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犯罪収益移転防止法とは?取引時確認の義務やeKYC、2027年4月施行の本人確認方法の改正を解説

犯罪収益移転防止法とは?取引時確認の義務やeKYC、2027年4月施行の本人確認方法の改正を解説

犯罪収益移転防止法は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与を防ぐため、特定事業者に取引時確認や記録保存などを求める法律です。近年はオンライン本人確認のeKYCが普及し、顔認証やICチップ、公的個人認証などが活用されています。さらに2027年4月には、本人確認方法を見直す施行規則改正が施行されます。この記事では、法律の基本や実務上の対応、最新の改正動向を解説します。

この記事は2026年8月時点の情報に基づいて編集しています。
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目次

    犯罪収益移転防止法とは?基本をわかりやすく整理

    犯罪収益移転防止法は、犯罪による収益の移転を防ぎ、マネー・ローンダリングやテロ資金供与への対策を強化するための法律です。まずは法律の目的や対象となる事業者、事業者に求められる主な対応を確認しましょう。

    法律の目的とマネー・ローンダリング対策

    犯罪収益移転防止法は、犯罪で得た資金の出所を分からなくする「マネー・ローンダリング(資金洗浄)」などを防止するための法律です。犯罪収益が正当な取引に紛れ込むと、資金の流れを追跡しにくくなり、新たな犯罪やテロ活動などに利用されるおそれがあります。

    そこで、金融機関をはじめとする特定事業者に取引時確認や取引記録の保存などを求め、資金の流れを追跡できる仕組みが設けられています。日本のマネー・ローンダリング対策は、金融活動作業部会(FATF)が策定する国際基準も踏まえて整備されています。

    対象となる特定事業者の範囲

    犯罪収益移転防止法の対象となるのは、「特定事業者」として法律で定められた事業者です。代表例には、銀行や証券会社、保険会社などの金融機関のほか、クレジットカード事業者、貸金業者、暗号資産交換業者などがあります。

    さらに、宅地建物取引業者や宝石・貴金属等取扱事業者、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁護士などの士業者も一定の業務について対象となります。義務の内容は業種や取引によって異なるため、自社が特定事業者に該当する場合は、所管行政庁などが示す情報も確認することが重要です。

    事業者に求められる主な対応

    特定事業者に求められる主な対応には、取引時確認、確認記録・取引記録等の作成と保存、疑わしい取引の届出などがあります。また、確認した顧客情報を最新の内容に保つための措置も必要です。

    加えて、従業員への教育訓練や社内規程の整備、統括管理者の選任など、適切な取引時確認を行うための体制整備についても法律上の努力義務が設けられています。

    なお、疑わしい取引の届出義務については、弁護士や司法書士など一部の士業者で扱いが異なります。行政書士、公認会計士、税理士には、2024年4月から一定の取引について疑わしい取引の届出義務が課されています。

    参考:犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など|警察庁

    取引時確認で確認すべき項目と方法

    取引時確認は、犯罪収益移転防止法に基づく重要な手続きです。確認すべき内容は、相手が個人か法人か、どのような取引を行うかなどによって異なります。ここでは主な確認項目や本人確認書類、より厳格な確認が必要になる取引について解説します。

    取引時確認で確認する項目

    個人の顧客については、本人特定事項である氏名・住居・生年月日を確認します。取引の種類によっては、取引を行う目的や職業なども確認の対象です。

    法人の場合は、名称や本店または主たる事務所の所在地に加え、取引目的や事業内容、実質的支配者などを確認します。実質的支配者とは、議決権の保有などを通じて法人を実質的に支配する自然人を指します。形式的な契約者だけでなく、取引の背後にいる人物を把握することがマネー・ローンダリング対策では重要です。

    本人確認書類と確認方法のガイドライン

    本人特定事項の確認には、法律や施行規則で定められた本人確認書類を使用します。個人の場合は、運転免許証やマイナンバーカードなどが代表的です。旅券も本人確認書類として利用できる場合がありますが、住居の記載状況などによっては別の書類による補完が必要になることがあります。

    本人確認方法には、対面で書類を提示する方法のほか、郵送を組み合わせる方法やオンラインで完結する方法などがあります。具体的な要件は施行規則で定められているため、取引形態に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。所管行政庁が示す監督指針やガイドラインなども確認し、社内の手順を標準化しておくとよいでしょう。

    ハイリスク取引での厳格な確認

    なりすましの疑いがある取引や、過去の取引時確認で虚偽の申告をしていた疑いがある顧客との取引、犯罪収益移転防止制度が十分でないとして指定された国・地域に関係する取引などは、ハイリスク取引として通常より厳格な確認が求められます。

    例えば、本人特定事項について通常とは異なる方法で追加確認を行うなどの対応が必要です。また、200万円を超える財産の移転を伴うハイリスク取引では、顧客の資産や収入の状況も確認します。取引の背景や顧客の属性を踏まえ、不自然な点がないかを慎重に判断することが重要です。

