業種でデータ消去ソフトの懸念点が変わる理由
データ消去ソフトは、パソコンやサーバーのデータを復元できない状態にするソフトです。業種によって扱う情報や関係する指針が違うため、確認すべき機能も変わります。背景を3つに分けて見ていきましょう。
| 業種 | 主な論点 |
|---|---|
| 金融業 | 監査に耐える消去方式と証明の記録 |
| 製造業 | 設計情報の保護と特殊な端末への対応 |
| 医療法人 | 診療情報の廃棄記録と業務への影響 |
| 官公庁・自治体 | 指針への準拠と消去証明書の運用 |
扱う情報の種類と機密性の違い
顧客の口座情報、設計図面、診療記録、住民の個人情報など、業種によって扱う情報は大きく異なります。情報が外部に出た場合の影響も、業種や情報の種類で変わります。例えば、顧客情報は漏えい時に補償や信用の問題が生じ、設計情報は競争力の低下につながる場合があります。
そのため、消去の方式や確認の厳しさも、一律には決められません。自社が扱う情報の機密性を整理し、どの水準の消去が必要かを決めておくと、製品の比較がしやすくなります。情報の分類ルールが社内にあれば、それを消去の基準づくりに活用できます。
関連する指針や社内ルールの違い
業種によっては、所管官庁や業界団体が示す指針があり、機器の廃棄時の扱いが触れられています。例えば医療分野や自治体向けには、それぞれ国が示すガイドラインがあります。確認先としては、所管官庁の公開資料や業界団体の資料、社内の情報セキュリティ担当部署が挙げられます。
指針は改訂される場合があるため、最新の内容を確認する必要があります。ソフトの機能が指針の求める事項に対応しているかは、自社だけで判断せず、情報システム部門や提供会社に相談しましょう。
消去の証明や記録に求められる水準の違い
消去した事実を、監査や取引先に説明する場面は業種によって異なります。消去証明書とは、いつ、どの機器を、どの方式で消去したかを記録した書類のことです。例えば、取引先との契約書に、機器の廃棄時の報告が定められている場合があります。
記載項目の細かさや保管期間は、社内規程や関係する指針で決まります。ソフトが出力する証明書の項目が足りるかを、導入前にサンプルで確認しておきましょう。証明書の保管期間は、社内の文書管理規程とあわせて決めておくと運用しやすくなります。
金融業のデータ消去ソフトで確認したい規格と証明の要件
金融業では、顧客の個人情報や取引情報を扱うため、機器の廃棄時にも厳格な管理が求められます。監査で消去の要件を説明できなければ、ソフトを導入しても運用が止まる場合があります。
監査で説明できる消去記録の整備
監査では、消去した機器の識別情報、実施日時、担当者、消去方式を示せるかが確認される場合があります。ソフトの出力項目が不足していると、追加で手作業の記録が必要になります。例えば、担当者名を入力する欄がないソフトでは、別の台帳に記入する運用が必要になります。
導入前に、監査部門が求める記載項目を整理しましょう。その項目を消去証明書やログで出力できるか、改ざんを防ぐ仕組みがあるかを、提供会社に確認することが大切です。サンプルの出力を監査部門に見せて、了承を得ておくと、導入後の手戻りを減らせます。
消去方式と参照する規格の対応確認
消去方式には、上書きや暗号化消去などがあり、ソフトによって対応が異なります。参照される規格として、米国のNIST SP800-88が知られています。媒体の種類に応じた消去の考え方が整理された指針です。
国内では、データ適正消去実行証明協議会(ADEC)が、消去の技術や、消去作業を行う事業者のプロセスを対象にした認証を行っています。自社の規程が求める方式や認証と、製品の対応内容が一致するかを確かめましょう。対応状況は製品ごとに異なるため、資料の記載や提供会社の回答で確かめましょう。
委託先や拠点の機器を含めた管理
金融機関は、本店だけでなく支店や委託先にも端末が置かれています。拠点ごとに消去の方法が異なると、全体の管理が難しくなる可能性があります。委託先の作業報告書や消去証明書を、自社の記録とあわせて保管する運用が考えられます。
拠点の機器を同じ手順で消去し、結果を本部で確認できる仕組みが望ましいといえます。委託先に消去を任せる場合は、委託先の作業記録を受け取る運用も、あわせて決めておきましょう。支店の端末は、本部が対象の一覧を把握できるよう、台帳への登録も徹底しましょう。
製造業のデータ消去ソフトで起こり得る導入のつまずき
製造業では、設計図面や製造ノウハウなど、競争力に関わる情報が端末に残る場合があります。また、事務用のパソコンとは異なる機器があり、導入が思うように進まないこともあります。
