データ消去ソフトの機能を比べる前の基本
データ消去ソフトとは、PCやサーバーなどの記録媒体のデータを、復元できない状態にして消すためのソフトです。機能を比べる前に、仕組みと比較の軸を整理しておきましょう。
- ■消去方式
- 上書き、ブロック消去、暗号化消去など、データを消す方法
- ■対象媒体
- HDD、SSD、NVMe、サーバーのRAIDなど、消去できる媒体の種類
- ■証明書とログ
- 消去の結果を記録し、証明書として出力する機能
- ■運用機能
- 複数台の一括消去、スケジュール、管理画面などの機能
データを復元できない状態にする仕組み
パソコンで削除や初期化を行っても、媒体の中にはデータの本体が残っている場合があります。専用の復元ソフトを使うと、読み出せる可能性があるため、廃棄の前には消去の処理が必要です。
データ消去ソフトは、媒体全体に無意味なデータを書き込んだり、媒体の仕組みを使って消去を指示したりして、データを読み出せない状態にします。どの方法を使うかは、ソフトと媒体の種類によって異なります。初期化との違いを押さえておくと、ソフトの必要性を社内で説明しやすいでしょう。
物理破壊やデータ消去サービスとの違い
物理破壊は、シュレッダーや穿孔で媒体そのものを壊す方法で、壊した媒体は再利用できません。データ消去サービスは、専門の事業者に消去を委託する方法です。データ消去ソフトは自社で作業するため、機器を社外に出さずに済み、消去後の再利用も可能です。
ただし故障して起動しない媒体は、ソフトで消去できない場合があります。その場合は、物理破壊などとの併用も検討しましょう。費用や手間、再利用の有無を比べて、媒体ごとに手段を決めましょう。
機能を比較するときの優先順位の付け方
機能を比べる際は、まず自社が消去する媒体の種類と台数を整理します。その次に、消去の記録をどこまで残す必要があるかを決めましょう。提出先の指定がある場合は、その内容も確認しておきます。
多機能な製品が自社にあうとは限らず、使わない機能が多いと操作が複雑になる場合もあります。必須の機能と、あれば便利な機能を分けて整理すると、比較が進めやすくなります。優先度の低い機能は、必要になった時点で再検討しても構いません。
HDDやSSD、NVMeに対応する消去機能
媒体の種類によって、データを適切に消すための方法は異なります。特にSSDやNVMeは、HDDと仕組みが違うため、対応した消去機能があるかの確認が必要です。
HDDに使われる上書き消去の仕組み
HDDでは、全領域にデータを重ねて書き込む上書き消去が広く使われています。上書きの回数やパターンを選べる製品があり、重要度に応じて設定を変えられます。容量が大きい媒体ほど、処理に時間がかかる傾向があります。
ただし、回数を増やすほど作業時間が長くなります。消去にかかる時間は容量や機器の性能によって異なるため、台数が多い場合は処理時間の目安を確認しておきましょう。処理が終わった後に、消去結果が記録として残るかも見ておきましょう。
SSDやNVMeで確認したい消去方式
SSDは、書き込み位置を内部の制御で管理しているため、通常の上書きだけでは消えない領域が残る可能性があります。そのため、ブロック消去や暗号化消去といった、SSDの仕組みにあった方式が用いられます。方式によって、消去の完了までの時間も変わる場合があります。
NVMeなどの規格は、媒体側に消去を指示するコマンドを備えている場合があります。ソフトがSSDやNVMeに対応しているか、どの方式を使うかを資料で確認し、ベンダーにも問い合わせましょう。
消去規格への準拠の確認方法
消去の水準を示す指針として、NIST SP800-88が知られています。消去の区分として、Clear、Purge、Destroyの3つが示されており、製品が準拠をうたう場合は、どの区分を指すか確認が必要です。準拠の根拠として、仕様書や第三者の検証結果があるかも尋ねましょう。
DoD 5220.22-Mなど、古くから知られる名称を挙げる製品もあります。規格の名称だけでなく、対象の媒体やバージョン、自社が求める水準と合致するかをあわせて確認しましょう。
消去証明書の発行と複数台の一括消去
消去の事実を後から説明するには、証明書の機能が欠かせません。台数が多い場合は、一括で消去できる機能も作業時間を左右します。確認したい点を整理します。
消去証明書の発行機能と記載項目
消去証明書は、どの機器をいつ消去したかを示す記録で、消去レポートとも呼ばれます。万一、廃棄した機器から情報漏えいが疑われた際に、適切に処理したことを説明する材料です。
