内部統制ツールとは
内部統制ツールとは、J-SOX対応に必要な文書作成や評価、証跡管理、リスク・コントロール管理などを効率化するシステムです。Excelやメール、共有フォルダに分散しがちな内部統制情報を一元管理し、更新や進捗確認の負担を軽減できます。
代表的な機能として、業務記述書・フローチャート・RCMからなる「内部統制3点セット」の作成・更新、整備状況・運用状況の評価、証跡の収集・管理などがあります。製品によっては、内部監査や全社的なリスク管理、コンプライアンス管理まで対応します。
対応範囲は製品ごとに異なるため、J-SOX文書の作成を効率化したいのか、評価・証跡管理まで一元化したいのか、内部監査やリスク管理まで含めたいのかを整理して選ぶことが重要です。
内部監査ツールやGRCツールとの違い
内部統制ツールは、リスクに対して適切な統制が整備・運用されているかを管理・評価することを主な目的とします。一方、内部監査ツールは、監査計画の策定や監査調書、指摘事項、改善状況など、内部監査業務全体の管理を支援するツールです。
GRCツールはさらに対象範囲が広く、ガバナンス・リスク・コンプライアンスを横断的に管理します。J-SOX対応を中心に効率化したい企業には内部統制に特化した製品、内部監査や全社リスク管理まで統合したい企業にはGRC型の製品が適しています。
GRCツールについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。おすすめ製品や役割などを解説しています。
内部統制ツールの主な機能
内部統制ツールには、J-SOX対応に必要な文書作成や評価、証跡管理などを効率化する機能があります。対応範囲は製品によって異なるため、自社が効率化したい業務をカバーできるか確認しましょう。主な機能は以下のとおりです。
| 主な機能 | できること |
|---|---|
| 内部統制3点セットの作成・管理 | 業務記述書・フローチャート・RCMの作成・更新や情報の一元管理 |
| 整備状況・運用状況の評価 | 評価担当者・期限・結果・レビュー状況などの管理 |
| リスク・コントロール管理 | 業務上のリスクと対応するコントロールの紐づけ・管理 |
| 証跡・文書管理 | 証憑や監査資料、評価結果、変更履歴などの一元管理 |
| 進捗管理・レポート | 評価進捗や未対応項目、不備・改善状況などの可視化 |
内部統制3点セットの作成・管理
業務記述書・フローチャート・RCMを作成・管理する機能です。製品によっては、業務やリスク、コントロールの情報を各文書へ連携できるため、個別に修正する手間や文書間の不整合を減らせます。
整備状況・運用状況の評価
コントロールが適切に設計されているかを確認する整備状況評価と、実際に運用されているかを確認する運用状況評価を管理します。担当者や期限、評価結果、レビュー状況を一元管理でき、Excelによる集計や進捗確認の負担を軽減できます。
リスク・コントロール管理
業務プロセスごとのリスクと、それに対応するコントロールを紐づけて管理します。製品によっては、J-SOXだけでなく、コンプライアンスや情報セキュリティなど複数領域のリスクを一元管理できます。
証跡・文書管理
評価に使用する証憑や監査資料を、対象のコントロールや評価結果と紐づけて管理する機能です。資料の所在や変更履歴を把握しやすくなり、証跡収集や監査時の確認作業を効率化できます。
進捗管理・レポート機能
評価の進捗や未対応項目、不備・改善状況などを可視化する機能です。部門・拠点・子会社ごとの状況を把握しやすくなり、対応漏れの防止や経営層への報告にも役立ちます。
内部統制ツールの3つのタイプ
内部統制ツールは、製品によって得意とする領域が異なります。比較する際は機能数だけでなく、自社の目的に合うタイプかを確認しましょう。主に以下の3タイプに分けられます。
- ■J-SOX文書化・評価型
- 内部統制3点セットの作成や整備・運用評価など、J-SOX実務の効率化に特化したタイプです。Excelによる文書管理から脱却したい企業や、IPO準備・上場後のJ-SOX対応を効率化したい企業に向いています。
→【J-SOX文書化・評価型】おすすめの内部統制ツールを見る - ■GRC・統合管理型