設計情報や技術情報を扱う端末の消去
設計部門のパソコンには、図面や解析データなどが大容量で保存されている場合があります。容量が大きいほど消去に時間がかかり、入れ替えの計画に影響することがあります。容量が大きい端末では、消去に半日以上かかる場合もあり、入れ替え日程の調整が必要になります。
部門の端末は、一般の事務用パソコンと分けて、消去の方式や所要時間を試算しましょう。外部に出してはならない情報を扱う端末は、社内で消去できる体制を整えると安心です。処理の途中で電源が切れることのないよう、作業場所の電源環境も確認しましょう。
工場の産業用パソコンや古いOSへの対応
工場の設備には、産業用パソコンや古いOSの端末が使われている場合があります。ソフトが対応するOSや記憶装置の種類によっては、消去が実行できない可能性があります。生産ラインの停止時間が限られるため、消去作業の日程は製造部門と調整しておくことが欠かせません。
導入前に、対象機器の型番やOS、記憶装置の種類を洗い出しましょう。起動メディアから消去する方式なら、OSに依存せず対応できる場合もあるため、提供会社に相談して検証することをおすすめします。
取引先や海外拠点との運用のそろえ方
取引先から機密情報の取り扱いを求められる製造業では、消去の実施を証明する場面があります。海外拠点がある場合は、拠点ごとに機器の廃棄ルールが異なる場合も考えられます。取引先に提出する報告書の形式が指定されている場合は、ソフトの出力形式が対応するかを確かめましょう。
グループ全体で消去の方式と記録の形式をそろえると、取引先への説明がしやすくなります。ソフトの表示言語や、海外拠点でのサポートの可否も、確認項目に加えましょう。各国の法令で個人情報の扱いが異なる場合もあるため、現地の担当者にも確認します。
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医療法人でデータ消去ソフトを運用する際のトラブルと備え
医療法人では、診療情報を含む端末の入れ替えや廃棄の機会があります。診療の合間に作業が必要になるため、消去の運用がうまく回らずトラブルになる場合もあります。
診療情報の廃棄に関する記録の整備
医療情報システムの安全管理に関するガイドラインには、情報の廃棄時に関する留意事項が示されています。廃棄の内容や日時、方法を記録として残すことが求められる場合があります。電子カルテのバックアップ媒体や、検査データを保存した外付けの装置も、記録の対象に含めましょう。
ソフトが出力する消去レポートを、この記録として使えるかを確認しましょう。保管場所や保管期間を決めておくと、後から確認が必要になった際にも対応しやすくなります。記録は、診療情報の管理を担当する部署とも共有しておくと、確認が必要なときに役立ちます。
医療機器と一体の端末や外部委託の扱い
検査機器や画像診断装置などには、パソコンが組み込まれている場合があります。この種の端末は、誤って消去を行うと機器が動作しなくなるおそれがあります。作業は、機器メーカーが定めた方法で行い、自己判断で初期化や消去をしない運用が安全です。
機器メーカーや保守業者に、消去の可否と手順を事前に確認しましょう。電子カルテのベンダーなど、システムの提供元が関わる場合は、役割分担も確認しておく必要があります。委託業者が機器を引き取る場合も、データの扱いについて契約書で確認しておきましょう。
診療を止めない消去作業の計画
診療時間中に端末を止めることは難しく、消去作業は夜間や休診日に行うことが多くなります。処理に時間がかかると、翌日の診療が始まる時刻までに終わらない可能性があります。患者さんの診療に影響が出ないよう、予備の端末を用意して入れ替える方法もあります。
作業は事前にスケジュールを組み、余裕を持った日程にしましょう。処理が途中で止まった場合の再実行の手順や、連絡先も決めておくと、慌てずに対応できます。作業の担当者と、診療側の責任者の連絡経路も決めておくと、トラブル時に判断が早まります。
官公庁・自治体のデータ消去ソフトと消去証明書の運用
官公庁や自治体では、住民の個人情報や行政情報を扱うため、機器の廃棄時にも手続きが定められています。消去証明書の発行が滞ると、廃棄の手続きに影響する場合があります。
参照する指針と仕様書の確認
自治体向けには、総務省が地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインを示しています。機器の廃棄時に、情報を復元困難な状態にすることなどが記載されています。仕様書には、対応する消去方式、証明書の記載項目、サポート期間などを具体的に書いておきましょう。
