ASM導入時に感じやすい不安とその背景
ASMは外部公開資産を継続的に洗い出し、脆弱性を可視化する仕組みですが、導入前には設定の複雑さや運用負荷への不安がつきものです。導入を検討し始めた段階でどのような不安が生まれやすいかを、まずは整理しておきましょう。
導入条件が複雑に感じられる理由
ASMは対象範囲の定義やスキャン頻度、通知先の設定など決めるべき項目が多く、初めて導入する担当者には条件が複雑に感じられます。特にクラウドとオンプレミスが混在する環境では、対象資産の棚卸しだけでも時間がかかり、どこまでを監視対象に含めるべきか判断に迷うことも珍しくありません。子会社や関連部署が個別に契約しているクラウドサービスが把握しきれていないケースもあります。
実際には、多くの製品が導入前の要件ヒアリングやトライアル期間を用意しています。事前に自社の資産構成や連携先システムを整理した資料を用意し、ベンダーへ具体的に確認しておくことで、契約後に「想定していた条件と違った」という事態を防ぎやすくなります。担当者一人で抱え込まず、情報システム部門全体で条件を共有することも大切です。複数のベンダーから見積もりを取り、条件を横並びで比較する方法も有効です。
現場担当者が抱く典型的な不安
現場担当者からは「導入後に運用が回せるか」「アラートが多すぎて対応しきれないのではないか」といった声がよく聞かれます。これは機能面だけでなく、限られた人数で継続的に監視・対応できるかという運用体制やアラートの精度に関する不安であり、多くの企業に共通する悩みといえます。
こうした不安には、通知の重要度を段階分けできる機能や、誤検知を減らすチューニング機能を持つ製品を選ぶことが有効です。加えて、導入初期はベンダーのサポート窓口や運用支援サービスの有無を確認しておくと、少人数の体制でも無理なく運用を開始できます。実際に運用している他社の事例を聞いておくのも参考にできます。
クラウド環境との連携で確認しておきたい条件
国産ASMであっても、クラウド環境との連携速度や対応範囲には製品ごとに差があります。導入後に「思ったより連携が遅い」と感じないよう、ここでは連携面で確認しておきたい観点を解説します。
国産ASMのクラウド対応状況
国産ASMの中には、主要クラウドサービスへの対応を進めている製品がある一方、対応範囲が限定的で、複数クラウドを併用するマルチクラウド環境への対応が後追いになっているケースも見られます。導入前には自社が利用する対象クラウドへの対応可否を必ず確認する必要があります。
公式サイトの対応環境一覧だけでなく、実際の連携方式(API連携かエージェント型か)や機能追加の更新頻度についても問い合わせて確認することが重要です。特にマルチクラウド構成の企業では、クラウドごとに検知範囲や精度に差がないかを事前に検証しておくことをおすすめします。導入事例やレビューサイトの評価も、実態を把握するための参考情報です。
連携速度に差が出る要因
クラウド連携の速度は、資産情報の取得方式やスキャン間隔の設定によって変わります。API経由でリアルタイムに資産情報を取得できる製品は比較的早く新規資産を検知できますが、定期バッチ型の製品では検知までに数時間から一日程度の時間がかかる場合があります。
そのため、新規サービスの公開頻度が高い環境では、検知までのタイムラグが実務にどの程度影響するかを事前に確認しておく必要があります。ベンダーにスキャン間隔の変更可否や、緊急時に手動でスキャンを実行できるかどうかも合わせて確認しておくと、公開直後の資産を見逃すリスクを抑えられます。開発チームとリリース情報を共有する仕組みを作っておくと、検知の遅れを補いやすくなります。
API連携やスキャン設定のカスタマイズにおける制約
他システムとのAPI連携が必須の環境や、独自のスキャン条件を細かく設定したい場合には、ASM側の仕様による制約を受けることがあります。ここでは導入現場でよく挙がる代表的な注意点を解説します。
API連携時に生じやすい制限
他システムとAPI連携が必須の環境では、取得できるデータ項目やリクエスト回数の上限といった制限が課される場合があります。特に既存のSIEM(セキュリティ情報イベント管理システム)やチケット管理システムと連携させたい場合は、対応フォーマットが合わず追加開発が必要になることも考えられます。連携先が増えるほど、こうした制限による影響範囲も広がりやすくなります。
導入前にはAPI仕様書を取り寄せ、必要なデータ項目が取得できるか、リクエスト制限が自社の運用頻度に見合っているかを確認することが重要です。連携実績のある他社事例をベンダーに確認し、実際にどのようなシステムと接続しているかを把握しておくことも、判断材料として役立ちます。連携方式がWebhook型か定期同期型かによっても、必要な開発工数は変わってきます。
