CAEソフトの連携性を確認する前の整理
連携性を比べるには、自社がどのシステムとつなぎたいのかを先に整理する必要があります。つなぎたい先と目的が決まれば、確認すべき項目も絞り込めます。順に整理していきましょう。
連携先の洗い出しと優先順位
CAEソフトの連携先には、CAD、PDMや図面管理システム、生産管理システム、計算用のサーバやクラウドなどがあります。まず自社で実際に使っているシステムを一覧にしましょう。
次に、解析の業務で頻繁にデータをやりとりする相手を選び、優先順位をつけます。全部を一度に連携させる必要はありません。
優先度の高い連携から確認すると、比較の軸が明確です。連携の目的は、手間の削減か、ミスの防止かも書き出しておきましょう。
連携方式の種類と特徴
連携の方式には、ファイルを書き出して取り込む方法、専用のアドインで直接つなぐ方法、APIでデータをやりとりする方法があります。方式によって、手作業の量や自動化のしやすさが異なります。
ファイルを介する方法は導入しやすい反面、変換時に情報が失われる場合があります。直接つなぐ方法は便利ですが、対応するバージョンが限られる場合があります。
自社の運用にあう方式を見極めることが大切です。方式ごとの長所と短所を、表にまとめておくと比較しやすくなります。
連携の範囲と自動化の度合い
「連携できる」といっても、形状だけが渡るのか、材料や荷重などの条件も引き継げるのかは製品によって異なります。結果のデータを返せるかも、確認したい項目です。
手作業が残る部分があるかも、実際の流れで確かめましょう。自動化の範囲が広いほど、設定や保守の負担が増える場合もあります。
利点と負担の両方を、あわせて考える必要があります。確認した内容は、比較表に残しておきましょう。
CADとの連携性で確認する項目
CAEソフトの利用では、CADで作った形状を取り込む場面が多くあります。CADとの連携では、対応状況、引き継ぎの範囲、変更時の再解析の3点を確認しましょう。それぞれの確認方法を見ていきます。
対応するCADの種類とバージョン
自社が使うCADの種類とバージョンに、CAEソフトが対応しているかを確認します。対応の一覧は、ベンダーの資料や公式サイトで確かめられる場合があります。
直接取り込めるCADと、中間ファイルを経由するCADでは、使い勝手が異なります。中間ファイルの形式は、STEPやIGESなどがあります。
CADを更新する予定があれば、新しいバージョンへの対応時期も尋ねておきましょう。
形状データの引き継ぎ範囲
取り込んだ形状に、細かな穴や面の欠けなどがあると、解析用に修正が必要になる場合があります。形状を修復する機能や、解析に不要な部分を簡略化する機能があるかを確認しましょう。
寸法の名前や部品の情報を引き継げるかも、確認する価値があります。引き継げれば、設計変更時の作業を減らせます。
実際の自社のモデルで試すと、違いが分かりやすくなります。修復にかかる手間も、運用の負担として見積もっておきましょう。
設計変更を再解析へ反映する仕組み
設計の変更が繰り返される場合は、CADの変更をCAEソフトに反映する手間が課題です。変更を自動で検知して更新できるか、解析の条件を引き継げるかを確認しましょう。
引き継げない場合は、条件の設定をやり直す作業が発生します。その手間が、実際の業務でどの程度かを見積もっておくことが大切です。
ベンダーに、典型的な変更の流れを説明してもらう方法もあります。変更の頻度が高い製品ほど、この確認が重要です。
PDMや生産管理システムとの連携
解析データを図面管理や生産管理の仕組みとつなぐと、設計全体の情報を一元的に扱いやすくなります。ただし、連携の方法や対応範囲は製品ごとに異なるため、事前の確認が欠かせません。確認すべき点を順に整理します。
解析データの登録と版の管理
PDMや図面管理システムと連携できる場合、解析モデルや結果を、設計図面と関連づけて保管できます。どの版の図面に対する解析かを追跡できるかが、確認の要点です。
