アプリケーションデリバリコントローラの導入条件と不安の整理
導入前の不安は、ADCが担う役割と導入条件の全体像が見えていないことから生まれる場合があります。まず役割を押さえ、確認すべき条件を分類しましょう。
| 条件の種類 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 環境 | 設置先がオンプレミスかクラウドか、既存の通信経路に組み込めるか |
| 機能 | 必要な負荷分散や暗号化通信の処理、攻撃対策の機能が使えるか |
| 運用 | 設定変更や障害対応を担う体制があるか |
| 契約 | 保守の範囲、サポートの時間帯、ライセンスの条件はどうなっているか |
ADCが担う役割を確認する
ADCは、複数のサーバーへ通信を振り分けるロードバランサの機能に、SSLオフロードやWAFなどを加えた装置やソフトウェアです。SSLオフロードとは、暗号化通信の処理をサーバーの代わりに行う仕組みを指します。
WAFは、Webアプリケーションへの不正な通信を検査して防ぐ仕組みです。可用性や応答速度の向上にも関わるため、どの課題に使うのかを自社で先に決めておくと、導入条件を絞り込みやすくなります。目的があいまいなままでは、必要な機能の判断がぶれやすくなります。
導入条件を環境と機能と運用に分ける
導入条件は、設置環境、必要な機能、運用体制の3つに分けると整理しやすくなります。上の表のように契約面も加え、どの条件が未確定なのかを一覧にしましょう。未確定の条件が多いほど、不安は大きくなりがちです。
社内で決められる事項と、提供会社へ確認すべき事項を分けて記録すると、問い合わせの内容を明確にできます。担当者ごとの期限も添えましょう。情報システム部門やネットワーク担当者との共有にも役立ち、検討の抜けを防げます。
不安を確認項目に置き換える
漠然とした不安は、確認できる項目に置き換えると対処しやすくなります。例えば「対応が遅いのでは」という不安は、問い合わせ窓口と回答までの目安を聞く項目に変わります。不安の理由を、製品側、自社側、連携先側のどこにあるかで分けて書き出しましょう。
誰がいつまでに確認するのかまで決めておくと、検討が止まりにくくなります。結果は比較表にまとめ、社内の関係者と共有してください。回答待ちの項目も表に残すと、確認漏れを防げます。
対応の速さと保守体制の確かめ方
ADCは通信の要所に置くため、不具合や設定変更への対応の速さが気になるところです。提供元の国や種類で決めつけず、窓口や手順を確かめることが近道です。
国産かどうかだけで判断しない
国産か海外製かという区分だけで、対応の速さを判断することはできません。サポート体制や代理店の有無、開発の仕組みは、製品ごとに異なるためです。国産でも対応に時間がかかる場合があり、海外製でも国内に窓口を置いている場合もあります。
判断の材料にするのは、日本語での問い合わせ窓口、対応時間、障害時の連絡手順といった具体的な条件です。公式の資料や提供会社への質問で確認し、回答内容を記録して比較しましょう。同じ質問を複数社に投げると、違いが見えやすくなります。
保守窓口と対応時間を確認する
保守契約では、問い合わせの受付時間と、受付後に回答を得るまでの目安を確認します。平日の日中に限る受付か、夜間や休日にも対応する受付かで、運用への影響が変わるためです。窓口が電話かメールかも比べておきます。
緊急時の連絡方法が決まっているかも大切です。あわせて、機器の故障時に交換品が届く方法や、ソフトウェアの更新を受けられる期間も確かめましょう。自社の稼働時間と照らして、必要な保守の範囲を決めておくと判断しやすくなります。
設定変更と障害時の連絡経路を決める
導入後は、設定変更の依頼や障害の連絡を、誰がどこへ行うのかを決めておきます。窓口が複数あると、判断が遅れる場合があるためです。夜間や休日に連絡が必要な場合の手順も、あらかじめ確認しておきます。
連絡が遅れた場合の影響も想定しておくと安心です。提供会社、構築を担当した事業者、社内の担当者の役割分担を文書にまとめましょう。連絡先の更新を定期的に確認する担当も決めておくと、いざというときの対応が滞りにくくなります。