独自スキャン条件のカスタマイズと運用リスク
自社独自のスキャン条件にカスタマイズしたASMが、製品アップデートのたびに設定が初期化されたり崩れたりする失敗は少なからず報告されています。カスタマイズ内容がアップデート後も引き継がれるかどうかは、契約前に確認しておきたい重要な項目です。
この問題を避けるためには、設定変更履歴を保存・比較できる機能や、アップデート内容を事前に通知してくれるサポート体制を持つ製品を選ぶことが有効です。契約前に、過去のアップデートで設定不具合が発生した事例がないか、また発生時の復旧までの対応時間についても問い合わせておくと安心です。設定内容を定期的にバックアップしておくことも、万一の際の備えといえます。
ASM導入前に確認しておきたいチェックポイント
ここまで解説してきたクラウド連携やISMS対応、API連携の不安点を踏まえ、契約前・運用前に確認しておくべき実務的なチェックポイントを整理します。
契約前に確認したい項目
契約前には、対象クラウド環境への対応可否、ISMS認証の取得範囲、API連携仕様、アップデート時の設定引き継ぎといった項目を一覧化して確認することが大切です。口頭説明だけでなく、書面や公式資料でも確認を求め、後から確認できる形で残しておくことをおすすめします。
また、ISMS対応と記載されていても、認証取得の範囲がサービス全体か一部機能・一部拠点のみかで実態が異なる場合があります。認証書に記載された対象範囲を確認し、自社が求めるセキュリティ基準と合致しているかを個別に問い合わせておくことが重要です。曖昧な回答しか得られない場合は、他の候補製品と比較検討することも一つの方法です。取引先から取得範囲について説明を求められることも想定し、資料として残しておくとよいでしょう。
運用体制構築のポイント
ASMは導入して終わりではなく、検知したリスクに対応する運用体制を整えてはじめて効果を発揮します。誰が検知結果を確認し、誰が対応の優先順位を判断するのか、担当者の役割分担や対応フローをあらかじめ決めておくことが、継続的な運用の基準です。
加えて、ベンダーが提供するトレーニングやサポート窓口を活用することで、担当者一人あたりの負担を軽減できます。運用開始後も定期的に検知精度や対応フローを見直す機会を設けることで、事業や環境の変化に応じた改善を積み重ねることができます。関連部署とも定期的に情報を共有し、組織全体でリスクへの意識をそろえておくことも欠かせません。
クラウド連携やAPI対応を比較検討したいASM製品
ここまで挙げたクラウド連携速度やAPI連携仕様への不安をふまえ、外部資産の網羅的な把握や複数クラウド環境への対応を確認しやすい製品を紹介します。導入検討の比較材料としてご覧ください。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、未把握の資産を含めた網羅的な調査と、対処の優先順位付けに重点を置いたアタックサーフェスマネジメントです。本社ドメインやグループ会社のドメインを起点に、MXレコードやNSレコード、Whois情報などをたどって関連するドメインやIPアドレスを洗い出し、攻撃者目線でのリスク調査を行います。マクニカのセキュリティ研究センターが持つ国内外のサイバー攻撃動向の知見を活用したAI駆動型のツールに加え、必要に応じて専門家による調査も組み合わせることで、正確性と網羅性を両立した資産把握を目指せる点が特徴です。
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
Mandiant ASM (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 動的IT環境全体の外部アセットを継続監視しリスク検出を可能化
- 攻撃対象領域を可視化し、脆弱性や設定ミスの把握を支援
- 複数環境のアセットを統合分析し、対策の優先度付けを支援
Tenable Attack Surface Management (Tenable Network Security Japan株式会社)
- インターネット全体をマッピングし外部資産の可視性を拡大。
- 既知・未知の攻撃対象領域リスクを継続的に発見・評価。
- 豊富なメタデータと分析で資産のビジネス文脈理解を支援
まとめ
ASM導入時の不安の多くは、クラウド連携の対応範囲やISMS認証の実態、API連携の制限、アップデート時の設定崩れといった、事前の確認不足から生じる具体的な要因に整理できます。導入前に条件を一覧化し、ベンダーに具体的に確認したうえで、自社の運用体制や既存システムとの連携要件に合った製品を選ぶことが、安心してASMを活用し続けるための重要なポイントです。