CAEソフトからPDMへ、自動で登録できるのか、手動での登録が必要なのかも確かめましょう。
連携に対応するPDMの種類は、製品によって限られる場合があります。自社で使うPDMが対象かを、事前に尋ねましょう。版の情報を引き継げないと、後から確認する手間が増えます。
生産管理システムなど基幹系との接続
CAEソフトと生産管理システムの直接の連携は、製品によって対応が限られる場合があります。その場合は、CADや部品表を経由する、またはCSVなどのファイルで受け渡す形です。
解析の結果を生産管理側で活用したい場合は、受け渡す項目や頻度を整理しましょう。
連携の仕組みを自社で作るのか、ベンダーに依頼するのかも検討が必要です。費用と期間は、事前に見積もりを取って確認します。費用の目安は、複数のベンダーから取ると比べやすくなります。
連携できない場合の代替手段
直接の連携に対応していない場合でも、ファイルの受け渡しの手順を決めて運用する方法があります。命名のルールや保存場所を決めれば、手作業でも混乱を減らせます。
将来の連携を見据えて、データの形式や項目名を統一しておくと、後から自動化しやすくなります。
無理に連携させず、運用の工夫で補う選択肢も検討しましょう。運用の工夫で、手作業の負担を抑えられる場合もあります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCAEソフトの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
HPCやクラウド計算環境との連携
大規模な解析では、HPC(高性能計算)の環境やクラウドの計算資源を使う場面があります。CAEソフトがこれらの環境とどうつながるかは、解析にかかる時間や費用に影響します。確認したい点を順に見ていきましょう。
計算ジョブの投入と管理の仕組み
HPCの環境では、計算をジョブとして投入し、順番に実行する仕組みが使われます。CAEソフトから、このジョブを直接投入できるか、別の操作が必要かを確認しましょう。
実行中のジョブの状況を、CAEソフトの画面で確認できるかも重要な点です。
対応するジョブ管理の仕組みは、製品によって異なります。自社の環境が対象かを尋ねましょう。環境の構築を誰が担うのかも、あわせて確認しましょう。
ライセンスと計算資源の関係
並列で計算を行う場合、ライセンスの条件によって、使える計算資源の数が決まる場合があります。クラウドで使う際の費用の計算方法も、確認が必要です。
ライセンスをクラウド環境へ持ち込めるのか、別の契約が必要なのかは、ベンダーに尋ねましょう。
利用が集中する時期の費用も、想定しておくと安心です。契約の形態によって、費用の見え方が大きく変わる場合があります。条件は書面で確認しましょう。
データ転送とセキュリティの確認
解析のデータは容量が大きく、転送に時間がかかる場合があります。社内からクラウドへの転送速度や、結果の取り出しの方法を確認しましょう。
設計データは重要な情報のため、通信の暗号化やアクセスの制御、データの保管場所も確認の対象です。
社内のセキュリティの規程に合致するかは、情報システム部門に相談して判断しましょう。確認の結果は、社内で共有し、承認を得て進めましょう。
APIとCSV出力で広げる連携性
標準の連携機能がない場合でも、APIやCSV出力があれば、解析の流れを自動化できる場合があります。どこまで対応しているかを、具体的に確認しましょう。確認の方法を具体的に整理します。
APIで自動化できる処理の範囲
APIがあれば、解析の実行や結果の取得を、他のシステムやスクリプトから呼び出せる場合があります。ただし、対象となる処理や、呼び出せる回数に制限がある場合があります。
APIの仕様書が公開されているか、サンプルが用意されているかも確認しましょう。
利用には、プログラミングの知識が必要になる場合があります。社内で対応できるか、ベンダーに支援を依頼できるかを確かめます。
CSV出力の項目と形式の自由度