ISMS対応の表記とセキュリティ条件の確認
製品の資料にISMS対応と書かれていても、その意味は文脈によって異なります。何が認証され、何が対象外なのかを分けて読むことが大切です。
ISMS対応の表記が示す範囲を読み解く
ISMSは、ISO/IEC 27001にもとづく第三者認証で、認証範囲は組織やサービスごとに異なります。提供会社が認証を取得している事実と、製品そのものが安全である事実は別の話です。資料請求では、認証の対象が提供会社の組織全体か、特定の部門やサービスかを確認しましょう。
認証の登録情報で範囲を調べられる場合もあります。不明な点は、提供会社へ書面での回答を依頼してください。回答は社内の稟議や監査の資料としても残せます。
脆弱性への対応方針を確かめる
ADCは通信の入口に置かれるため、脆弱性への対応方針が重要な確認点です。脆弱性とは、攻撃に悪用される恐れのあるソフトウェアの欠陥を指します。製品の更新が止まると、対応が遅れる場合もあります。
サポート期間の終了時期もあわせて確認します。確認したいのは、修正プログラムの提供方法、情報の公開手順、更新作業にかかる停止時間です。国内ではJVNという脆弱性対策情報のポータルサイトが公開されており、製品の対応状況を調べる手がかりとして使えます。
自社の規程との適合を事前にすり合わせる
自社や取引先のセキュリティ規程が、ログの保管期間や管理者の権限分離を求める場合があります。ADCがその条件に対応できるかを、導入前に確認します。対応が難しい項目は、導入後に判明すると運用の見直しが必要になる場合があるため、早めに洗い出しておきましょう。
情報システム部門や監査の担当者に、規程の該当箇所を聞いておくと確実です。製品の機能で満たせない条件は、運用ルールで補えるかも検討します。確認結果は、稟議の資料や監査への説明にも使えます。
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APIとカスタマイズを前提にした導入条件
自社システムと連携したい場合や、独自の動作を加えたい場合は、API利用の条件とカスタマイズの範囲が導入条件の中心です。
- ■APIの条件
- 呼び出し回数の上限や認証方式、操作できる設定の範囲
- ■カスタマイズの条件
- 独自の処理を加えられる範囲と、更新時の引き継ぎ方法
- ■検証の条件
- 本番と同じ構成で事前に試せるか
API必須の環境で制限を確認する
設定の自動化などでAPIが必須の環境では、ADC側の条件を事前に確認します。APIとは、ほかのシステムから機能を呼び出すための窓口です。製品によっては、APIで扱えない設定項目がある場合もあります。
確認したいのは、操作できる設定の範囲、呼び出し回数の上限、認証方式の3点です。必要な操作を一覧にして提供会社に照らし合わせてもらうと、導入後に使えない機能が見つかる事態を避けやすくなります。想定する連携先も伝えておくと確実です。
カスタマイズ前提の導入で起こりうる課題を知る
独自のカスタマイズを前提にすると、機器やソフトウェアの更新時に動作が変わる場合があります。保守の対象外になる範囲が生じることもあるため、事前に提供会社へ確認しておきたい点です。更新のたびに独自部分の作り直しが生じる場合もあります。
カスタマイズが必要な理由を整理し、標準機能や設定の工夫で代替できないかを先に検討しましょう。必要な場合は、更新時の動作確認や、変更内容の記録方法まで含めて提供会社と取り決めます。
標準機能で運用する範囲を決める
導入条件を決める段階で、標準機能でまかなう範囲と、独自に対応する範囲の線引きをします。標準機能が中心なら、更新や引き継ぎの負担を抑えやすいでしょう。提供会社の保守を受けられる範囲も明確にできます。
将来の担当者が変わっても運用できるよう、設定内容と変更の経緯を記録に残してください。独自対応を加える場合は、仕様書と動作確認の手順を、構築した事業者と共有しておくと安心です。標準機能の範囲で足りるかは、検証で確かめましょう。
不安を減らす検証と導入前の進め方
