アプリケーションデリバリコントローラとは何か
アプリケーションデリバリコントローラは、Webサーバーやアプリケーションサーバーへのアクセスを制御する装置やソフトウェアです。負荷分散やセキュリティ機能もあわせ持ちます。まずは基本的な役割から確認していきます。
負荷分散機能の仕組み
アプリケーションデリバリコントローラは、複数のサーバーに通信を振り分けることで、特定のサーバーへの負荷集中を防ぎます。振り分けの方式にはラウンドロビン方式やサーバーの応答時間を基準にする方式などがあります。
この仕組みにより、アクセスが増加した場合でもサービスの応答速度を維持しやすくなります。単体のサーバー構成と比べて、障害発生時の影響を一部のサーバーに限定できる点も特徴です。
セキュリティ機能の役割
負荷分散に加えて、SSL通信の処理やアクセス制御など、セキュリティに関わる機能を担うことも役割の一つです。通信の暗号化処理をアプリケーションデリバリコントローラ側で行う構成も見られます。
これにより背後のサーバー側の処理負荷を軽減できる場合があります。ただし製品によって搭載されている機能の範囲は異なるため、必要な機能を事前に整理しておくことが重要です。
無料で使えるアプリケーションデリバリコントローラの種類
無料で利用できる選択肢は、大きく分けてオープンソース型、商用製品の無料プラン、クラウド型サービスの試用枠の三つに分類できます。それぞれ提供される機能や制約の範囲が異なるため、順番に確認していきます。
オープンソース型の特徴
オープンソース型は、ソースコードが公開されたソフトウェアを自社のサーバーに導入して利用する形態です。ライセンス費用がかからず、機能をカスタマイズできる自由度があります。
一方で、構築や運用に必要な知識を自社で確保する必要があります。設定や障害対応を担当できる技術者がいない場合、導入後の運用に時間がかかる可能性があります。
商用製品の無料プランの特徴
商用製品の中には、機能や台数を制限した無料プランを用意しているものがあります。有償版と同じ操作画面で試せるため、導入前の動作確認に活用しやすい形態です。
無料プランは処理できるトラフィック量やセッション数に上限が設けられている場合が多く、本番環境での常時利用を想定していないケースがあります。利用規約の確認が欠かせません。
クラウドサービスの試用枠
クラウド事業者が提供するロードバランサーサービスには、一定期間や一定量まで無料で利用できる試用枠が用意されている場合があります。契約や解約の手続きが比較的簡単な点が特徴です。
試用枠には利用期間や処理量の上限が設定されており、上限を超えると課金が発生する仕組みになっています。想定外の課金を避けるため、利用状況を定期的に確認することが求められます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| オープンソース型 | ライセンス費用がかからず自由にカスタマイズできるが、構築や運用を自社で担う必要がある |
| 商用製品の無料プラン | 有償版と同じ操作画面で試せるが、トラフィック量やセッション数に上限が設けられている場合が多い |
| クラウドサービスの試用枠 | 契約や解約の手続きが簡単だが、利用期間や処理量の上限を超えると課金が発生する |
無料版の導入前に確認すべきポイント
無料版を選ぶ際は、価格だけでなく、自社の利用環境や運用体制に合っているかを確認する必要があります。特に、処理能力やサポート体制、利用できる機能、商用利用の条件は事前に確認しておきたいポイントです。
- ■確認しておきたい主な項目
- ・対応トラフィック量
- ・サポート体制
- ・利用できる機能の範囲
- ・商用利用の可否
対応トラフィック量は十分か
無料版には、処理できる通信量や同時接続数に上限が設定されている場合があります。想定しているアクセス数に対して十分な処理能力があるかを事前に確認することが重要です。
アクセス数が上限に近づくと、応答速度の低下や接続エラーが発生する可能性があります。将来的なアクセス増加も踏まえて、余裕を持った容量で検討しましょう。
必要なサポートを受けられるか
無料版は、有償版と比べてサポート窓口が用意されていない、または対応範囲が限定されている場合があります。トラブル発生時に自社で対応できる体制があるかを確認しておく必要があります。
オープンソース型では、コミュニティのフォーラムや公開ドキュメントが主な情報源となり、問い合わせ窓口がない場合もあります。運用担当者のスキルも踏まえて選定しましょう。
必要な機能を利用できるか
無料版では、負荷分散などの基本機能は利用できても、アクセス制御やトラフィック分析、セキュリティ関連の機能などが制限される場合があります。自社で必要な機能が無料版に含まれているかを確認しましょう。
将来的に必要となる機能も整理しておくと、有料版への移行を含めた製品選定がしやすくなります。
商用利用が認められているか
無料版やオープンソース型では、利用条件によって商用利用の可否や利用範囲が定められている場合があります。検証環境では利用できても、本番環境での利用には制限が設けられているケースもあるため注意が必要です。
