PSI管理とは
PSI管理とは、生産・仕入れ(Production/Purchase)、販売(Sales)、在庫(Inventory)の計画や実績を連動させ、需給バランスを適正化する管理手法です。製造業では「生販在管理」、卸売業などでは「仕販在管理」と呼ばれることもあります。
販売・生産・物流などの各部門が個別に計画を立てると、「販売機会を逃さないために在庫を増やしたい」「保管コストを抑えるために在庫を減らしたい」といったように、部門ごとの判断が食い違うことがあります。その結果、過剰在庫や欠品、急な生産・調達計画の変更につながる場合があります。
PSI管理では、販売見込み、生産・調達予定、現在庫、入出庫予定などを同じ時間軸で管理し、「いつ・何を・どれだけ作る、仕入れる、売る、保有するのか」を調整します。現在の在庫数だけでなく、数週間後・数か月後の予定在庫まで把握し、需要と供給のズレを早期に発見できる点が特徴です。
PSI管理をシステム化する場合は、PSI・需給調整に特化した製品のほか、需要予測やSCP、S&OPなどの機能を備えた製品も選択肢になります。対応範囲は製品によって異なるため、自社がどこまで需給管理をシステム化したいのかを整理したうえで比較することが重要です。
なお、PSI管理は、調達から生産、物流、販売までを最適化するSCM(サプライチェーンマネジメント)の重要な要素の一つです。PSI管理に加えてサプライチェーン全体を一元管理したい場合は、SCMシステムの導入も検討しましょう。おすすめのSCMシステムや選び方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
PSI管理システムの主な機能
PSI管理システムには、販売・生産・調達・在庫に関するデータを一元化し、将来の需給バランスを把握・調整するための機能が搭載されています。代表的な機能を紹介します。
販売計画・需要予測
過去の販売・出荷実績や受注情報、営業部門の見込み情報などをもとに、今後の販売数量や需要を予測・計画します。製品によっては、AIや統計モデルを活用した需要予測や、季節変動・販促イベントを考慮した予測値の補正にも対応しています。
生産・調達計画
販売計画や需要予測、現在庫、安全在庫などをもとに、必要な生産量や発注量を算出します。設備能力やBOM、調達・生産リードタイムなどの制約条件を考慮し、実行可能性の高い計画を立てられる製品もあります。
予定在庫の可視化・アラート
現在庫に加えて、今後の入荷・生産・販売予定を反映した予定在庫を時系列で可視化します。欠品や過剰在庫が発生する可能性のある商品を事前に把握し、生産量や発注時期などを早めに調整できます。
シミュレーション・情報共有
販売数量の増減や調達遅延、生産能力の変化など、さまざまな条件を設定して将来の需給をシミュレーションできます。また、PSI情報を営業・生産・購買・物流などの部門間で共有することで、計画変更や需給調整に関する意思決定を行いやすくなります。
PSI管理システムを導入するメリット
PSI管理をシステム化すると、生産・販売・在庫の計画を効率化できるだけでなく、欠品・過剰在庫の抑制や部門間連携、経営判断の迅速化にもつながります。主なメリットを紹介します。
欠品や過剰在庫を抑制できる
販売予定や生産・調達予定、将来の在庫推移をまとめて確認できるため、欠品や過剰在庫の兆候を早期に把握できます。問題が発生してから対応するのではなく、生産量や発注時期の見直し、拠点間の在庫移動などを事前に検討しやすくなります。
Excelによる集計・計画作成を効率化できる
ExcelでPSI管理を行う場合、基幹システムや各部門からデータを集め、複数のファイルを更新・集計する作業が発生します。システムでデータを一元管理すれば、転記や集計、計画更新にかかる作業負担を軽減でき、需要や在庫の変化への迅速な対応につながります。
属人化を防ぎ、部門間の認識を統一できる
生産量や発注量の判断を担当者の経験や勘に頼っていると、担当者によって計画の精度や判断基準に差が生じることがあります。PSI管理システムで計画や在庫基準を共有すれば、判断基準を標準化し、営業・生産・購買・物流などの認識をそろえやすくなります。
在庫を経営指標として管理しやすくなる
在庫は安定供給に欠かせない一方、過剰になれば保管コストの増加やキャッシュフローの悪化につながります。PSI管理システムで在庫数量だけでなく、在庫金額や回転率なども把握できれば、需給計画と経営指標を結び付けた判断がしやすくなります。
PSI管理システムの選び方
PSI管理システムは、製品によって対応範囲や得意分野が異なります。予定在庫の可視化に強い製品もあれば、需要予測から生産・調達計画、S&OPまで幅広く対応する製品もあります。導入後のミスマッチを防ぐため、以下のポイントを比較しましょう。
- ●自社がシステム化したいPSI管理の範囲に対応しているか
