株式会社クイック(証券コード:4318)は、同社および連結子会社14社で構成される人材サービス企業です。人材紹介や人材派遣を担う人材サービス事業を中核に、リクルーティング事業、地域情報サービス事業、HRプラットフォーム事業、海外事業の5セグメントを展開しています。「看護roo!」や「日本の人事部」といった専門メディアを保有し、有料職業紹介を軸としたサービスを国内外で提供しています。
2027年3月期第1四半期の業績は、売上高103億76百万円(前年同期比+5.2%)、営業利益29億71百万円(同+4.6%)、経常利益29億92百万円(同+4.9%)、純利益20億57百万円(同+9.4%)となりました。5つのセグメントのうち3つが増収となり、全社では増収増益で今期をスタートしています。
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【株式会社クイック(証券コード:4318)徹底解説】2026年3月期 通期──増収増益で純利益は前期比+16.1%の大幅増
1. 今期スタートを取り巻く市場環境
当第1四半期の日本経済について、同社は継続的な賃上げによる所得環境の改善と、インバウンド需要の拡大に支えられ緩やかな回復基調で推移したとしています。一方で、物価上昇による消費マインドの停滞や、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の上昇など、先行きは依然として不透明な状況が続いているとの認識も示されました。
国内の雇用情勢では、5月の有効求人倍率(季節調整値)が1.17倍、完全失業率(季節調整値)が2.5%となりました。各指標は引き続き企業の人手不足を反映した内容であり、採用ニーズそのものは底堅く推移していると見られます。人材サービス各社にとっては、需要が減退するというより、案件の獲得競争が激しくなる局面と考えられます。
採用手法の多様化も進んでいます。アグリゲーション型の求人サービスや生成AIを用いた採用業務の自動化が広がる一方、従来型の制作サービスは市場環境の変化を受けやすくなっています。人材サービス事業者には、紹介・派遣・広告・コンサルティングを組み合わせた総合提案力が求められる環境になりつつあると言えます。
2. 業績推移
詳しい数値は決算短信本文でも確認できます。
株式会社クイック 2027年3月期 第1四半期決算短信(PDF)
2027年3月期第1四半期の売上高は103億76百万円となり、前年同期比+5.2%の増収となりました。前年同期の売上高は98億63百万円でしたので、四半期ベースで100億円台に乗せた形です。既存事業のサービス開発投資強化や新サービスの提供、グループ内連携の強化が売上の押し上げに寄与しています。
利益面では、営業利益29億71百万円(前年同期比+4.6%)、経常利益29億92百万円(同+4.9%)、純利益20億57百万円(同+9.4%)となりました。積極的な採用や研修、従業員向け譲渡制限付株式付与制度の導入といった人的投資を進めながら、増益を確保しています。純利益の伸びが営業段階の伸びを上回っている点も特徴です。
財務面では、第1四半期末の総資産が262億92百万円となり、前期末比3億45百万円の増加となりました。負債合計は61億77百万円で3億89百万円減少し、純資産は201億14百万円と7億34百万円増加しています。自己資本比率は76.5%となり、前期末の74.7%から上昇しました。
3. 直近決算の重要ポイント
今回の決算で目を引くのは、リクルーティング事業の伸びです。同事業の売上高は10億08百万円(前年同期比+24.1%)、営業利益は3億49百万円(同+90.9%)と大幅に拡大しました。主力商材である「Indeed」や「求人ボックス」といったアグリゲーション型求人サービスが好調に推移したことに加え、業界特化型やアルバイト・パート採用特化型のメディアも順調に拡大しています。
一方で、HRプラットフォーム事業は売上高3億24百万円(前年同期比-8.7%)、営業利益1億51百万円(同-16.3%)と減収減益になりました。HRテック領域におけるユーザーのリプレースニーズが一巡し、類似サイトやイベントの増加により人事支援サービス企業の広告予算が分散していることが背景です。「日本の人事部」オンライン広告は、一部主要顧客のマーケティング予算縮小の影響も受けています。
もう一つ押さえておきたいのが、連結子会社の異動です。同社は2026年7月1日に株式会社ワークプロジェクトの全株式の譲渡を完了しています。当第1四半期には同社が展開する保育士派遣・保育士紹介・保育園運営の業績が含まれており、第2四半期以降は連結範囲が変わる点に留意が必要です。
4. 今期の重点領域と収益構造
売上の中心は人材サービス事業で、第1四半期の売上高は75億48百万円(前年同期比+2.5%)、営業利益は26億49百万円(同+0.2%)でした。人材紹介では製造業やIT分野、製薬に加えて看護師の採用ニーズが堅調に推移しています。特定領域では今期から新たにリリースした旗艦サイト「アンドプロ」の機能開発とコンテンツ拡充に投資し、オーガニックな集客基盤の構築を進めています。
