EDR導入で業種ごとに異なる課題
EDRの懸念点は、製品の設定だけでなく利用環境や業務システムとの組み合わせによって変わります。まず、押さえておきたい基本の考え方を整理します。
誤検知が起こる仕組み
EDRは端末の挙動を継続的に監視し、通常とは異なる動きを検知するとアラートを出す仕組みを持っています。業務で使用する特有のソフトウェアや処理内容が、判定の基準から見て不審な動作に近いパターンを示す場合、正常な操作であっても検知される場合があります。原因は製品の判定基準だけでなく、業務システム側の処理方式や利用者の操作方法など、複数の要因が関係することがあります。
そのため、誤検知が起きた場合は、EDR側の設定だけを見直すのではなく、業務システムの動作内容もあわせて確認し、双方の情報を突き合わせて原因を特定することが望ましいでしょう。
業種によって影響の出方が異なる理由
同じ誤検知であっても、業種によって業務への影響の大きさは異なります。例えば、勘定系システムや診療業務のように処理の遅延が直接業務に影響する環境と、事務作業が中心で多少の遅延が許容される環境とでは、求められる対応のスピードが変わります。
自社の業務がどの程度リアルタイム性を求めるかを整理したうえで、誤検知が発生した際の影響範囲や許容できる時間差を確認しておくと、必要な設定や運用方法を検討しやすくなります。業種ごとの一般的な傾向をそのまま自社に当てはめるのではなく、自社特有の業務システムや運用フローもあわせて確認することが大切です。
金融機関で懸念される誤検知
金融機関では、勘定系や情報系のシステムと連携する端末が多く、業務システムとの相性による誤検知が懸念点として挙げられます。原因と確認事項を整理します。
業務システムとの相性による誤検知
金融機関で利用される業務システムは、独自の通信方式やバッチ処理を伴う場合があります。こうした処理がEDRの判定基準から見て不審な挙動に近いパターンを示すと、誤って検知されるケースが起こり得ます。原因は業務システムの仕様、EDRの判定設定、双方の組み合わせなど複数の要因が関係するため、単純に一方に限定して判断することは適切ではありません。
誤検知が繰り返される場合は、対象のプロセスを一時的に除外設定に登録できるかどうかが対応の選択肢になります。ただし、除外設定を広げすぎると監視の網が緩くなるおそれもあるため、除外範囲は必要最小限にとどめ、定期的に見直す運用が望ましいでしょう。
誤検知を抑えるための確認事項
誤検知を抑えるためには、導入前に自社の業務システムとあわせた検証ができるかを確認しておくことが有効です。検証は本番環境に影響しない範囲で実施できるか、ベンダーが許可する検証方法があるかを、情報システム部門とあわせて確認しておくとよいでしょう。
また、誤検知が発生した際に、履歴から状況を確認し、原因を特定できる仕組みがあるかも比較材料になります。原因を特定できないまま設定変更を繰り返すと、かえって監視の精度が下がる場合があるため、確認手順を事前に整理しておくことが望ましいでしょう。関連会社や委託先とシステムを共有している場合は、影響範囲の切り分けも複雑になりやすいため、あらかじめ連絡体制を整理しておくと安心です。
医療法人で懸念される動作負荷
医療法人では、電子カルテ端末の動作にEDRが影響を与える可能性が懸念点として挙げられます。診療業務への影響を抑えるための確認事項を整理します。
電子カルテ端末での動作負荷
電子カルテ端末は診療業務に直結するため、EDRの常時監視によって処理速度が低下すると、診療の進行に影響が出る場合があります。動作負荷の原因は、EDRのスキャン処理だけでなく、端末のスペックや電子カルテシステム側の処理負荷など複数の要因が関係することがあります。
そのため、動作が重くなった場合は、EDR単体の問題と決めつけず、端末のリソース状況や電子カルテシステムの動作状況もあわせて確認することが望ましいでしょう。電子カルテのベンダーとEDRの提供会社の双方に相談すると、原因を特定しやすくなります。
診療への影響を抑える確認事項
診療への影響を抑えるためには、リソース消費を抑える設定ができるか、スキャンのタイミングを診療時間外に調整できるかを確認しておくと安心です。導入前に稼働中の端末で動作検証を行えるかどうかも、あわせて確認しておきたい項目です。
また、動作に問題が起きた際にすぐに設定を元に戻せるかどうかも重要な確認事項です。診療業務は中断が難しいため、問題発生時に迅速に対応できる連絡体制を、導入前にベンダーと取り決めておくことが望ましいでしょう。夜間や休日に問題が発生した場合の対応窓口の有無も、医療機関特有の稼働状況にあわせて確認しておくとよいでしょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でEDRの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
製造業で懸念されるOT環境の誤検知
製造業の工場では、制御システムを含むOT環境でEDRを導入する際に、誤検知による停止が懸念点として挙げられます。原因と確認事項を整理します。
制御システムの停止につながる要因
OT環境の制御システムは、リアルタイム性の高い処理を継続的に実行しています。EDRが不審な挙動として制御プロセスを検知し、自動的に隔離や停止処理を実行する設定になっていると、生産ラインの停止につながる場合があります。原因は、EDRの判定基準だけでなく、制御システム側の通信方式や、監視設定の初期構成が環境に合っていないことなど、複数の要因が考えられます。
