CAEソフトの運用体制で最初に決めること
CAEソフトは、導入しただけでは成果につながりません。誰が、どの目的で、どの範囲まで解析するのかを決めると、必要な体制と製品の条件が見えてきます。先に整理しておくと、製品選びでぶれにくくなります。
解析の目的と担当範囲の整理
CAEソフトの用途には、構造の強度確認、熱や流体の解析、振動の検討などがあります。目的によって、必要な機能や専門知識の水準が異なります。
設計者が簡易な解析を行うのか、専任の担当者が詳細な解析を行うのかも、体制を考える前提です。
現在の解析の依頼件数や頻度を把握しておくと、必要な人員や使用時間の見通しが立てやすくなります。目的が定まるほど、不要な機能にかかる費用も見直せます。
担当者が不在でも止まらない業務の分担
解析の作業は、モデルの準備、条件の設定、計算の実行、結果の確認といった工程に分けられます。工程ごとに担当を分けると、特定の人に業務が集中しにくくなります。
全工程を一人で担う体制は、休暇や異動の際に業務が止まる恐れがあります。最低でも、代わりに対応できる人を一人決めておきましょう。
分担の内容は、文書にして共有しておくと安心です。分担の見直しは、年に一度など時期を決めて行うと続けやすくなります。
運用の負担を左右する要素
運用の負担は、ライセンスの管理、計算に使うパソコンやサーバの保守、ソフトの更新作業、データの保管などに分かれます。製品の提供形態によって、これらの負担の大きさが変わります。
クラウド型は保守の負担を抑えられる場合がある一方、データの持ち出しやセキュリティの確認が必要です。
自社の体制で担える範囲を見極めましょう。導入後に想定外の作業が増えないよう、費用以外の負担も比べておきましょう。
解析担当が1人でも回せる体制の作り方
専任の担当者を置けない会社でも、仕組みを整えれば、少人数でCAEソフトを運用できる場合があります。属人化を防ぎ、続けられる体制を目指しましょう。仕組みの工夫で、少人数でも続けやすくなります。
属人化を防ぐ手順書とテンプレートの整備
解析の手順を文書にし、よく使う解析の条件はテンプレートとして保存しておきます。担当者が変わっても、同じ品質で作業を引き継げます。
手順書には、モデルの作り方、材料の設定、境界条件の考え方、結果の評価基準を含めましょう。
実際の解析例を付けておくと、初めての担当者も理解しやすくなります。更新の履歴も残しておきます。手順書は、実際に使いながら改善していくことが重要です。
情シスがいない会社での導入と保守
情報システム部門がない場合は、ソフトのインストールや更新、動作環境の確認を設計の担当者が行う場面があります。この負担を減らすには、導入支援や保守の範囲を事前に確認することが重要です。
クラウド型であれば、環境の構築や更新をベンダーが行う場合があります。
どこまで任せられるのか、具体的な範囲を契約前に尋ねましょう。更新のたびに動作を確認する負担も、事前に見積もっておきましょう。
外部サポートと教育メニューの活用
操作に慣れるまでの期間は、ベンダーの研修や問い合わせ窓口が支えとなります。解析の進め方まで相談できるのか、操作の質問に限られるのかは、サービスによって異なります。
必要に応じて、解析の一部を外部の専門会社に依頼する選択肢もあります。
内製する範囲と外部に任せる範囲を、案件の難しさで分けて考えましょう。外部の力を借りる場合の費用も、比較の材料に含めます。
CAEソフトのデータを多拠点で管理する方法
拠点やグループ会社が複数ある場合は、解析モデルや結果データの置き場所と、閲覧や編集の権限が課題です。管理の方針を先に決めておきましょう。保存場所や権限の考え方を、順に確認しましょう。
解析モデルと結果データの置き場所
解析モデルや結果のデータは、容量が大きくなる場合があります。各拠点のパソコンに分散して保存すると、最新のデータがどれか分からなくなる恐れがあります。
共有のサーバやクラウドに集約する場合は、通信速度や保存容量、バックアップの方法を確認しましょう。
拠点が離れているほど、データの受け渡しにかかる時間も考慮が必要です。データの保存期間の方針も、あわせて決めておきましょう。
本社で一括管理するときの権限設計
本社で解析データを一括管理する場合は、拠点ごとの閲覧や編集の範囲を決めます。誰が最新のモデルを更新でき、誰が結果だけを見られるかを整理しましょう。
操作の履歴を確認できるか、管理者が一括して設定を変更できるかも、選定時の確認項目です。
権限の設定は、情報システム部門や管理者と相談して進めましょう。拠点の担当者が自分で作業できる範囲を残すことも、運用を円滑にします。
グループ会社間でのデータ統合の進め方
グループ会社ごとに異なるCAEソフトを使っていると、モデルや結果を統合して管理するのが難しくなります。ファイル形式の互換性や、変換時の情報の欠落を確認する必要があります。
最初から全社で統一するのではなく、共通のデータ形式や命名ルールを決めるところから始める方法があります。
段階的に進めると、現場の混乱を抑えられます。統合の範囲は、解析の目的に応じて絞り込みましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCAEソフトの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
設計部門と品質保証部門の分業体制
設計部門が解析し、品質保証部門が確認する分業では、解析の条件と結果の見方をそろえることが重要です。部門間の認識の違いが、手戻りの原因になる場合があります。認識をそろえる仕組みが、手戻りを減らす近道です。
役割分担と承認の流れの設計
設計部門が解析を行い、品質保証部門が結果を確認する場合は、承認の流れを明確にします。どの段階でレビューを行い、誰が最終的な判断をするかを決めておきましょう。
