CRMとSFAの始まり
CRMは「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係管理と訳されます。お客様との関係を管理して、お客様満足度を向上させるのがゴールです。顧客管理システム(ツール)であるとともに概念でもあります。
これに対して、SFAは「Sales Force Automation」の略で、営業支援システム・営業管理システムのことです。概念というよりもシステムであり、モノに近いと考えて間違いありません。CRMという概念を実現するための代表的なシステムがSFAなのです。

■CRMの始まり
CRMの始まりは明確です。1990年代前半に米国で誕生し、一般的に知られるようになったのは、アンダーセン・コンサルティング(現在のアクセンチュア)が1998年に出版した「CRM—顧客はそこにいる」からです。
ITシステムによりお客様の情報を一元管理し、それぞれのお客様に応じたきめ細かい対応を行うことで、良好な関係を築きます。これにより、お客様満足度の向上を目指します。
システムの中核となっているのが顧客データベースです。お客様の属性(性別、年齢、住所、電話番号など)、購買履歴、問い合わせやクレームの内容などを確認して、そのお客様に合った商品を紹介したり、問い合わせにスピーディに対応できるようになります。
■SFAの始まり
SFAも1990年代に、米国で見られるようになりました。それまで、OA(Office Automation)やFA(Factory Automation)のように、事務所や工場のオートメション化は進んでいましたが、外出の多い営業担当の分野は遅れていました。
これをITによって支援しようというのがSFAです。中心となったのが営業報告書作成の義務化と効率化です。それによって営業担当者の行動を管理し、忠告やアドバイスをします。また、データベース化することで、ノウハウの抽出が可能となります。
次に商談管理があります。営業担当者ごとの商談ステップを見える化することで、停滞を発見し、次のステップに促すことができます。営業担当者は目先の業務に追われがちなため、管理者が商談進捗の管理と支援をすることになります。
CRMとSFAの融合
以上のように見ると、CRMとSFAは起源からすると明らかに異なるのですが、2000年代になって、両者の融合が見られるようになります。
CRMの顧客データベースは営業担当者にとって重要な情報源となります。CRMの情報を元にアプローチしたり、ダイレクトメールを出すことが可能となります。セールスプロモーションにとって、CRMは大変重要な位置付けにあります。
一方、営業担当者の日常の活動でも、お客様の情報は蓄積されます。そもそも、活動のベースとしてお客様情報は欠かすことができません。それに商談情報も次第に加わっていきます。CRMのデータベースとSFAのデータベースを分けるのは、極めて非効率的で不合理です。
そこで、両システムのデータベースを統合するCRM/SFAというシステムが誕生しました。
CRMからすると、既存システムに営業報告書や商談ステップの登録機能を設けることで、SFAとして活用できます。これはSFAも同様です。SFAの顧客データベースを充実させていくことで、CRMに進化させることができます。
このようにして、CRMとSFAは融合していきます。システムを開発している事業者も、CRM/SFAとして一括して提供することが多くなりました。
もっとも、CRMは概念でもあるため、SFA以外のシステムも包含しています。メールマガジンなどの顧客管理システム、CTI、コールセンターシステム、ダイレクトメールなどの販促システム、ポイントカードなどのカード管理システムもCRMを構成するシステムとなります。

まとめ -正しい選択を
CRMとSFAはほとんど同じと考えられますが、CRMを構成する主要システムとしてSFAがあるというのが正しい認識です。このような違いを理解した上で、重要なことはITツールやシステムを道具として使いこなし、ビジネス上の課題解決や業務の効率化を実現することです。
そのためには、まず自社が抱える課題を整理し、解決すべき課題の優先順位をつけ、最も適切なITツールを選定することです。その際には初めからあまり欲張らずにミニマムスタートをすると良いでしょう。このような考え方で、現時点の課題解決において「CRM」なのか「SFA」なのか、正しく判断してください。