ASMが「使いにくい」と言われる主な理由
ASMは便利なツールですが、導入後の運用に手間を感じる企業も存在します。ここでは、使いにくさの背景にある代表的な要因を紹介します。
検出されたリスクの量が多く整理しにくい
ASMは外部公開資産を自動的にスキャンし、脆弱性や設定ミスの候補を数多く洗い出します。企業の規模が大きいほど検出件数も増え、担当者がすべてを確認しきれないという状況が起こりやすくなります。一覧の見やすさや絞り込み機能の有無によって、日々の運用負担は大きく変わります。
特に導入直後は、過去から放置されていた古いサーバーや使われていないドメインなども検出対象に含まれるため、優先度づけに時間がかかります。リスクの重要度を自動で分類する機能や、対応済み・未対応を管理するダッシュボードがあるかどうかは、選定時に確認しておきたいポイントです。担当者が複数いる場合は、対応状況を共有できる仕組みも運用のしやすさに直結します。
専門知識がないと結果を読み解きにくい
ASMが出力するレポートには、脆弱性の技術的な名称やCVE(共通脆弱性識別子)番号など専門用語が含まれることが多くあります。そのため、セキュリティの知識が浅い担当者には理解しにくい場合があります。結果として、対応の優先順位を誤ってしまう懸念があり、放置すべきでないリスクが後回しになることもあります。
例えば「重大な脆弱性」と表示されても、実際の業務影響がどの程度かを判断するには背景知識が必要です。用語解説やリスクの平易な説明が付いている製品や、専門スタッフに相談できる窓口を備えた製品を選ぶと、社内での運用負担を軽減しやすくなります。情報システム部門以外の担当者が運用する場合は、この観点を特に重視すると導入後のつまずきを減らせます。
導入前の期待と実際の運用感にギャップが生じやすい
「導入すればセキュリティ対策が自動化される」という期待を持って契約したものの、実際には検出結果の確認や対応判断に人手が必要です。思っていたより手間がかかると感じるケースがあります。運用担当者を確保できていない企業ほど、このギャップを大きく感じる傾向があります。
ASMはあくまで攻撃対象領域を可視化し、リスクを発見するためのツールであり、対応そのものを自動で完結させるものではありません。導入前に運用体制や必要な工数を具体的に確認し、社内で誰がどこまで対応するかを決めておくことで、こうしたギャップを避けやすくなります。トライアル期間を設けている製品であれば、契約前に実際の運用感を試すことも可能です。
ASMツールの初期設定でつまずきやすいポイント
ASMは契約後すぐに全機能を使えるわけではなく、監視対象の登録や検出条件の調整といった初期設定が必要です。ここでは難しさを感じやすい場面を紹介します。
監視対象の資産登録に手間がかかる
ASMの精度は、監視対象として登録するドメインやIPアドレスの正確さに左右されます。グループ会社や海外拠点を含む企業では、対象範囲の洗い出し自体に時間がかかり、初期設定が難航する原因になります。管理部門が把握していない資産が後から見つかることも珍しくありません。
一部の製品は登録したドメインから関連資産を自動的に探索する機能を備えており、担当者の負担を抑えられます。導入前に、自動探索の範囲や精度、対象外にできる資産の指定方法についてベンダーに確認しておくと安心です。導入初期にベンダー側から資産登録の進め方を案内してもらえるかどうかも、確認しておきたいポイントであり、支援体制の有無で作業期間が大きく変わります。
誤検知(false positive)の調整に時間がかかる
導入初期は、実際にはリスクではない項目まで検出される誤検知が発生しやすく、除外設定や検出条件の調整に一定の時間が必要です。調整が不十分だと、担当者が本当に重要な情報を見落としてしまう可能性があります。通知が多すぎて確認自体を後回しにしてしまう懸念もあります。
誤検知の調整には数週間から数か月かかることもあるため、初期設定の段階でベンダーからのサポートを受けられるかどうかは、導入前に確認しておきたい点です。設定変更を担当者側で柔軟に行えるかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。調整実績が豊富なベンダーほど、対応がスムーズに進む傾向があり、担当者の負担も軽くなります。
ASMのサポート対応に関する評判
ASMは導入後も継続的な運用が前提となるため、サポート対応の質は使いやすさを左右する要素です。ここでは評判として挙がりやすい点を整理します。
導入初期に問い合わせが集中しやすい
初期設定や誤検知の調整が必要な導入直後は、問い合わせ件数が増える傾向があります。ベンダー側の対応リソースによっては、返信までに数日を要し、対応が遅いと感じられる場合があります。特に緊急性の高いリスクが検出された際に、確認まで時間がかかると業務への影響も大きくなります。
特に海外拠点を持つ企業では、時差の影響で問い合わせから回答までに時間がかかることもあります。契約前に、日本語での問い合わせ窓口や標準的な回答目安時間、緊急時の連絡手段を確認しておくと安心です。導入実績が豊富な国内ベンダーであれば、初期段階のサポート体制も比較的整っている傾向があり、安心して運用を始めやすくなります。