承認の記録が残る仕組みがあると、後から経緯を確認できます。
役割ごとに閲覧や編集の権限を分けられるかも確認しましょう。承認が滞ったときの代理の担当者も、決めておくと安心です。部門をまたぐ作業は、連絡の窓口も決めておきましょう。
解析条件と評価基準の標準化
解析の条件や評価の基準が担当者ごとに異なると、結果の比較が難しくなります。メッシュの大きさ、材料の物性値、合否の判断基準などを、社内の標準として定めましょう。
標準を定めたうえで、変更があった場合の手続きも決めておきます。
設計部門と品質保証部門が同じ基準を共有することが大切です。標準は、実際の案件で使いながら見直していきましょう。基準の根拠となる資料も、あわせて保管しておくと説明に役立ちます。
結果の共有とレビューの進め方
解析結果は、数値だけでなく、図や条件の記録とあわせて共有します。専門でない担当者が見ても分かるよう、結果の読み方を補足する資料があると便利です。
結果を見るための専用のビューアがあるかも、確認項目の一つです。
レビューで出た指摘は、記録に残して次回に活かしましょう。レビューの時期を、設計の工程に組み込んでおくことが大切です。共有の方法は、参加者が使い慣れたものを選びましょう。
運用体制の観点で比較するCAEソフト選び
製品を比較するときは、機能だけでなく、自社の運用体制で使い続けられるかも確認します。体制の観点から、確認したい項目を整理しましょう。資料請求やデモを通じて、具体的に尋ねましょう。
ライセンス形態と配布管理
ライセンスには、特定のパソコンに固定する形、ネットワーク経由で共有する形、期間で契約する形などがあります。複数の拠点で使う場合は、共有の方法や、同時に使える数の制限を確認しましょう。
ライセンスの追加や変更の手続きに、時間がかかるかも見ておきます。
利用状況を管理者が把握できる機能があると便利です。繁忙期に利用が集中する場合も、事前に想定しておきましょう。
サポートと学習環境の確認
問い合わせ窓口の対応時間、マニュアルや動画の有無、研修の内容は、担当者が少ないほど重要です。サポートの範囲が、操作の案内にとどまるのか、解析の相談まで含むのかを確認しましょう。
担当者が交代した際に、新しい担当者が学習できる環境があるかも大切です。
具体的な内容は、資料やデモで確かめましょう。サポートの内容は、契約前に書面で確認すると安心です。
運用開始後の見直しの計画
導入後は、利用状況や課題を定期的に振り返ります。解析の件数、所要時間、トラブルの内容を記録しておくと、体制の見直しに役立ちます。
利用が特定の担当者に偏っていないかも、確認しましょう。
必要に応じて、ライセンスの数や教育の内容を調整します。見直しの結果は、社内で共有して次の改善に活かしましょう。体制は一度作って終わりではなく、状況の変化にあわせて整えていくものです。
運用体制に応じて検討したいCAEソフト
解析担当の人数や拠点数といった運用体制に応じて、検討候補に挙げやすい製品を集めました。自社の体制で無理なく回せるかを比べる際の参考にしてください。
SIMULIA (ダッソー・システムズ株式会社)
- 多物理シミュレーションの統合解析環境を提供。
- 試作前に製品の性能や安全性を評価可能
- 設計・製造を統合。情報共有で製品開発の効率化を支援。
Simcenter 3D software (シーメンス株式会社)
- CADと解析を統合した一元環境で設計プロセスを効率化。
- 複数領域のマルチフィジックス解析に対応
- 設計探索・連成解析による製品性能評価と最適化の促進
COMSOL Multiphysics® (COMSOL AB)
- 複数の物理現象を組み合わせたマルチフィジックス解析に対応。
- 複数現象を自由に組み合わせた連成解析。
- 統合GUIでモデル作成からポスト処理まで一貫操作。
RecurDyn (ファンクションベイ株式会社)
- MFBDで剛体・柔軟体を統合、複雑な機構挙動を効率解析
- 制御や流体など複数領域の連成シミュレーションが可能
- 操作性重視の環境と自動化で解析の設定・実行を支援。
CAEソフトに関するよくある質問
CAEソフトの運用体制について、よくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:解析担当が1人でもCAEソフトを運用できますか?
- A:運用できる場合があります。手順書やテンプレートの整備、代わりに対応できる人の確保、ベンダーの研修やサポートの活用を組み合わせると、属人化の影響を抑えられます。
- ■Q2:情シスがいない会社でもCAEソフトを導入できますか?
- A:導入できる場合があります。ただし、環境の構築や更新を誰が行うかが課題になるため、導入支援や保守の範囲をベンダーに確認しましょう。クラウド型は保守の負担を抑えられる場合があります。
- ■Q3:多拠点で解析データを一元管理するには何を確認すべきですか?
- A:データの置き場所、通信速度、保存容量、権限の設定、操作履歴の確認機能などです。拠点間のデータの受け渡しにかかる時間も、あわせて確認しましょう。
- ■Q4:設計部門と品質保証部門が分業しても使いやすくするには?
- A:解析の条件や評価基準を標準化し、承認の流れを明確にすることが有効です。役割ごとに権限を分けられるか、結果を共有しやすいかも、製品選定の確認項目です。
まとめ
CAEソフトの運用体制は、解析の目的や担当範囲、人数、拠点の数を整理したうえで、手順書の整備、権限の設計、部門間の標準化を進めることが大切です。ライセンスやサポートなど、体制の観点で製品を比較しましょう。製品ごとの違いは、資料やデモで具体的に確かめましょう。比較検討を進める際は、資料請求も活用してください。

