CDNとは
CDNは「Content Delivery Network」の略です。Web上で安定的にコンテンツを配信するための仕組み、あるいはその仕組みを提供するサービスのことをいいます。
1つのサーバでコンテンツを配信していると、アクセスが集中した際に遅延やサーバダウンが生じることがあります。また、海外からアクセスした際になかなかレスポンスが返ってこず不便です。
そこで、世界各地に複数のサーバを設置し、コピーしたコンテンツをそのサーバから配信するのがCDNです。利用者はもっとも近い位置にあるサーバにアクセスすることで、地理的な制約とトラフィックの過集中を防げます。コンテンツの原本を保存しているサーバをオリジンサーバ、コピーしたコンテンツを配信するサーバをキャッシュサーバと呼びます。
CDNのメリット・デメリット
つづいて、CDNのメリットとデメリットを紹介します。
活用するメリットは3つ
CDNには主に3つのメリットがあります。
- サーバ負荷の軽減
- コンテンツへのアクセスは何らかのきっかけで突発的に増えることがあります。対策をしていなければサーバがダウンし、せっかくのビジネスチャンスを失いかねません。CDNを活用すれば世界中のサーバに負荷を分散し、アクセスの急増に備えられます。
- DDoS攻撃対策
- DDoS攻撃とは、大量のアクセスを送ることでサーバの機能を損なうサイバー攻撃手法です。CDNでアクセスを分散すれば攻撃による被害を防げます。
- パフォーマンス向上
- CDNを活用すると、ユーザーは地理的にもっとも近い位置にあるサーバからコンテンツを取得することになります。地理的な距離による通信の遅延リスクを低減可能です。Webサイトであれば検索エンジンから好まれ、訪問者数の増加につながります。
活用するデメリットは3つ
CDNの代表的なデメリットは以下の3つです。
- 更新の遅延
- オリジンサーバのコンテンツを更新したあと、キャッシュサーバのコンテンツが更新されるまでにはタイムラグが生じます。地域によってはなかなか新しいコンテンツを閲覧できないおそれがあります。
- セキュリティトラブルのリスク
- オリジンサーバに重要な情報が保存されている場合、その情報も誤ってキャッシュサーバへコピー・配信される可能性があります。何をどこまでコピーするのか、慎重な設定が必要です。
- コストが生じる
- CDNサービスの利用には料金がかかります。利用によって得られるメリットと発生するコストのどちらが大きいのか、天秤にかけなければなりません。
CDNの選び方
世の中には多数のCDNサービスが存在します。自社に最適なものを選ぶにはどのような点を比較すればよいのでしょうか。
どれくらいのコストがかかるか
CDNの料金体系はサービスによって異なります。代表的なのは以下の形態です。
- 月額料金制:毎月の価格が一定
- 従量課金制:利用量に応じて価格が変動
- 帯域課金制:ピーク帯域に応じて価格が変動
このほか、最低契約期間・最低利用金額などを定めているサービスも存在します。自社の場合はどの程度の料金になりそうなのか、試算して料金比較を行いましょう。
サポート体制が充実しているか
CDNサービスの利用には、サーバやネットワークに関する理解が求められます。十分な理解がないまま利用すると、セキュリティ事故などの思わぬトラブルに見舞われかねません。
安心してCDNを使うために、サポート体制が充実しているサービスを選定しましょう。サーバ構成やリスクへの備えといった構築支援や、24時間体制での問い合わせ対応を提供してくれるCDN事業者が理想的です。
自社のコンテンツに対応できるか
Webコンテンツは、動的コンテンツと静的コンテンツに分けられます。
動的コンテンツとは、ユーザーに応じて内容が変化するコンテンツです。たとえば、一般的にECサイトは動的サイトへ分類されます。表示される「おすすめ商品」や「お気に入りリスト」などがユーザーによって変わるためです。一方、多くの企業HPのように誰が見ても同じ内容が表示されるコンテンツを、静的コンテンツと呼びます。
動的コンテンツをCDNで配信したい場合は注意が必要です。他の情報と関連付けて表示内容を変化させるという複雑さから、対応していないサービスもあります。ECサイトの例でいえば、顧客情報へアクセスしなければ適切なページを表示できません。このような情報をキャッシュサーバに置くのはセキュリティ上ハイリスクです。動的コンテンツの配信可否や、セキュリティリスクへの対応などを踏まえてサービスを比較しましょう。
ITトレンド編集部おすすめのCDN製品
では、具体的なCDN製品を紹介します。最初はITトレンド編集部のおすすめCDNを見ていきましょう。
《Cloudflare》のPOINT
- 1つのダッシュボードで全拠点のネットワークを管理可能!
