情シス1人体制でASM運用が失敗する原因
ASMでは多数の検出結果が出る場合があるため、対応する人員体制が不十分だと運用が破綻しやすくなります。特に中小企業では情シスの人員が限られており、負担が一点に集中しがちです。ここでは情シスが少人数の企業で起こりやすい課題を見ていきます。
情シス1人でASMの検出結果への対応が回らないケース
ASMは公開資産を継続的にスキャンし、脆弱性や設定不備を次々に検出します。情シス担当者が1人しかいない企業では、検出された項目を精査し、優先順位をつけて対応する作業量が個人の処理能力を超えてしまいます。結果として、通知だけが積み上がる状態に陥ります。
たとえば毎週数十件の検出結果が届いても、担当者はサーバー管理やヘルプデスク対応など既存業務と兼務しているため、確認作業がどうしても後回しになりがちです。対応が滞ると検出から改善までのリードタイムが延び、脆弱性が放置された期間中に外部の攻撃者から悪用されるリスクが高まります。特に検出件数が多い月には、緊急度の高い項目まで見落としてしまう危険も否めません。1人体制で全件を精査するのではなく、影響度に応じて対応を絞り込む仕組みづくりが求められるでしょう。
情シス不在でASMを導入した結果、検出されたリスクが放置されるトラブル
専任の情シス担当者を置かず、他部署の担当者や外部委託先が兼任でASMを管理している企業もあります。この場合、検出結果を確認する担当が明確でないため、通知が届いても誰も対応しないまま放置されるトラブルが起こります。
実際に、担当者不在の期間に重大な脆弱性の警告がメールに埋もれて見逃され、対応までに数か月かかった例も報告されています。放置されたリスクは、外部から見つけやすい弱点として攻撃の起点になりかねません。ASMは検出するだけのツールであり、対応する体制がなければ効果は発揮されません。導入前に検出結果を受け取る責任者を明確に定め、対応の期限や連絡先までを含めたフローを整えておくことが重要です。責任の所在をはっきりさせるだけでも、放置のリスクは大きく下げられます。
多拠点でASMを導入した際の資産管理の混乱
複数拠点や複数子会社で個別にASMを導入すると、資産情報の管理単位がばらつき、全体像の把握が難しくなります。組織が大きくなるほど、こうした情報の断片化は深刻になりやすい傾向があります。ここでは典型的な混乱のパターンを紹介します。
多拠点で導入したASMの資産情報がバラバラになるケース
拠点ごとに異なるツールや設定でASMを運用すると、資産の登録範囲や命名ルールが統一されず、同じドメインでも拠点間で情報が食い違う状況が生まれます。本社では検出済みの資産が、他拠点では未登録のままというケースも珍しくありません。
この状態が続くと、全社的なリスクの棚卸しに時間がかかり、経営層への報告資料も拠点ごとに作り直す必要が生じます。とくにグループ会社が多い企業では、担当部署ごとに集計方法が異なり、同一資産を二重に数えてしまうこともあります。集計作業に追われるうちに、肝心の脆弱性対応が後回しになる本末転倒も起こりがちです。資産台帳の一元化と、拠点間で共通のルールを定めた運用ガイドラインの整備が、混乱を防ぐための第一歩です。
資産の重複・漏れが監視の抜け漏れにつながる理由
拠点間で資産管理が分断されていると、廃止済みのドメインが放置されたり、逆に新設したサービスが登録漏れになったりする問題が起こります。管理外の資産は監視対象から外れるため、攻撃者にとって侵入口になりやすい弱点です。
たとえば買収した子会社のシステムがASMの対象範囲に含まれず、数か月間監視されないまま外部に公開されていた事例もあります。担当者が異動した際に引き継ぎが不十分だったことも一因でした。こうした抜け漏れは、担当者が変わるたびに繰り返されやすい構造的な課題です。定期的な資産棚卸しと、全社共通の管理台帳をもとにした監視範囲の見直しを、四半期に一度程度の頻度で実施する体制が欠かせません。棚卸しの担当と実施時期をあらかじめ決めておくことも有効です。
情シスと外部SOCの連携で起こる運用トラブル
ASMの検出結果対応を外部SOCに委託している企業では、社内の情シスとSOC側で対応方針が食い違い、運用が円滑に進まないことがあります。委託先に任せきりにするのではなく、双方の役割を確認しながら進める視点が欠かせません。ここでは連携の課題を整理します。
リスク対応方針の食い違いが生まれる背景
情シスは業務影響を考慮した現実的な対応を優先する一方、外部SOCは検出基準に沿った標準的な対応を提案するため、両者の判断がすれ違うことがあります。特に緊急度の評価基準が共有されていない場合、対応の優先順位をめぐって認識のずれが生じやすい点に注意が必要です。
たとえばSOC側が緊急対応を求めた脆弱性を、情シスが業務システムへの影響を懸念して後回しにした結果、対応の遅れが問題視された事例があります。契約時に決めた対応基準が現場に周知されていないと、同様のずれは繰り返されます。担当者同士の信頼関係が薄いまま運用が始まると、指摘への反応も鈍くなりがちです。事前に評価基準とエスカレーションのルールを文書化し、双方ですり合わせておくことで、こうした食い違いを防げます。