そのため、OT環境に導入する際は、一般的な事務端末向けの設定をそのまま適用せず、制御システムの特性にあわせた個別の設定を検討することが望ましいでしょう。
OT環境向けの確認事項
OT環境向けには、監視のみを行い自動的な隔離や停止を行わない設定ができる製品もあります。制御システムへの影響を避けたい場合は、こうした設定が可能かどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。
また、制御システムの提供元とEDRの提供会社の双方に、想定される影響と対応方法を確認しておくことも欠かせません。本番の生産ラインで検証することは難しいため、検証環境や試験用のラインで事前に動作を確認できるかも、あわせて相談しておくと安心です。導入後も、ソフトウェアの更新や設定変更を行う際は、事前に試験ラインで影響を確認してから本番環境へ適用する運用にしておくと、想定外の停止を防ぎやすくなります。
IT企業で懸念される開発環境の誤検知
IT企業では、開発やテストのために通常とは異なるプロセスを実行する場面が多く、正常な作業を誤って検知されることが懸念点になります。原因と確認事項を整理します。
開発プロセスを攻撃と誤認するケース
ソフトウェア開発では、ビルドやデバッグ、外部ライブラリの実行など、通常の事務作業とは異なるプロセスが頻繁に実行されます。こうしたプロセスがEDRの判定基準から見て不審な挙動に近いパターンを示すと、開発作業を妨げる誤検知が起こる場合があります。原因は開発ツールの仕様、EDRの判定ロジック、開発環境の構成など複数の要因が関係するため、一律に片方の問題と決めつけることは適切ではありません。
誤検知が繰り返されると、開発者がEDRの警告を軽視するようになり、本来確認すべきアラートを見落とすおそれもあります。誤検知を放置せず、原因を確認して設定を調整する運用が望ましいでしょう。
誤検知を防ぐための設定確認
誤検知を防ぐためには、開発環境と本番環境で監視レベルを分けられるか、特定のプロセスやディレクトリを除外設定にできるかを確認しておくことが有効です。除外設定を追加する際は、必要最小限の範囲にとどめ、変更履歴を残せる仕組みがあるかもあわせて確認しましょう。
また、除外設定の追加や変更を誰が承認するかを社内のルールとして明文化しておくと、担当者ごとの判断のばらつきを防ぎやすくなります。定期的に除外設定の一覧を見直す運用も、継続的な安全性の確保につながります。開発担当者の異動や退職があった場合にも設定内容が引き継がれるよう、変更理由を記録として残しておくことも有効です。
誤検知や動作負荷への対応を確認したいEDR製品
業務システムとの相性やOT環境への影響など、業種によって懸念される点は異なります。ここでは、除外設定や監視のみの運用に対応できるかといった観点で、比較検討の参考になる製品を紹介します。
FortiEDR
- 脅威の検出・無効化から修復までの対応をリアルタイムで自動化
- サポートが終了したレガシーOSにも対応可能
- 過剰なアラートを抑制し、セキュリティオペレーションを最適化
フォーティネットジャパン合同会社が提供する「FortiEDR」は、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティ製品です。自動的な隔離や停止を行わず監視のみを行う設定にも対応しており、OT環境の制御端末など、誤検知による業務停止を避けたい環境でも運用しやすい構成を検討できます。特定のプロセスを除外する設定も管理画面から行えます。
PSC EDRマネージドサービス
- EDRアラートを24時間365日体制で監視・分析
- アラート検知後、15分以内に一次報告を実施
- 運用状況を月次で可視化、セキュリティ改善を提案
株式会社ピーエスシーが提供する「PSC EDRマネージドサービス」は、EDRの運用監視を専門スタッフが支援するマネージドサービスです。誤検知が発生した際の原因確認や除外設定の相談を専門スタッフに依頼できるため、社内に判断できる担当者がいない企業でも、誤検知への対応を進めやすくなります。
ESET PROTECT MDR
- 業界最速のMDRレスポンス ※ESET社調べ
- エンドポイントのセキュリティ対策をひとまとめで任せられる
- 24×365でキヤノンMJグループが日本語対応!安心して任せられる
キヤノンマーケティングジャパン株式会社が提供する「ESET PROTECT MDR」は、EDR機能に専門アナリストによる監視・分析を組み合わせたマネージド型のセキュリティサービスです。アラートが業務上の正常な挙動か判断が難しい場合に、アナリストへ確認しながら対応を進められるため、誤検知の切り分けに時間をかけにくい企業でも活用しやすくなっています。
ApexOneEndpointSensor (トレンドマイクロ株式会社)
- ファイル実行やレジストリ変更などの挙動を記録
- Webコンソールで端末調査とエージェント管理を一元化。
- Deep Discovery Analyzer連携で脅威情報を活用。
CortexXDR (JBサービス株式会社)
- MITRE ATT&CK評価で100%検出率。設定変更・遅延なし。
- AIと自動化でSOC効率化、アラート98%削減
- 統合型XDRエージェントでマルチクラウド組織を保護
まとめ
EDRの懸念点は業種によって異なり、金融機関の業務システムとの相性、医療法人の動作負荷、製造業のOT環境、IT企業の開発プロセスなど、それぞれ複数の要因が関係します。導入前に自社の業務環境にあわせた検証や確認を行い、懸念点を抑える設定ができるかを比較しましょう。資料請求を活用して詳細を確認することをおすすめします。


