EDR市場規模の概要
まずは、EDRがどのような製品を指すのかを整理します。そのうえで、なぜ市場が拡大しているのか、従来のエンドポイントセキュリティと何が違うのかを押さえると、導入検討の判断軸が見えやすくなります。
EDR市場の定義
EDRは「Endpoint Detection and Response」の略で、日本語では「エンドポイント検知・対応」と呼ばれます。エンドポイントとは、企業のパソコンやサーバ、業務用スマートフォンなど、業務で使う端末全般を指します。
従来の対策が既知の不正プログラムの検知を中心としていたのに対し、EDRは端末上の不審な挙動や異常な通信を継続監視し、侵入後の調査や封じ込めまで支援します。そのため、EDR市場は単なるウイルス対策市場ではなく、検知と対応を含む運用型のエンドポイント防御市場として捉えられます。
EDR市場の拡大背景
市場拡大の背景には、攻撃手口の変化があります。近年は、侵入そのものを完全に防ぐだけでは不十分とされ、侵入後の挙動を早く見つけて被害拡大を抑える発想が重視されています。
とくにランサムウェアは、初期侵入後に端末やサーバへ横展開し、業務停止や情報漏えいにつながるおそれがあります。こうした攻撃に対し、端末単位で監視できるEDRは導入意義を説明しやすく、企業の検討対象になりやすい製品です。
エンドポイントセキュリティ市場との関係
EDR市場は、エンドポイントセキュリティ市場の一部です。エンドポイントセキュリティには、従来型のウイルス対策やエンドポイント保護、EDR、さらにそれらを統合した運用基盤まで含まれます。
近年は、単体の防御機能だけでなく、監視と初動対応まで一体で求められる場面が増えています。そのため、エンドポイントセキュリティ市場のなかでも、EDRを含む統合型や運用支援型の領域が伸びやすい状況です。
世界のEDR市場規模
世界市場では、EDR単体の公的統計がまとまって公表される例は限られます。一方で、各国政府や国際機関はサイバー脅威の深刻化と防御投資の重要性を継続的に示しており、EDRを含む高度な防御市場の拡大を後押ししています。
世界市場の成長動向
世界全体では、クラウド活用の拡大やリモート接続の常態化により、端末を起点とした脅威監視の必要性が高まっています。国際機関でも、デジタル経済の信頼性を支える要素としてサイバーセキュリティの重要性が繰り返し示されています。
この流れのなかで、防御だけでなく異常検知や封じ込めまで担う製品群への需要が強まりました。EDR市場は、こうしたセキュリティ投資の高度化を背景に、中長期で拡大しやすい領域と考えられます。
海外企業の市場シェア
海外市場では、米国を中心としたベンダーが強い存在感を持っています。背景には、クラウド基盤との連携や、脅威インテリジェンスの蓄積、運用自動化の開発力などがあります。
ただし、近年は単体のEDR製品だけでなく、メールやネットワーク、クラウド、ID管理まで横断して分析する統合型プラットフォームが増えています。そのため、今後の競争軸は、単純な検知機能だけでなく、どこまで広くデータをつなぎ、対応を効率化できるかに移りつつあります。
市場拡大の要因
世界市場が伸びる要因は、大きく三つあります。ひとつはランサムウェアや標的型攻撃の継続的な増加、二つ目はクラウドやSaaS利用の拡大、三つ目はセキュリティ人材不足です。
攻撃が複雑になる一方で、企業側の運用負荷は高まっています。そのため端末を守るだけでなく、分析や初動対応まで効率化できる製品が選ばれやすくなっています。今後は、検知精度だけでなく、運用しやすさを備えた製品が伸びる可能性が高いでしょう。
日本のEDR市場規模
日本でもEDRへの関心は高まっています。公的機関がEDR単体の国内市場規模を毎年詳細に公表しているわけではありませんが、サイバーセキュリティ産業全体の成長方針や攻撃被害の深刻化を見ると、関連分野への投資拡大は読み取りやすい状況です。
国内市場の成長
経済産業省は2025年3月公表の「サイバーセキュリティ産業振興戦略」で、国内企業のサイバーセキュリティ産業における売上高について、足下の約0.9兆円から10年以内に約3兆円超へ拡大する目標を掲げました。
この数値はEDR単体ではなく産業全体の目標ですが、企業の対策強化ニーズが継続すると見る根拠になります。なかでも、侵入後対応を担うEDRは、ゼロトラストや統合監視の流れと親和性が高く、成長分野として位置づけやすい領域です。
参考:我が国から有望なサイバーセキュリティ製品・サービスが次々に創出されるための包括的な政策パッケージ「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を取りまとめました|経済産業省
国内導入企業の増加
