中小企業でMFAツールが注目される背景
MFAツールとは、パスワードに加えてスマートフォン認証や生体認証、ワンタイムパスワードなどを組みあわせる認証ツールです。中小企業では、少人数で多くのクラウドサービスを管理するケースが多く、認証強化の重要性が高まっています。
クラウド利用が増えている
中小企業でも、メールやファイル共有、会計、人事労務などでクラウドサービスの利用が進んでいます。社外から業務システムへアクセスする機会が増えると、IDとパスワードの管理だけでは不安が残るでしょう。
MFAツールを使えば、ログイン時に追加の本人確認を行えます。万が一パスワードが第三者に知られても、もう1つの認証要素で不正アクセスを防ぎやすくなります。
専任担当者が少ない
中小企業では、情報システム担当者がほかの業務を兼任している場合もあります。従業員ごとの認証設定や退職者のアカウント停止を手作業で行うと、管理漏れが起きる恐れがあります。
MFAツールを導入すると、認証ルールや利用者管理をまとめやすくなります。管理画面から設定を見直せるため、限られた体制でもセキュリティ対策を進めやすいでしょう。
取引先からの信頼が重要になる
近年は、取引先や親会社からセキュリティ対策の確認を求められる場面もあります。認証対策が不十分なままだと、情報管理体制への不安につながる可能性があります。
MFAツールは、社内の利便性を保ちながら認証を強化する方法の1つです。導入状況を説明しやすくなるため、取引先との情報共有や監査対応にも役立ちます。
参考:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン|独立行政法人情報処理推進機構
中小企業がMFAツールを導入するメリット
MFAツールのメリットは、不正ログイン対策だけではありません。アカウント管理の効率化やリモートワーク環境の安全性向上にもつながります。ここでは、中小企業が導入を検討する際に押さえたい主な効果を整理します。
不正ログイン対策を強化できる
メリットは、パスワードだけに依存しない認証環境を作れる点です。メールアドレスやパスワードが流出した場合でも、スマートフォン通知やワンタイムパスワードを求めることで、第三者のログインを防ぎやすくなります。
特に、顧客情報や契約情報を扱う業務では、認証強化が重要です。MFAツールを導入すれば、情報漏えいのリスク低減に向けた現実的な対策を進められます。
参考:不正ログイン対策特集ページ|独立行政法人情報処理推進機構
テレワーク時の安全性を高められる
テレワークでは、自宅や外出先から社内システムへアクセスする機会があります。利用端末や接続場所が分散するため、社内ネットワークだけを前提にした管理では不十分です。
MFAツールで追加認証を設定すれば、社外からのアクセスでも本人確認を行えます。リモートアクセスや仮想私設網、クラウドサービスと組みあわせることで、柔軟な働き方を支える認証基盤を整えやすくなります。
アカウント管理を標準化できる
従業員ごとに利用サービスが増えると、認証ルールが部署や担当者ごとにばらつきがちです。管理方法が統一されていないと、退職者アカウントの停止漏れや権限の残存が起こる恐れがあります。
MFAツールを導入すると、ログイン条件や認証方式を統一しやすくなります。利用者管理やアクセス履歴の確認も行えるため、日々の管理負担を抑えながら統制を強められます。
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中小企業向けMFAツールの認証方式
MFAツールは、製品によって対応する認証方式が異なります。中小企業では、セキュリティ強度だけでなく、従業員が無理なく使えるかも重要です。ここでは、代表的な方式と向いている場面を紹介します。
| 認証方式 | 特徴 |
|---|---|
| ワンタイムパスワード | 一定時間だけ使える使い捨てのパスワードで本人確認を行う |
| スマートフォン通知 | ログイン時にスマートフォンへ通知し、承認操作で認証する |
| 生体認証 | 指紋や顔など本人の身体的特徴を使って認証する |
| ICカード認証 | 社員証やカードを使って端末やシステムへのログインを管理する |
| パスキー認証 | パスワードを使わず、端末や生体情報を組みあわせて認証する |
手軽に始めるならスマートフォン認証
スマートフォン認証は、従業員が普段使う端末を活用しやすい方式です。専用機器を配布しなくても運用を始められる場合があり、中小企業でも導入しやすい選択肢といえます。
ただし、私物端末を利用する場合は、紛失時の対応や利用ルールを決める必要があります。業務端末の有無や従業員の端末利用状況を確認してから検討しましょう。
