連結会計システムと類似ツールの関係性
連結会計システムは、複数の会社をまとめて管理するための専門ツールです。ただし、会計システムや管理会計ツール、ERPと役割が重なる部分もあります。それぞれの担う領域の違いを把握することが重要です。
会計システムとの位置づけ
会計システムは単体企業の仕訳入力や決算処理を効率化するためのツールです。日々の取引を正確に記録し、財務諸表を作成することが主な役割です。
一方、連結会計システムは複数の会計システムからデータを集約し、グループ全体の決算を行う点が特徴です。単体決算を支えるのが会計システム、連結決算を支えるのが連結会計システムという関係性になります。
管理会計ツールとの位置づけ
管理会計ツールは経営判断に必要な数値を可視化するための仕組みです。部門別損益や予算実績管理など、内部向けの分析に強みがあります。
連結会計システムもグループ全体の数値を扱いますが、主目的は決算や開示対応です。管理会計ツールは意思決定支援、連結会計システムは制度対応という違いがあります。
ERPとの位置づけ
ERPは会計や人事、販売管理などを一元管理する統合基幹業務システムです。業務データをまとめて管理できる点が特徴ですが、連結決算機能は限定的な場合もあります。
連結会計システムはERPと連携しながら連結特有の処理を補完する役割を担います。業務全体を支えるERP、連結処理を専門的に担うのが連結会計システムです。
以下の記事では連結会計システムの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
会計システムとの違い
会計システムと連結会計システムは名称が似ているため混同されがちです。しかし、対応範囲や利用部門に明確な違いがあります。ここでは実務面での違いを整理します。
対応範囲
会計システムは単体企業の取引処理を対象とします。仕訳入力から決算書作成までが主な範囲です。連結会計システムは複数社の会計データを集約し、内部取引消去などの処理を行います。グループ全体を対象とする点が大きな違いです。
データ処理単位
会計システムでは会社単位でデータを管理します。一方、連結会計システムでは会社間の関係性を考慮した処理が必要です。通貨や会計基準の違いを調整する機能も求められます。データの粒度と処理の複雑さが異なります。
利用部門
会計システムは主に経理部門が利用します。日常業務を効率化する目的が中心です。連結会計システムは、経理に加えて経営企画や財務部門も関与します。グループ全体を俯瞰するため、関係部門が広がる傾向があります。
会計システムの役割やできることをより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。主要な機能や導入メリットを整理して解説しています。
管理会計ツールとの違い
管理会計ツールと連結会計システムは、どちらもグループ全体や部門別の数値を扱う点で共通しています。ただし、利用目的や活用シーンには明確な違いがあります。ここでは実務の視点から、その違いを整理します。
対応範囲
管理会計ツールは、部門別損益や事業別収益など、社内管理を目的とした数値の集計と分析を主な対象とします。企業ごとの管理方針に応じて、指標や集計方法を柔軟に設計できる点が特徴です。
一方、連結会計システムは、会計基準に基づいた連結決算や開示業務への対応を前提としています。管理会計ツールが内部管理向けであるのに対し、連結会計システムは制度対応を目的としています。
データ活用の目的
管理会計ツールは、経営層や管理職が迅速に意思決定を行うための情報提供を目的としています。予算と実績の差異分析や、将来を見据えたシミュレーションなどに活用されます。
連結会計システムは、正確な数値をもとにグループ全体の業績を確定させることが主な目的です。スピードや柔軟性を重視する管理会計ツールに対し、正確性と統一ルールが重視されます。
利用部門
管理会計ツールは、経営企画部門や事業部門の責任者が中心となって利用するケースが多く見られます。現場に近い視点で数値を分析できる点が特徴です。
連結会計システムは、経理部門や財務部門が主導し、決算や開示業務を担います。両者は役割が異なるため、目的に応じて併用されることも少なくありません。
ERPとの違い
ERPと連結会計システムはどちらも企業全体を対象とする点で比較されます。ただし、役割や導入目的は大きく異なります。それぞれの違いを理解することが重要です。
機能範囲
ERPは会計だけでなく販売や在庫、人事など幅広い業務をカバーします。一方、連結会計システムは連結決算に特化した機能を持ちます。業務全体を網羅するERPと、専門性の高い連結会計システムという違いがあります。
導入目的
ERPは業務効率化やデータ一元管理を目的に導入されます。連結会計システムは連結決算の正確性や処理スピードの向上が主な目的です。目的が異なるため、導入検討時の評価軸も変わります。
コスト構造
ERPは初期費用や導入期間が大きくなりやすい傾向があります。連結会計システムは機能が限定されている分、導入範囲を絞りやすい傾向です。既存システムとの連携を前提に検討する企業も少なくありません。
ERPが担う業務範囲や導入の考え方を整理したい場合は、以下の記事も参考になります。連結会計システムとの違いを理解するうえでも役立ちます。
連結会計システムが向いているケース
すべての企業に連結会計システムが必要というわけではありません。ここでは、導入を検討しやすい代表的なケースを紹介します。自社の状況と照らし合わせて考えることが大切です。
連結決算業務が複雑なケース
グループ会社が多く決算調整に時間がかかる場合に向いています。表計算ソフトでの管理に限界を感じている企業も対象です。自動化により作業負荷の軽減が期待できます。
グループ経営管理を強化したいケース
グループ全体の業績を迅速に把握したい企業に適しています。数値のばらつきを抑え、経営判断の材料を整えやすくなります。経営企画部門の負担軽減にもつながります。
開示業務を効率化したいケース
有価証券報告書などの開示業務を行う企業では正確性が求められます。連結会計システムは制度対応を意識した設計です。その結果、確認作業の工数削減が期待できます。
まとめ
連結会計システムは会計システムやERPと似ているようで役割が異なります。単体決算や業務全体の管理ではなく、連結決算に特化している点が特徴です。グループ経営が進む中で業務負担や管理精度に課題を感じている企業にとって有力な選択肢となります。
まずは自社の課題を整理し、適したツールを比較検討することが重要です。ITトレンドでは、連結会計システム各社の資料請求がまとめて行えます。情報収集の一歩としてぜひ活用してみてください。
