無料で使えるWANとは
無料で使えるWANとは、オープンソースソフトウェアやクラウドサービスの無料枠を活用し、拠点間の通信経路を構築する方法です。専用線を無料で利用する仕組みではなく、既存のインターネット回線上に仮想的な専用ネットワークを構築します。
WANは離れた拠点をつなぐ仕組み
WANとは、Wide Area Networkの略称で、地理的に離れた拠点やデータセンター、クラウド環境を接続する広域ネットワークです。社内の限られた範囲をつなぐLANと異なり、通信事業者の回線やインターネットを経由して接続します。
本社と支店のファイル共有や基幹システムへのアクセス、クラウドサービスとの接続に利用されます。安定性や安全性が業務に影響するため、通信経路だけでなく運用体制も含めて設計することが重要です。
無料になるのは主にソフトウェア
WANを無料で構築する場合、費用を抑えられるのは主にネットワークを制御するソフトウェアです。オープンソースのVPNソフトウェアを自社のサーバへ導入し、拠点間に暗号化された通信経路を作ります。
一方、インターネット回線やサーバ、ルーター、電気代は別途必要です。社内に専門知識をもつ担当者がいなければ、構築や障害対応を外部へ委託する費用も発生します。
無料プランを利用する方法もある
ソフトウェア定義型のネットワークサービスには、少人数や少数端末を対象とした無料プランがあります。端末に専用ソフトウェアを導入し、インターネット上に暗号化された仮想ネットワークを作る仕組みです。
サーバを一から設定する方法より導入しやすい反面、接続できる利用者数や端末数、管理機能が制限されます。法人利用が無料プランの対象かどうかも、利用規約で確認しましょう。
| 無料で構築する方法 | 概要 | 主な費用 |
|---|---|---|
| オープンソースのVPN | 自社でVPNサーバを構築し、拠点間を接続する | 回線、サーバ、機器、運用担当者 |
| クラウドの無料プラン | 提供事業者の管理画面から仮想ネットワークを作成する | 上限超過後の利用料、回線、運用担当者 |
| ルーターの標準機能 | 既存ルーターのVPN機能を利用して拠点間を接続する | 回線、対応ルーター、設定作業 |
無料のWANでできること
無料の仕組みでも、小規模な拠点間接続や遠隔地からの社内アクセス、検証環境の構築は可能です。利用目的を限定し、管理対象を把握できる範囲に抑えれば、正式導入前の技術検証にも活用できます。
少数拠点を相互接続する
本社と小規模な営業所など、接続先が限られている場合は無料のVPNソフトウェアでも拠点間接続を構築できます。各拠点のルーターやサーバに設定を行い、インターネット上に暗号化された通信経路を作る方法です。
拠点間でファイルや業務システムを共有できます。ただし、回線障害時の迂回経路や通信品質の保証は、自社で用意しなければなりません。
クラウドと社内環境を接続する
社内ネットワークとクラウド上のサーバをVPNで接続すれば、クラウド環境を社内ネットワークの延長として利用できます。管理画面やデータベースをインターネットへ直接公開せずにアクセスできる点がメリットです。
クラウド側の通信料や仮想サーバ料金は発生する場合があります。無料枠の対象範囲と、データ転送量が上限を超えた場合の料金を確認してください。
テレワーク用の接続を試す
無料のVPNを利用すると、従業員のパソコンから社内サーバへ接続する環境を試せます。少人数で通信速度や認証方法、業務アプリケーションとの相性を確認したい場合に適しています。
ただし、テレワークでは端末の紛失や認証情報の流出にも備える必要があります。多要素認証や端末制御を利用できない場合は、重要情報を扱う本番運用を避けましょう。
導入前の検証環境を作る
本格的なWANサービスを契約する前に、通信経路やネットワーク構成を検証する目的でも活用できます。例えば、拠点追加時のルーティングや業務システムの応答速度を小規模な環境で確認します。
検証結果をもとに必要な帯域や管理機能を整理すれば、有料サービスを比較する際の要件を明確にできます。
- ■拠点間接続
- 本社や支店、倉庫などのネットワークを暗号化して接続します。
- ■リモートアクセス