強度を重視するならパスキー認証
パスキー認証は、パスワード入力を前提としない認証方式です。フィッシング攻撃でパスワードを入力させる手口に対して、リスクを抑えやすい点が注目されています。
一方で、対応する端末やブラウザ、利用サービスの確認が欠かせません。既存環境との相性を確かめたうえで、重要システムから段階的に適用すると運用しやすくなります。
現場端末にはICカードも有効
工場や店舗、受付端末など複数人で端末を利用する現場では、ICカード認証が候補になります。社員証と連携できる場合、利用者の識別やログ管理を進めやすくなります。
カードの発行や紛失時の再発行ルールも検討が必要です。端末台数や勤務形態をふまえて、認証のしやすさと管理負担のバランスを確認しましょう。
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中小企業向けMFAツールの選び方
中小企業がMFAツールを選ぶ際は、機能の多さだけで判断しないことが大切です。利用中のサービスとの連携や管理のしやすさ、従業員の使いやすさを見ながら、自社の運用にあう製品を比較しましょう。
既存サービスと連携できるか
まず確認したいのは、現在利用しているクラウドサービスや業務システムと連携できるかです。メールやグループウェア、ファイル共有、仮想私設網、リモートアクセスなど、対象範囲を整理しましょう。
複数のサービスを使っている場合は、シングルサインオンとの連携も重要です。ログイン入口を集約できると、従業員の負担を抑えながら認証強化を進められます。
管理画面が扱いやすいか
情報システム担当者が少ない企業では、管理画面のわかりやすさが運用負担に直結します。ユーザー追加や削除、認証方式の変更、ログ確認を直感的に行えるか確認しましょう。
権限設定やグループ単位のルール作成に対応していれば、部署ごとの運用にもあわせやすくなります。トライアルやデモで、日常的な操作を試すことが有効です。
従業員が使いやすいか
MFAツールは、従業員が毎日利用する認証手段です。操作が複雑すぎると、問い合わせが増えたり、業務開始までに時間がかかったりする可能性があります。
スマートフォン通知や生体認証など、利用者にとって負担が少ない方式を選ぶと定着しやすくなります。高齢の従業員や現場スタッフが多い場合は、説明のしやすさも確認しましょう。
費用と運用範囲があうか
中小企業では、初期費用や月額費用だけでなく、運用にかかる工数も含めて比較することが大切です。ユーザー数や認証方式、連携サービス数によって費用が変わる場合があります。
最初から全社展開するのが難しい場合は、管理部門や重要システムから始める方法もあります。段階導入に対応する製品なら、予算や体制にあわせて拡張しやすいでしょう。
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中小企業がMFAツールを導入する際の注意点
MFAツールはセキュリティ強化に役立ちますが、導入すればすべてのリスクがなくなるわけではありません。効果を高めるには、対象システムや運用ルールを整理し、従業員が迷わず使える環境を整えることが重要です。
対象システムを広げすぎない
導入初期からすべてのシステムにMFAを適用すると、設定や問い合わせ対応が増える場合があります。まずは、メールやファイル共有、顧客情報を扱うシステムなど、重要度の高い領域から始めるとよいでしょう。
対象を段階的に広げることで、運用上の課題を確認しながら改善できます。小さく始めて定着させる姿勢が、中小企業には適しています。
例外対応を決めておく
スマートフォンの故障や紛失、機種変更が起きると、従業員がログインできなくなることがあります。緊急時に誰が本人確認を行い、どの手順で再設定するかを決めておきましょう。
予備コードや代替認証の運用も確認が必要です。例外対応をあらかじめ整理しておけば、トラブル時の業務停止を抑えやすくなります。
教育と周知を行う
MFAツールの導入時には、従業員への説明が欠かせません。認証の目的や操作手順を理解していないと、不審な通知を承認してしまう恐れがあります。
ログイン手順だけでなく、身に覚えのない認証通知が届いた場合の対応も周知しましょう。短いマニュアルや社内FAQを用意すると、問い合わせ削減にもつながります。
中小企業が無理なく活用するためのポイント
MFAツールを定着させるには、導入後の運用設計が重要です。セキュリティを強めるだけでなく、業務を止めない仕組みを整えることで、従業員に受け入れられやすくなります。
重要アカウントから始める
まずは、管理者アカウントや経営情報を扱うアカウントからMFAを適用しましょう。全従業員に一斉導入するよりも、リスクの高い範囲から始めるほうが運用を整えやすくなります。
