ASMと外部システム連携で起きるエラーの全体像
ASMは資産の可視化結果を他のシステムに送ることで効果を発揮する一方、連携先が増えるほどエラーの発生ポイントも増えます。ここでは連携エラー全体の傾向と、クラウド環境特有の注意点を確認していきます。
連携エラーが起こる主な原因
ASMの連携エラーは、大きく分けてデータ形式の不一致、認証情報の期限切れ、通信経路の設定ミスの3つが原因になることが多くあります。特にAPI連携では、双方のバージョンアップによって仕様が変わり、想定していたレスポンス形式が返ってこなくなるケースが目立ちます。連携先のシステムが増えるほど、こうした原因が重なって発生しやすくなる点にも注意が必要です。
例えば、ASM側でJSON形式のフィールド名が変更された場合、連携先のシステムがそれを認識できずにデータの取り込みが失敗することがあります。こうした事態を避けるためには、連携先のシステムごとに接続テストの記録を残し、仕様変更があった際にすぐ気づける体制を整えておくことが重要です。加えて、担当者間で連携仕様の変更履歴を共有しておくと、原因の切り分けにかかる時間を短縮できます。
クラウド環境との連携で見られるエラーのパターン
クラウド環境とASMを連携する場合、アカウント権限の設定不備やリージョンの違いによって、資産情報が正しく取得できないエラーが起こることがあります。特にマルチクラウド環境では、各クラウドサービスのAPI仕様や認証方式が異なるため、設定の抜け漏れが発生しやすくなります。契約プランによって同時接続数に上限がある場合も、エラーの原因になり得ます。
具体的には、クラウド側でIAM(アクセス権限を管理する仕組み)のロール設定が不足していると、ASMが一部のリソースを検知できず、資産の抜け漏れが発生する場合があります。導入時にはクラウドベンダーが公開する連携手順書を確認し、必要な権限を過不足なく付与することが対策として有効です。連携直後は取得件数を目視で確認し、想定より少ない場合は権限設定を見直すとよいでしょう。
ASMのSIEM連携で起こりやすい不具合
SIEM(セキュリティ情報イベント管理)はASMの検知結果を集約して分析する役割を持ちますが、連携形式やログの粒度が異なると不具合につながることがあります。ここでは代表的な事象を紹介します。
ログ形式やAPI仕様の違いによる不具合
ASMとSIEMを連携する際、両者が扱うログのフォーマットが一致していないと、SIEM側でイベントが正しく解析されない不具合が起きることがあります。CEFやJSONなど複数の形式が存在するため、事前にどの形式で連携するかをすり合わせておく必要があります。フォーマットの認識違いは、導入直後に見落とされやすい原因のひとつです。
また、SIEM側のAPI仕様変更に合わせてASM側の連携設定を更新していないと、通信自体は成功していてもデータが欠落した状態で取り込まれることがあります。連携ベンダーのリリースノートを定期的に確認し、仕様変更のタイミングで設定を見直すことがポイントです。両システムのバージョン情報を台帳で管理しておくと、更新漏れを防ぎやすくなります。
通知の重複や欠落が起きるケース
ASMからSIEMへのアラート連携では、同一の脆弱性情報が重複して送信されたり、逆に一部の情報が欠落したりする不具合が起こることがあります。これは連携処理のタイムアウトやリトライ設定が原因になっている場合があります。担当者が気づかないまま重複通知が積み重なり、対応の優先順位付けが難しくなることもあります。
例えば、大量の資産情報を一度に送信すると、SIEM側の処理が追いつかずタイムアウトが発生し、結果として一部のアラートが欠落することがあります。送信データを分割する、あるいは送信間隔を調整するといった設定変更で改善できるケースが多くあります。定期的に送受信件数を突き合わせ、欠落がないか確認する運用も有効です。
APIの呼び出し制限とチケット管理連携時の注意点
ASMを他システムと自動連携する際は、API呼び出し回数の制限や、チケット管理ツールとの連携で残る手作業についても理解しておく必要があります。ここでは実務で意識したいポイントを解説します。
ASMのAPI呼び出し回数における制限
多くのASM製品では、サーバーへの負荷を抑えるためにAPIの呼び出し回数に上限が設けられています。上限は製品やプランによって異なり、短時間に大量のリクエストを送ると一時的にアクセスが制限される場合があります。この制限は公式サイトやAPIドキュメントに記載されていることがほとんどです。
例えば、資産情報を頻繁に取得しようとして呼び出し回数の上限に達すると、以降のリクエストがエラーになり、連携先のシステムでデータ更新が止まってしまうことがあります。導入前に契約プランの上限値を確認し、取得頻度をあらかじめ設計しておくことが対策になります。バッチ処理の実行時間を分散させることで、上限到達を避けやすくなります。