    オンライン本人確認(eKYC)と生体認証の関係

    金融サービスなどでは、来店せずスマートフォンなどから本人確認を完結するeKYCが利用されています。eKYCには本人確認書類の画像を利用する方法やICチップ情報を利用する方法、公的個人認証を利用する方法などがあります。ここでは、eKYCの仕組みと顔認証などの生体認証がどのように関係するのかを解説します。

    顔認証データなど生体情報の法的な扱いについては、個人識別符号との関係を解説した以下の記事も参考にしてください。

    関連記事 個人識別符号とは?定義と具体例・生体情報や顔認証データとの関係を解説

    eKYCとは?施行規則が定める方法

    eKYCは「electronic Know Your Customer」の略称で、オンラインで本人確認を行う仕組みを指します。犯罪収益移転防止法では、本人特定事項をオンラインで確認できる複数の方法が施行規則に定められています。

    現行制度では、写真付き本人確認書類の画像と本人の容貌画像を送信する方法のほか、本人確認書類のICチップ情報を利用する方法、マイナンバーカードに格納された署名用電子証明書を利用する公的個人認証などがあります。利用者が店舗へ出向いたり書類を郵送したりせずに手続きを進められるため、口座開設や各種サービスの申し込みなどで活用されています。

    参考:犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法に関する金融機関向けQ&A|金融庁

    顔照合を行う「ホ方式」の仕組み

    現行のeKYCで利用されている本人確認方法の一つが、犯罪収益移転防止法施行規則第6条第1項第1号ホに定められた、通称「ホ方式」です。利用者が写真付き本人確認書類の画像と、自身の容貌を撮影した画像を送信し、それぞれを照合して本人であることを確認します。

    サービスによっては、顔画像の照合に顔認証技術を利用したり、撮影時に一定の動作を求めたりするなど、写真や動画を使ったなりすましを防ぐ仕組みが採用されています。ただし、これらすべての技術が犯罪収益移転防止法で一律に義務づけられているわけではありません。

    なお、ホ方式は2027年4月1日に施行される犯罪収益移転防止法施行規則の改正によって廃止されます。現在ホ方式を利用している事業者は、新しい本人確認方法への移行準備が必要です。

    なりすましを防ぐ確認のポイント

    オンライン本人確認では、他人の顔写真や偽造・改ざんされた本人確認書類を利用したなりすましへの対策が重要です。eKYCサービスでは、撮影された人物がその場にいる本人かを判定する生体検知(ライブネス検知)や、本人確認書類の改ざんを検知する技術などが利用されることがあります。

    ただし、本人確認に必要な法的要件と、サービス事業者が追加する不正対策機能は分けて考える必要があります。eKYCサービスを選定する際は、犯罪収益移転防止法への対応状況だけでなく、不正検知の仕組みや確認精度、利用者の操作性なども比較するとよいでしょう。

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    2027年4月施行の改正で本人確認はどう変わる

    偽造・改ざんされた本人確認書類による不正利用などを踏まえ、2025年6月24日に犯罪収益移転防止法施行規則の改正が公布されました。本人特定事項の確認方法に関する主な改正は、2027年4月1日に施行されます。ここでは、改正の背景と本人確認方法の変更点、企業が準備しておきたい内容を確認します。

    参考:犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など|警察庁

    改正の背景にある偽造・なりすまし被害

    本人確認方法が見直される背景には、偽造・改ざんされた本人確認書類を利用して架空名義や他人名義の預貯金口座などを開設し、特殊詐欺をはじめとする犯罪に悪用する事例があります。書類の画像や写しだけでは、精巧な偽造を見抜くことが難しい場合もあります。

    こうしたリスクを抑えるため、本人確認書類に搭載されたICチップの情報など、偽造・改ざんへの耐性が高い情報を活用する方向へ本人確認方法が見直されました。改正はオンラインだけでなく、対面での本人確認にも影響します。

    廃止・見直しされる本人確認方法

    2027年4月1日の改正施行後は、自然人の非対面での本人確認について、本人確認書類の画像情報を送信する方法や書類の写しを送付する方法が原則として廃止され、ICチップ付き本人確認書類のICチップ情報を利用する方法などが中心になります。ICチップ付き本人確認書類を持たない人などに対応するための補完的な方法も設けられます。

    対面で写真付き本人確認書類の提示を受ける方法についても、原則としてマイナンバーカードや運転免許証、在留カード、日本国旅券などのICチップ付き書類を対象とし、ICチップ情報の読み取りが必要になります。

    非対面では、ICチップ情報を利用する方式のほか、マイナンバーカードの署名用電子証明書を利用する公的個人認証(JPKI)など、電子的に本人を確認する方法の重要性が高まります。ただし、改正後の本人確認が公的個人認証だけに一本化されるわけではありません。