派遣では、医療・福祉分野のニーズが引き続き高い状況にあります。看護師派遣は介護施設や病院への営業強化、派遣希望登録者との面談強化、派遣スタッフとの契約更新への注力によって順調に拡大しました。ただし北陸エリアの医療・福祉分野は対応エリアの縮小などで減収となり、派遣全体ではほぼ横ばいにとどまっています。
地域情報サービス事業は売上高7億85百万円(前年同期比+5.4%)、営業利益1億38百万円(同-17.7%)でした。生活情報誌の販促広告は大手顧客の需要に支えられて堅調でしたが、ポスティングサービスは前年同期の通販チラシ特需の反動などで減収となっています。海外事業は売上高7億10百万円(同+21.2%)、営業利益53百万円(同+26.8%)と伸長しました。
5. 業界の注目ポイント
アグリゲーション型求人サービスの存在感
求人広告の領域では、複数のWebサイトから求人情報を収集する検索エンジン型のサービスが主力商材となっています。クイックのリクルーティング事業でも「Indeed」や「求人ボックス」が好調に推移し、売上高+24.1%という伸びを支えました。地域情報サービス事業でも「Indeed」は新規顧客開拓と高い既存顧客継続率により好調でした。
この構造は、媒体を保有するモデルから運用支援を担うモデルへの重心移動を示していると考えられます。掲載枠を売るのではなく、採用成果に向けた運用の巧拙が収益を左右する形です。顧客ごとの運用ノウハウを蓄積できる事業者ほど、継続的な取引につながりやすい環境になりつつあると見られます。
採用業務における生成AI活用の広がり
コンサルティング・制作領域では、生成AIなどのテクノロジー活用による採用業務の自動化・効率化が進んでいます。同社のコンサルティング領域は、AI面接などの新商材の受注もあり堅調に推移しました。一方で採用サイトや会社案内などの制作領域は、市場環境の変化による影響を受けて苦戦しています。
制作から運用・設計支援へと付加価値の所在が移っていることは、人材サービス業界に共通する論点だと考えられます。採用戦略の構築や採用業務代行、面接官研修といった上流の支援は、テクノロジーで置き換えにくい領域です。この領域をどこまで広げられるかが、各社の収益性を分ける要素になると見られます。
医療・介護分野の人手不足と専門メディアの役割
医療・福祉分野では、直接雇用だけでは人手不足が解消されない状況が続いています。クイックの看護師派遣が順調に拡大した背景にも、この構造的な需要があります。新卒看護領域では、就職情報サイト「看護roo! 就活」への掲載病院件数が順調に増加しました。
専門領域に特化したメディアを保有することは、登録者の獲得コストを抑える意味でも有効だと考えられます。同社は「看護roo!」ブランドの浸透に向けてWebCMやSNSを活用したプロモーションを継続しています。医療人材の需給が当面緩みにくいことを踏まえると、この領域は中期的な収益基盤になり得ると見られます。
6. ITトレンド編集部の考察
今回の第1四半期は、売上高+5.2%、営業利益+4.6%、純利益+9.4%と、堅実な増収増益でした。人的投資を継続しながら利益を伸ばした点は評価できます。特にリクルーティング事業の営業利益が+90.9%と大きく伸びたことは、求人広告の運用支援というモデルが機能していることを示していると考えられます。
他方で、セグメント間の温度差も鮮明になりました。売上の7割超を占める人材サービス事業は営業利益が+0.2%とほぼ横ばいで、HRプラットフォーム事業は減収減益です。全社の伸びを支えているのが相対的に規模の小さいセグメントである点は、今後の持続性を見るうえで注意したいところです。
通期予想は売上高348億円(前期比+2.6%)、営業利益41億10百万円、純利益28億05百万円と、前期実績を下回る利益計画が据え置かれています。第1四半期の進捗は営業利益で7割超に相当しますが、これは四半期ごとの季節性も影響していると見られます。2026年7月に完了した子会社株式の譲渡による連結範囲の変化とあわせて、第2四半期以降の推移を確認したい局面です。
7. まとめ
- 2027年3月期第1四半期:売上高103億76百万円(前年同期比+5.2%)、営業利益29億71百万円(同+4.6%)、経常利益29億92百万円(同+4.9%)、純利益20億57百万円(同+9.4%)
- リクルーティング事業が売上高10億08百万円(同+24.1%)、営業利益3億49百万円(同+90.9%)と大きく伸長
- 人材サービス事業は売上高75億48百万円(同+2.5%)、営業利益26億49百万円(同+0.2%)とほぼ横ばい
- HRプラットフォーム事業は売上高3億24百万円(同-8.7%)、営業利益1億51百万円(同-16.3%)と減収減益
- 総資産262億92百万円、純資産201億14百万円、自己資本比率76.5%と財務は健全
- 2027年3月期通期予想:売上高348億円(前期比+2.6%)、営業利益41億10百万円、経常利益42億20百万円、純利益28億05百万円で据え置き
ITトレンド編集部
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