海外製品は日本語サポートの体制差がある
ASM市場には海外ベンダーの製品も多く、製品によって日本語サポートの体制に差があります。マニュアルが英語のみであったり、サポート担当者との連絡が英語対応中心であったりすると、社内での運用がしにくいと感じることがあります。管理画面自体が英語表示のみという製品も見られます。
国内代理店経由で提供されている製品であれば、日本語での問い合わせやオンボーディング支援が受けられる場合が多いため、契約形態もあわせて確認しておくとよいでしょう。導入事例や実際の利用者の声を参考にするのも一つの方法です。問い合わせ実績や対応言語をあらかじめ資料請求時に確認しておくと、契約後の行き違いを防ぎやすくなります。
ASMをスマホやタブレットで確認する際の制限
外出先や移動中にリスク状況を確認したい場合、スマホ対応の可否も重要な選定ポイントです。ここではモバイル利用時に感じやすい制限を紹介します。
モバイル専用画面が用意されていない製品がある
ASMの管理画面はパソコンでの利用を前提に設計されている製品が多く、スマホのブラウザで開くと文字が小さく表示されたり、レイアウトが崩れたりすることがあります。結果として、外出先での確認がしにくいと感じる担当者もいます。表やグラフを多用した画面ほど、この傾向が強くなります。
製品によってはレスポンシブ対応の画面や専用アプリを用意しており、通知の確認程度であればスマホでも支障なく行えます。日常的にモバイルでの確認を想定している場合は、対応状況やアプリの有無を事前に確認しておくことをおすすめします。デモ画面をスマホで実際に開いて表示崩れがないか確認してみるのも有効な方法です。
通知確認はできても詳細操作は難しい場合がある
メールやチャットツールへのアラート通知にはスマホでも問題なく気づけますが、検出結果の詳細分析や設定変更といった操作は、画面の情報量が多く、スマホ上では行いにくい傾向があります。細かな文字を拡大しながら操作する必要がある製品もあります。
このため、多くの企業ではスマホを異常の早期把握、パソコンを詳細確認・対応という役割分担で運用しています。導入時にこうした運用フローをあらかじめ想定し、担当者間で役割を共有しておくと、現場での混乱を避けやすくなります。休日や夜間の緊急対応をどこまでスマホで完結させるかも、あらかじめ検討しておきたい観点です。
運用負担を抑えやすいASM製品の特徴
ここまで見てきた「使いにくさ」の多くは、検出結果の整理や初期設定の支援体制によって軽減できます。ここでは、誤検知の絞り込みや資産の自動探索、日本語での問い合わせ対応といった観点から参考になる製品を紹介します。
ANTERAS ASM
- 独自に開発したAI駆動型ツールで網羅的・高精度に資産を発見
- サイバー攻撃の動向や手法を熟知した専門家が調査を実施
- 攻撃者目線で正確な調査を行い、資産を見つけだして脅威を判定
株式会社マクニカが提供する「ANTERAS ASM」は、独自開発のAIを活用した資産探索技術と専門アナリストの分析を組み合わせ、未把握のドメインや不正なサーバーなど外部公開資産を洗い出すASMです。攻撃者視点での脅威インテリジェンスをもとに、VPN機器やファイアウォールなど侵入経路になりやすい資産のリスクを優先度づけします。専門家による検証でノイズを抑えることで、検出結果の確認や絞り込みにかかる担当者の負担を軽減しやすい点が特徴です。
UGINT ASM (株式会社デジタル鑑識研究所)
- ハッカーと同視点で外部 IT 資産の弱点や脆弱性を継続監視。
- ダークウェブ等の情報を活用した脅威インテリジェンス分析
- 関連企業やサプライチェーンまで拡張可能なリスク監視
Qualys ASM (クォリスジャパン株式会社)
- 内部・外部を含む攻撃対象領域資産を統合的に発見管理
- 外部向けインターネット資産を継続可視化しリスク優先付け
- TruRiskで脆弱性とリスクを統合し体制強化を実現
Mandiant ASM (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 動的IT環境全体の外部アセットを継続監視しリスク検出を可能化
- 攻撃対象領域を可視化し、脆弱性や設定ミスの把握を支援
- 複数環境のアセットを統合分析し、対策の優先度付けを支援
Tenable Attack Surface Management (Tenable Network Security Japan株式会社)
- インターネット全体をマッピングし外部資産の可視性を拡大。
- 既知・未知の攻撃対象領域リスクを継続的に発見・評価。
- 豊富なメタデータと分析で資産のビジネス文脈理解を支援
まとめ
ASMが使いにくいと感じられる背景には、検出結果の整理のしにくさ、初期設定の手間、サポート対応の速さ、スマホでの操作制限といった要因があります。いずれも製品ごとに対応状況が異なるため、導入前にサポート体制や画面の使いやすさを確認しておくことが重要です。自社の運用体制にあった製品を選ぶことで、こうした課題を軽減できます。

