企業規模でCAEソフトの懸念点が変わる理由
CAE(Computer Aided Engineering)は、設計した製品の強度や熱の挙動を、試作の前にコンピューター上で確かめる手法です。企業規模が変わると、解析の回数や利用人数、社内の体制が変わるため、注意すべき点も異なります。
解析の頻度と費用の関係
CAEソフトの費用は、ライセンス料や保守費用が毎年発生する形が一般的です。解析を実施する回数が少ない月でも、固定の費用がかかる場合があります。
そのため、年間の解析件数をもとに、1件あたりの費用を試算しておくことが大切です。高機能な製品ほど固定費が大きくなる傾向があるため、必要な機能の範囲もあわせて見極めましょう。年に数回しか使わない場合は、期間限定のプランも比較対象に含めると判断の幅が広がります。
利用人数とライセンス形態の違い
ライセンスには、1台のパソコンに紐づけるものや、複数人で共有するものなどがあります。利用人数が少ない企業は、共有型の方が無駄を抑えられる場合があります。
利用者が増えると、同時に使いたい人数が上限を超え、待ち時間が生じることもあります。現在の人数だけでなく、数年先の利用者数も見込んで形態を選びましょう。ライセンスの形態ごとの条件は、見積もりを依頼する際に書面で確認しておきましょう。
社内の運用体制の違い
企業規模によって、CAEソフトを管理する担当者や部署の有無が異なります。専任の解析担当者がいる企業と、設計担当者が兼務する企業では、必要なサポートの内容が変わります。
体制が小さい場合は、導入支援や講習が用意された製品が有力な選択肢です。体制が整っている場合は、設定の自由度や拡張性を重視する考え方もあります。運用の負担を現場に押し付けない体制づくりが、導入後の定着にもつながります。
50名規模で起こりやすいCAEソフトの費用面の失敗
50名規模の企業では、解析にかけられる人員や予算に限りがあります。ここでは、企業規模の懸念点として相談が寄せられやすい、費用対効果のずれを取り上げます。
高機能な製品を選んだ場合の費用負担
高機能なCAEソフトは、多様な解析に対応できる反面、導入費用や年間の保守費用が大きくなります。実際に使う機能が一部にとどまると、費用に見合う効果が得にくくなります。
導入を検討する段階で、使う解析の種類を具体的に書き出しましょう。構造や熱など、必要なものに絞ったパッケージを選べるかどうかが判断材料です。高機能であること自体が悪いわけではなく、自社の用途とのずれが問題になる点に注意が必要です。
解析回数が少ない場合の費用対効果
解析を実施する回数が少ないと、導入費用を回収するまでに時間がかかります。担当者が解析以外の業務を兼ねている場合は、ソフトに触れる機会が減り、操作を忘れてしまうこともあります。
導入前に、試作の回数や外部へ解析を依頼している件数を調べておきましょう。それをもとに、自社で解析する場合との費用差を比べると判断しやすくなります。解析の件数に応じて費用が変わる契約があるかも、問い合わせの際に確認しておくとよいでしょう。
小さく始められるライセンスの選択肢
期間を区切って使えるライセンスや、利用した分だけ支払う従量課金の形態を用意する製品もあります。解析の頻度が一定でない企業にとっては、固定費を抑える有効な選択肢です。
ただし、長期で使う場合は買い取り型の方が総額を抑えられるケースもあります。提供形態ごとの総額を数年単位で比較しておくと、想定外の出費を避けやすくなります。試験的に導入する期間を設けられるかどうかも、確認しておきたい項目です。
100名規模で意識したい基幹システムとの連携
100名規模になると、設計や生産管理など、複数のシステムを使い分けている企業が増えます。安価なCAEソフトを選んだ結果、既存の仕組みとつながらない失敗が起こる場合があります。
連携できない場合に残る手作業
CAEソフトと基幹システムのデータがつながらないと、解析条件や結果を手入力で転記する作業が発生します。転記の手間が増えるだけでなく、入力ミスが起こる可能性も高まります。
手作業が積み重なると、解析で得た時間短縮の効果が薄れてしまいます。安さだけで判断せず、データの受け渡し方法も費用の一部として考えましょう。手作業が残る場合の作業時間は、導入前に試算しておくと比較の材料になります。
連携範囲の事前確認項目
確認したい項目は、CADとのデータ形式、部品表や図面管理システムとの接続、結果ファイルの出力形式などです。連携の可否は製品ごとに異なるため、公式資料やベンダーへの問い合わせで確かめましょう。
標準機能で対応できるのか、個別の開発が必要なのかも重要な確認事項です。開発が必要な場合は、費用と期間の見積もりも依頼しておきます。確認結果は一覧にまとめておくと、複数製品を比べる際にも役立ちます。
連携を段階的に進める考え方
最初から全システムとの連携を目指すと、導入の負担が大きくなります。まずは解析の頻度が高い工程から連携を始め、効果を確かめつつ連携の範囲を広げる方法があります。
運用が安定するまでは、手作業を許容する範囲を決めておくと現場が混乱しにくくなります。担当者の負担も、あわせて確認しておきましょう。段階的に進める場合でも、最終的に目指す連携の姿は最初に共有しておくことが大切です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCAEソフトの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
大企業のCAEソフトで起こる処理の集中と運用負荷
大企業では、複数の部門や拠点で同じCAEソフトを使うため、運用面の課題が表面化しやすくなります。企業規模が大きいほど解析の規模も大きくなる傾向があり、計算資源の管理が重要です。