CSVで結果を出力できると、表計算ソフトやBIツールで集計しやすくなります。出力できる項目を選べるか、文字コードや区切りを指定できるかは、製品によって異なります。
大量の結果を扱う場合は、出力にかかる時間も確認しましょう。
出力の形式が固定されていると、後工程で加工する手間が増える場合があります。実際の出力例の提示を依頼すると、確認が早まります。利用する集計ツールとの相性も、見ておくとよいでしょう。
連携を長く保つための運用
APIや出力の形式は、ソフトの更新で変わる場合があります。更新のたびに、連携が正常に動くかを確認する手順を決めておきましょう。
連携の仕組みを作った担当者だけが内容を知っている状態は、避ける必要があります。仕様や設定の内容は、文書に残しましょう。
エラーが起きた際の通知や、再実行の方法も確認しておくと安心です。定期的な点検の時期も、あらかじめ決めておくと続けやすくなります。
連携先から探すCAEソフトの候補
CADや計算環境など、既存の仕組みとのつながりを重視して比較したい方に向けて、候補となる製品を並べました。接続したい対象を決めたうえで、各製品の対応範囲を確認してみてください。
Simcenter 3D software (シーメンス株式会社)
- CADと解析を統合した一元環境で設計プロセスを効率化。
- 複数領域のマルチフィジックス解析に対応
- 設計探索・連成解析による製品性能評価と最適化の促進
SIMULIA (ダッソー・システムズ株式会社)
- 多物理シミュレーションの統合解析環境を提供。
- 試作前に製品の性能や安全性を評価可能
- 設計・製造を統合。情報共有で製品開発の効率化を支援。
COMSOL Multiphysics® (COMSOL AB)
- 複数の物理現象を組み合わせたマルチフィジックス解析に対応。
- 複数現象を自由に組み合わせた連成解析。
- 統合GUIでモデル作成からポスト処理まで一貫操作。
HELYX® (ENGYS Ltd.)
- GUIを搭載し、解析条件を設定しやすい環境を提供。
- 直感的なGUIで複雑なCFD設定を容易にする解析環境。
- ジョブ数・並列数制限なしで大規模解析に対応。
3DCS (株式会社ファソテック)
- 公差による組立・機能への影響を視覚化・定量評価。
- モンテカルロ・感度解析で公差の要因分析が可能
- 複数CADと連携し、環境に応じた解析が可能。
CAEソフトに関するよくある質問
CAEソフトの連携性について、よくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:CADと連携できるCAEソフトは、何を基準に選べばよいですか?
- A:自社のCADの種類とバージョンへの対応、形状データの引き継ぎの範囲、設計変更を再解析に反映する仕組みの3点です。実際の自社のモデルで試すと、違いが分かりやすくなります。
- ■Q2:PDMや図面管理システムと連携しやすい製品を見分けるには?
- A:自社で使うPDMが連携の対象に含まれているか、解析データを自動で登録できるか、版の情報を引き継げるかを確認しましょう。対応状況は製品によって異なります。
- ■Q3:HPCやクラウドの計算環境と連携する際の注意点は?
- A:ジョブの投入方法、ライセンスの条件、データの転送時間、セキュリティの確認が主な項目です。クラウドの費用の計算方法も、契約前に確かめておきましょう。
- ■Q4:API連携やCSV出力が柔軟なCAEソフトを選ぶには?
- A:APIの対象範囲と仕様書の有無、呼び出し回数の制限、CSVで出力できる項目や形式の自由度を確認しましょう。出力例の提示や、導入時の支援の範囲も尋ねると安心です。
まとめ
CAEソフトの連携性は、連携先、連携の方式、自動化できる範囲を整理したうえで、CAD、PDM、生産管理システム、HPCやクラウド、API、CSV出力の順に確認することが大切です。「連携できる」の中身は製品ごとに異なるため、実際のデータで試し、ベンダーに具体的に尋ねましょう。比較検討を進める際は、資料請求も活用してください。