- Enterpriseプランは稼働率100%を実現!
- 平均で1日1,120億件の脅威をブロックする圧倒的な稼働実績!
Cloudflare Japan株式会社が提供。世界中の広い地域にネットワークをもち、静的・動的コンテンツの配信を支援します。カスタマイズ性が高く、キャッシュ方法を詳細に制御できます。また、CDNだけでなくWAFやUniversal SSL証明書などいくつかの機能が同時に利用可能です。プランによっては、年中無休のメール・チャット・電話によるサポートも受けられます。
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そのほかのCDN製品をまとめて比較!
つづいて、そのほかの主要なCDN製品をまとめて紹介します。
Fastly
Fastly社が提供。ヨーロッパや北アメリカを中心とし、南アメリカやアジアにもキャッシュサーバをもちます。サーバにSSDを用いるなど、比較的少ないサーバ数で安定的な配信を実現しているのが特徴です。ログ機能も充実しており、トラフィックの状況をリアルタイムに可視化します。DDoS 対策や次世代 WAFなどセキュリティ面も万全です。
HyperCDN
株式会社ハイパーボックスが提供。日本国内を対象としたサービスです。ドメイン名やURLを指定するだけで、即座に利用を始められる手軽さを特徴とします。転送量1GB あたり3円から配信できるローコストも魅力です。ダッシュボードでは、各サイトのトラフィック量などを一目で確認できます。オプション機能として扱われることが多いSSL化通信機能も標準搭載されています。
J-Stream CDNext
株式会社Jストリームが提供。1,100アカウント以上もの導入実績を誇る、国産CDNサービスです。高速通信と安定的な配信を実現するとともに、ベンダーのエンジニアが手厚いサポートを提供します。プロトコルやサーバの技術は常に最新のものが用いられ、SSL通信にも標準対応しています。動的コンテンツの配信も可能です。
Azure CDN
Microsoft社が提供。サーバやネットワークなどのインフラをクラウド上で提供するサービス「Microsoft Azure」にて、CDNも提供されています。Azureで提供される他サービスとのシームレスな連携性が特徴です。Webサイトやアプリのほか、ファームウェアやゲームソフトの配信・更新にも対応しています。
StackPath
StackPath社が提供。北アメリカの南部とヨーロッパに加え、日本やオーストラリアにキャッシュサーバをもちます。分析やレポート機能、カスタマーポータルから利用状況を確認・制御可能です。DDoS攻撃緩和・SSL化・プライベートネットワークバックボーン・コンテンツ保護など、セキュリティ機能も充実しています。
Akamai
Akamai社が提供。配信の可視化や最適化を図る機能が充実しています。「CloudTest」では、Webサイトやアプリがどの程度の負荷に耐えられるのかリアルタイムに検証可能です。「DataStream」では実際のトラフィック状況を可視化し、エラーやオフロードについて把握できます。「Image & Video Manager」はデバイスにあわせて瞬時に表示コンテンツを最適化します。
Sucuri
Sucuri社が提供。Webサイトの表示速度を平均70%改善するサービスです。 北アメリカにおける複数の都市と、ロンドン・東京・ムンバイ・シドニーなどにサーバをもちます。インストール不要で、Webサーバの資格情報・DNSを変更するだけでセットアップ可能です。Webサイトをスキャンしてマルウェアやハッキングを検出し、WAFで脅威をブロックします。
KeyCDN
proinity社が提供。6つの大陸にて、10万を超えるエリアでネットワークを展開しているサービスです。各サーバはTCP スタックやSSDにより最適化されています。コンテンツを配信するエリアやキャッシュサーバの更新状況は詳細に制御でき、統計データをリアルタイムに把握可能です。
netlify
netlify社が提供。ホスティングサービスであり、CDNの機能もあわせて提供されます。最初からレンタルサーバ上でコンテンツを構築・配信できるため、オリジンサーバの用意は必要ありません。無料のスタータープランから、アップタイムSLA99.99%のハイスペックなエンタープライズプランまで柔軟に選べます。
