ASMとは何か、連携性が重要な理由
まずはASMの基本的な役割と、なぜ他システムとの連携性が製品選定において重視されるのかを押さえておきましょう。
ASMの基本機能とセキュリティ運用における役割
ASMは、企業が保有するドメインやサーバー、クラウドサービスなど、インターネットに公開されているIT資産を自動的に洗い出し、脆弱性や設定不備がないかを継続的に監視するツールです。従来は担当者が手作業で資産台帳を管理していた企業も、ASMの導入によって資産の見落としを減らせるようになりました。
特に近年はクラウドサービスの利用拡大により、管理部門が把握していない「シャドーIT」が増加傾向にあります。ASMはこうした未把握の資産を検出し、セキュリティ担当者が対応すべき優先順位を可視化する役割を担います。単体での資産可視化にとどまらず、他ツールへ情報を連携できるかが運用の効率を左右します。事業部門が独自に契約したクラウドサービスなど、情報システム部門の目が届きにくい資産を洗い出せる点も、ASMを導入する大きな理由の一つといえます。
連携性が製品選定の重要な基準になる理由
ASMが発見した脆弱性情報は、それ単体で完結するものではなく、他のセキュリティ運用フローと組み合わせて初めて価値を発揮します。そのため、SIEMやチケット管理ツールなど既存の運用基盤と連携できるかどうかは、製品選定において重要なポイントです。
例えば連携性が乏しいASMを導入すると、検出結果を担当者が手作業で別システムへ転記する必要が生じ、対応の遅れや入力ミスにつながる可能性があります。逆に連携性が高い製品であれば、検出から対応までの一連の流れを自動化しやすくなり、運用負荷の軽減が期待できます。特に複数のセキュリティ製品を並行して運用している企業ほど、連携性の差が日々の業務量に直結しやすいため、選定時に重視すべきポイントといえます。
SIEM・脆弱性管理ツールとの連携でできること
ASMの検出結果を既存のセキュリティ基盤に取り込むことで、監視体制をどのように強化できるかを見ていきます。
SIEMと連携するASMのメリット
SIEM(Security Information and Event Management)は、社内外のログを一元的に収集・分析し、異常な挙動を検知する仕組みです。ASMがSIEMと連携できると、外部公開資産の脆弱性情報を既存のログ分析基盤に統合し、他のセキュリティイベントとあわせて相関分析ができるようになります。
具体的には、ASMが検出した危険度の高い資産情報をSIEM側のダッシュボードに取り込み、社内ネットワークの通信ログと突き合わせることで、攻撃の兆候をより早い段階で把握できる場合があります。SIEM連携の可否や対応形式(API、Syslog等)は、導入前に確認すべき基準の一つです。対応形式が自社のSIEM製品と一致していない場合、別途データ変換の仕組みを用意する必要が生じることもあるため、事前の検証が欠かせません。
脆弱性管理ツールとの連携で得られる効果
ASMは資産の発見と脆弱性の検出に強みがある一方、修正対応の進捗管理までは対応していない製品もあります。既存の脆弱性管理ツールと連携できれば、ASMが検出した情報をそのまま脆弱性管理の対象データとして取り込み、対応状況を一元管理しやすくなります。
例えば、ASMで検出した資産の脆弱性情報を脆弱性管理ツール側に自動登録できれば、担当者ごとの対応漏れを防ぎやすくなります。ツール間でデータ形式が統一されているか、連携用のコネクタが用意されているかといった観点から比較検討することが望ましいといえます。また、脆弱性情報の重複登録を避ける仕組みがあるかどうかも、実際の運用負荷を左右する重要な確認事項です。連携先の脆弱性管理ツールで使用している識別コードとASMの検出結果が突き合わせやすい形式であるかも、あわせて確認しておきたい点です。
SlackやTeamsとのチャット通知・チケット管理ツール連携
脆弱性を検出しても、対応する担当者に迅速に情報が届かなければ意味がありません。通知手段の連携方法を確認しましょう。
チャットツール通知連携で得られる迅速対応
ASMが新たな脆弱性や公開資産の変化を検出した際、SlackやMicrosoft Teamsといった普段業務で使うチャットツールに通知を送れる製品であれば、担当者が情報を見落とすリスクを減らせます。メールのみの通知に比べ、チャット通知は確認までの時間を短縮しやすいという利点があります。
特に緊急度の高い脆弱性が見つかった場合、担当チームのチャンネルに即座に通知が届く仕組みがあると初動対応が早まりやすくなります。製品によって通知条件を細かく設定できるかどうかが異なるため、通知の粒度をカスタマイズできるかも確認しておきたいポイントです。休日や夜間に検出された事案でも見逃されにくくなる点は、担当者が少人数体制で運用している企業にとって特に助かる機能といえます。
チケット管理ツールとの連携で効率化されるワークフロー
脆弱性の対応状況を管理する際、JiraやRedmineなどのチケット管理ツールと連携できるASMであれば、検出結果を自動でチケット化し、対応の進捗を一元管理しやすくなります。手作業での起票が不要になるため、対応漏れの防止につながります。
例えば、検出した脆弱性の危険度に応じてチケットの優先度を自動設定できる製品もあり、担当者は優先度の高いものから着手しやすくなります。既存のチケット管理ツールとの互換性や、連携設定にかかる工数もあわせて確認しておくと導入後のギャップを防ぎやすいでしょう。加えて、対応完了後のステータスをASM側に自動で反映できるかどうかも、対応状況を正確に把握するうえで確認しておきたい点です。
AWSやAzureなどクラウド環境とのAPI連携
クラウド利用が一般化する中で、ASMがクラウド環境の変化をどれだけ迅速に捉えられるかも重要な選定基準です。
マルチクラウド環境との連携性を確認するポイント