大規模モデルの解析が重なる時期
開発の締め切り前などは、大規模なモデルの解析が同じ時期に集中する場合があります。計算に使えるコンピューターの能力を超えると、処理が追いつかず、結果が出るまでの待ち時間が長くなります。
過去の利用状況から、混み合う時期を把握しておくことが有効です。ピーク時の処理量を見込んで、計算環境を設計しましょう。処理が遅れる原因は、計算環境の能力のほかに、ライセンス数や設定の影響もあり得ます。
計算リソースの割り当てと待ち時間
社内の計算サーバを共有している場合、優先順位のルールがないと、重要な解析が後回しになる場合があります。ジョブの投入順や使用できる時間帯を決めておくと、待ち時間の偏りを抑えられます。
必要に応じて、クラウドの計算環境を一時的に追加する方法もあります。ただし、データの持ち出しに関する社内規程の確認が必要です。待ち時間の状況は定期的に記録し、増強の判断材料として活用しましょう。
部門間でのライセンス共有ルール
ライセンスを部門ごとに購入すると、使われない時間帯が生じ、全社で見ると無駄が出る場合があります。反対に全社で共有すると、利用が重なったときに取り合いが起こる可能性があります。
利用状況を記録できる管理機能があれば、割り当ての見直しに役立ちます。窓口となる管理部門を決めて、運用ルールを明文化しましょう。ルールは一度決めて終わりにせず、利用状況に応じて見直していく運用が望ましいです。
小規模企業がCAEソフトを契約する前の確認
解析の機会が限られる小規模企業では、契約の判断を誤ると費用対効果が悪くなる失敗につながります。契約前に確かめたい項目を整理します。
解析ニーズの見積もり
まず、どのような解析が必要になるのかを書き出しましょう。強度の確認なのか、熱や流れの確認なのかによって、必要なソフトの種類が変わります。
年間の解析件数や1件あたりの作業時間も見積もってください。数値が根拠になり、契約後の「想定より使わなかった」というずれを減らせます。見積もりの段階では、設計部門だけでなく品質管理など関連部門の要望も聞いておくと漏れを防げます。
外部への委託との比較
解析の件数が少ない場合は、外部の解析サービスに依頼する方が費用を抑えられるケースがあります。社内にノウハウを残したいか、スピードを重視するかによっても、判断は変わります。
自社で解析する場合と委託する場合の総額を並べて比べましょう。委託先に設計データを渡すため、機密保持の条件も確認しておきます。委託と自社運用を組み合わせ、難しい解析だけを外部へ依頼する方法もあります。
契約期間と見直しの条件
契約期間が長いと、利用状況が変わっても途中で解約できない場合があります。更新時の条件や、ライセンス数を減らせる時期を、契約前に確認しておきましょう。
導入後は、半年から1年ごとに利用状況を振り返ると効果的です。利用が少ない場合は、プランの変更も早めに検討できます。見直しの条件は、契約書や約款に記載されていることが多いため、事前に読んでおくと安心です。
規模を問わず検討できるCAEソフト
企業規模や予算感に応じて、解析の範囲を絞って選びやすい製品を取り上げました。必要な解析の種類から逆算し、導入後のずれが出にくい構成を検討する際にご活用ください。
PHOTO-THERMO (株式会社フォトン)
- 熱伝導と他PHOTOシリーズの連成解析が可能。
- 専用プリ・ポスト一体型で操作を効率化
- 温度依存性を考慮した熱伝導解析が可能
3DCS (株式会社ファソテック)
- 公差による組立・機能への影響を視覚化・定量評価。
- モンテカルロ・感度解析で公差の要因分析が可能
- 複数CADと連携し、環境に応じた解析が可能。
Simcenter 3D software (シーメンス株式会社)
- CADと解析を統合した一元環境で設計プロセスを効率化。
- 複数領域のマルチフィジックス解析に対応
- 設計探索・連成解析による製品性能評価と最適化の促進
MPIC (株式会社クリエイティブマシン)
- Sefea技術で一次要素でも二次要素の精度
- マルチスレッドで大規模計算を高速化
- 前後処理が簡潔で設定ミスを低減
CAEソフトに関するよくある質問
CAEソフトの企業規模による違いについて、導入前によく寄せられる質問と回答をまとめました。
- ■Q1:企業規模が小さくてもCAEソフトを導入する意味はありますか?
- A:試作の回数が多い場合や、設計の手戻りを減らしたい場合には意味があります。ただし、解析の頻度が低いと費用対効果が出にくいため、外部委託との比較もおすすめです。
- ■Q2:企業規模にあうCAEソフトの費用の目安は?
- A:製品や機能の範囲、ライセンス形態によって大きく異なるため、一律の目安はありません。複数社から見積もりを取り、年間の解析件数あたりの費用で比較しましょう。
- ■Q3:基幹システムと連携できないCAEソフトは避けるべきですか?
- A:一概には言えません。データの受け渡し頻度が低ければ、手作業でも運用できる場合があります。連携の有無と、その手作業にかかる負担をあわせて判断してください。
- ■Q4:大企業で解析が集中して遅くなるときの対処法は?
- A:優先順位のルール作りや、計算環境の増強、クラウドの活用が選択肢です。原因はソフトの設定やサーバの能力、ライセンス数など複数あり得るため、利用状況の記録から確認します。
まとめ
CAEソフトの企業規模ごとの懸念点は、50名規模なら費用対効果、100名規模ならシステム連携、大企業なら処理の集中がポイントです。自社の解析の頻度や体制を整理したうえで、複数製品を比較することが大切です。自社の規模にあうCAEソフトを探したい方は、資料請求を活用して、機能や費用を比べてみてください。