- 内部統制に加えて、内部監査や全社的リスク管理、コンプライアンス、ITリスクなどを横断的に管理するタイプです。複数部門やグループ会社の統制・リスク情報を一元化したい企業に適しています。
→【GRC・統合管理型】おすすめの内部統制ツールを見る - ■業務プロセス・IT統制型
- 申請・承認ワークフローや会計システムなどを通じて、権限管理や承認履歴、操作ログを残し、業務処理統制やIT統制を強化するタイプです。内部統制文書の管理よりも、日常業務に統制を組み込みたい企業に向いています。
→【業務プロセス・IT統制型】おすすめの内部統制ツールを見る
内部統制ツールの選び方
内部統制ツールは、製品によって対応範囲や得意分野が異なります。J-SOX対応という点だけで判断せず、自社の課題や運用体制に合うかを確認しましょう。主な比較ポイントは以下のとおりです。
- ●効率化したい内部統制業務に対応しているか
- ●J-SOX業務をどこまで一元管理できるか
- ●既存文書を移行しやすく、現場でも使いやすいか
- ●権限管理や変更履歴、監査法人との共有に対応しているか
- ●既存システムとの連携やグループ展開に対応できるか
- ●導入支援や内部統制に関するサポートが充実しているか
効率化したい内部統制業務に対応しているか
まず、現在の内部統制業務でどこに負担がかかっているかを整理しましょう。「3点セットの更新に時間がかかる」「証跡収集が大変」「評価の進捗を把握しにくい」など、課題によって適した製品は異なります。
文書作成を効率化したいならJ-SOX文書化型、評価や証跡管理まで一元化したいなら評価機能を備えた製品、内部監査やリスク管理まで統合したいならGRC型が候補です。
J-SOX業務をどこまで一元管理できるか
J-SOX対応を目的とする場合は、3点セットの作成だけでなく、整備・運用評価や証跡管理、不備・改善状況の管理まで対応できるか確認しましょう。
文書化機能だけで選ぶと、評価や進捗管理ではExcelを併用することになり、二重管理が残る可能性があります。自社が年間を通じて管理したい業務範囲を整理したうえで比較することが重要です。
既存文書を移行しやすく、現場でも使いやすいか
すでにJ-SOX対応を行っている企業では、Excelで作成した3点セットや評価資料をスムーズに移行できるかが重要です。既存フォーマットを活用できるか、インポート機能やベンダーによる移行支援があるかを確認しましょう。
また、内部統制ツールは内部監査部門だけでなく、経理・営業・人事・情報システムなど多くの部門が利用します。証跡の提出や評価回答などを、利用頻度の低い担当者でも迷わず操作できるか確認してください。
権限管理や変更履歴、監査法人との共有に対応しているか
内部統制では、リスクや不備、業務プロセスなど機密性の高い情報を扱います。部門・子会社・役職などに応じて閲覧・編集権限を設定できるか、「誰が・いつ・何を変更したか」を履歴として残せるか確認しましょう。
監査法人と情報共有する場合は、閲覧権限の設定やコメント・レビュー機能、Excel・PDFなどへの出力機能があると便利です。必要な資料を安全かつ効率的に共有できるかも比較ポイントです。
既存システムとの連携やグループ展開に対応できるか
ERPや会計システム、人事システムなどと連携できれば、証跡収集やデータ登録の手間を減らせます。API連携の可否や連携実績、追加開発・費用の有無を確認しましょう。
グループ会社を含めて利用する場合は、組織ごとの権限設定や多言語対応、会社数・利用者数が増えた場合の料金体系も重要です。将来的な対象拡大を見据えて、拡張性も比較してください。
導入支援や内部統制に関するサポートが充実しているか
内部統制ツールの導入時には、既存文書の整理や業務プロセスの見直し、評価方法の標準化が必要になる場合があります。そのため、操作サポートだけでなく、J-SOXや内部統制実務に詳しい担当者から支援を受けられるかも確認しましょう。
特にIPO準備企業や少人数で内部統制業務を担当している企業では、導入設計やデータ移行まで支援してもらえる製品を選ぶと、スムーズに運用を開始しやすくなります。