条件を確認したあとは、実際に試して不安を確かめる段階に進みます。検証の範囲と進め方を決めておくと、導入後の想定外を減らせます。
検証環境や試用で動作を確かめる
本番に近い構成で試せる検証環境や試用の仕組みがあるかを確認します。実際の通信量や自社のアプリケーションで動かすと、資料だけでは分からない点が見えてきます。試用の期間や条件も聞いておきましょう。
利用できる機能が製品版と同じかも確かめましょう。検証では、負荷分散の振り分け、暗号化通信の処理、設定変更の操作性を確かめましょう。本番環境に影響しないよう、実施の時間帯と範囲は事前に提供会社や社内の担当者と調整してください。
要件を一覧にして製品を比較する
確認した導入条件は、必須条件と希望条件に分けて一覧にしておきましょう。同じ質問を複数の製品に投げて回答を並べると、違いが見えやすくなり、見落としも減らせます。回答の日付や担当者名も記録しておけば、後から見直せます。
回答があいまいな項目は、資料や担当者への再確認が必要です。条件に優先順位をつけておくと、希望条件を同時に満たす製品が見つからない場合でも、判断の軸がぶれません。比較の結果は、社内の合意形成や稟議の説明にも使えます。
運用体制と教育の計画を立てる
ADCは導入して終わりではなく、設定の見直しや更新が続きます。通信量の増加やアプリケーションの追加にあわせた調整も必要です。担当者を1人に限らず、複数人で状況を把握できる体制を整えましょう。
提供会社の研修や、設定の手順書の有無も確認点です。担当者が交代しても引き継げるよう、運用ルールと連絡体制を文書にまとめておくと、導入後の不安を抑えられます。定期的に内容を見直す日も決め、担当者の交代時にも更新しましょう。
設置環境や機能の条件を照らし合わせたいADC製品
導入条件を確認する際の参考として、ITトレンドに掲載されているADC製品を紹介します。設置環境や機能の対応範囲は、資料請求で個別に確かめましょう。
Alteon (日本ラドウェア株式会社)
- アプリの負荷分散と可用性向上を実現するADC機能
- 仮想化環境でADCを迅速に展開可能
- 多様な導入形態に対応し柔軟に運用できる設計
LoadMaster (株式会社OPENスクエア)
- HTTPコンテンツのキャッシングをサポート
- HTTP通信時のデータ圧縮
- 侵入防止(IPS)機能によるDoS攻撃対策
ADCに関するよくある質問
ADCの導入条件についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:API必須の環境で、ADC側の制限はどう確認すればよいですか?
- A:操作できる設定の範囲、呼び出し回数の上限、認証方式を確認しましょう。必要な操作を一覧にして提供会社に照らし合わせてもらうと、導入後に使えない機能が見つかる事態を避けやすくなります。
- ■Q2:対応が遅いケースを避けるには、何を確認しますか?
- A:問い合わせ窓口、受付時間、回答までの目安、障害時の連絡手順を確認しましょう。国産か海外製かだけでは判断できないため、資料や契約書で保守の範囲を確かめてください。
- ■Q3:ISMS対応と書かれていれば、セキュリティの条件は満たせますか?
- A:ISMSはISO/IEC 27001にもとづく第三者認証で、認証範囲は組織やサービスごとに異なります。製品の安全性を保証するものではないため、認証の対象範囲と脆弱性への対応方針をあわせて確認しましょう。
- ■Q4:カスタマイズを前提に導入しても問題ありませんか?
- A:更新時に動作が変わる場合や、保守の対象外になる範囲が生じる場合があります。標準機能や設定で代替できないかを先に検討し、必要な場合は更新時の確認方法まで提供会社と取り決めましょう。
まとめ
アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)の導入条件への不安は、対応の速さ、ISMS対応の表記、APIの制限、カスタマイズの前提という点を、確認項目に置き換えると軽くできます。検証環境での動作確認と要件の一覧化も有効です。複数の製品の資料を請求し、同じ質問で比較してみてください。