チケット管理ツール連携で手作業が残るケース
ASMの検知結果をチケット管理ツールに連携すると、脆弱性ごとにチケットを自動生成できる一方、対応状況の一部確認は手作業で残ることがあります。特に誤検知の判断や、複数の脆弱性が同一原因による場合の統合作業は自動化しにくい領域です。連携を導入しても、確認作業がゼロになるわけではない点は理解しておく必要があります。
具体的には、ASM側で検知した脆弱性が実際には対応不要と判断された場合、チケット管理ツール側のステータスを手動で更新しなければならないことがあります。運用ルールとして、誰がどのタイミングで確認・更新するかを事前に決めておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。定期的な棚卸しを行い、放置されたチケットがないか確認することも大切です。
ASM連携エラーを防ぐための運用ポイント
連携エラーは完全になくすことが難しいため、発生を前提とした運用体制を整えることが現実的な対策です。ここでは導入前後で意識したいポイントを紹介します。
導入前の連携テストとドキュメント確認
ASMを新たに連携する際は、本番環境に反映する前にテスト環境で接続確認を行うことが基本です。連携先のAPI仕様書やエラーコードの一覧を事前に確認しておくと、不具合が発生した際の原因特定が容易になります。テスト段階で想定される異常系のパターンも一緒に確認しておくと安心です。
また、ベンダーが提供する導入ガイドやFAQには、過去に発生した不具合の事例や回避策が記載されていることがあります。導入担当者だけでなく、運用を引き継ぐメンバーとも情報を共有し、連携設定の変更履歴を残しておくことが望ましいです。ドキュメントを一元管理しておくと、担当者が変わった際の引き継ぎもスムーズになり、確認の手間を減らせます。
エラー発生時の対応体制づくり
連携エラーが発生した際に迅速に対応できるよう、社内の連絡フローとベンダーへの問い合わせ窓口をあらかじめ整理しておくことが重要です。担当者が不在の場合でも対応できるよう、手順を文書化しておくと安心です。エスカレーション先を明確にしておくことで、対応の遅れを防げます。関係部署が複数にまたがる場合は、役割分担も事前に決めておきましょう。
例えば、エラー発生時にまず確認すべきログの場所や、一次対応の判断基準をチェックリストにまとめておくと、対応のばらつきを抑えられます。定期的に連携状況を点検する運用も、エラーの早期発見につながります。小さな不具合の段階で発見できれば、影響範囲を最小限に抑えられ、復旧までの時間も短縮できます。
資産の把握精度から選ぶASM製品の候補
連携エラーの多くは、そもそも自社が把握しきれていない資産や設定変更が発端になっています。ここでは、資産の洗い出し精度や検知範囲に特徴のあるASM製品を紹介します。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、自社で把握しきれていないドメインや野良サーバ、海外拠点を含めた資産の洗い出しに強みを持つ製品です。本社ドメインやホームページに掲載されたグループ会社のドメインを起点に、MXレコードやNSレコード、Whois情報などをたどりながら関連ドメインやIPアドレスとのつながりを調査し、網羅的に資産を可視化します。マクニカのセキュリティ研究センターが持つ攻撃者目線の知見を活用し、検知した資産のリスクを踏まえて対処の優先順位付けを支援する点も特徴です。連携先のシステムに正確な資産情報を渡すための土台づくりとして活用できます。
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
Tenable Attack Surface Management (Tenable Network Security Japan株式会社)
- インターネット全体をマッピングし外部資産の可視性を拡大。
- 既知・未知の攻撃対象領域リスクを継続的に発見・評価。
- 豊富なメタデータと分析で資産のビジネス文脈理解を支援
Cortex Xpanse (パロアルトネットワークス株式会社)
- 未知のネット資産と公開サービスを能動検出しリスク管理を実現へ
- 攻撃対象領域のリスクを可視化し迅速対応を強力に支援し促進する
- 継続監視と棚卸更新で供給網全体の資産を常に把握し維持管理強化
まとめ
ASMと外部システムの連携エラーは、データ形式の不一致やAPIの呼び出し制限、権限設定の不備など複数の原因で発生します。SIEMやクラウド、チケット管理ツールとの連携では一部手作業が残ることもあるため、事前の接続テストと、エラー発生時にすぐ対応できる社内体制の整備が重要です。連携の仕組みを理解したうえでASMツールを選ぶことで、こうした不具合を減らしやすくなります。製品選定の参考にしてください。

