IT導入補助金の特徴と問題点
IT導入補助金は、中小企業や小規模企業が、自社の生産性や売上を向上するためにおこなうITツールの導入を支援することを目的とした補助金です。比較的小規模のITツール導入を支援するA類型と、比較的規模の大きいシステム導入を対象としたB類型に分かれています。
IT導入補助金は、大企業と比較すると劣る生産性を向上させるために、中小企業のIT活用を後押ししたいという国の意図が反映された補助金であるといえます。その思惑どおり、中小企業の生産性向上のために、IT導入補助金は一定の役割を果たしてきたといえます。
しかし、IT導入補助金には、ほかの補助金と比較した場合、いつくかの問題点があり、IT導入補助金だけでは、中小企業のIT導入を十分に支援できない側面も見えてきました。
補助率が低い
IT導入補助金の補助率は、A類型でもB類型でも1/2となっています。つまり、中小企業がIT導入補助金を使ってITツールの導入を行う場合は、IT投資額が半額になるというわけです。これだけでも十分な資金面での支援になるでしょう。しかし、中小企業向けのその他の補助金の多くは、より補助率が高くなっています。
IT導入補助金の補助率が1/2にとどまる理由は、限られた予算額の中、より多くの中小企業に補助を受けさせたいという国の意思があるといわれています。このため、IT導入補助金は、ほかの補助金と比較して採択を受けやすいのです。
一方で、ほかの多くの補助金は、補助率が高い一方で、採択率が低く抑えられることがほとんどです。どちらも一長一短がありますが、補助率を1/2より高めたい場合は、IT導入補助金以外の補助金が視野に入ってくるでしょう。
IT導入支援事業者が登録しているITツールのみが対象
IT導入補助金の大きな特徴の一つに、IT導入支援事業者との協力関係が求められることにあります。いくら導入したいITツールがあっても、そのITツールがIT導入支援事業者によって登録されていないと補助金を使うことはできません。導入したいITツールを登録しているIT導入支援事業者と、二人三脚でIT導入補助金の申請をおこなう必要があるのです。
このため、IT導入支援事業者が登録していないITツールや、パッケージ化されていない独自に開発するシステムの場合は、IT導入補助金を使うことはできません。どうしても補助金を使うのであれば、IT導入補助金以外の補助金を使う必要があります。
十分な補助額が得られない可能性がある
IT導入補助金の補助額は、A類型で40万円以上150万円未満、B類型で150万円以上450万円未満となっています。最大で900万円のITツール導入に対し、450万円が補助されることになります。
決して少ない額ではありませんが、ときに巨額の投資が求められるITツールの導入にとっては、450万円では十分であるとは言えない場合もあるでしょう。実質的に、IT導入補助金は、1,000万円程度以下のIT投資の際に有効な補助金となっているのです。
このため、1,000万円を超えるIT投資が必要な場合は、IT導入補助金では十分な資金面の支援になるとはいえません。このよう場合は、補助上限額がより充実している補助金を使うことを検討してください。
ホームページの作成には使えない
中小企業のなかでも、規模の小さい小規模事業者はおよそ85%を占めます。こうした規模の小さい小規模事業者のほとんどは、ホームページを持っていません。生産性向上目的のITツールを導入する前に、売上拡大に直結するホームページの作成が優先されるでしょう。
しかし、IT導入補助金は、単なるホームページの作成には使えなくなりました。2018年度のIT導入補助金では、ホームページ作成でも補助金を使うことができたのですが、2019年度からは生産性向上を目的としたITツールが補助対象となっているのです。このため、ホームページの作成を安価に実現したい小規模事業者は、IT導入補助金以外の補助金を検討する必要があります。
参照:
中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果を公表します|経済産業省
IT投資に使える補助金はこれ!3つの補助金
IT投資に使える補助金を、IT導入補助金だけと捉えていては、視野が狭まりせっかくの補助が受けられるチャンスを逃してしまう可能性が高まります。
IT導入補助金以外の補助金の動向を確認することで、補助金という資金面からの支援を得ながら、生産性を向上させ企業の競争力を強化することにつながります。ここでは、IT投資に使える、IT導入補助金以外の補助金について紹介します。
- ■ものづくり補助金
- ■小規模事業者持続化補助金
- ■軽減税率対策補助金
■ものづくり補助金
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」ですが、「ものづくり補助金」という略称で広く知られている補助金です。ものづくり補助金の最大の魅力は、その補助額にあります。最大で1,000万円まで補助されるのです。
補助率は原則1/2ですが、先端設備導入計画や経営革新計画の認定を受けていれば、2/3になります。こうした計画を取得することは難しくないため、ほとんどの企業が補助率2/3を条件に申請していることがほとんどです。
ものづくり補助金の場合は、ITツールの導入による生産性向上や、ITツールを使っておこなう事業の革新性の高さを、申請書の中で訴求することが重要となります。専門家に相談し、自社でおこなうITツールの導入が、ものづくり補助金の対象となるのかどうか、確認することから始めるとよいでしょう。
参照:
平成30年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の公募を開始します|中小企業庁
■小規模事業者持続化補助金
中小企業の中でも、従業員数5名以下(一部業種は20名以下)の小規模事業者を対象とした補助金です。補助額は50万円までですが、補助率は2/3と高く、非常に使いやすい補助金として知られています。
小規模事業者持続化補助金の利用用途は、チラシや看板といったプロモーション活動が多く、ホームページの作成や改修に対しても補助を受けることができます。小規模事業者であれば、ぜひとも検討したい補助金といえるでしょう。小規模事業者持続化補助金は、地域の商工会や商工会議所と連携することが求められます。興味がある場合は、お近くの商工会・商工会議所に相談してみてください。
参照:
小規模事業者持続化補助金|日本商工会議所
■軽減税率対策補助金
2019年10月から導入が予定されている消費税軽減税率制度の実施に伴い、レジや販売管理システムの導入や改修が求められる中小企業を、資金面で支援する補助金です。IT導入補助金と同様にA類型、B類型、C類型に分かれており、それぞれの類型がさらに導入する品目に応じてさらに複数に分類されます。類型ごとに補助上限額や補助率は異なりますが、通常の補助金より、手厚い補助を受けられます。
消費税軽減税率対象の品物を扱う事業者の場合、制度開始後は、品目ごとに税率を変える必要に迫られます。レジ周りの業務が煩雑化するため、POSレジなどを導入していない小売事業者は、ぜひとも検討したい補助金であるといえるでしょう。
参照:
小規模事業者持続化補助金|軽減税率対策補助金事務局
IT導入補助金以外の補助金も活用を検討してIT投資を進めよう
IT導入補助金に代わる補助金として、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「軽減税率対策補助金」の3つを紹介しました。申請はちょっとしたコツがあります。まずはベンダーや、サポートしてくれる企業に相談してみてはいかがでしょうか。