特権ID管理ソリューションの導入効果
実際のシステム構築に際して、最も時間がかかったのが要件定義の過程でした。
「たとえば特権IDの発行について、当社では“既存の特権IDを貸し出す運用”ではなく“特権IDを新規に発行する運用”であった点や、紙の申請書で行っていたものをシステムでどう実現するか、監査対応作業はどう行うのか、一つ一つ明確にしていきました。ヒアリングだけで2カ月以上かかりましたが、念入りに要件定義を行ってもらったおかげで、業務の実態に即したシステムが構築できたと思います」(田邉氏)
今回、対象となったシステムは全部で10システム。
OSが70台、DBが15台。特権ID管理を行うID管理システムと、シングルサインオンのアクセス制御を行う認証サーバーを、1台の特権ID管理サーバーで構築し、上記の85台の業務サーバーと連携させました。
アイデンティティ管理ソリューションを活用することで、特権ID管理はもちろん、パスワード管理を一元化し、パスワードを隠蔽したアクセス制御が可能になりました。
システムの導入効果について田邉氏はこう語っています。「特権ID管理システムを導入したことで、バラバラに管理されていたID情報を一元的に管理できるようになりました。また、従来Excelで管理していたID管理台帳をシステム化したことで、台帳の信頼性向上とIDの過不足が明確になり、定期的に棚卸し結果を出力できるようになりました。サーバーアクセス履歴やID管理操作履歴を特権ID管理サーバーで管理できるようになったことも大きな効果です」
シングルサインオンの仕組みを導入したことは利用者にとって大きなメリットとなりました。
従来利用者は、自分が持つID・パスワードを自分なりの方法で管理していましたが、新システムでは、利用者は利用したいサーバーを“ランチャー”から選ぶだけで自動的にログオンができます。視覚的に自分の管理するIDがわかるようになり、使いやすくなったと評判だ。また、システムが定期的にパスワード変更を行うことで、利用者に特権IDのパスワードを隠蔽した運用を実現しました。これにより、ID管理の利便性向上だけでなく、セキュリティ強化も同時に実現できたのです。