導入後は、ログイン状況や問い合わせ内容を確認します。問題点を解消したうえで対象を広げると、社内への浸透がスムーズです。
認証方式を使い分ける
すべての従業員に同じ認証方式を適用すると、業務環境にあわない場合があります。内勤者はスマートフォン通知、共有端末を使う現場はICカード認証など、利用場面に応じて選ぶことが大切です。
役職や業務内容によってアクセスする情報の重要度も異なります。リスクに応じて認証強度を変えれば、利便性と安全性のバランスを取りやすくなります。
定期的に運用を見直す
クラウドサービスの追加や組織変更があると、必要な認証ルールも変わります。導入時の設定をそのままにせず、定期的に利用状況を確認しましょう。
退職者アカウントの停止や不要な権限の削除、認証失敗の多い利用者の確認などを行うと、運用の精度が高まります。年に数回の棚卸しをルール化するのも有効です。
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▶クラウド認証基盤を整えたい中小企業向けMFAツール
ここからは、ITトレンドに掲載されている多要素認証(MFA)ツールを紹介します。複数のクラウドサービスを利用している企業は、MFAとシングルサインオンを組みあわせられる製品が候補になります。ログイン入口を整理し、認証ルールを統一したい場合に向いています。
Okta Workforce Identity
- ネットワークや端末などコンテキストに応じたMFAポリシーを適用
- 既存の要素を使いリソースへのパスワードレスログインを実現
- 一部ユーザーが異なるIdPを使用していてもログインを保護
Okta Japan株式会社が提供する「Okta Workforce Identity」は、クラウドサービスや社内システムへのアクセス管理を支援する多要素認証(MFA)ツールです。従業員のログイン環境を整理し、ゼロトラストの考え方にもとづいた認証管理を進めたい企業に向いています。複数サービスの利用が増え、ID管理を一元化したい中小企業でも検討しやすい製品です。
IIJ IDサービス
- 超図解マニュアルと直感的・シンプルなUIで導入・運用がカンタン
- デバイス証明書認証やFIDO2認証など、さまざまな認証機能に対応
- 複数の国内DCで稼働する万全のセキュリティ体制
株式会社インターネットイニシアティブが提供する「IIJ IDサービス」は、クラウドサービスへのログイン管理や多要素認証を支援する認証サービスです。シングルサインオンとMFAを組みあわせ、従業員の利便性とセキュリティを両立したい企業に向いています。複数拠点やテレワーク環境で、アクセス管理を標準化したい場合にも候補になります。
Gluegent Gate(グルージェント ゲート)
- 連携サービスとのシングルサインオン設定で利便性を向上
- 連携サービスのIDを一元管理することで管理者の負荷を軽減
- 多要素認証、アクセス制限をサービスごとに自由に組み合わせ可能
サイオステクノロジー株式会社が提供する「Gluegent Gate(グルージェント ゲート)」は、クラウドサービス利用時の認証管理を支援する多要素認証(MFA)ツールです。シングルサインオンやアクセス制御を活用し、従業員ごとのログインルールを整理したい企業に向いています。Google WorkspaceやMicrosoft 365などの利用環境を安全に運用したい場合に検討できます。
▶アクセス制御も重視したい中小企業向けMFAツール
認証だけでなく、誰がどのサービスへアクセスできるかまで管理したい企業は、アクセス制御に対応する製品が候補です。部署や役職ごとのルール設定を確認しましょう。
AXIOLE
- ネットワーク認証に必要なスキーマ構築済みの認証アプライアンス
- LDAP/RADIUS認証に対応し様々なネットワーク機器から認証が可能
- 「時間」や「場所」を考慮した、より厳密な複合認証が可能
株式会社ネットスプリングが提供する「AXIOLE」は、認証アプライアンスとして利用できる多要素認証(MFA)ツールです。SAML認証に対応し、クラウドやハードウェア、アプライアンスなどの提供形態から検討できます。既存ネットワーク環境との相性を見ながら、認証基盤を整備したい企業に向いています。
SeciossLink
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- IDの一元管理で業務効率化
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