調達の際は、仕様書に消去方式や証明書の要件を明記しておきましょう。ガイドラインは改訂される場合があるため、最新版をもとに要件を整理すると、導入後の食い違いを減らせます。
消去証明書が出力されない場合の確認
消去証明書が出力されない、または記載内容に不備がある場合には、複数の要因が考えられます。ソフト側の設定、出力先の権限、ネットワークの制限などが関わることがあります。例えば、一時的な保存先の空き容量が不足していて、ファイルが作成できない場合もあります。
次のような点を順に確認すると、原因の切り分けが進みます。それでも解決しないときは、ログを保存したうえで提供会社に問い合わせましょう。対処した内容と結果を記録しておくと、再発時の対応が早くなります。
- ■ソフトの設定
- 出力形式や保存先が正しく指定されているか
- ■端末や保存先の権限
- 保存先のフォルダに書き込みの権限があるか
- ■ネットワークの制限
- 庁内の制限により、通信が遮断されていないか
閉じたネットワークでの運用の確認
庁内のネットワークは、外部との通信を制限している場合があります。その場合、インターネット接続を前提としたライセンス認証や証明書の発行が、そのままでは使えない可能性があります。オフラインでの認証には、ライセンスファイルの受け渡しなど、別の手順が求められることもあるでしょう。
導入前に、閉じたネットワークで運用できるか、オフラインでの認証や証明書の出力に対応しているかを確認しましょう。必要に応じて、検証用の端末で動作を試してください。
情報の持ち出しに備えたい業種向けの製品
業種によっては、端末の持ち出しや紛失への備えも課題になります。消去ソフトとあわせて確認したい製品を紹介します。
TRUST DELETE on CLOMO Cloud
- 強固なリモートロックやリモートワイプで第三者への情報漏洩防止
- 使用ルール違反はセキュリティアクションが発動し、不正使用防止
- 復元が困難な方式でデータが残らない安心な消去を実現
株式会社アイキューブドシステムズが提供する「TRUST DELETE on CLOMO Cloud」は、Windows PCの紛失や盗難時に、遠隔からのロックやデータ消去で第三者への情報漏えいを抑えるサービスです。事前に決めた使用ルールに違反した場合に、セキュリティアクションを自動で実行する機能もあります。消去作業ログに対応しており、監査などで求められる記録の出力可否は、個別に提供会社へ確認しましょう。
Blancco Drive Eraser (株式会社ブランコ・ジャパン)
- 特許を取得したソリューションによる安全なデータ消去
- お客様のニーズに合わせた最適な消去方法を提供
- 電子署名付きの消去証明書により、データが削除されたことを証明
HD革命/Eraser Ver.7 パソコン完全抹消 (ファンクション株式会社)
- 10段階の強力なデータ抹消方式を選択可能
- 複数デバイスを同時に一括抹消可能
- 簡単な操作で確実にデータを抹消できます。
データ消去ソフトに関するよくある質問
業種別の懸念点について、よくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:業種によって、消去方式を変える必要はありますか?
- A:扱う情報の機密性や社内規程によって、求められる方式が異なる場合があります。自社の規程と製品の対応方式を照らしあわせ、不明点は提供会社に相談しましょう。
- ■Q2:消去証明書の記載項目は、業種で異なりますか?
- A:監査や契約で求められる項目が異なる場合があります。導入前にサンプルを入手し、必要な項目がそろうか確認しましょう。保管期間もあわせて決めると安心です。
- ■Q3:医療機器に組み込まれたパソコンも、ソフトで消去できますか?
- A:機器によっては、消去できない、または動作に影響する場合があります。メーカーや保守業者に確認してから進めましょう。自己判断での操作は避けるのが安全です。
- ■Q4:閉じたネットワークの環境でも、データ消去ソフトを使えますか?
- A:オフラインでの認証や証明書の出力に対応しているかは、製品ごとに異なります。検証用の端末で試して確かめましょう。
まとめ
データ消去ソフトの懸念点は、業種ごとに異なります。金融業なら監査で説明できる記録、製造業なら特殊な端末への対応、医療法人なら診療を止めない作業計画、官公庁や自治体なら消去証明書の運用が論点です。まずは自社の業種で求められる記録の水準を整理し、複数の製品を同じ条件で比べることが大切です。資料請求で、自社にあう製品を探してみてください。