- 社外の端末から社内ネットワークへ安全に接続する経路を作ります。
- ■クラウド接続
- 社内ネットワークとクラウド上のサーバを仮想的に接続します。
- ■技術検証
- 通信速度や対応機器、設定方法を本格導入前に確認します。
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無料のWANにある制限
無料で構築したWANは、通信品質や管理機能、サポート面に制限があります。ソフトウェアの利用料を抑えられても、設計や監視、障害復旧は自社の責任です。業務への影響を考え、利用範囲を慎重に決めましょう。
通信品質が保証されない
インターネット回線を利用する無料のWANでは、混雑状況によって通信速度や遅延が変化します。専用線や閉域網のような通信品質保証がないため、時間帯によって業務システムの反応が遅くなる可能性があります。
音声通話やオンライン会議、リアルタイム処理を行うシステムでは、遅延や通信の途切れが業務に影響します。事前に実際の利用時間帯で通信試験を行いましょう。
障害対応を自社で行う
オープンソースソフトウェアは、設定方法や障害原因を自社で調査する必要があります。公式ドキュメントや利用者コミュニティから情報を得られても、個別環境に応じた解決策がすぐに見つかるとは限りません。
担当者が不在の時間帯に障害が発生すると、復旧まで業務が止まる恐れもあります。手順書の整備や設定情報の共有、復旧用機器の準備が欠かせません。
セキュリティ設定が必要になる
VPNで通信を暗号化しても、初期設定の不備や古いソフトウェアを放置すると安全性が低下します。管理画面の公開範囲や認証方式、暗号化方式、アクセス権限を適切に設定しなければなりません。
脆弱性情報を確認し、更新プログラムを適用する運用も必要です。設定変更や利用者の追加を記録し、不要になったアカウントは速やかに削除してください。
拠点が増えるほど管理が複雑になる
接続拠点が少ないうちは個別設定でも管理できます。しかし、拠点やクラウド環境が増えると、接続先ごとの設定や経路制御、アクセス権限の管理が複雑になります。
設定内容が担当者しかわからない状態では、変更時のミスや復旧の遅れにつながります。拠点追加が続く場合は、管理画面から一元制御できる有料WANサービスも比較しましょう。
| 確認項目 | 無料構築で起こりやすい課題 | 主な対応策 |
|---|---|---|
| 通信品質 | 速度や遅延が利用状況によって変動する | 利用時間帯ごとの測定と予備回線を検討する |
| 障害対応 | 原因調査や復旧を自社で行う必要がある | 手順書や設定のバックアップを整備する |
| セキュリティ | 設定不備や更新漏れがリスクになる | 更新担当者と点検頻度を決める |
| 拠点管理 | 接続先が増えると設定が複雑になる | 構成図や設定台帳を作成する |
参考:SoftEther VPN Project|SoftEther VPN Project
参考:OpenVPN Open Source Community|OpenVPN
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無料のWANが向いている企業
無料のWANは、接続規模が小さく、ネットワークを管理できる担当者がいる企業に向いています。障害時に業務を継続する代替手段があり、まずは限定的な範囲で仕組みを試したい場合にも活用できます。
接続する拠点や端末が少ない
本社と1拠点のみを接続する場合や、利用者が数名に限られる場合は、無料の仕組みでも管理しやすいでしょう。接続先が少なければ、設定変更や障害原因の切り分けに必要な作業を抑えられます。
一方、全国の店舗や複数の倉庫を接続する場合には適しません。拠点が増える予定も含めて、将来の構成を確認する必要があります。
ネットワーク担当者がいる
無料のWANを安全に運用するには、通信経路やIPアドレス、ルーティング、認証方式を理解した担当者が必要です。導入後もログ確認やソフトウェア更新、アカウント管理を継続します。
担当者がほかの業務と兼任している場合は、障害対応に割ける時間も確認しましょう。運用負担が大きければ、保守を含む有料サービスのほうが総コストを抑えられる場合があります。