SOCとの連携体制を円滑にするための取り組み
外部SOCとの連携を円滑にするには、定例のミーティングで検出傾向や対応状況を共有し、双方の役割分担を明文化しておくことが有効です。誰がどこまで判断し、どの段階で情シスにエスカレーションするかを事前に決めておく必要があります。
また、SOCからの専門的な報告内容を社内向けに分かりやすく翻訳して共有する担当を置くことで、現場の理解不足による対応の遅れも防ぎやすくなります。月次で振り返りの場を設け、実際に発生した食い違いの事例をもとに運用ルールを見直す仕組みを取り入れると、連携の精度は徐々に高まっていきます。加えて、緊急時の連絡手段をメールだけでなくチャットツールなど複数用意しておくと、初動の遅れを防ぐことにもつながります。
ASM運用を失敗させないための体制づくり
これまで見てきた課題を踏まえ、ASMを継続的に活用するために整えておきたい体制のポイントを紹介します。導入して終わりにせず、運用を仕組みとして定着させることが失敗を防ぐポイントです。
検出結果への対応フローと優先順位の明確化
ASM運用を安定させるには、検出結果をどの基準で分類し、誰が対応するかを事前にフロー化しておくことが重要です。リスクの深刻度や公開範囲に応じて優先順位を決めておけば、限られた人員でも重要な項目から確実に対応できます。
フローが曖昧なまま運用を始めると、担当者ごとに判断基準が異なり対応の質にばらつきが出ます。たとえば同じレベルの脆弱性でも、担当者によって対応の速さが大きく変わってしまうこともあります。基準が共有されていないと、繁忙期には対応そのものが後回しにされる可能性もあります。あらかじめ対応基準を文書化し、関係者間で共有しておくことで、担当者が変わっても一定の対応水準を維持しやすくなります。基準づくりは、後から見直すことを前提に簡潔にまとめるとよいでしょう。
外部リソースを活用した運用負荷の分散
自社の人員だけで全ての検出結果に対応するのが難しい場合は、運用代行や監視サービスを提供する外部リソースの活用も選択肢です。検出から一次対応までを外部に任せることで、社内の担当者はより重要な判断業務に集中できます。
外部委託を検討する際は、対応範囲や報告頻度、緊急時の連絡体制を契約段階で明確にしておくことが大切です。委託範囲があいまいなまま契約すると、結局は社内で二重に確認する手間が生じることもあります。特に検出結果の一次切り分けまで任せられるかどうかは、運用負荷を左右する重要な確認ポイントです。役割分担をあらかじめ明確にしておけば、社内外の連携もスムーズになり、検出結果の放置を防ぎやすくなります。
運用負荷を抑えられるASMツールの選び方
ここまで見てきた失敗の多くは、検出後の精査や資産管理に人手がかかりすぎることが背景にあります。誤検知を絞り込んで担当者の負担を減らせるか、詳細な資産情報がなくても運用を始められるかといった観点で、代表的なASMツールを紹介します。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、セキュリティ研究センターの専門家チームによるASMサービスです。攻撃者目線で資産調査とリスク評価を行います。詳細な資産リストを事前に用意しなくても利用を開始でき、未把握のドメインや脆弱性を自動的に発見します。専門家が検出結果を精査したうえで本当に危険な項目だけを通知するため、過剰な誤検知に振り回されません。限られた人員でも、優先度の高い対応から着手しやすくなります。
UGINT ASM (株式会社デジタル鑑識研究所)
- ハッカーと同視点で外部 IT 資産の弱点や脆弱性を継続監視。
- ダークウェブ等の情報を活用した脅威インテリジェンス分析
- 関連企業やサプライチェーンまで拡張可能なリスク監視
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
CyCognito (CyCognito)
- 攻撃者と同じ視点で外部攻撃対象領域を自動的に検出して可視化
- 継続的な脆弱性評価と曝露の検証によりリスク優先度を明確化
- 設定不要で即時可視化し世界的大企業規模のEASMに対応
Tenable Attack Surface Management (Tenable Network Security Japan株式会社)
- インターネット全体をマッピングし外部資産の可視性を拡大。
- 既知・未知の攻撃対象領域リスクを継続的に発見・評価。
- 豊富なメタデータと分析で資産のビジネス文脈理解を支援
まとめ
ASM運用の失敗は、情シスの人員不足、多拠点での資産管理の混乱、外部SOCとの連携不足など複数の要因が絡み合って起こります。導入時に体制を整えないまま運用を始めると、検出結果が積み上がり効果を実感できないまま形骸化してしまうこともあります。対応フローの明確化や資産台帳の一元化、外部リソースの活用を通じて、限られた体制でも継続的に運用できる仕組みを整えることが重要です。