AWSやAzure、Google Cloudなど複数のクラウドサービスを併用している企業では、それぞれの環境をまとめて監視できるASMを選ぶことが望ましいといえます。クラウド事業者が提供するAPIと連携し、リソースの構成変更をリアルタイムに近い形で検知できる製品であれば、設定ミスによる情報漏えいのリスクを早期に把握しやすくなります。
クラウド環境は担当者が意図せず新しいリソースを公開してしまうケースがあり、変化を継続的に追跡できる仕組みが求められます。対応しているクラウドサービスの種類や、連携によって取得できる情報の範囲は製品ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。開発部門が独自にクラウド環境を立ち上げるケースも多いため、部門をまたいだ資産の把握にASMを活用する企業が増えています。
API連携のしやすさを見極める基準
ASMを既存システムと組み合わせて運用する場合、API連携のしやすさが運用効率を大きく左右します。APIの仕様が公開されており、取得できるデータ項目が豊富であるほど、自社の運用フローにあわせたカスタマイズがしやすくなります。
具体的には、REST APIに対応しているか、認証方式はどのようなものか、APIのリクエスト制限はどの程度かといった点を確認しておくと、導入後の連携作業がスムーズに進みやすくなります。ベンダーのドキュメントが整備されているかも、API連携のしやすさを判断する材料の一つです。サンプルコードやSDKが提供されている製品であれば、開発担当者の実装負担を抑えやすく、連携作業の初期コストを下げることにつながります。
ASMの連携性を比較する際に確認すべきポイント
最後に、自社にあったASMを選定する際、連携性の観点からどのような点を確認しておくべきかを整理します。
導入前に確認すべき連携仕様のポイント
ASMを選定する際は、まず自社が現在利用しているSIEMやチケット管理ツール、チャットツールと連携実績があるかを確認することが基本です。連携実績が公開されていない場合は、ベンダーに直接問い合わせて対応可否を確認しておくと安心です。導入検討の段階から具体的な連携イメージをすり合わせておくことで、契約後に想定していた運用ができないといった事態を避けやすくなります。
また、連携方法がAPI経由なのか、専用コネクタが用意されているのか、あるいは手動でのファイル出力に限られるのかによって、運用の手間は大きく変わります。自社の運用体制に無理なく組み込めるかという観点で比較することが重要です。導入前のトライアルやデモの際に、実際に自社が使用しているツールとの連携動作を確認しておくと、契約後の想定外のトラブルを避けやすくなります。
運用開始後のトラブルを防ぐための確認事項
連携性を確認する際は、導入時の機能だけでなく、運用開始後も継続的にサポートを受けられるかという観点も欠かせません。クラウドサービスのAPI仕様は更新されることがあり、それに追随したアップデートが提供されるかどうかで長期的な運用のしやすさが変わります。連携先ツールのバージョンアップに伴う仕様変更に、ベンダー側がどの程度迅速に対応してくれるかも、あわせて確認しておくと安心です。
加えて、連携先のツールを将来的に変更する可能性がある場合は、特定の製品に依存しすぎない汎用的な連携方式を採用しているASMを選ぶと、切り替え時の負担を抑えやすくなります。トライアル期間中に実際の連携動作を確認しておくことをおすすめします。サポート窓口の対応範囲に連携トラブルの相談が含まれているかどうかも、契約前に確認しておくと安心です。
連携性の観点から検討したいASM製品
ここまで見てきたSIEM・脆弱性管理ツール、チャット・チケット管理ツール、クラウド環境との連携という観点をふまえ、確認しておきたい製品を紹介します。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、外部公開資産の可視化とリスクの優先順位付けに強みを持つASMです。検出したリスクや脆弱性の対処状況をポータル上で一元管理でき、担当者ごとの対応漏れを防ぎやすい仕組みを備えています。新たなリスクを検知した際はメールによる即時通知に加えてポータル上でも該当情報を確認できるため、担当者が変化を見落としにくくなっています。またチケット管理ツールとの連携機能も備えており、検出結果を既存の対応フローに組み込みやすい点が特徴です。マクニカのセキュリティリサーチセンターの知見を活用した分析力とあわせて、連携性を重視するASM選定において比較検討の対象になる製品です。
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
Mandiant ASM (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 動的IT環境全体の外部アセットを継続監視しリスク検出を可能化
- 攻撃対象領域を可視化し、脆弱性や設定ミスの把握を支援
- 複数環境のアセットを統合分析し、対策の優先度付けを支援
CyCognito (CyCognito)
- 攻撃者と同じ視点で外部攻撃対象領域を自動的に検出して可視化
- 継続的な脆弱性評価と曝露の検証によりリスク優先度を明確化
- 設定不要で即時可視化し世界的大企業規模のEASMに対応
Tenable Attack Surface Management (Tenable Network Security Japan株式会社)
- インターネット全体をマッピングし外部資産の可視性を拡大。
- 既知・未知の攻撃対象領域リスクを継続的に発見・評価。
- 豊富なメタデータと分析で資産のビジネス文脈理解を支援
まとめ
ASMを選ぶ際は、資産検出や脆弱性発見の精度だけでなく、SIEMや脆弱性管理ツール、Slack・Teams、チケット管理ツール、AWSやAzureなどのクラウド環境と連携できるかという点が運用効率を左右します。API連携のしやすさや対応範囲を事前に確認し、自社の運用体制にあった製品を選定してください。