内部統制ツールは、対応範囲や使いやすさ、システム連携、導入支援などが製品ごとに異なります。気になる製品の資料を取り寄せ、自社の課題や運用体制に合うか比較してみましょう。
【J-SOX文書化・評価型】おすすめの内部統制ツール
ここでは、内部統制3点セットの作成・更新や整備・運用評価など、J-SOX実務の効率化に強みをもつ製品を紹介します。Excelによる文書管理の負担を減らしたい企業や、文書化から評価までの業務を効率化したい企業におすすめです。
smoove J-SOX
- J-SOX3点セットを簡単操作で作成
- フローチャートがRCMへ自動反映
- 証憑やサンプルを一元管理
株式会社WARCが提供する「smoove J-SOX」は、J-SOX対応に必要な内部統制業務をクラウド上で一元管理できるSaaSです。フローチャート、RCM、業務記述書の3点セットを連動させ、修正内容や前年度との差分も確認可能。証憑とコントロールの紐付けや、整備・運用・ロールフォワード評価、生成AIによるリスク確認にも対応します。全社統制やグループ会社の進捗管理にも利用でき、J-SOX業務をクラウド上で効率化し、内部統制運用を高度化したい企業に適しています。
QPR J-SOX・TAMIC (テクノホライゾン株式会社)
- 業務フロー・業務記述書・RCMの3点セットを一括作成。
- Excelや他社ツールから既存データの移行にも対応。
- テスト計画から不備是正、運用評価まで一元的に管理。
iGrafx SOX+ (株式会社サン・プラニング・システムズ)
- 内部統制3点セットを連携して作成・メンテナンス。
- フローチャートの修正内容を3点セットへ自動反映。
- 監査法人に応じて帳票フォーマットをカスタマイズ可能。
【GRC・統合管理型】おすすめの内部統制ツール
ここでは、内部統制に加えて、内部監査やリスク管理、コンプライアンスなどを横断的に管理できる製品を紹介します。J-SOX対応にとどまらず、複数部門やグループ会社にまたがるリスク・統制情報を一元化し、GRC全体を高度化したい企業におすすめです。
TeamMate
- TeamMate Audit: 内部監査専用設計ソフトウェア
- TeamMate Controls:内部統制を見える化と仕組化で支援
- TeamMate Risk & Compliance:統合GRCソリューション
株式会社ウォルターズ・クルワー・ジャパンが提供する「TeamMate」は、内部監査・内部統制・リスク・コンプライアンス管理を支援するソリューション群です。TeamMate Auditでは、年間監査計画の策定から監査の実施、報告、フォローアップまで一連の監査業務を管理できます。また、TeamMate Controlsでは統制の文書化やテスト、モニタリングを支援し、TeamMate Risk & Complianceではリスクやコンプライアンス、ポリシーなどのGRC情報を統合管理できます。内部監査と内部統制、リスク管理を連携させ、組織全体の保証業務を高度化したい企業に適しています。
Diligent Internal Controls (Diligent Japan合同会社)
- リスクや統制、規制要件を一つの基盤で一元管理。
- 統制テストや証拠収集をワークフローで自動化。
- リアルタイムのダッシュボードや監査向けレポートを提供。
ServiceNow ポリシーとコンプライアンス管理 (ServiceNow Japan合同会社)
- コントロールテストを自動化し、継続的な監視に対応。
- 規制やポリシーにまたがるコントロールを一元管理。
- ポリシーの共同編集や承認プロセスの自動化に対応。
SAP Risk and Assurance Management (SAPジャパン株式会社)
- リスクと内部統制を一元管理し、関連情報を可視化。
- 自動・手動統制や統制テスト、課題改善に対応。
- SAP S/4HANAとの事前定義済みの統合に対応。
Connected Risk GRC Solution 監査モジュール (株式会社GRCS)
- 監査計画から実行、報告までのワークフローを効率化。
- 監査文書を一元管理し、バージョン管理にも対応。
- 進捗や監査結果をリアルタイムで可視化・共有。
Archer (Archer Technologies Japan 合同会社)
