XRとは
XRとは「Cross Reality(クロスリアリティ)/Extended Reality (エクステンデッドリアリティ) 」の略称で、現実の物理空間と仮想空間を組み合わせる技術の総称です。 XRには、VR・AR・MR・SRの4種類を含みます。
VRやARなどの技術は、それぞれ発展し商品開発に利用されてきました。しかし最近は、VRに加えARを併用するサービスもでてきており、両者の線引きが明確ではありません。そのため複数の仮想技術を組み合わせた場合は、まとめて「XR」と呼ばれています。
XRは、物理的に存在しないものを現実として知覚できる技術です。次世代技術として無限の可能性が秘められているため、あらゆる分野で普及すると予想されています。
なお、インターネット上の仮想空間を意味する「メタバース」は、XRを用いた空間上でのサービスです。XRが技術を表すのに対して、メタバースはサービスの総称である点に大きな違いがあります。
VR・AR・MR・SRとは
XRに属するVR・AR・MR・SRは、具体的にどのような技術なのでしょうか。それぞれの概要や特徴・活用事例などを紹介します。
VR(仮想現実)
専用のVRゴーグルやヘッドマウントディスプレイを装着することで、仮想空間を現実のものとして知覚できる技術です。Virtual Realityの略で、未来の東京タワーをイメージした「バーチャル東京タワー」を描くことができるなど、エンタメ業界との親和性が高いといわれています。
最近はエンタメ業界以外にも、3Dアバターを利用したバーチャル会議や、工場の作業現場を再現した施設見学などにも活用されています。VRは、まだまだ進化の過程であり、発展途上の技術といえるでしょう。
参考:メタバース空間に自分の不動産が持てる!?東京タワーが一望できる“バーチャルタワーマンション”を発表!|株式会社メタバースジャパンのプレスリリース
AR(拡張現実)
Augmented Realityの略で、ヘッドマウントディスプレイやスマートフォンなどを通して見た現実空間に、仮想空間を融合できる技術です。VRとは異なり現実世界がベースとなっているため、「拡張現実」と呼ばれています。
ARが活用されている業界はさまざまです。
例えば、スマートフォンのカメラアプリでは、現実の顔にさまざまな仮想的な装飾を施せます。具体的には、実物より目を大きくしたり、ユニークなメイクを施したりなどがあげられます。現実空間と仮想空間を融合させたままでの動画撮影も可能です。
そのほかメガネ型のスマートグラスを利用すると、遠隔地からでも現場作業をサポートできます。普通は視覚できない部分も可視化できるため、医療現場や教育分野での学習・トレーニングにも有効です。
また、製造業では試作品を製作する際、ある程度の時間や費用が必要です。しかしARを活用することで、通常よりも低コストで試作品を製作できます。
MR(複合現実)
VRやARよりも高精度で、現実世界と仮想空間を融合させる技術です。Mixed Realityの略で、ARのように現実を拡張するだけではなく、仮想空間を共有したり操作したりできます。利用にはヘッドマウントディスプレイや専用ゴーグルが必要です。
MRは、建設業や製造業、医療業など、リアルなイメージが必要な場面で活用されています。例えば建築業界では、現場の間取りや配置を等身大で正確に写しとれるため、紙を使わない図面作成が可能です。
大手家具販売メーカーの株式会社ニトリでは、店舗に設置されている家具の色やデザインのパターンを、MRによってリアルに再現しています。実際に生活しているような感覚を得られるため、 購入後のミスマッチもほとんど起こりません。
参考:ドコモとニトリビジネス&リフォームが法人向けショールームに XR を導入|株式会社ニトリ
SR(代替現実)
SR技術は現実世界に過去の情報を組み込み、過去の現象をあたかも現在で起こっているかのようにみせるのが特徴です。視覚や聴覚などの感覚器官を仮想空間に反映させるため、VRやARなどよりもリアルな世界を構築できます。Substitutional Realityの略で、利用にはヘッドマウントディスプレイが必要です。
SRはXRのなかでも特に新しい先端技術のため、実用化された例はほとんどありません。しかし、現実空間と仮想空間の境界がわからなくなるくらい高度な技術であり、将来的には心的疾患の治療などへの活用が期待されています。
XRが急速に普及している背景とは
XRはビジネス分野において、なぜ大きな注目を集めているのでしょうか。XRが急速に普及している背景を紹介します。
デバイスやソフトウェアの進化
映像や音響の高性能化で、現実と遜色ない仮想空間を生成できるようになったことが要因のひとつです。一昔前の技術では解像度などの問題で仮想空間の質が悪く、満足のいく臨場感が得られませんでした。
また、最近はデバイスの小型化・低価格化が進み、従来のように10万円前後のヘッドマウントディスプレイを購入する必要がありません。PCなどに接続せずに単独で使用可能なスタンドアローン型なら5万円前後、スマートフォンに差込むタイプであれば数千円で購入できます。
技術の発展とともに誰でも手に入れやすい価格帯になったことも、XRの普及要因のひとつです。
5Gによる高速・大容量通信の実現
次世代の通信インフラである5Gの登場以降、インターネットの回線能力向上によりし通信環境が改善されたことも要因のひとつです。高解像の動画像データをリアルタイムで通信できるようになったことで、さまざまな分野でXR技術を活用できるようになりました。
従来のような4G通信では、大容量のデータ通信ができず、XR空間における満足な臨場感を得られません。
今後インターネットの主流が5Gになれば、XR市場は加速度的に成長していくでしょう。
リモートによるコミュニケーションの拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大により、リモートワークやバーチャルイベントの必要性がでてきたことも要因のひとつです。
ビジネスシーンにおいても、従業員が独自のアバターを用いて仮想空間内でオンライン会議に参加できます。視覚や聴覚・触覚などを駆使するため、遠隔地からでも臨場感のあるオンラインコミュニケーションが可能です。バーチャルオフィス市場は、リモートコミュニケーションの拡大によって、今後さらに成長していくと予想されています。
進化を続けるXRのこれから
XRは、当初エンタメやレジャー業界などで注目されてきました。しかし、仮想空間を現実のように感じられる技術は、応用できる領域が大きいため、今後さらに教育やビジネスなど幅広い分野で活用されていくと考えられます。
XRの普及は、さまざまな分野でパラダイムシフトを引き起こしています。今後、ますます加速するでしょう。その一方で、XR業界の人材不足が懸念されています。最近では、現実にあるものを見えなくする「DR(減損現実)」という新しい技術も開発されはじめ、XRエンジニアの不足が一層深刻化するといわれています。
XRは仮想世界と現実世界を融合する映像技術の総称
XRとは現実空間と仮想空間を融合させ、新しい価値や体験を創造する技術のことです。今後はVR・AR・MR ・SRそれぞれの技術を組み合わせたサービスが続々と登場し、あらゆる分野で革新的なパラダイムシフトを引き起こすでしょう。
それにともない、XRエンジニアの不足が懸念されるため、今からでも高度人材を確保したり、教育環境を整備したりしておくことをおすすめします。