転経歴証明書または住民票
- ・所得税の納税証明書
- ・所得税確定申告書B
申請類型の決定
IT導入補助金の場合は、ITツールのもつ合計プロセス数と補助額を考慮に入れて、A類型とB類型のどちらで申請するのかを決定する必要があります。
A類型の場合は、業務パッケージソフトと効率化パッケージソフト、汎用パッケージソフトの中から2つ以上の組み合わせが求められ、補助金額が40万円以上150万円未満であることが条件となります。ただし、業務パッケージがもつ個別プロセスから、最低でも1つ以上を選択しなければなりません。
B類型の場合は、業務パッケージソフトと効率化パッケージソフト、汎用パッケージソフトの中から5つ以上の組み合わせが求められ、補助金額が150万円以上450万円以内であることが条件となります。ただし、業務パッケージがもつ個別プロセスから、最低でも3つ以上を選択しなければなりません。
経営診断ツールへの入力
IT導入補助金では、マイページから経営診断ツールへの財務情報の入力が求められます。従業員数や業種などの基本情報と直近期を含めた2期分の決算書類にもとづき、必要事項を入力してください。
入力自体は決して難しくなりませんが、未上場企業であることが多い中小企業の場合、決算書を従業員に公開していない場合もあるかもしれません。情報をオープンにするか、経営者自身が入力する必要があるでしょう。
SECURITY ACTION自己宣言の実施
SECURITY ACTION自己宣言とは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言するものです。第三者機関が認定するようなものではなく、目標を決めてIPAのWebサイト上で宣言をするだけです。IT導入補助金を申請するためには必ず必要になりますので、確実におこなってください。
交付申請書の提出
IT導入支援事業者にて、申請するITツールに関する情報や、導入後5年間の売上や労働時間といった計画数値を入力します。最終的に、補助金の交付申請をする事業者とIT導入支援事業者のそれぞれの入力内容をお互いが最終確認し、事務局に提出します。
申請の方法についての詳細は以下の記事で解説しています。
3.補助金を請求するフェーズ
交付申請後、採択結果が通知され、交付決定となった事業者は、最終的な補助金を請求するフェーズへと入ります。
補助事業の実施
実際に、補助金の申請をした事業を開始します。IT導入支援事業者からITツールを購入し、補助事業を進めてください。この時注意が必要なのが、補助金の請求前に、IT導入支援事業者に対し補助事業に必要な全額を支払う必要がある点です。資金繰りが厳しい場合は、金融機関に相談のうえ、補助金が支払われるまでのつなぎ融資を取り付けるようにしてください。
事業実績報告
補助事業を実施したことを示す事業実績報告をおこないます。このときに、IT導入支援事業者に対し、支払ったことを示す振込明細などが必要になります。事業実績報告後、補助金が支払われることになります。
事業実施効果報告
補助金が支払われたら、補助事業は終わりというわけではありません。補助事業を実施したことによる効果を国に報告する必要があります。具体的には、事業を実施後、A類型であれば3年間(年1回)、B類型であれば5年間(年1回)、生産性向上にかかる実績を報告する必要があります。
IT導入支援事業者とは、ITツール導入後もサポートやアフターフォローで、継続した関係性を構築しているはずです。事業実施効果報告もIT導入支援事業者と協力しながらおこなうようにしてください
手順を踏んで準備すれば申請は難しくない
IT導入補助金の申請について、流れを解説しました。一見手続きが多く見えますが、一つ一つの作業はすぐに終わるものも少なくありません。大事なことは、どんなITツールをどんな目的で導入したいのかという目的の整理です。まずはいろいろな製品を見て、自社の課題を整理してみることもおすすめです。