導入前にライセンスや利用規約を確認し、自社の利用目的や運用方法が条件に抵触しないかを確認しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でアプリケーションデリバリコントローラの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
無料版の機能制限と注意点
無料版は費用をかけずに試せる一方、有償版と比べて利用できる機能やサポートの範囲に制限があります。導入前に制限内容を把握しておくことで、想定外のトラブルを避けやすくなります。特にセキュリティ関連の機能は制限の対象になりやすい傾向があります。
使えない高度な機能
無料版では、Webアプリケーションファイアウォール(不正な通信を検知して防ぐ機能)や詳細なトラフィック分析機能など、高度な機能が利用できない場合があります。または一部制限された形で提供されることもあります。
必要な機能が無料版に含まれているかどうかは製品ごとに異なります。自社が求める機能一覧を整理したうえで、対応可否を個別に確認する作業が欠かせません。
発生する可能性があるトラブルの傾向
無料版は設定項目が限定されていたり、検証環境が十分でなかったりすることがあり、想定外の設定変更によって通信エラーが発生する場合があります。
原因は製品側の制限だけでなく、設定作業を行う利用者側の操作や、連携する外部サービス側の仕様変更など複数の要因が考えられます。定期的な動作確認が有効です。
有料版への移行を検討すべきタイミング
無料版で運用を続けるうちに、機能や容量の不足を感じる場面が出てくることがあります。ここでは有料版への移行を検討する目安となる場面を紹介します。事業の成長段階に応じて見直すことが望ましいといえます。
アクセス増加時の判断基準
サービスの利用者数が増え、無料版の処理上限に近づいてきた場合は、有料版への移行を検討する一つの判断材料になります。応答速度の低下が続く状況は見直しのきっかけといえます。
アクセス数の推移を継続的に記録しておくと、上限に近づくタイミングを事前に把握しやすくなります。移行作業には一定の準備期間が必要になる場合もあるため、早めの検討が役立ちます。
障害対応体制を見直す時期
サービスの利用範囲が広がり、障害発生時の影響が大きくなってきた段階では、サポート体制が整った有料版への切り替えを検討する時期といえます。
有料版では、専任のサポート窓口や保守契約が用意されている製品が多く、障害発生時の対応時間を短縮できる場合があります。事業規模に応じた体制づくりが重要です。
アプリケーションデリバリコントローラの製品例
アプリケーションデリバリコントローラの導入を検討する際の参考として、代表的な製品を紹介します。機能や対応範囲は製品ごとに異なるため、資料などで詳細を確認することをおすすめします。
Alteon (日本ラドウェア株式会社)
- アプリの負荷分散と可用性向上を実現するADC機能
- 仮想化環境でADCを迅速に展開可能
- 多様な導入形態に対応し柔軟に運用できる設計
ArrayAPVシリーズ (アレイ・ネットワークス株式会社)
- SSLオフロードと負荷分散を1台で実現し、サーバ負荷を低減。
- 10/40 GbEインターフェースを搭載し、大規模システムに対応。
- API制御と仮想アプライアンスで多環境に展開可。
LoadMaster (株式会社OPENスクエア)
- HTTPコンテンツのキャッシングをサ ポート
- HTTP通信時のデータ圧縮
- ロードマスターの侵入防止(IPS)によるDos攻撃サポート
無料のアプリケーションデリバリコントローラに関するFAQ
アプリケーションデリバリコントローラの無料利用について、導入検討の段階でよく寄せられる質問をまとめました。あわせて参考にしてください。
- Q1:無料版だけで本番環境を運用できますか。
- 製品や利用規約によって異なります。処理能力やサポート範囲に制限がある場合が多く、本番環境での継続利用が想定されていないプランもあるため、利用規約の確認が必要です。
- Q2:オープンソース型と商用製品の無料プランはどちらが向いていますか。
- 自社で構築や運用を担える技術者がいる場合はオープンソース型が選択肢になります。運用の手間を抑えたい場合は、商用製品の無料プランから試す方法が考えられます。
- Q3:無料版から有料版への切り替えは簡単にできますか。
- 製品によって手順は異なります。設定を引き継げる製品もあれば、再構築が必要になる製品もあるため、切り替え方法を事前に確認しておくことをおすすめします。
- Q4:無料版でセキュリティ面は十分に確保できますか。
- 製品や設定内容によって異なります。無料版では高度な防御機能が制限されている場合があるため、扱う情報の重要度に応じて、必要な機能が備わっているかを個別に確認することが求められます。
まとめ
アプリケーションデリバリコントローラには、オープンソース型や商用製品の無料プラン、クラウドサービスの試用枠など、無料で試せる選択肢があります。処理能力やサポート範囲には制限があるため、自社の利用状況に合わせて確認し、必要に応じて有料版への移行時期も検討しておくことが大切です。導入前に複数の製品を比較し、自社の運用体制に合ったものを選ぶことをおすすめします。

