本記事は、自社で倉庫や出荷場を運営し、受注管理システムだけを使っている、またはまだシステムを入れずに出荷しているEC事業者を想定しています。
セールのたびに休日出勤、年末年始も出荷対応という運用になっていませんか?
大型セールや年末年始の前になると、普段は2〜3人で回している出荷を、社員総出や臨時スタッフで乗り切る。セール明けの土日は出社して出荷残を片づけ、年末は最終出荷日まで休めない。自社出荷のEC事業者では、こうした運用がよく見られます。
売上が伸びている証拠でもありますが、そのたびに休日出勤の手当、臨時スタッフの採用と教育、出荷ミスの対応が積み重なります。担当者が繁忙期に休めない状態が続くことは、採用や定着の面でも負担になります。
人を増やしても、出荷は思ったほど速くならない
出荷作業のうち、人を増やせばそのまま速くなるのは主に梱包です。一方で、ピッキングや検品には「探す」「確認する」「やり直す」時間が多く含まれています。商品の場所がベテランの頭の中にしかなく、似た商品を目で見分けている現場では、人を増やすほど質問と確認が増え、いちばん手を動かしてほしいベテランの作業が止まってしまいます。
受注管理システムを使っていれば、受注の取り込みや送り状の発行はある程度自動化できます。ただ、倉庫の中の「どこにあるか」「正しい商品か」「いま何個あるか」は、受注管理システムだけでは管理できず、人の記憶と目視に頼ったままになりがちです。この部分を担うのがWMS(倉庫管理システム)です。
WMSがあると、繁忙期の作業はこう変わる
具体的な作業の場面で、WMSがない場合とある場合を比べてみます。
1. ピッキング:「あの商品どこでしたっけ?」がなくなる
WMSがないと、臨時スタッフは商品を探して棚の間を歩き回り、見つからなければベテランに聞きに行きます。WMSでは商品ごとの保管場所(棚番)をシステムが把握しているため、ピッキングリストに棚番が表示されます。棚番の順に回れば、初めての人でも商品にたどり着けます。複数の注文分をまとめて集めてから仕分ける方法も取りやすくなり、歩く距離そのものを減らせます。
2. 検品:何人もで何回も確認する必要がなくなる
色違い・サイズ違い・容量違いの商品を目視で確認していると、取り違えを防ぐために「詰めた人とは別の人がもう一度見る」ダブルチェックが欠かせません。繁忙期はこの確認待ちが列になります。WMSでは商品のバーコードを読み取って注文内容と照合するため、違う商品を読めばその場で気づけます。人の目による二重・三重の確認を、スキャン1回に置き換えられます。
3. 在庫の確認:棚まで見に行かなくてよくなる
「この商品、まだ在庫ありますか?」という問い合わせのたびに棚まで数えに行ったり、ECサイトの在庫数と実際の在庫が合わず、売れたのに商品がない状態が起きたりします。WMSでは入荷・出荷のたびに在庫が更新されるため、画面で在庫数を確認でき、ECサイト側の在庫にも反映できます。
4. 棚卸し:出荷を止めて全品を数える負担が減る
棚卸し自体がなくなるわけではありません。ただ、WMSがないと、帳簿の在庫が信用できないために、出荷を止めて全品を数え直す棚卸しが必要になりがちです。WMSではバーコードで数えた結果をシステムの在庫と突き合わせ、差異の出た商品・棚だけを確認すれば済みます。繁忙期の前に、全品の棚卸しのために出荷を止める必要も減らせます。
5. 臨時スタッフの教育:ベテランの横で覚えなくてよくなる
商品の場所と見分け方を覚えるまで戦力にならない現場では、繁忙期の直前に教育の負担が集中します。WMSでは「リストの棚番に行く」「バーコードを読む」という手順を覚えれば作業に入れるため、教える内容が少なくなり、ベテランは教育よりも自分の作業に時間を使えます。
WMSを入れても変わらないこと
梱包そのものの手間、作業スペースの広さ、資材の準備は、WMSを入れても変わりません。「出荷に時間がかかる原因のすべてがWMSの有無にある」わけではなく、時間のかかる工程のうち、人が探して確認している部分をWMSが肩代わりすると考えるのが実態に近い整理です。
LOGILESSが重視していること
LOGILESSは、EC事業者向けの受注管理(OMS)と倉庫管理(WMS)が一体になったクラウドシステムです。受注から出荷までの自動化を前提に設計しており、自動出荷率は90%以上を掲げています。倉庫内では、バーコードによる検品やフリーロケーションでの保管場所の管理に対応し、在庫情報は短い間隔でECサイト側と自動で同期します。
人を増やす前に、人がやらなくてよい作業を減らす。繁忙期に出荷件数が増えても、現場が「棚番を見て集める」「バーコードで確かめる」作業に集中できる状態をつくることが、繁忙期を乗り切るうえでの基本的な考え方です。
導入のタイミングと運用の論点
- 繁忙期の直前に導入しない:ロケーションの設定、商品へのバーコード貼付、現場の手順変更には準備期間が必要です。閑散期に導入し、繁忙期の前に運用に慣れておくのが現実的です
- 今年の繁忙期を記録しておく:どの作業で時間がかかったか、休日出勤や臨時スタッフに何時間かかったか、誤出荷が何件あったかを残しておくと、来年に向けた検討材料になります
- 権限と手順の整理:臨時スタッフに見せる画面や操作できる範囲を決めておくと、教育の負担と操作ミスを抑えられます
判断材料としてのROIの考え方
繁忙期の対応にかかっているコストは、普段は見えにくいものです。次のような項目を一度洗い出してみると、WMSの検討材料になります。
- 休日出勤・残業の手当
- 臨時スタッフの採用・教育にかかる費用と時間
- 誤出荷による再送・返金・問い合わせ対応のコスト
- 棚卸しのために出荷を止める日数
加えて、担当者がセールのたびに休日出勤し、年末年始も休めない状態は、数字に表れにくい負担として積み重なります。出荷件数が伸びても働き方が変わらない体制をつくることも、システム投資を判断する大切な軸の一つです。

.png)