Rackspace
Rackspace Technology社が提供。世界中に230ものエッジサーバをもつサービスです。 Akamai Technologiesのコンテンツ配信ネットワークを利用しています。静的・動的コンテンツの両方を配信可能です。更新内容は秒単位で反映され、キャッシュサーバ内のコンテンツを最新状態に保てます。
Gumlet
Gumletが提供。日々10億以上のファイルを配信し、平均して60%以上ものパフォーマンス改善を実現しています。動画を世界中に配信するための仕組みを整え、最小限のビットレートで最大限の映像品質を提供します。視聴状況の分析や、地域・プラットフォームにもとづくセグメンテーションなど、マーケティング支援機能も備わっています。
Google Cloud CDN
Google社が提供。同社が世界中に所有する120以上のキャッシュサーバからコンテンツを配信するサービスです。Google Cloud Storage上のコンテンツを配信できます。キャッシュサーバに保存するコンテンツは細かく制御可能です。ヘルスチェックやルーティングなどの設定は、同社のロードバランサ「Cloud Load Balancing」にて行えます。
imgix
imgix社が提供。北アメリカとヨーロッパに加え、日本では東京都と大阪府にサーバをもつサービスです。画像とビデオをサーバにキャッシュすることで配信を高速化します。トリミングやサイズ変更など、画像を操作する機能も200以上が搭載され、画像がもつ魅力を最大限に引き出すことが可能です。SSL/TLS化による保護も標準提供されています。
CacheFly
CacheNetworks社が提供。南北アメリカ・ヨーロッパを中心とし、広い範囲に50以上のサーバ拠点をもつCDNです。レイテンシーをわずか1秒以内に抑えることで、快適な動画視聴を実現します。同時に100万人以上の視聴者へ動画を配信可能です。24時間年中無休のサポートなど、支援体制も充実しています。
CDN77
CDN77社が提供。平均98%もの高いキャッシュヒット率により、安定的にコンテンツを配信します。主要な動画プロトコルのHLS・MPEG-DASH・CMAFに対応し、高いパフォーマンスでのライブ配信を実現します。DDoS攻撃の阻止やホットリンク保護など、セキュリティ対策も整っています。
Amazon CloudFront
Amazon社が提供。世界中に410以上のサーバをもちます。静的・動的なWebサイトや動画のストリーミング配信に対応しています。AWSの各種サービスと連携するのが特徴です。たとえば、AWS Shield Standard機能を使えばWebアプリケーションをDDoS攻撃から保護できます。
BootstrapCDN
Cloudflare社やFastly社など複数のスポンサーが提供。Bootstrapはレスポンシブサイトを制作するためのフロントエンドツールキットです。無償提供されており、通常はデバイスにダウンロードしてサイト制作に利用します。しかし、BootstrapCDNを利用すればホスティングサーバ上でBootstrapを使い、Webサイトを制作できます。
CDNetworks
株式会社シーディーネットワークス・ジャパンが提供。70以上の国・地域で20万台以上ものサーバをもつサービスです。静的・動的コンテンツの両方に対応しています。キャッシュサーバ内に保存したコンテンツのキャッシュや削除は任意に行え、キャッシュヒット率を高い水準で維持します。アンチハイジャックやアンチ改ざんなど、包括的なセキュリティ機能も搭載しています。
CDNの特徴を比較して、自社に適した製品を導入しよう!
CDNは、地理的に離れた複数のサーバからコンテンツを配信することでパフォーマンスを高めるサービスです。トラフィックの急増やDDoS攻撃へ対処できます。
CDNの導入メリットを得るためには、データ転送の速度や課金の仕組みなどを比較したうえで自社に最適な製品を選定する必要があります。CDN導入を検討する際は以下の観点でサービスを比較しましょう。
- ・どのくらいのコストがかかるか
- ・サポート体制が充実しているか
- ・自社のコンテンツに対応できるか
以上を踏まえ、最適なサービスを選定しましょう。