日本では、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃への警戒感が高まるなかで、EDRの導入検討が大企業だけでなく中堅企業にも広がっています。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、組織向け脅威の1位が「ランサム攻撃による被害」とされました。
また、6位には「リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃」が入っており、端末単位の監視や異常検知の重要性が続いています。こうした脅威環境は、EDR導入の必要性を後押しする材料といえます。
参考:情報セキュリティ10大脅威 2025|情報処理推進機構
日本市場の特徴
日本市場の特徴は、製品単体の比較だけでなく、導入後の運用支援まで重視されやすい点です。セキュリティ専任者が少ない企業では、導入してもアラートを見きれない課題が起こりがちです。
そのため、監視代行や分析支援、インシデント対応支援などを組み合わせた提案が受け入れられやすくなっています。今後も、機能の多さだけでなく、運用のしやすさや支援体制の厚さが選定基準になりやすいでしょう。
EDR市場の今後の動向
今後のEDR市場は、単体製品としての進化だけでなく、ほかのセキュリティ機能との統合が進むと見られます。とくに、複数の防御領域をまとめて分析できる仕組みや、日常運用を支援するサービスの伸びが注目されています。
XDRとの統合
XDRは、端末だけでなくメールやネットワーク、クラウド、ID情報などを横断して脅威を分析する考え方です。EDRはその中心的な構成要素であり、今後は単体運用より統合基盤の一部として導入される場面が増えると考えられます。
複数領域をまとめて見ることで、攻撃の全体像を把握しやすくなります。調査の手間を抑えながら、初動を早めやすくなる点が評価されやすいでしょう。
セキュリティ運用サービスの拡大
EDRは導入して終わりではなく、アラートの精査や優先度判断、封じ込め対応まで含めて運用する必要があります。しかし、多くの企業では専門人材の確保が簡単ではありません。
この課題から、マネージドセキュリティサービスとの併用が拡大しています。今後は、製品単体の価格だけでなく、どこまで運用支援を含めて効率化できるかが導入判断の大きな基準になるでしょう。
AI活用による進化
近年のEDRでは、人工知能や機械学習を使い、膨大な端末ログから異常な挙動を見つける仕組みが広がっています。これにより、従来は人手に頼っていた初期分析を効率化しやすくなりました。
ただし、AIを活用していても、誤検知の抑制や運用フローの整備は欠かせません。今後伸びる製品は、AIを前面に出すだけでなく、現場で使いやすい画面設計や対応支援まで含めて整っているものと考えられます。
以下の記事ではEDRの価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
EDR市場を牽引する要因
EDR市場が拡大する背景には、実際の脅威環境と働き方の変化があります。攻撃件数の増加だけでなく、社内外の境界が曖昧になったことも、端末監視の重要性を高める要因です。
ランサムウェアの増加
警察庁は、令和6年におけるランサムウェア被害報告件数を222件と公表しています。高水準が続いていることから、企業は侵入後の拡大防止まで見据えた対策を求められています。
ランサムウェアは、侵入後に権限昇格や横展開を行うことがあるため、端末上の異常挙動を追えるEDRとの相性がよい分野です。被害の予防だけでなく、早期把握と封じ込めの観点でも導入が進みやすい理由があります。
ゼロトラストの普及
IPAの「ゼロトラスト導入指南書」でも、リモートワーク利用の加速化やクラウド活用の増加により、従来の境界型防御だけでは防ぎきれない状況が示されています。
ゼロトラストでは、端末の状態確認や継続的な検証が重要です。EDRは、端末の挙動や不審な実行を把握しやすいため、ゼロトラスト環境を支える要素として位置づけられています。
リモートワークの拡大
社外から業務システムへ接続する働き方が一般化したことで、オフィス内だけを前提とした防御では十分とはいいにくくなりました。端末が攻撃の入口になりやすい環境では、利用場所に左右されにくい監視が重要です。
そのため、社内外を問わず端末の状態を見られるEDRは、今後も検討対象になりやすい製品です。とくに、クラウド管理や軽量運用に対応した製品は、導入候補として伸びやすいと考えられます。
まとめ
EDR市場は、ランサムウェア対策やゼロトラストの普及、リモートワークの定着を背景に、今後も成長が期待される分野です。企業のセキュリティ対策では、端末を常時監視し、異常を早期に把握する体制づくりがより重要になっています。
これからは、XDRとの連携や運用支援の充実度、AI活用のしやすさまで含めて比較することが大切です。自社に適したEDRを選ぶために、複数製品の資料請求を行い、機能やサポート体制を確認してみてください。


