セキュリティ市場の捉え方
動向を見る前に、市場という言葉が何を指すのかを押さえておきましょう。
市場を構成する領域
セキュリティ市場は単一の領域ではなく、複数の分野の集合として捉えられます。端末を守る対策、ネットワークの境界を守る対策、認証やアクセスの制御、情報の持ち出しを防ぐ対策、記録の管理と監視、そして運用を支援するサービスといった分野が含まれます。
製品を提供する事業者だけでなく、監視や対応を請け負うサービス、コンサルティング、教育の提供者も市場の一部です。どこまでを含めるかによって、示される規模も変わります。自社に関わる領域はどこかを意識して読むことが、情報を活かす前提になります。
統計を読む際の前提
公開されている調査は、調査機関ごとに対象範囲や分類の定義が異なります。同じ分野を扱っていても、含める製品やサービスの範囲が違えば、示される数値も一致しません。異なる調査の数値を並べて比較することは避けたほうが安全です。
また、調査の時点と公表の時点には差があります。示されている内容が現在の状況をそのまま表しているとは限りません。数値そのものより、どの領域が伸びているのか、その理由として何が挙げられているのかという傾向に注目すると、判断の材料として使いやすくなります。
需要が高まっている背景
市場の動きの背後にある要因を、三つに分けて確認します。
働く場所と端末の広がり
在宅勤務や外出先からの業務が広がり、社内のネットワークの中だけを守る前提が成り立たなくなりました。従業員が使う端末も、会社が支給したパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットへと広がっています。
守るべき対象が社外へ分散したことで、端末そのものを対象とした対策や、接続のたびに確認する仕組みへの関心が高まっています。境界を守る従来の対策が不要になったわけではなく、組み合わせる層が増えたと捉えるほうが実態に近いといえます。
クラウド利用の拡大
業務システムやファイルの保管をクラウドサービスに移す動きが広がりました。データが社外の環境に置かれ、社外からも接続される前提に変わったことで、設定や権限の管理が新たな課題になっています。
事業者が担う範囲と利用者が担う範囲が契約によって分かれるため、自社が受け持つ部分を把握する必要が生じます。利用するサービスの数が増えると、それぞれの設定を管理する負担も積み上がります。この領域を支える仕組みへの需要が高まっている背景です。
取引先や制度から求められる水準
取引を開始する際や更新の際に、情報管理の体制について説明を求められる場面が増えています。供給を担う立場では、自社が原因で相手の事業に影響が及ぶことを避ける必要があるためです。
個人情報の取り扱いや、業種ごとに定められた基準への対応も求められます。制度の内容は改正されることがあるため、対応の要否は所管の窓口や専門家に確認しながら判断しましょう。自社の判断だけでなく、外部から求められる水準も投資の理由になっている点が特徴です。
注目されている対策の領域
背景を踏まえ、関心が集まりやすい領域を二つ挙げます。
端末を対象とした対策
従業員が使う端末は、社外へ持ち出される前提になりました。境界での確認をすり抜けた場合に備え、端末側で不審な挙動を検知する仕組みへの関心が高まっています。
既知の不正なプログラムと照合する方式に加えて、動作の内容から判断する方式や、感染した後の動きを追える仕組みが提供されています。ただし、検知した後に誰が判断し対処するのかという体制がなければ、通知が届くだけで終わります。導入とあわせて運用の設計が必要な領域です。
認証とアクセス制御
接続する場所が社内に限られなくなったことで、誰が接続しているかを確認する仕組みの重要性が高まりました。IDとパスワードだけに頼らず、もう一つの要素を組み合わせる構成が広がっています。
あわせて、接続できる範囲を役割に応じて分ける取り組みも進んでいます。一度の認証で広い範囲に届く構成では、なりすまされた際の影響が大きくなるためです。端末の状態や接続元を条件に含める考え方も、この領域に含まれます。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でセキュリティシステムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
市場の動向を自社の判断に活かす
公開されている情報を、どう自社の検討につなげるかを整理します。
流行ではなく自社の課題を基準にした選定
注目されている領域が、自社にとって優先すべき領域とは限りません。まず、守りたい情報がどこにあり、どの経路から出ていく可能性があるかを洗い出すことが出発点になります。
そのうえで、市場の動向を参考にするとよいでしょう。同じ課題に対してどのような手立てが提供されているかを知る材料として使えます。新しい分類の言葉が示されていても、それが自社の課題に対応するかは別に判断する必要があります。
費用の考え方と優先順位
対策には終わりがなく、すべてを整えようとすれば費用は際限なく膨らみます。事業への影響が大きい部分から順に手を打つ考え方が現実的です。