株式会社セシオスが提供する「SeciossLink」は、クラウド型のID管理やシングルサインオン、多要素認証を支援する製品です。利用者ごとの認証方式やアクセス条件を管理し、複数サービスのログインを統制したい企業に向いています。少人数の情報システム体制でも、認証管理をまとめて見直したい場合に検討しやすいでしょう。
Secioss Access Manager Enterprise(SAME)
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
- 柔軟なルール設定が可能なアクセス制御機能を搭載
株式会社セシオスが提供する「Secioss Access Manager Enterprise(SAME)」は、シングルサインオンや多要素認証、アクセス制御に対応する認証管理ソフトウェアです。FIDO認証や証明書認証などを活用し、重要システムへのログインを強化したい企業に向いています。連携先サービスが増えても、認証ルールを統一したい場合に役立ちます。
▶強い本人確認を求める中小企業向けMFAツール
重要情報を扱う部署や管理者アカウントでは、フィッシングに強い認証方式やパスワードレス認証も検討したい領域です。端末や運用ルールとの相性を確認しましょう。
YubiKey as a Service
- サブスクリプション型のため、初期コストを抑えて導入可能
- セキュリティ強度の高いMFA(多要素認証)を手軽に実現
- 『YubiKey』だけ入手しても悪用不可能!紛失時のリスクが低い
株式会社インターナショナルシステムリサーチが提供する「YubiKey as a Service」は、外付け型の認証デバイス「YubiKey」をサブスクリプションで利用できる多要素認証サービスです。管理者アカウントや重要システムへのアクセスを強化したい企業に向いています。物理デバイスを使った認証を取り入れたい中小企業でも検討しやすい製品です。
パスキー認証サービス by OpenCanvas Atelier®
- コンサルティングを含む導入支援
- FIDO認定取得済みの認証機能と高セキュア・高信頼性の運用体制
- NTTグループの資産を生かした価格競争力ある料金体系
株式会社NTTデータが提供する「パスキー認証サービス by OpenCanvas Atelier®」は、パスキーを活用した認証を支援する多要素認証(MFA)ツールです。パスワードに依存しない認証環境を整えたい企業や、フィッシング対策を強化したい企業に向いています。クラウドサービスや顧客向けサービスの本人確認を見直したい場合にも検討できます。
中小企業向けMFAツールに関するFAQ
MFAツールを検討する際は、費用や運用負担、従業員への影響が気になる方も多いでしょう。ここでは、中小企業の導入担当者が迷いやすい質問をまとめて解説します。
- Q1:中小企業でもMFAツールは必要ですか?
- 必要性は高いといえます。中小企業でもクラウドサービスやリモートワークを利用する機会が増えており、IDとパスワードだけでは不正ログインのリスクが残ります。まずはメールやファイル共有、管理者アカウントなど重要度の高い範囲から導入を検討しましょう。
- Q2:二段階認証とMFAは違いますか?
- 二段階認証は、認証を2回行う仕組みを指すことが多い表現です。一方、MFAは知識情報や所持情報、生体情報など、異なる認証要素を複数組みあわせる考え方です。製品選定では、どの認証要素に対応するかを確認しましょう。
- Q3:従業員の負担は増えませんか?
- 認証操作が1つ増えるため、導入直後は負担を感じる可能性があります。ただし、スマートフォン通知や生体認証など操作が簡単な方式を選ぶと、日常業務への影響を抑えやすくなります。導入前の説明とマニュアル整備も重要です。
- Q4:どのシステムから導入すべきですか?
- まずは、メールやファイル共有、顧客情報を扱うシステム、管理者アカウントなどから始めるとよいでしょう。重要度の高い領域で運用を確認したうえで、対象を段階的に広げると社内に定着しやすくなります。
- Q5:無料の認証機能だけで十分ですか?
- 利用人数が少なく、対象サービスが限られる場合は無料機能で運用できることもあります。ただし、複数サービスの統合管理やアクセスログの確認、サポート体制を重視する場合は、有料のMFAツールも比較したほうが安心です。
まとめ
中小企業がMFAツールを導入する際は、不正ログイン対策だけでなく、既存サービスとの連携や管理しやすさ、従業員の使いやすさを確認することが大切です。まずは重要アカウントや主要クラウドサービスから始め、段階的に対象を広げましょう。自社にあう製品を比較したい方は、ITトレンドの一括資料請求を活用してください。



