オフィスデザイン・レイアウト市場規模の現状
オフィスデザイン・レイアウトの市場規模は、「オフィスに関する新築と改修の需要」と「設計施工や支援サービスへの投資」で捉えるのが現実的です。公的統計では、事業所数や建築着工といった需要の土台を確認できます。まずは足元の需要構造を、数字の根拠とセットで見ていきます。
オフィス需要構造の変化
オフィス需要の前提となる事業活動は、事業所の分布と働き方の変化に影響を受けます。総務省統計局の経済センサスでは、2024年6月1日現在の民営事業所総数は506万494事業所と公表されています。事業所の数が多いほど、移転や増床だけでなく、運用に合わせた再設計の対象も広がります。
一方で、同じ面積でも「席を並べるだけ」の設計では価値が出にくくなりました。集中と協働を切り替えられる構成や、オンライン会議の増加に対応した音環境の整備など、使い方起点の設計が求められています。
参考:令和6年経済センサス‐基礎調査(民営事業所)確報集計結果|総務省統計局
リニューアル需要の増加
新築だけでなく、既存オフィスの刷新が増えると市場は厚みを増します。理由は、働き方の変更に伴い、「面積を増やす」より「使い方を変える」選択が取りやすいからです。特に、固定席中心からフリーアドレスへの移行、会議室不足の解消、社内コミュニケーションの質向上などは、レイアウトの更新で改善しやすい領域です。
また、移転を伴わない改修は、業務影響を抑えながら段階的に進めやすい点も利点です。現場の課題を小さく検証し、成果が見えた施策を拡大する進め方が取りやすくなります。
働き方改革の投資拡大
働き方改革の流れは、制度だけでなく環境整備にも波及します。例えば、長時間労働の是正や多様な働き方の推進は、業務の進め方の見直しと同時に、集中しやすい場所や相談しやすい場所など、空間の作り分けを後押しします。これにより、レイアウトや什器の選定、運用ルール設計まで含めた投資が増えやすくなります。
オフィスデザイン・レイアウト市場成長の背景
市場が拡大するかどうかは、企業がオフィスへ投資する目的が明確になるほど加速します。近年は採用と定着、デジタル活用、健康面の配慮が重なり、オフィス改善の理由が説明しやすくなりました。背景を押さえることで、導入検討も進めやすくなります。
人材確保競争の激化
採用や定着の観点から、オフィスの体験価値が見直されています。社員が集まる理由が弱いと、出社率が安定せず、教育やチーム運営の難易度が上がりやすくなります。そこで、出社時に得られる価値を「協働のしやすさ」や「相談のしやすさ」として設計に落とし込む動きが強まっています。
また、来客対応や採用面談の場としての見栄えも、企業の印象に影響します。見た目だけを整えるのではなく、業務の流れに合う動線と空間の使い分けが評価されやすい傾向です。
デジタルトランスフォーメーション推進の加速
デジタルトランスフォーメーションの取り組みは、システム導入だけで完結しません。業務の進め方が変わると、会議の仕方や情報共有の頻度、必要な設備も変わります。例えば、オンライン会議が増えると防音やマイク環境の整備が業務品質に直結します。
こうした変化に合わせて、通信環境や会議ブース、予約運用など「空間と運用をセットで最適化」する需要が高まりやすくなります。
参考:産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)|経済産業省
健康経営意識の高まり
健康への配慮は、福利厚生の枠を超えて生産性や離職にも影響します。空調や照明、姿勢に関わる什器、休憩の取りやすさなどは、日々の働きやすさに直結します。健康経営の観点から、働く環境を見直す動きが続くほど、ウェルビーイングを意識した設計が伸びやすくなります。
参考:健康経営|経済産業省
オフィスデザイン・レイアウトのサービス種類と特徴
市場の拡大とともに、オフィスデザイン・レイアウトの支援内容も多様化しています。設計施工にとどまらず、戦略立案やデータ活用まで含むサービスも増えました。自社の課題が「空間をつくること」なのか「運用を最適化すること」なのかによって、選ぶべき形態は異なります。ここでは、代表的なサービス種類を整理します。
設計施工一括型サービス
設計から施工までをまとめて依頼するタイプです。窓口が一本化されるため、意思決定と調整が進めやすい点が魅力です。移転や増床など、期限が決まっているプロジェクトでは特に相性がよい傾向があります。
一方で、社内の要件整理が曖昧なままだと、完成後に運用が定着しないケースも考えられます。業務フローや会議の実態、利用頻度などを事前に整理し、設計に反映させることが重要です。
コンサルティング型支援
現状分析や要件定義、コンセプト設計を重視する支援です。部門間の要望が割れる場合や、出社方針を含めて働き方から見直す場合に効果を発揮しやすいタイプです。