- ●必要な計画粒度と時間軸に対応しているか
- ●需要予測をどこまでシステム化できるか
- ●生産・調達の制約条件を反映できるか
- ●将来在庫を適切に可視化・分析できるか
- ●既存のERP・生産管理システム・WMSなどと連携できるか
- ●複数拠点・海外拠点を含むPSI管理に対応できるか
- ●自社の商品・業界特有の条件に対応できるか
- ●現場が継続して運用できる操作性・支援体制があるか
自社がシステム化したいPSI管理の範囲に対応しているか
まず、自社がPSI管理のどこまでをシステム化したいのかを明確にしましょう。例えば、既存のERPで販売計画や生産計画を作成できており、予定在庫の把握だけが課題なら、PSI情報の可視化・分析に強い製品が適しています。
一方、需要予測から生産量・発注量の算出、在庫配置まで一連の業務を改善したい場合は、需給計画全体をカバーする製品が必要です。さらに経営企画部門でも利用する場合は、売上や利益、在庫金額などを含めてS&OP・IBPへ展開できるかも確認しましょう。機能の多さではなく、自社の課題を解決できる範囲に対応しているかが重要です。
必要な計画粒度と時間軸に対応しているか
PSI管理で必要な計画の粒度や時間軸は、企業や商品によって異なります。月次で中長期の需給を確認できれば十分な場合もあれば、需要変動の大きい商品では週次・日次での調整が必要になる場合もあります。
また、全社・商品カテゴリ単位で管理するのか、SKU・得意先・工場・倉庫単位まで細かく管理するのかも確認しましょう。経営企画は月次・カテゴリ単位、生産管理は週次・製品単位、物流は日次・倉庫単位など、部門によって必要な粒度が異なるケースもあります。複数階層の計画を集約・分解できる製品なら、経営計画と現場計画を連携しやすくなります。
需要予測をどこまでシステム化できるか
販売計画の精度は、その後の生産・調達・在庫計画にも影響します。そのため、需要予測をPSI管理システム内でどこまで行うのかを検討しましょう。
製品によって、過去実績をもとにした統計予測、AIによる需要予測、担当者による予測値の補正など、対応する機能は異なります。一方、需要予測は別システムや営業部門で行い、確定した販売計画だけをPSI管理システムに連携する運用も可能です。「誰が予測を作成し、どのように販売計画へ反映するのか」まで想定して比較しましょう。
需要予測の精度向上を特に重視する場合は、AIや統計モデルなどを活用できる需要予測システムもあわせて比較してみましょう。
生産・調達の制約条件を反映できるか
需要や在庫だけをもとに必要量を算出しても、設備能力や調達条件を考慮していなければ、実行できない計画になる可能性があります。
製造業では、設備能力、製造リードタイム、BOM、原材料在庫、仕入先の供給能力など、さまざまな制約があります。購買・調達では、最小発注量や発注ロット、調達リードタイムなども考慮しなければなりません。
計画の実現性を重視する場合は、自社に必要な制約条件を設定できるか、条件変更時に再計算やシミュレーションができるかを確認しましょう。特に多品種・多拠点の製造業では重要なポイントです。
生産計画だけでなく、工程管理や原価管理、製造実績まで一元化したい場合は、生産管理システムの導入も検討しましょう。
将来在庫を適切に可視化・分析できるか
PSI管理では、現在庫だけでなく、「このまま推移するといつ欠品・過剰在庫になるのか」を把握することが重要です。製品別・拠点別の将来在庫をグラフなどで確認できるか、基準在庫を上回る・下回るタイミングをアラートできるか、滞留在庫や在庫日数を分析できるかを比較しましょう。
複数倉庫を運営している場合は、在庫配置の最適化にも注目してください。全社では在庫が足りていても、特定拠点に偏れば欠品や緊急輸送が発生する可能性があります。拠点間の在庫移動や補充量まで算出できる製品なら、物流を含めたPSI最適化につながります。
既存のERP・生産管理システム・WMSなどと連携できるか
PSI管理には、販売実績や受注、在庫、生産実績、発注・入荷予定など多くのデータが必要です。これらを導入後も手作業で入力していては、十分な業務効率化につながりません。
ERP、生産管理システム、販売管理システム、WMS、MESなどとの連携方法を確認しましょう。API連携だけでなく、CSVなどのファイル連携が適している場合もあります。また、製品コードや拠点コードなどがシステムごとに異なる場合は、マスタ整備も必要です。連携方式だけでなく、既存データやマスタをスムーズに活用できるかまで確認しましょう。
複数拠点・海外拠点を含むPSI管理に対応できるか
工場や倉庫、販売拠点が複数ある企業では、拠点ごとのPSIだけでなく、「どの工場で生産し、どの倉庫へ配置し、どの市場へ供給するのか」まで横断的に管理できることが重要です。