費用は製品の購入額だけでは決まりません。設定や運用にかかる担当者の時間、通知への対応、教育の実施も含めて見積もる必要があります。社内に担当を置けない場合は、監視や対応を委託する費用も選択肢として比較しましょう。数年単位で総額を捉えると、判断しやすくなります。
セキュリティシステムの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
守りたい対象と範囲の整理
最初に、何を守るのかを具体化します。端末なのか、ネットワークの境界なのか、クラウド上のデータなのか、社外とのやり取りなのかによって、選ぶべき製品が変わります。
あわせて、対象となる台数や利用者数も整理しましょう。規模の想定は費用の試算に直結します。すでに導入している対策との重なりも確認し、同じ役割の仕組みを重ねて持たないよう整理しておくことが望まれます。
運用体制と管理の負担
導入した後に、誰が設定を維持し、通知を確認し、検知した際に判断するのかを決めておく必要があります。この体制がなければ、導入しても効果は限られます。
管理者の画面で状況を一覧できるか、通知の条件を調整できるかは、負担を左右する要素です。担当者一人に集中する体制では、休暇や異動の際に確認が止まります。社内で担えない範囲は、委託を含めて検討しましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、台数や利用者数に応じた月額制、機器の購入と保守契約、機能ごとの追加課金など、製品によって考え方が異なります。数年単位の総額で比べると、製品ごとの差が見えやすくなります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定を支援してもらえるのか、検知時の判断を相談できるのかは製品ごとに差があります。緊急時の連絡手段と対応時間帯も確認しておきましょう。
セキュリティ市場の動向を踏まえた検討に役立つ製品
注目される対策領域にあわせて検討できる、セキュリティシステムを紹介します。
Verkada クラウド管理型 物理セキュリティ・プラットフォーム
- 複数施設の物理セキュリティを1つのプラットフォームで管理
- AIなどを活用した最先端の機能を常時アップデート
- 遠隔からでもすべての管理デバイスにアクセス可能
Verkada Japan 株式会社が提供する「Verkada クラウド管理型 物理セキュリティ・プラットフォーム」は、監視カメラや入退室管理をクラウド上で一元管理できるシステムです。複数拠点の映像や記録をまとめて確認できる構成になっており、物理セキュリティ分野での需要拡大にあわせた製品として位置づけられます。
ThreatConnect (ThreatConnect, Inc.)
- 脅威インテリジェンスとリスク定量化を統合
- AIや機械学習を活用した分析と自動化機能を提供
- セキュリティ運用ツールとの連携やワークフロー自動化に対応
Anomali ThreatStream (Anomali合同会社)
- 脅威の早期発見と対応を加速する統合システム
- AI自動分析で脅威特定と優先順位付けを簡素化
- AIとデータ統合でセキュリティ対応を迅速化
セキュリティ市場に関するよくある質問
検討を進める担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 市場規模の数値はどう扱えばよいですか?
- 調査機関によって対象範囲や分類の定義が異なるため、異なる調査の数値を並べて比較することは避けたほうが安全です。数値そのものより、どの領域が伸びているか、その理由として何が挙げられているかという傾向に注目しましょう。
- Q2: 注目されている対策から導入すべきですか?
- 注目度と自社にとっての優先度は一致するとは限りません。まず守りたい情報と想定される経路を洗い出し、そこに対応する手立てを選ぶ進め方が現実的です。市場の情報は、選択肢を知る材料として使いましょう。
- Q3: 予算をどう考えればよいですか?
- 一律の目安はありません。事業への影響が大きい部分から順に手を打ち、製品の費用だけでなく運用にかかる時間も含めて見積もることが望まれます。社内で担えない範囲は委託の費用も比較して判断しましょう。
- Q4: 小規模な企業でも対策は必要ですか?
- 企業の規模にかかわらず、公開されている入口は接続を試みられる可能性があります。取引先から体制の説明を求められる場面もあります。まず費用のかからない設定の見直しから始め、必要に応じて範囲を広げるとよいでしょう。
まとめ
セキュリティ市場は複数の領域の集合であり、調査ごとに対象範囲や定義が異なります。数値を単純に比較するのではなく、どの領域で需要が高まり、その背景に何があるのかを読み取ることが実務に活きます。働く場所と端末の広がり、クラウド利用の拡大、外部から求められる水準が、需要を押し上げる要因として挙げられます。自社の課題から優先順位を決めたうえで、運用体制と費用を含めて製品を比べましょう。


