バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、文字どおり「仮想オフィス」のことで、事業者に住所を貸し出すサービスです。
働き方が多様化した現代では、社員は自宅・カフェ・取引先など、自社オフィス以外のさまざまな場所で仕事をするようになりました。
自社オフィスがどこにあっても事業はできますが、会社設立時の登記上の住所は、どこでもよいというわけにはいきません。
顧客がサービスや商品を購入する際に最初に行うのは、ネットで検索しスペックや価格の確認です。その後、会社概要で住所や資本金などを調べ、信頼できるかどうかを判断しようとします。
有名企業が集まる住所や、多くのハイテク企業が入っているビルは、よいイメージにつながります。バーチャルオフィスの住所で法人登記ができるため、スタートアップ企業や個人事業主に人気のサービスです。
ちなみに、名称が似たサービスにレンタルオフィスとシェアオフィスがあります。
レンタルオフィスとシェアオフィスは物理的なオフィスを貸し出すサービスであり、バーチャルオフィスとは異なります。
銀行の法人口座の開設や社会保険にも加入できる
バーチャルオフィスで銀行の法人口座は開設できますが、開設が難しい場合があります。過去に犯罪を起こした法人が使っていたバーチャルオフィスなどは、開設のハードルがかなり高くなります。バーチャルオフィスを契約する前に、悪い情報がないかをよく確認してください。
各銀行が法人口座開設の審査条件を定めています。銀行口座開設の申し込みをするときは、1つの銀行だけで審査が通らないと時間をロスするため、バーチャルオフィスで開設できる複数の銀行を選んで申請しましょう。
また、社会保険にもバーチャルオフィスで加入できます。健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の対象となるためには、年金事務所に新規適用届を提出してください。
バーチャルオフィスの主なサービス内容
バーチャルオフィスが提供するサービス内容は、運営会社によって大きく異なります。ここでは、住所貸し出し以外の代表的なサービスを5つ紹介します。
郵便物の受け取り・転送
ほとんどのバーチャルオフィスが、本人限定郵便物や食品以外の郵便物を受け取り、転送してくれます。バーチャルオフィスによって転送サービスの内容が異なるため、事前に以下の内容を確認しておきましょう。
- ・転送の頻度はどのくらいか
- ・有料あるいは無料か
- ・バーチャルオフィスで直接受けとりできるか
電話番号やFAX番号の利用
会社の住所とともに、電話番号やFAX番号は事業を行ううえでは大切です。多くのバーチャルオフィスは、固定電話やFAXを設置して転送するサービスを提供しています。電話転送サービスのみではなく、秘書が代行して受電するサービスもあります。
サービス内容が運営会社によって異なるため、事前に以下の内容を確認しましょう。
- ・電話の転送は自動あるいはオペレーターか
- ・電話番号は持ち込みできるか
- ・退会時は電話番号を持ち出せるか
- ・料金はいくらか
会議室の利用
多くのバーチャルオフィスが会議室を備えています。バーチャルオフィスの住所で取引先と対面の打ち合わせが必要なとき、会議室が利用できれば便利です。会議室については以下の内容を確認しておけば安心して使用できるでしょう。
- ・何人用の会議室がいくつあるか
- ・会議室の予約方法は
- ・予約の混雑状況は
- ・プロジェクター・ホワイトボード・Wi-Fiなどの設備があるか
- ・会議室の場所はわかりやすいか
法人登記の代行
法人登記の代行サービスを行うバーチャルオフィスがあります。ほとんどの利用者が、法人登記が目的でバーチャルオフィスを借ります。バーチャルオフィスの契約と同時に法人登記を進められるので、手間が省け便利です。
法人登記するとバーチャルオフィス利用を長期間継続するケースが多く、安価で代行サービスを提供している運営会社もあります。
経理業務のサポート
経理業務のサポートをサービスとして提供しているバーチャルオフィスもあります。多くのバーチャルオフィスには提携している税理士がおり、顧問契約すれば煩わしい経理業務から解放され、ビジネスに専念できます。利用者が増えることを期待しているため、顧問料は比較的安価です。
バーチャルオフィスを利用するメリット
バーチャルオフィスを利用すると、コストに加え多くのメリットがあります。4つの主なメリットを詳しく紹介します。
初期費用がほとんどかからず月額費用も抑えられる
バーチャルオフィスの最大のメリットは、コストが抑えられることです。敷金・礼金・保証金・内装工事などの初期費用がかかりません。賃貸料・光熱費などの月額費用も、物理的なオフィスを借りるより大幅に減らせます。
初期費用と月額費用が削減できることは、起業準備費用を抑えたいスタートアップの経営者に大きなメリットがあります。
都心に住所を構えることで会社のブランディングができる