海外拠点を含む場合は、多言語・多通貨への対応に加え、拠点ごとのリードタイムや供給制約を反映できるかも確認しましょう。ただし、国内の限られた拠点だけで利用する場合は、高度なグローバルSCM機能がオーバースペックになる可能性もあります。現在の運用規模と今後の展開を踏まえて選定してください。
自社の商品・業界特有の条件に対応できるか
PSI管理で考慮すべき条件は、業界や商品によって異なります。例えば、食品・飲料では賞味期限やロット、生産ロス、機械・電機ではBOMや部品調達、設備能力、卸売業では仕入リードタイムや発注ロット、在庫配分などへの対応が求められます。
こうした条件に標準機能で対応できるのか、設定変更や追加開発が必要なのかを確認しましょう。自社と同じ業界や類似した業務での導入実績も、製品との相性を判断する材料になります。
現場が継続して運用できる操作性・支援体制があるか
PSI管理は、販売実績や需要の変化に応じて計画と実績を確認し、継続的に見直す必要があります。そのため、機能の豊富さだけでなく、担当者が問題のある品目を見つけやすいか、計画変更の理由を把握しやすいかなど、日常業務での操作性も重要です。
また、PSI管理そのものの業務設計に課題がある場合は、システムを導入するだけでは定着しないこともあります。現状分析や業務設計、初期設定、導入後の改善まで支援してもらえるかなど、サポート・コンサルティング体制も含めて比較しましょう。
PSI管理システムは、対応範囲や需要予測機能、在庫の可視化方法、既存システムとの連携性などが製品によって異なります。自社に適した製品を効率よく見極めるためにも、複数製品の資料を取り寄せて機能や特徴を比較してみましょう。
おすすめのPSI管理システムを比較
ここからは、PSI管理や需給調整、在庫最適化に活用できるおすすめのシステムを紹介します。予定在庫の可視化に強い製品から、需要予測、生産・調達計画、S&OP、サプライチェーン全体の計画まで対応する製品まで、特徴や対応範囲はさまざまです。自社がPSI管理のどこまでをシステム化したいのかを整理し、必要な機能と照らしあわせて比較しましょう。
φ-Pilot series
- 需要予測や発注量の計算を支援
- 予定在庫の異常を可視化
- 業務に合わせた導入方法を選択
株式会社フェアウェイソリューションズが提供する「φ-Pilot Series」は、出荷・入荷実績や現在庫、出荷予測、入荷予定などをもとに、需給調整を支援するソリューションです。製品ラインや製品グループ、対象倉庫を指定し、日・週・月など任意のサイクルで需要量を算出できます。製品ごとの実績と予定を可視化できるほか、出荷予測や在庫バランス表示などの関連機能も用意されています。将来の需給状況を把握し、欠品や過剰在庫を防ぎながら生産・調達計画の精度を高めたい企業に適しています。
SynCAS PSI Visualizer (株式会社日立ソリューションズ東日本)
- 大量品目の在庫推移を可視化し、問題在庫を発見。
- 全社在庫からSKU単位まで最大15階層で分析可能。
- アラート機能で過剰在庫や欠品などの把握を支援。
FOREMAST (キヤノンITソリューションズ株式会社)
- 複数の数理予測モデルから適したモデルを自動選択。
- 5つのSIコアを課題に応じて組み合わせて導入可能。
- 需給計画から在庫補充計画まで一連の業務を支援。
LMS-PSI (株式会社セイノー情報サービス)
- 生産・販売・在庫情報を統合し、未来在庫を可視化。
- 物流拠点や輸送キャパを考慮したリソース計画に対応。
- 未来在庫とトラックや作業員のリソースをシミュレーション。
需給マイスター (株式会社FLAPS)
- 過去の販売実績から販売計画値を自動で算出。
- リードタイムを考慮し生産・仕入計画へ自動展開。
- PSIを一元管理し、計画値の見直しをリアルタイムに反映。
PSIソリューション (株式会社システムインテグレータ)
- 需要や供給の実績を踏まえた生産計画の策定を支援。
- 設備能力や製造順序など複数の制約条件を考慮。
- 生産・販売・在庫を連携し、部門横断の計画を支援。
Kinaxis Maestro (キナクシス・ジャパン株式会社)
- 社内外のデータを統合し、サプライチェーン全体を可視化。
- シナリオ分析により、変化が計画や供給網へ与える影響を把握。
- AIと常時稼働の計算エンジンで意思決定を支援。
SAP Integrated Business Planning (SAPジャパン株式会社)
- AIや統計モデルを活用し、短期・長期の需要予測を支援。
- 需要・供給・在庫などの計画プロセスを一元化。
- 需給変化のシミュレーションやシナリオ比較に対応。
需っ給さん (株式会社シグマクレスト)
- 過剰在庫や欠品になりそうな商品を認知、調整できる仕組みを提供
- 需給バランスを速やかに調整して食品ロス削減に繋げる!