記載項目はソフトによって異なり、シリアル番号、消去方式、結果、作業日時、作業者などが含まれる製品があります。PDFやCSVなど出力形式も確認し、提出先が求める形式にあうか比べましょう。改ざんを防ぐ仕組みの有無も、あわせて質問しておくと安心です。
複数台を同時に消去する一括消去
PCの入れ替えなどで大量の端末を消去する場合は、複数台を並行して消去できると作業時間を短縮できます。同時に処理できる台数は、製品や使用する機器によって異なります。台数が多い現場では、作業スペースや電源の確保も課題です。
一括消去では、台数分のライセンスが必要になる製品もあります。ライセンスの数え方は、端末単位か、消去の回数単位かを確認し、年間の見込み台数で見積もりを依頼しましょう。同時に処理する台数が増えると、接続環境の準備も必要です。
スケジュール実行や遠隔操作の機能
管理者が不在の時間帯に消去を始めたい場合や、遠隔地の端末を消去したい場合は、スケジュール実行や遠隔操作の機能が役立ちます。製品によっては、管理画面から消去を指示できます。夜間に実行する場合は、終了後の結果確認の担当者も決めましょう。
遠隔操作は、端末側の設定やネットワークの条件にも左右されます。自社の環境で使えるかを事前に確認し、失敗した場合の通知や再実行の方法もあわせて確認しましょう。実行の履歴が管理画面に残るかも、重要な確認点です。
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スマートフォンやサーバーなど対象機器の広がり
消去が必要な機器は、PCだけではありません。スマートフォンやタブレット、サーバー、USBメモリなど、機器によって対応する機能や消去の考え方が変わります。
| 対象機器 | 確認したい点 |
|---|---|
| スマートフォン・タブレット | ソフトが対応するOSか、管理ツールからの遠隔消去で足りるか |
| サーバー | RAID構成の扱い、複数ディスクの同時消去に対応するか |
| USBメモリ・外付け媒体 | 接続して消去できるか、消去後の確認ができるか |
スマートフォンやタブレットの消去機能
スマートフォンやタブレットは、PC向けのデータ消去ソフトが対応していない場合があります。製品がどのOSや機種に対応しているかを、資料で確認する必要があります。個人所有の端末を業務で使う場合は、消去の範囲を事前に取り決めます。
端末管理を行うMDMの遠隔消去機能で対応できる場合もあります。ただし、通信できない端末や、返却された端末では動作しないケースがあるため、運用の場面に応じて使い分けを検討しましょう。端末の回収から消去までの流れも、あらかじめ決めておきます。
サーバーやRAID構成の消去
サーバーは複数のディスクをRAIDという仕組みで束ねている場合があります。構成によっては、論理的な設定を解除してから、個別のディスクを消去する手順が必要です。本番稼働中の機器では、作業の時間帯や停止の影響も調整が必要です。
この手順に対応しているか、ディスクを取り外さずに消去できるかは製品によって異なります。台数の多いサーバーを扱う場合は、作業時間と手順の複雑さを事前に確認しておきましょう。専門の知識が必要な場合は、情報システム部門やベンダーに相談しましょう。
USBメモリや外付け媒体の扱い
USBメモリや外付けのHDD、SSDは、持ち出しや紛失のリスクがあるため、消去してから再利用や廃棄を行う場合があります。接続して消去できる機能があれば、手軽に対応できます。暗号化された媒体の場合は、消去の方式が通常と異なる場合があります。
消去が終わったあとの確認方法も大切です。結果が画面で確認できるか、記録として残せるかを確認し、媒体ごとの対応状況を一覧にしておくと、運用が安定します。持ち込みや持ち出しのルールとあわせて整えると、管理が行き届きます。
機能の確認から製品を絞り込む手順
機能の違いを理解したら、自社の条件にあう製品を絞り込みます。必須条件の整理から、試用、資料請求までの流れを紹介します。
必須の機能と希望の機能を分ける
対象媒体、消去方式、証明書の記載項目を必須条件として書き出します。そのうえで、一括消去やスケジュールなどの運用機能は、台数や担当者の人数にあわせて重要度を決めましょう。将来の台数増加を見込んで、拡張できるかも考慮しておきます。
条件を整理する際は、情報システム部門だけでなく、総務や監査を担当する部署にも確認します。提出先が求める証明書の様式が、後から判明するケースもあるためです。分け方は表にまとめて、関係部署で共有しておきましょう。
