企業規模によってASM導入の懸念点が異なる理由
ASMは公開資産を自動で洗い出し、脆弱性や設定不備などのリスクを可視化するツールです。ただし、企業ごとに保有する公開資産の量や運用体制、既存のセキュリティ製品との連携状況が異なるため、同じ製品を導入しても得られる効果には差が出ます。以下では、企業規模別に起こりやすい懸念点と、導入前に確認しておきたいポイントを具体的に紹介します。
公開資産の規模とASM導入失敗の関係
ASMの価値は、外部に公開しているサーバーやドメイン、クラウドサービスなどの資産数に比例して発揮されやすくなります。公開資産が少ない企業が多機能かつ高価格な製品を選んでしまうと、機能を使いこなせないまま費用だけがかさむ状態に陥りやすくなります。
たとえば従業員50名程度の企業で、公開しているWebサイトやクラウド環境が数個程度しかない場合、大企業向けに設計された高機能ASMを契約すると、月額費用に見合う発見資産数を確保できないことがあります。導入前に自社の公開資産数をおおまかに把握し、想定される監視対象の規模に見合った製品かどうかを比較しておくことが重要です。資産数の見立てを誤ると、契約後にプランの見直しが必要になり、余計な手間が発生する場合もあります。
ASM導入前に把握すべき自社の資産状況
ASM選定の前段階として、自社がどれだけの公開資産を保有しているかを整理しておくと、必要な機能規模を判断しやすくなります。資産の棚卸しをせずに製品を選ぶと、過剰な機能を持つ製品や逆に不足した製品を選んでしまう懸念があります。
具体的には、公開ドメイン数、クラウド上のサーバー数、外部公開しているAPIの数などを事前にリストアップしておくと、製品比較の際に必要な監視範囲や価格帯を判断する目安といえます。無料の簡易診断サービスを提供しているベンダーもあるため、契約前に活用し、自社の公開資産の全体像をつかんでおくと、製品選定の精度が高まります。
小規模企業のASM導入で起こる費用対効果の懸念点
従業員数十名規模の企業では、公開資産が限られているにもかかわらず高機能なASMを導入し、費用対効果が見合わなくなるケースがあります。ここでは具体的な失敗パターンと選定時の観点を紹介します。
公開資産が少ない小規模企業で高機能ASMがコスト過多になる理由
高機能なASM製品は、大量の資産を効率よく監視できるよう設計されているため、月額費用や監視対象数に応じた課金体系が高めに設定されている傾向があります。公開資産が少ない企業がこうした製品を導入すると、実際に発見される資産数に対して費用が割高になりやすくなります。
実際に50名規模の企業で公開資産が数個しかないにもかかわらず、大規模組織向けの製品を契約してしまうと、月々の費用に見合う成果を実感しにくくなります。契約前に無料トライアルや簡易診断で、自社の資産規模に見合った料金プランかを確認し、必要であれば見積もり段階でベンダーに資産数を伝えて、適正な料金プランを提案してもらうことも有効な対策です。
小規模企業のASM選定で見落としがちなポイント
小規模企業がASMを選ぶ際は、機能の豊富さよりも自社の資産規模に合った価格体系かどうかを優先して確認する必要があります。多機能な製品ほど良いという先入観で選んでしまうと、使わない機能に費用を払い続けることになりかねません。
具体的には、監視対象の資産数に応じた従量課金プランがあるか、最小契約単位が自社規模に合っているかを比較すると良いでしょう。また、事業拡大に伴って公開資産が増える可能性を踏まえ、資産数の増加に合わせてプランを柔軟に変更できるかも、契約前に確認しておきたい着眼点です。
100名規模の企業でASMの機能不足が招くリスク対応の遅れ
従業員100名前後の企業では、費用を抑えるために機能を絞ったASM製品を選んだ結果、既存のセキュリティ製品との連携ができず、リスクへの対応が遅れてしまう懸念があります。限られた予算の中で必要な機能を見極め、連携要件を導入前に確認しておくことが大切です。
安価なASMでSIEM連携ができない機能不足の懸念点
SIEM(セキュリティ情報イベント管理)は、複数のセキュリティ製品からログを集約し、脅威を分析するための仕組みです。価格を抑えたASM製品の中には、SIEMなど外部システムとのAPI連携機能を持たないものがあり、発見したリスク情報を手作業で転記する必要が生じる場合があります。
一例として100名規模の企業がコストを重視して連携機能のない製品を選ぶと、ASMが検知した公開資産の脆弱性情報をSIEMに自動で取り込めず、担当者が気づくまで対応が遅れてしまうことがあります。結果として、本来防げたはずのインシデントへの対応が後手に回るおそれがあり、システム部門の少人数体制ではさらに発見が遅れる懸念もあります。
