そもそも「生産管理」とは?
生産管理とは、製品やサービスを生産するにあたり、納期、数量、場所、工数の計画や管理をすることです。
生産管理は極めて広範囲の管理を行います。具体的には購買管理、在庫管理、生産計画、工程管理、需要予測、品質管理などですが、その目的は3つの「最適化」に集約することができます。それは、所定の品質(Quality)の製品を、限られた原価(Cost)で、所定の数量および納期(Delivery)で生産するよう生産活動全体を最適化することです。
とりわけ、品質(Quality)は日本の製造業が最も得意としている部分です。かつては低価格が魅力の「Maid in Japan」でしたが、現在は世界トップレベルの品質を誇り、他国への優位性の柱となっています。品質管理も日本企業には定着していて、「爆買い」も日本企業の品質管理あっての現象なのです。
とはいえ、コスト(Cost)も納期(Delivery)もおざなりにはできません。お客様に求められる納期があり、競争力を維持できるコストが必要です。
これら、品質・コスト・納期は相反する位置付けに見えるかもしれません。「品質を重視すればコストがかかり、納期も必要になる。コストを重視すれば、品質に影響し、納期も同様に品質に影響する」というイメージです。
これを解決するのが生産管理システムなのです。
「生産管理システム」とは?
生産管理システムは、生産計画を立案し、人員の配置や原材料の調達状況、現在の在庫数や納期などを考慮しながら、利益を最大化するモノと人と生産ラインの稼働を可能にします。
このシステムは、購買管理、在庫管理、販売管理などのシステムと密接な関係があります。このため、ERPの一部として提供される、あるいは上流・下流のシステムと組み合わせて提供されることが多くあります。
また、生産管理システムは製造業にとって基幹システムとなり、業種に特化した多くの製品が開発されています。それらは大きく「組み立て加工」と「プロセス製造」に分かれます。「組み立て加工」は部品を組み立て製品を完成させる方式で、機械、電子機器などが該当します。「プロセス製造」は調合、混合、混練、分離や化学反応などにより生産する方式で、化学、繊維、食品、鉄鋼などに見られます。
生産管理システムの主な機能
生産管理システムには次の機能があります。
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■生産計画
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生産管理システムの主要な機能です。販売計画あるいは受注予測と生産能力に応じて、生産計画を立案します。週次、月次、年次などの単位で計画立案を支援します。
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■工程管理
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ラインごとの実績を収集し、計画どおりに生産できているかを把握します。自動で収集するタイプと手動で入力するタイプがあります。
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■品質管理
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完成品を確認し、ロット別、入庫日別の品質管理を行います。
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■在庫管理
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商品や部品の入庫から出庫までを管理します。入荷・入庫、出庫・出荷、棚卸機能があります。
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■原価管理
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製品の製造原価を管理します。適正な損益評価を支援します。
生産管理システムの目的とメリット
生産管理システムは、経験豊かな熟練者の持っていたノウハウを提供します。システムを構築する企業の多くは、次のメリットを目的に導入しています。

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■生産負荷の平準化
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生産拠点や部門個々に生産活動は閉ざされており、リソースの共有意識がありませんでした。しかし、生産管理システムを導入することで、拠点や部門ごとの負荷を平準化して、偏りをなくすことができるようになります。
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■リードタイムの短縮
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部品や資材の手配漏れ、納入予定日の間違い、誤発注などによる生産ラインストップを避け、納期厳守をサポートします。生産情報の一元化と流用により、納期短縮も期待できます。