完成後の運用ルールや予約設計、評価指標の設計まで含めると、投資対効果を説明しやすくなります。設計施工は別会社にすることもあるため、責任分界と進行管理の体制を決めておくとスムーズです。
スマートオフィス型支援
人の動きや会議室の利用状況などをデータで捉え、改善を回す支援です。席や会議室が足りないのか、使い方が偏っているのかを可視化できると、改修の優先順位が決めやすくなります。
過剰な増床を避けたり、必要な場所に投資を集中させたりしやすくなるでしょう。導入時は、取得するデータの目的を明確にし、プライバシーに配慮した運用ルールを整えることが大切です。
オフィスデザイン・レイアウトの今後のトレンド
市場が拡大する局面では、伸びる領域の特徴がはっきりします。今後は「働く人の体験」と「運用のしやすさ」を両立させる設計が中心になるでしょう。ここでは注目されるトレンドを、導入の狙いとセットで解説します。
ウェルビーイング設計
身体的な快適さだけでなく、心理的な安心感や集中のしやすさまで含めた設計です。例えば、会話が必要なエリアと静かなエリアを明確に分けると、ストレスが減りやすくなります。光や音、温度の調整がしやすい環境は、業務の質にも影響します。
重要なのは、「健康によさそう」だけで終わらせないことです。離席のしやすさや短時間の相談動線など、日々の行動に落とし込める設計が評価されやすくなります。
サステナブル設計
環境配慮の流れは、調達や内装材の選定にも広がっています。長く使える什器の選択や、更新しやすいモジュール設計、廃棄を減らす改修計画などは、コスト面の合理性にもつながります。投資判断の説明でも、単年度の価格だけでなく、更新や運用を含めた総コストで比較する視点が重要です。
データ活用型設計
完成時点で終わるのではなく、利用データから改善を続ける設計です。会議室の稼働や席の利用率を見て、レイアウトを小さく更新し続けると、働き方の変化に追随しやすくなります。特に、出社比率が部署ごとに異なる企業では、固定の前提で作り切るより、改善余地を残す方が安心です。
なお、建築着工統計調査の資料では、2025年の民間非居住用の「事務所」の着工床面積が418万平方メートルと示されています。新築需要がある一方で、既存改修も含めた最適化の余地が残るため、データ活用型の支援は拡大しやすい領域です。
参考:建築着工統計調査報告(令和7年計)について(記者発表資料)|国土交通省
以下の記事ではオフィスデザイン・レイアウトの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
オフィスデザイン・レイアウト導入の進め方
導入の成否は、完成した見た目より「現場に定着するか」で決まります。最初に目的を言語化し、現状把握と要件整理を行うほど、過不足のない投資になりやすいでしょう。ここでは、進め方の要点をつまずきやすい順にまとめます。
目的と課題を言語化する
最初に「何を改善したいか」を具体化します。例えば、会議室不足や雑音による集中低下、部署間の連携不足など、課題は複数出るはずです。ここで重要なのは、優先順位を付けることです。全部を一度に解決しようとすると、設計要件が膨らみ、運用も複雑になります。あわせて、効果を測る指標も決めておくと、社内の合意形成がしやすくなります。
会議室の回転率や出社時の満足度、移動時間の短縮など、測れるものからで構いません。
現状を数値と声で把握する
現場の感覚だけでは、施策の優先順位がぶれやすくなります。会議室の予約状況や混雑する時間帯、在席率など、把握できる範囲で数値を集めます。あわせて、部署ごとの困りごとを短いヒアリングで集めると、設計の納得感が上がります。
オフィス投資は大きくなりやすいため、社内説明の根拠を揃える意味でも、現状把握は省略しない方が安全です。
複数社で見積もり条件を揃える
比較のためには、同じ条件で提案を受けることが欠かせません。対象範囲や納期、工事可能な時間帯、必要な設備などを揃えます。金額の内訳だけでなく、要件定義の支援範囲や運用設計の有無も比較すると、導入後のギャップを減らしやすくなります。
国土交通省の建設投資見通しでは、2025年度の建設投資は75兆5,700億円と示されています。外部環境として投資が動く局面では、早めの計画と比較検討が重要です。
参考:令和7年度(2025年度)建設投資見通し 概要|国土交通省
まとめ
オフィスデザイン・レイアウト市場は、働き方の変化や採用と定着の課題、デジタルトランスフォーメーション推進、健康経営の流れを受けて、再設計ニーズが高まりやすい状況です。公的統計としては、民営事業所総数や事務所の着工床面積などから需要の土台を確認できます。
導入では目的と現状把握を揃え、条件を統一して比較するほど失敗を減らしやすくなります。自社に合う支援形態を見極めるためにも、まずは複数サービスの資料請求で情報を集め、検討の精度を高めてください。