検証や一時利用が目的である
新しいクラウド環境との接続試験や、短期間のプロジェクト用ネットワークなど、本番業務への影響が限られる用途に向いています。無料環境で設定方法や通信状況を確かめ、要件を整理できます。
検証終了後に削除する場合も、アカウントや暗号鍵、クラウド上のサーバが残っていないか確認してください。
停止時の代替手段がある
WANが停止しても、別のインターネット接続やローカル環境で業務を続けられる企業は無料運用を検討できます。例えば、共有データを端末側にも保存し、復旧まで作業できる状態を整えます。
ネットワーク停止によって受注や出荷が止まる場合は、冗長化や保守サポートを備えたサービスが必要です。
有料WANへ切り替える基準
利用拠点や通信量が増えたとき、または停止による損失が大きくなったときは、有料WANへの切り替えを検討します。月額料金だけで判断せず、自社運用にかかる工数や障害時の影響も含めて比較しましょう。
業務停止の影響が大きくなった
基幹システムや受発注システムをWAN経由で利用する場合、ネットワーク障害は事業継続に影響します。復旧までの時間を予測できない無料環境では、求める可用性を満たせない可能性があります。
1時間の停止でも顧客対応や出荷に影響する場合は、保守窓口や通信品質保証のあるサービスを検討しましょう。
拠点やクラウド利用が増えた
複数の拠点やクラウド環境を個別に接続すると、設定や監視の対象が増えます。経路変更のたびに各機器を操作する運用では、設定ミスや作業漏れが発生しやすくなります。
管理画面からネットワーク全体を確認できるサービスなら、接続先の追加や通信状況の把握を効率化できます。海外拠点を追加する場合は、提供地域も確認してください。
セキュリティ管理を強化したい
個人情報や取引先情報を扱う場合は、通信の暗号化だけでなく、利用者ごとの認証やアクセス制御、ログ管理が必要です。無料の仕組みで要件を満たすには、複数の製品を組みあわせる場合があります。
一元的な認証管理や不正通信の検知が必要になった段階で、セキュリティ機能を含むWANサービスへ切り替えると管理しやすくなります。
運用工数が料金を上回った
無料ソフトウェアを利用しても、設定や監視に多くの時間を使えば人件費が増えます。担当者が障害対応に追われ、本来のシステム改善を進められない状態では、無料運用の利点が薄れます。
月ごとの運用時間を記録し、人件費へ換算してみましょう。有料サービスの料金と比較すると、切り替え時期を判断しやすくなります。
| 判断項目 | 無料運用を続けやすい状態 | 有料版を検討する状態 |
|---|---|---|
| 拠点数 | 少数で今後も増える予定がない | 定期的に拠点や接続先が増える |
| 業務への影響 | 停止しても代替手段がある | 停止すると主要業務が止まる |
| 管理体制 | 専門担当者が継続して対応できる | 担当者の負担や属人化が進んでいる |
| セキュリティ | 限定した用途と情報のみを扱う | 重要情報や多数の利用者を管理する |
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無料で比較できる法人向けWAN
法人向けWANサービスは、通信方式や提供エリア、管理機能、保守体制が異なります。無料で自社構築する方法と比べながら、必要な通信品質やセキュリティを満たせるか確認し、複数サービスの資料を比較しましょう。
CloudEnterpriseNetwork (アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社)
- VPCやオンプレを高速接続しグローバル網を構築
- 最短ルート自動選択と冗長構成で可用性・信頼性を強化
- 柔軟な課金と自動監視で運用コストと品質を最適化
光ビジネスアクセスNEXT (株式会社 USEN ICT Solutions)
- アクセスラインを1社専有化しクラウドや大容量通信も安定提供
- SLAを標準搭載し、規定値が下回ったら料金を一部返還
- 24時間365日の電話受付と駆けつけ対応で安心運用を支援