- 多様なリスクを単一基盤で統合管理できる柔軟な設計。
- リスクを定量化・可視化し、的確な意思決定を支援する。
- 取締役のESG意思決定と説明責任の評価状況。
【業務プロセス・IT統制型】おすすめの内部統制ツール
ここでは、申請・承認ワークフローや権限管理、操作履歴などを活用し、日常業務のなかに統制を組み込める製品を紹介します。内部統制文書の作成・評価を管理するというより、承認プロセスの標準化や証跡の記録によって、業務処理統制やIT統制を強化したい企業におすすめです。
楽々WorkflowII
- 複雑な承認フローにも対応し、部門~全社・グループ 利用も可能
- 他システムとの連携・データ活用ができる汎用ワークフロー基盤
- AI活用で、申請・承認プロセスやアドオン開発をサポート
住友電工情報システム株式会社が提供する「楽々WorkflowII」は、企業内の申請・承認・決裁業務を電子化するシステムです。複雑な承認経路や組織・役職に応じた権限設定に対応し、申請・承認の履歴や操作記録を残すことで、業務プロセスの透明性向上と内部統制の強化を支援します。また、文書の履歴管理やアクセス権限の設定にも対応しています。紙やメールによる申請・承認業務を電子化しながら、承認ルールの徹底や証跡管理を強化したい企業に適しています。
SuperStream-NX (スーパーストリーム株式会社)
- グローバル展開に対応できる機能が多数!
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- 独自の暗号化技術やログ管理でセキュリティも万全!
内部統制ツールを導入するメリット
内部統制ツールを導入すると、文書管理や証跡収集などの作業を効率化できるだけでなく、進捗や課題を可視化し、内部統制業務の属人化を防ぐ効果も期待できます。主なメリットは以下のとおりです。
- ■Excelやメールによる属人管理を減らせる
- 内部統制文書や評価結果をツール上で一元管理することで、ファイルの重複や最新版がわからなくなるといった問題を防げます。担当者の異動・退職時にも情報を引き継ぎやすくなり、属人化の解消につながります。
- ■証跡収集や評価業務を効率化できる
- 証跡の提出依頼や評価回答、レビュー、差し戻しなどをシステム上で管理できます。未対応項目や期限超過も把握しやすくなり、メールで担当者を追いかけたり、Excelで進捗を集計したりする負担を軽減できます。
- ■内部統制の状況を可視化できる
- リスクやコントロール、不備、改善状況などを可視化できるため、対応が遅れている部門や課題のあるプロセスを把握しやすくなります。製品によっては、経営層へのレポートや全社的なリスク管理にも活用できます。
内部統制ツール導入時の注意点
内部統制ツールは業務効率化に役立ちますが、導入するだけで内部統制が適切に機能するわけではありません。導入効果を高めるために、以下の点に注意しましょう。
- ■既存業務をそのままシステム化しない
- Excelで行っている複雑な管理方法をそのままツールへ移行すると、導入後も業務負担が残る可能性があります。導入を機に、不要なコントロールや重複した評価項目、承認フローなどを見直し、運用自体を整理することが重要です。
- ■関係部門を早い段階から巻き込む
- 内部統制ツールは、内部監査部門だけでなく経理・総務・情報システム部門や各事業部門も利用します。選定段階から関係部門に参加してもらい、証跡提出や評価回答など実際の業務を想定して操作性や運用負荷を確認しましょう。
まとめ
内部統制ツールを活用すれば、J-SOX3点セットの作成・更新や整備・運用評価、証跡管理、進捗確認などを効率化できます。Excelやメールを使った管理から脱却し、内部統制業務を一元化したい企業にも有効です。
ただし、製品によって文書化や評価管理、GRC、業務プロセス・IT統制など得意分野は異なります。自社がどの業務を効率化したいのかを明確にし、機能だけでなく操作性や既存システムとの連携、導入支援なども含めて比較することが重要です。
気になる製品があれば、複数社の資料を取り寄せて比較してみましょう。自社の運用体制や課題に合う内部統制ツールを選びやすくなります。