    企業が今から進めたい準備

    犯罪収益移転防止法の対象事業者は、まず現在利用している本人確認方法を確認し、2027年4月の改正で廃止・変更される方式に該当しないかを把握しましょう。ホ方式などを利用している場合は、ICチップ情報を活用する方式や公的個人認証など、改正後に利用可能な方法への移行を検討する必要があります。

    eKYCサービスを利用している場合は、提供事業者へ改正後の対応予定や移行スケジュールを確認しておくことも重要です。システムだけでなく、社内の確認手順やマニュアル、利用者への案内なども見直し、施行までに新しい運用へ切り替えられるよう準備を進めましょう。

    2026年の犯罪収益移転防止法改正との違い

    2027年4月に施行される本人確認方法の見直しとは別に、2026年6月には犯罪収益移転防止法そのものも改正されています。主な内容は、預貯金通帳などの不正譲渡等に対する罰則の引き上げ、いわゆる「送金バイト」に対応する送金犯罪の罰則新設、架空名義口座を利用した新たな措置の創設です。

    このうち罰則の引き上げと送金犯罪に関する規定は2026年7月10日に施行されています。2027年4月の本人確認方法の変更は、2025年に公布された施行規則改正によるものであり、2026年の法律改正とは別の制度改正として整理しておきましょう。

    参考:令和8年犯罪収益移転防止法の改正について|警察庁

    犯収法に対応した本人確認をデジタル化するには

    犯罪収益移転防止法に基づく本人確認には複数の方法があり、2027年4月には対面・非対面ともに確認方法が見直されます。自社で本人確認の仕組みを構築・更新するには開発や運用の負担がかかるため、必要な本人確認方式に対応したeKYCサービスを活用するのも一つの方法です。

    サービスを選ぶ際は、現在の犯罪収益移転防止法への対応状況に加え、ICチップ読み取りや公的個人認証など、2027年4月施行の改正後に必要となる方式への対応予定も確認しましょう。自社に適した認証方式を選びたい方は、生体認証システムの比較記事もあわせて参考にしてください。

    関連記事 【2026年】生体認証システム8選比較!認証の種類も解説

    以下の製品は、オンライン本人確認や生体認証に関わるサービスとして参考になります。

    TRUSTDOCK (株式会社TRUSTDOCK)

    《TRUSTDOCK》のPOINT
    1. マイナンバーカード、運転免許証等に対応。
    2. リアル身分証なしで本人確認が可能
    3. ISO27001, ISO27017, プライバシーマーク取得済み

    犯罪収益移転防止法に関するよくある質問

    最後に、犯罪収益移転防止法について実務で疑問になりやすい点を紹介します。記録の保存期間や疑わしい取引の届出、個人事業主への適用について確認しておきましょう。

    取引時確認の記録は何年保存する?

    確認記録と取引記録等は、いずれも原則として7年間の保存が必要です。ただし、保存期間の起算点は記録の種類によって異なります。

    確認記録は、特定取引等に係る契約が終了した日などから7年間保存します。取引記録等は、対象となる取引を行った日などから7年間の保存が必要です。必要なときに内容を確認できるよう、適切な方法で記録を管理しましょう。

    疑わしい取引の届出とは?

    疑わしい取引の届出とは、特定事業者が業務で収受した財産について犯罪収益である疑いがある場合などに、所管行政庁へ届け出る制度です。取引内容や顧客の属性、取引時確認で得た情報などを踏まえて、疑わしい取引に該当するかを判断します。

    また、届出を行おうとしていることや、実際に届け出たことを顧客やその関係者へ漏らしてはなりません。なお、弁護士や司法書士などについては疑わしい取引の届出義務の扱いが異なるため、業種ごとの規定を確認する必要があります。

    個人事業主も対象になる?

    犯罪収益移転防止法の対象になるかどうかは、法人か個人事業主かだけで決まるものではありません。法律で定められた特定事業者に該当し、対象となる業務や取引を行う場合は、個人事業主であっても犯罪収益移転防止法に基づく対応が必要になることがあります。

    一方、特定事業者に該当しない業種であれば、同法に基づく取引時確認義務が一律に生じるわけではありません。対象範囲や必要な対応は業種・取引によって異なるため、所管行政庁が公表する資料や法令を確認しましょう。

    参考:犯罪収益移転防止法 同施行令 同施行規則など|警察庁

    まとめ

    犯罪収益移転防止法は、マネー・ローンダリングやテロ資金供与などを防ぐため、特定事業者に取引時確認や記録保存、一定の場合の疑わしい取引の届出などを求める法律です。本人確認には対面・非対面のさまざまな方法があり、eKYCでは顔画像の照合やICチップ、公的個人認証などが活用されています。

    2027年4月1日には本人確認方法を見直す施行規則改正が施行され、ホ方式をはじめとする画像情報を利用した一部の方法が廃止されるほか、ICチップ情報の活用が原則となります。現在の本人確認方法を確認し、必要に応じてシステムや運用手順を早めに見直しておきましょう。

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