バーチャルオフィスを活用すると、スタートアップの経営者や個人事業主では借りるのが難しい都心の住所を本社の住所として使用可能です。人気があり知名度のある場所に本社があれば、金融機関から信用が得られやすくなります。
顧客や取引先から信頼が得られて商品やサービスを販売しやすく、会社のブランディングにもつながります。
申請書類が少なく短期間でオフィスを借りられる
賃貸オフィスやレンタルオフィスの場合、内見や審査に加え申込書類が多く、契約するまで1~2か月程度必要です。バーチャルオフィスの場合、法人契約なら会社登記簿謄本と代表者の本人確認書類があれば契約できるため、短期間でオフィスが借りられます。
ネットで手続きして即日審査が終了するバーチャルオフィスもあり、利用開始まで時間がかかりません。
自宅住所を公開しないのでプライバシーを保護できる
バーチャルオフィスを利用すれば、自宅住所を公開しなくて済みます。自宅を会社の住所にすれば、最もコストが抑えられます。しかし、事業にはさまざまのリスクがあるため、多くの方は自宅住所を公開したくありません。
特に女性や小さな子供をもつ家庭は、プライバシー保護の観点から、自宅住所は非公開が望ましいでしょう。
バーチャルオフィスを利用するデメリット
バーチャルオフィスを利用するデメリットを3つ紹介します。これらのデメリットがあることをよく把握し、バーチャルオフィスの検討を進めてください。
郵便物を受けとるまでに時間がかかる
バーチャルオフィスの住所に届いた郵便物は、自宅などの指定した場所へ転送されるため、受けとるまでに時間がかかります。取引先からの請求書や税務署からの通知など、遅れが許されない郵便物もあります。
あらかじめ、転送のタイミングと到着までの日数を把握しておきましょう。緊急の場合にはバーチャルオフィスに郵便物を取りに行けるかも確認してください。
他社と住所が重複し会社への不信感につながることがある
複数の会社が同じバーチャルオフィスを利用するため、他社と住所が重複することがあります。ネットで住所検索すると、複数の会社が表示される可能性があり、顧客や取引先の不信感につながります。
バーチャルオフィスの場合、この問題は避けて通れません。住所の重複を避けたければ賃貸オフィスを借りるしかありません。バーチャルオフィスのメリットに比べ、どちらを重視するかよく検討しましょう。
バーチャルオフィスの住所では許認可が取れない業種もある
許認可が必要な業種の中には、バーチャルオフィスでは許可が下りない場合があります。個別専用スペースが必要とされる以下の業種では、バーチャルオフィスでの開業が困難です。
- ・弁護士
- ・税理士
- ・司法書士
- ・有料職業紹介業
- ・宅地建物取引業
ただし、許認可の要件が緩和されることもあるため、都度要件確認を行うようにしてください。
バーチャルオフィスを借りる前に確認すべきこと
バーチャルオフィスはネットで簡単に契約できるケースもあり、確認を怠りがちです。借りる前に確認すべき大切なポイントを、3つ紹介します。
オフィスの住所にマイナスイメージがないか
バーチャルオフィスの住所にマイナスイメージがあると、銀行の法人口座開設などに影響します。過去に同じ住所の会社が犯罪にかかわっていると、社名を変えただけと疑われ、口座開設の審査がとおりません。
ネットで検討しているバーチャルオフィスの住所を検索し、犯罪らしき情報があった場合にはほかのバーチャルオフィスを検討してください。
駅からのアクセスはよいか
バーチャルオフィスは毎日通うオフィスと違い、駅からのアクセスが軽視されがちです。しかし、顧客が住所を調べ、立地とともに交通の便がよいと、信用を得られやすくブランディング効果があります。
いずれ取引先とバーチャルオフィスの会議室で打ち合わせを行うかもしれません。利便性を考え、最寄駅から近くアクセスがよいバーチャルオフィスがおすすめです。
ビルの外観や内観が管理されているか
ネットで手続きができるバーチャルオフィスがあり、ビルの外観や内観を一切見ずに契約する例があります。しかし、ビルの管理が不十分で外装や内装がみすぼらしいと、金融機関の審査員が見た際に信頼を失う可能性があります。
また、取引先とバーチャルオフィスの会議室で打ち合わせをするときに、清潔感のないビルでは会社のイメージがよくありません。契約前に運営会社のビルとオフィスを必ず見に行きましょう。
バーチャルオフィスでコストを抑えてビジネスの拡大に注力!
バーチャルオフィスは、住所を貸し出すサービスです。働き方が多様化したことで、オフィスはどこにでも構えられるようになりました。しかし、会社の住所は信用力に影響するため、どこでもよいというわけにはいきません。
バーチャルオフィスの最大のメリットは、コストが抑えられることです。加えて、都心のバーチャルオフィスであれば、信用を得られやすくブランディング効果があります。バーチャルオフィスのメリットを最大限活用し、コストを抑えてビジネスの拡大に注力してください。