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■不良率管理
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どの工程で、どのような不良が、どの程度を発生しているかを明確に把握し、対策立案を支援します。業務を標準化することにより、属人化されていた作業を排除し、適正な業務フローを確立できます。
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■在庫の過剰や不足を防止
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職人の予想や営業担当の目標に左右されず、生産計画に基づいた在庫の確保を可能とします。適切な在庫でコスト削減にもなります。
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■利益率の向上
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原価管理の仕組みを導入することで、利益率の向上を期待できます。どんぶり勘定から脱し、競争力のある販売価格を維持できます。
生産管理システムの選定導入に失敗しない7つのポイント
生産管理システムを導入することで大きな効果を期待できます。しかし、生産管理システムの導入にあたっては、営業部門や資材・購買部門、設計・開発部門、経理部門と生産部門以外にも多くの部門が関係するので、利害の対立が起こりやすく効果的な導入が難しい問題があります。
そこで、ここでは、生産管理システムの選定・導入にあたって、失敗しないために押さえておきたい7つのポイントについて説明します。
1.全体最適のための優先順位づけ
複数部門にわたる生産管理システムでは、個別最適が必ずしも全体最適にならないので、何が問題で何をどのような優先順位で解決しなければならないかの優先順位を明確にして生産管理システムを選定します。
2.経営トップに生産管理システムの重要性を訴求し理解してもらうこと
経営トップは、一般的に「新製品の開発」「販売戦略の立案」などの新しいこと、前向きなテーマに関心を持ちやすい傾向があります。
一方、生産効率の改善のような問題に関しては、少し関心が弱いことがあります。その結果、全社一丸となった生産管理の課題解決に至らず、部門間調整がうまくいかないことになります。
他部門が関係する生産管理システムを導入・運用していくためには舵取りをする経営トップの理解が必要です。
3.自社の生産形態にあっているか
生産手法には「連続生産」「ロット生産」「個別生産」があります。また、販売との関係で「見込み生産」「受注生産」があります。生産量と生産品目数の関係から「少量多品種」「大量一品種」があります。
これらがそれぞれ組み合わされることで生産の形態がさらに増加します。生産管理納期変更や仕様変更の頻度を考慮して、これらに柔軟に対応できるかをシステムであるかどうか検討し、最適な生産管理が可能なシステムを選ぶようにします。
4.段階的導入と機能拡張
生産管理システムの導入は、段階的な導入とコストや効果を検証しながらの機能拡張ができるので、導入リスクを軽減できます。
また、機能拡張はどこまで可能かも確認して、比較検討ポイントに入れておきます。それにより、急激な環境・市場の変化に対応しやすくなります。
5.定量的な効果検証
生産管理システムは導入してすぐ効果がでるわけではありません。定量的な効果検証をして改善を続けていくことが必要です。
まず現状の生産リードタイムから「在庫水準」「原価把握のレベル」「顧客納期回答の精度」などを把握します。そして、生産管理システムを導入することで、どう合理化できるかをシミュレーションを行います。
6.必要最低限の機能の確認
まず「納期短縮」「在庫削減」「原価把握」など、生産管理上の何が最優先で解決されるべき課題なのかを把握します。
それぞれの課題がどのレベルまで改善する必要があるのかを明確にします。そして、その問題解決をもっとも達成しやすい生産管理システムを選定するようにします。もし、要求する内容と生産管理システムが異なれば「軽自動車で良いのにスポーツカーを購入してしまう」というようなアンマッチが生じます。
7.システム選定部門と生産現場の意思疎通
生産管理システムは、一般的に情報システム担当部門が主体となって選定します。しかし、選定部門が生産現場の現状を良く理解できていない場合は、本来は必要でない生産管理システムを導入してしまう場合があります。
導入後の利用は生産現場が多いので、生産管理システムが導入後にしっかり運用されていくためにも、システム部門は生産現場と意思の疎通を測ることが重要です。
生産管理システムは、一定規模以上の工場を効率的に稼働させるためには必須といえるシステムです。現在では極めて多くの種類の生産管理システムが開発され市場に投入されています。需要予測モジュールを組み込んで、在庫管理システムや購買管理システムと連携して、製造コストの安定化や過剰在庫や在庫切れによる機会損失を防ぐことができる製品などもあります。
生産管理システムの人気製品ランキングなどの情報を参考に自社のニーズや課題、導入の目的から最適な生産管理システムをお選びください。