- 手順に沿って誰でも同じように需給調整することが可能!
o9デジタルブレイン (o9ソリューションズ・ジャパン株式会社)
- Graph技術の多次元DBでサプライチェーン全体を一元管理。
- AI・MLで高精度な需要予測と供給計画を自動化・迅速化。
- IBP対応で戦略・財務・供給を統合し全社最適を実現。
PSI管理システム導入時の注意点
PSI管理システムの効果を十分に引き出すには、製品選定だけでなく、導入前のデータ整備や運用ルールの明確化も重要です。導入後の定着や活用を見据え、以下のポイントに注意しましょう。
元となるデータやマスタを整備する
需要予測や予定在庫の精度は、もととなるデータの品質に左右されます。在庫数が実態とずれていたり、商品コードやリードタイムが更新されていなかったりすると、システム上では正しく計算できても、実務で活用しにくくなります。
導入前に、商品・部材・拠点・BOM・リードタイムなどのマスタを確認し、誰が・いつ・どのデータを更新するのかまで決めておきましょう。
部門ごとの責任範囲と判断ルールを明確にする
PSI管理には、販売・生産・購買・物流など複数の部門が関わります。販売計画の変更や在庫アラートが発生した際に、判断する担当者や計画を修正する部門が曖昧だと、システムを導入しても調整に時間がかかる可能性があります。
販売見込みの確定方法、安全在庫の基準、計画変更時の承認フローなどを整理し、部門間で共通の判断ルールを定めておくことが重要です。
対象範囲を絞って導入効果を検証する
全商品・全拠点を一度にシステム化すると、データ整備や業務変更の負担が大きくなる場合があります。まずは、在庫金額が大きい商品群や欠品が頻発している商品、特定の工場・倉庫などに対象を絞って導入する方法も有効です。
在庫日数、欠品率、滞留在庫、生産計画の変更回数、計画作成工数などのKPIを設定し、導入前後の効果を確認しながら対象範囲を広げることで、PSI管理を定着させやすくなります。
PSI管理システムに関するよくある質問
PSI管理システムの導入を検討する際によくある疑問をまとめました。Excel管理との違いや、在庫管理・SCM・S&OPとの関係も確認しておきましょう。
- Q1:PSI管理はExcelでもできますか?
- 品目数や拠点数が少なく、更新頻度も高くない場合はExcelでも管理できます。ただし、対象範囲が広がると集計や更新の負担、属人化が起こりやすいため、複数部門で情報を共有する場合はシステム化が適しています。
- Q2:PSI管理と在庫管理の違いは何ですか?
- 在庫管理は現在の在庫数や入出庫を管理するのに対し、PSI管理は販売・生産・調達計画と連動させて将来の在庫推移まで把握します。欠品や過剰在庫を予測し、需給を調整する点が大きな違いです。
- Q3:PSI管理とSCM・S&OPの違いは何ですか?
- PSI管理は生産・販売・在庫のバランスを調整する取り組みです。SCMは調達から販売までサプライチェーン全体を最適化し、S&OPは需給計画に売上や利益などの経営数値も加えて統合的に管理します。
- Q4:PSI管理システムはどのような企業におすすめですか?
- 品目数や拠点数が多い企業、需要変動が大きく欠品・過剰在庫が発生しやすい企業に適しています。また、複数部門がExcelで個別に計画を管理し、情報共有や調整に時間がかかっている場合にも有効です。
- Q5:PSI管理システムの導入前に準備しておくことはありますか?
- 販売計画や在庫、生産・調達実績などのデータ精度を確認し、商品コードや拠点、リードタイムなどのマスタを整備しておきましょう。あわせて、計画変更時の担当者や判断ルールも明確にしておくことが重要です。
まとめ
PSI管理システムを活用すれば、生産・販売・在庫の情報を一元化し、将来の欠品や過剰在庫を予測しながら需給バランスを調整できます。Excel中心の管理で発生しやすい集計作業の負担や属人化を抑え、部門間で同じ情報を共有しやすくなる点もメリットです。
ただし、製品によって予定在庫の可視化、需要予測、生産・調達計画、S&OPなど対応範囲は異なります。まずは自社のPSI管理における課題や必要な機能を整理し、複数製品の機能や連携性、導入支援などを比較したうえで、自社に適したシステムを選びましょう。