試用版や検証環境で実際の動作を確かめる
機能の説明だけでは、実際の操作感や消去時間は分かりません。試用版があれば、不要になった端末で消去とレポートの出力を試し、結果を確認しましょう。試用の期間や、利用できる機能の制限は、事前に確認しておきましょう。
検証は、ベンダーの規約と社内ルールにもとづいて行います。本番で使う端末を試すのではなく、検証用の機器を用意すると、データを誤って消去する事態を避けられます。結果は記録に残し、複数の製品を同じ手順で比べましょう。
資料請求で確認したい質問項目
資料請求の際は、対応する消去方式と媒体、準拠する規格の対象範囲、証明書の記載項目、ライセンスの数え方を質問します。回答を表にまとめると、製品を並べて比べやすくなります。導入までに必要な期間や、初期設定の支援の有無も尋ねておくと安心です。
サポートの範囲も確認が必要です。設定方法の案内にとどまるのか、作業の代行まで含むのかは製品や契約によって異なります。疑問点は、導入前にベンダーへ確認しておきましょう。
遠隔ロックと消去の機能で比べる製品
機能の違いは、対象とする場面を整理すると比べやすくなります。ここでは、遠隔操作によるロックと消去に対応した製品と、データ消去を目的とした製品を紹介します。
TRUST DELETE on CLOMO Cloud
- 強固なリモートロックやリモートワイプで第三者への情報漏洩防止
- 使用ルール違反はセキュリティアクションが発動し、不正使用防止
- 復元が困難な方式でデータが残らない安心な消去を実現
株式会社アイキューブドシステムズが提供する「TRUST DELETE on CLOMO Cloud」は、PCの紛失や盗難が発生した際に、遠隔からのデバイスロックやデータ消去ができるWindows PC向けのサービスです。キーボードやマウスなどの操作を無効にするロックのほか、使用ルール違反の検知時にセキュリティアクションを自動で発動する機能があります。データの消去は復元が困難な方式で行われ、消去作業のログにも対応しています。
Blancco Drive Eraser (株式会社ブランコ・ジャパン)
- 特許を取得したソリューションによる安全なデータ消去
- お客様のニーズに合わせた最適な消去方法を提供
- 電子署名付きの消去証明書により、データが削除されたことを証明
ディスクシュレッダー7・スタンダード USBメモリ版 (パーソナルメディア株式会社)
- HDD・SSDのセキュア消去に対応。
- 最大5台のパソコンを同時消去可能
- NSAや米国防総省準拠のデータ消去方式を選択可能
USBディスクシュレッダー (パーソナルメディア株式会社)
- USB、SD/microSDカードに対応
- メディア挿入で自動的に破壊開始
- 破壊後のメディアはリサイクル可能
データ消去ソフトに関するよくある質問
データ消去ソフトの機能について、よくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:SSDやNVMeも、HDDと同じ方法で消去できますか?
- A:方式が異なる場合があります。SSDは通常の上書きだけでは消えない領域が残る可能性があるため、ブロック消去や暗号化消去など、対応する方式を確認しましょう。
- ■Q2:消去証明書には、どのような項目が記載されますか?
- A:シリアル番号、消去方式、結果、作業日時、作業者などが含まれる製品があります。記載項目や出力形式は製品によって異なるため、提出先の要件にあうか確認しましょう。
- ■Q3:NISTなどの規格に準拠していれば安心ですか?
- A:準拠をうたう製品は、どの区分や対象を指すかを確認する必要があります。名称だけで判断せず、対象の媒体やバージョン、自社が求める水準とあうかを確かめましょう。
- ■Q4:スマートフォンやタブレットも消去できますか?
- A:製品が対応するOSや機種によって異なります。MDMの遠隔消去で対応できる場合もありますが、通信できない端末では動作しないケースがあるため、運用の場面に応じて検討しましょう。
まとめ
データ消去ソフトの機能は、消去方式、対象媒体、消去証明書、一括消去の4点を軸に比べると整理しやすくなります。SSDやNVMe、スマートフォンなどは対応方式が異なるため、自社の機器にあった機能かを確認しましょう。規格への準拠をうたう製品は、対象範囲まで確かめることが大切です。気になる製品があれば、資料請求で機能の詳細を比較してみてください。

