連結会計システムと関係する主な法律制度
連結会計は複数の法制度や基準と関係します。制度の全体像を押さえておくことで、連結会計システムの価値が理解しやすくなります。
会計基準との関係
日本の企業が連結財務諸表を作成する際は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて処理を行う必要があります。これらの会計基準は企業会計基準委員会が公表しており、日本基準(Japanese GAAP)や指定国際会計基準など、複数の基準が利用されています。
連結会計では、子会社や関連会社の財務データを集約したうえで、内部取引の消去や持分法の適用など専門的な調整が求められます。こうした処理を手作業で行うと負担が大きくなりがちです。連結会計システムを活用することで、会計基準に沿った処理を標準化し、業務の一貫性と正確性を確保しやすくなります。
金融商品取引法との関係
金融商品取引法に基づき、有価証券報告書の提出が求められる企業では、連結財務諸表の開示が義務付けられています。この法律は、投資家保護や市場の公正性を確保することを目的としており、開示情報の正確性や提出期限の遵守が重視されます。
近年の法改正では、四半期開示制度の見直しが進み、中間連結財務諸表の取り扱いにも変化が生じています。こうした制度変更に対応するためには、集計やチェック作業を効率化する仕組みが欠かせません。連結会計システムを活用することで、法令要件に沿った形で開示業務を支援し、実務負担の軽減につながります。
開示制度との関係
日本では財務情報の開示制度が整備されており、証券取引所規則や法令に基づき連結決算情報を投資家に提供する必要があります。特に上場企業は、有価証券報告書や半期報告書で連結数値の提示が義務付けられます。
制度対応は専門性が高く、手続きの遅れや誤りは企業リスクにつながります。連結会計システムを活用すると、開示用データの抽出・帳票作成を支援し、期限遵守を助けます。
参考:連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則|e-Gov 法令検索
法制度対応で連結会計システムが果たす役割
法律対応は知識を理解するだけでは十分とはいえません。実務の現場では、制度変更や法令要件を前提とした業務フローの仕組み化が求められます。連結会計システムは、こうした制度対応を日常業務に落とし込み、安定した運用を支える役割を担います。
正確性の確保
連結会計では、多数の子会社や関連会社のデータを取り扱う必要があります。表計算ソフトを中心とした手作業の運用では、入力ミスや計算誤り、不整合が発生しやすくなります。
連結会計システムには計算ロジックやチェック機能が組み込まれており、処理を標準化しやすい点が特徴です。これにより、法制度に沿った正確な数値管理を実現しやすくなります。
監査対応支援
監査対応では、数値の妥当性だけでなく、処理の根拠や履歴を示すことが求められます。手作業で管理している場合、資料の整理や説明に多くの時間を要するケースも少なくありません。
連結会計システムを活用すると、仕訳や調整の履歴をシステム上で一元管理し、監査時の説明資料作成を効率化できます。担当者の業務負担軽減にもつながります。
開示業務支援
法定開示書類の作成は、決算期に業務が集中しやすい工程です。連結会計システムでは、開示用帳票の作成やXBRL(電子開示形式)への対応を支援する機能が提供される場合があります。これにより、開示資料作成のプロセスを効率化し、限られた期間でも対応しやすくなります。
以下の記事では連結会計システムの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
連結会計システムで備える法制度変更への対応ポイント
法律や制度は継続的に見直しが行われます。そのため、制度変更への対応力は、連結会計システムを選定する際の重要な比較軸となります。ここでは、制度改正を見据えて確認しておきたい主なポイントを整理します。
システムアップデート対応
法制度が改正された際に、システム側で速やかに対応機能が提供されるかどうかは重要です。アップデート対応が迅速であれば、自社で個別に改修作業を行う負担を抑えやすくなります。制度対応のスピードは、決算業務全体の効率にも影響を及ぼします。
ベンダーの情報提供体制
制度変更の内容は専門性が高く、実務への影響を把握するのが難しい場合もあります。そのため、システム提供会社が法制度の改正内容や実務上のポイントをわかりやすく発信しているかどうかも確認が必要です。あわせて、問い合わせ対応などのサポート体制が整っているかも選定時の判断材料になります。
内部ルール整備
連結会計システムを導入するだけでは、制度対応が自動的に完結するわけではありません。社内の運用ルールや内部統制を法制度に合わせて整備することで、制度変更時の混乱を抑え、継続的に安定した運用を行いやすくなります。
法制度対応を重視した連結会計システムの選定ポイント
法制度対応を重視して連結会計システムを選ぶ場合、機能面だけでなく、対応力や運用実績を含めて比較することが重要です。ここでは、制度対応の観点から押さえておきたい主な選定ポイントを紹介します。
実績の有無
制度対応の実績が豊富な連結会計システムは、法令遵守や運用の安定性という面で安心感があります。特に、自社と同業種や同規模の企業での導入事例があるかを確認すると、実運用をイメージしやすくなります。
対応スピード
制度変更が発生した際に、アップデート提供や問い合わせ対応がどの程度迅速に行われるかは重要な比較ポイントです。対応が遅れると決算業務全体に影響する可能性があるため、スピード感は事前に確認しておきたい要素です。
サポート範囲
導入後のサポート範囲が広いと、法制度や運用面で不安が生じた場合でも相談しやすくなります。制度対応を重視する企業にとって、操作面だけでなく実務面まで含めたサポート体制が整っているかは、重要な判断材料となります。
まとめ
連結会計は会計基準や金融商品取引法、有価証券報告書開示制度など複数の法制度と深く関わります。制度対応を人手だけで完結させるのは負担が大きく、ミスのリスクも高まります。
連結会計システムは制度対応を仕組みとして支え、正確性や開示対応の効率化を図るうえで有効です。導入を検討する際は法制度対応の観点から比較し、まずは資料請求で情報収集を進めましょう。