KDDIWideAreaVirtualSwitch2 (KDDI株式会社)
- オンデマンドでネットワーク構築・統合・分離が可能
- 初期投資・最低利用期間なしで利用可能
- Starlink接続で圏外からもアクセス可能
NUROBiz (ソニービズネットワークス株式会社)
- ソニーの知見を活かしたAWSマネージドサービス
- XGS-PON採用のNUROアクセス 10G/2G
- ソニーのAI技術による予測分析ソリューション
WANを無料で構築する手順
無料でWANを構築するときは、先に利用目的と接続範囲を整理します。利用するソフトウェアを決めることから始めると、必要な性能や安全対策が不足する場合があります。小規模な検証から段階的に進めましょう。
接続する拠点と機器を整理する
まず、本社や支店、クラウド環境など、接続したい場所を一覧にします。各拠点の端末数や回線速度、ルーターの型番、固定IPアドレスの有無も確認してください。
あわせて、どの利用者がどのシステムへ接続するのかを整理します。通信を許可する範囲を限定すると、設定やセキュリティ管理が容易になります。
必要な通信品質を決める
ファイル共有やメール利用が中心なのか、音声通話や映像、基幹システムを利用するのかによって必要な通信品質は変わります。通常時だけでなく、月末や繁忙期のデータ量も想定しましょう。
遅延が業務へ影響するシステムでは、無料環境だけで判断せず、有料サービスの試験接続や提案内容も比較することが大切です。
限定した範囲で接続を試す
最初から全拠点を接続せず、影響の少ない端末や検証用サーバで試験します。通信できることに加えて、接続が切れた場合の挙動や再接続方法も確認してください。
通信速度や遅延、エラーの発生状況を記録すれば、本番利用の判断材料になります。問題が起きた設定も残し、原因と対処方法を共有しましょう。
運用ルールを整備する
本番利用する場合は、利用者の追加や削除、ソフトウェア更新、ログ確認、障害対応の担当者を決めます。設定情報や暗号鍵を個人の端末だけで管理してはいけません。
構成図と設定台帳を作成し、定期的にバックアップを取得します。担当者が不在でも復旧できる状態を整えることが重要です。
WANの無料利用に関するFAQ
WANの無料利用を検討する際は、回線料金やセキュリティ、法人利用の可否について疑問が生じやすくなります。ここでは、導入前に確認しておきたい代表的な質問をまとめます。
- Q1:WANを完全無料で利用できますか?
- ソフトウェアを無料で利用できても、インターネット回線やサーバ、ルーター、電気代は必要です。また、設計や保守を担当する従業員の人件費も発生します。総費用を確認して判断しましょう。
- Q2:無料のVPNとWANは同じですか?
- 同じではありません。WANは離れたネットワークをつなぐ仕組み全体を指します。VPNは、インターネット上に暗号化された通信経路を作る技術であり、WANを構築する方法の一つです。
- Q3:無料のWANを法人利用できますか?
- 法人利用できるかどうかは、ソフトウェアのライセンスやサービスの利用規約によって異なります。商用利用の可否や利用者数、サポート範囲を公式情報で確認してください。
- Q4:無料のWANでも安全ですか?
- 適切に設定し、更新やアカウント管理を継続すれば、安全性を高められます。ただし、初期設定の不備や古いバージョンの放置はリスクになります。重要情報を扱う場合は専門家による確認も検討しましょう。
- Q5:無料から有料へ移行する目安はありますか?
- 拠点や利用者が増えた場合、障害による業務停止の影響が大きくなった場合、担当者の運用負担が増えた場合が目安です。通信品質やサポートを含めて複数サービスを比較してください。
まとめ
WANは、オープンソースのVPNソフトウェアや無料プランを利用して、小規模な環境から構築できます。ただし、回線やサーバの費用、セキュリティ設定、障害対応まで無料になるわけではありません。
利用拠点の増加や業務停止の影響、運用担当者の負担を確認し、必要に応じて有料WANサービスへ切り替えましょう。自社に必要な通信品質や保守内容を整理したうえで、複数サービスの資料請求を活用し、条件を比較してください。