中規模企業がASM選定時に確認すべき連携要件
ASMを選ぶ際は、価格だけでなく、既存のSIEMやSOAR(セキュリティ運用自動化)、チャットツールなどと連携できるかを事前に確認する必要があります。連携機能の有無は、日々の運用負荷に直結する重要な選定基準です。
具体的な確認方法としては、製品の仕様書やベンダーへの問い合わせで、対応可能な外部システムの一覧やAPI連携の可否を確かめておくと安心です。将来的にSIEMの導入を検討している企業は、後から連携できる拡張性を持つ製品を選んでおくと、二重投資を避けやすくなり、限られた人員でも効率的にリスク対応を進められます。
大企業のASM運用で発生するアラート過多の懸念点
従業員数千名規模の大企業では、保有する公開資産が非常に多いため、全資産を一斉にスキャンするとアラートが大量に発生し、担当者が対応しきれなくなる運用トラブルが起こりやすくなります。運用体制の設計が重要です。
全資産一斉スキャンでアラートが大量発生する運用トラブル
大企業では拠点やグループ会社が多く、公開資産の数も数百から数千規模に及ぶことがあります。こうした環境で全資産を同時にスキャンすると、軽微なものを含む大量のアラートが一度に通知され、優先度の高いリスクが埋もれてしまう懸念があります。
たとえば全社一斉スキャンを実施した結果、数千件のアラートが一度に発生し、担当者が一件ずつ確認する時間を確保できないまま放置されるケースがあります。このような事態を避けるには、拠点や事業部ごとに資産の重要度を整理し、スキャン範囲を段階的に分けて実施する運用が有効です。
大企業がASM運用で対応しきれなくなる体制面の懸念点
アラート件数が多い環境では、通知内容を優先度別に自動で振り分ける機能や、重大なリスクのみを絞り込んで通知する設定の有無が、運用負荷を大きく左右します。機能を確認せずに導入すると、通知はあっても対応が追いつかない状態になりかねません。
具体的には、リスクの深刻度でアラートを自動分類できるか、担当部署ごとに通知先を振り分けられるかを事前に確認しておくと良いでしょう。加えて、SIEMやチケット管理ツールと連携し、対応状況を一元管理できる体制を整えておくことも、大量のアラートに対応するうえで重要です。定期的に対応状況を振り返り、運用ルールを見直す仕組みを設けておくと、負荷の偏りを防ぎやすくなります。
企業規模の懸念に対応するASM製品の紹介
ここまで紹介した費用対効果、SIEM連携、アラート過多といった規模別の懸念点を踏まえ、資産規模を問わず利用しやすいASM製品を紹介します。検知した脅威に優先順位を付けられる点も、それぞれの懸念に対応しやすい特徴です。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、AIを活用した資産探索と専門アナリストの分析を組み合わせ、把握できていない未知のドメインや不正サーバーなどの公開資産を可視化するASMです。検知した脅威は脅威インテリジェンスをもとに緊急度で優先順位付けされ、誤検知を減らして対応すべきリスクを絞り込めるため、企業の従業員規模や事業規模を問わず利用しやすい点が特徴です。チケット管理ツールとの連携にも対応しており、海外拠点向けの英語対応も備えています。
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
Mandiant ASM (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 動的IT環境全体の外部アセットを継続監視しリスク検出を可能化
- 攻撃対象領域を可視化し、脆弱性や設定ミスの把握を支援
- 複数環境のアセットを統合分析し、対策の優先度付けを支援
CyCognito (CyCognito)
- 攻撃者と同じ視点で外部攻撃対象領域を自動的に検出して可視化
- 継続的な脆弱性評価と曝露の検証によりリスク優先度を明確化
- 設定不要で即時可視化し世界的大企業規模のEASMに対応
Cortex Xpanse (パロアルトネットワークス株式会社)
- 未知のネット資産と公開サービスを能動検出しリスク管理を実現へ
- 攻撃対象領域のリスクを可視化し迅速対応を強力に支援し促進する
- 継続監視と棚卸更新で供給網全体の資産を常に把握し維持管理強化
まとめ
ASMは企業規模によって起こりやすい懸念点が異なります。小規模企業は公開資産に見合わない高機能製品によるコスト過多、中規模企業はSIEM連携の不足によるリスク対応の遅れ、大企業はアラート過多による運用負荷が課題になりやすい傾向があります。導入前に自社の資産規模や既存システムとの連携状況、運用体制を整理し、必要な機能と費用のバランスが取れた製品を選ぶことが重要です。

