CI/CDツールの運用が行き詰まるサイン
CI/CDツールの運用の問題は、ある日突然表面化するのではなく、小さな兆候として現れることがあります。早めに気づければ、大きなトラブルになる前に手を打てます。運用が行き詰まりつつあることを示す3つのサインを紹介します。
失敗したビルドの対応が後回しになる
ビルドやテストが失敗しているのに、誰も対応しないまま次の変更が積み重なる状態は、運用が回っていないサインの一つです。失敗が続くと、新たな問題が起きても気づきにくくなります。失敗の状態に慣れてしまい、本当に重要な警告を見逃すおそれもあります。
この状態は、通知が多すぎて見落とされている、対応する担当が決まっていない、修正する時間が取れないなど、複数の要因から生じます。失敗の通知を誰が受け取り、いつまでに対応するかを決め、対応状況をチームで共有しましょう。
パイプラインの設定を誰も説明できない
パイプラインとは、ビルドからテスト、本番環境への反映までを順番に自動で進める処理の流れです。その設定を作った担当者が異動や退職をした後、その内容を説明できる人がいない状態も危険なサインです。設定を変更したくても影響範囲がわからず、手を付けられなくなるおそれがあります。
設定の意図や処理の流れを文書に残し、変更の際には複数人で内容を確認する決まりを作りましょう。設定をファイルとしてリポジトリ(ソースコードの保管場所)で管理していれば、変更の履歴と理由をたどる手がかりが残ります。引き継ぎの際は、実際に設定を変更する作業も一緒に行うと理解が深まります。
実行環境の更新が止まる
セルフホスト型のCI/CDツールや自社の実行環境を使っている場合、更新の停止にも注意が必要です。対象は、ツール本体やOS、プラグイン(機能を追加する部品)などです。更新が遅れると、セキュリティ上の弱点が残ったり、新しい機能が使えなかったりする場合があります。
更新が止まる背景には、担当者の時間不足や、更新による不具合への不安があります。更新の時期と手順を決め、検証環境で動作を確認してから本番の環境に反映する流れを整えましょう。
開発担当1人でCI/CDの運用が回らないケース
開発担当が1人しかいない会社では、CI/CDツールの導入が負担を増やす結果になる場合があります。開発と運用を1人で抱える状況で起こり得る失敗と、その対策を2つのケースに分けて解説します。少人数の会社でも取り組める方法を中心に紹介します。
開発とツール保守の兼務による負担
開発担当が1人の会社でCI/CDツールを導入すると、本来の開発業務に加えて、パイプラインの保守や実行環境の管理も同じ人が担う形です。ビルドが失敗するたびに原因を調べる時間が必要になり、開発が進まなくなるケースが考えられます。
負担を減らすには、保守の手間が少ないクラウド型を選ぶ、パイプラインの構成をシンプルに保つといった工夫が有効です。自動化する範囲を欲張らず、効果の大きい作業に絞ることも大切です。
担当者の不在時に止まるリリース
1人で運用していると、その担当者が休暇や体調不良で不在のとき、リリースや障害対応が止まるおそれがあります。CI/CDツールで自動化していても、承認や失敗時の対応が担当者1人に頼っている場合は同じ問題が起こります。
対策として、管理者のアカウントを複数人に付与し、緊急時の手順を文書にまとめておきましょう。社内に代わりの人がいない場合は、外部の開発会社に緊急時の対応を依頼できる体制を整えておく方法もあります。
情シス不在でCI/CDツールを導入したときのトラブル
情報システム部門がない会社では、CI/CDツールの導入を開発担当者や現場の判断で進めることがあります。その結果、ツールの周辺にある管理業務が抜け落ちる場合があります。起こり得る3つのトラブルと対策を紹介します。
アカウントと権限の管理が行き届かない
情シスがいない会社では、退職者のアカウントが残ったままになる、必要以上に広い権限が付与されたままになるといった状態が起こる場合があります。こうした状態は、誤った操作や不正なアクセスのリスクを高めます。
入社や退職、異動のタイミングでアカウントを見直す手順を、人事や総務の手続きと連動させておきましょう。権限の一覧を定期的に確認し、不要な権限を外すことも大切です。確認の担当は1人に限定せず、複数人で分担すると抜け漏れを減らせます。
契約や費用の管理が不明確になる
開発担当者が個人のクレジットカードや部門の予算で契約していると、会社として契約内容や費用を把握できない状態になる場合があります。利用量の増加で費用が想定を超えても、気づくのが遅れることがあります。担当者の退職後に、契約の更新や解約の手続きがわからなくなるケースも考えられます。
CI/CDツールの契約は会社名義で行い、契約内容や請求の情報を経理や総務と共有しましょう。利用量や費用の上限を設定できる製品であれば、上限に近づいたときの通知を設定しておくと安心です。
セキュリティ対策の判断が遅れる
CI/CDツールには、ソースコードや本番環境の認証情報など重要な情報が集まります。情シスがいない場合、セキュリティに関する設定や、提供会社からの注意喚起への対応が後回しになることがあります。
複数の手段で本人確認する多要素認証の設定や、認証情報の定期的な更新など、最低限の対策をルールとして決めておきましょう。判断に迷う場合は、提供会社のサポートや外部の専門事業者に相談することも選択肢の一つです。提供会社からのお知らせを受け取るメールアドレスは、個人ではなく共有のアドレスにしておくと見落としを防ぎやすくなります。
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複数拠点でパイプラインと成果物が混乱するケース
複数の拠点でCI/CDツールを使っている企業では、拠点ごとに運用が独自に発展し、全体として管理しきれなくなる場合があります。パイプラインの設定とビルド成果物の管理で起こり得る混乱と、その対策を解説します。
拠点ごとに設定がばらばらになる
各拠点が独自にパイプラインを作ると、テストの基準やセキュリティ検査の有無が拠点ごとに異なる状態になることがあります。ある拠点では行っている確認が、別の拠点では行われていないといった差が生じます。
この状態を防ぐには、全拠点で守るべき処理を共通のテンプレートとしてまとめ、各拠点はそれを呼び出して使う形にする方法があります。テンプレートの管理者と更新の手順を決め、変更内容を各拠点に周知する仕組みも整えましょう。
成果物のバージョンを取り違える
ビルド成果物の保存場所や名前の付け方が拠点ごとに異なると、どれが最新の正しいバージョンかがわからなくなる場合があります。その結果、古いバージョンや別の拠点の成果物を誤って本番に反映するおそれがあります。
成果物は共通の保管場所に集約し、名前の付け方やバージョン番号のルールを統一しましょう。どのソースコードから作られた成果物かを記録として残しておくと、問題が起きたときに原因をたどりやすくなります。不要になった成果物の削除ルールも決めておきましょう。
開発部門と運用部門の分業で起きる問題
開発部門とインフラ・運用部門が分業している組織では、CI/CDツールの運用でも役割の境目に問題が生じる場合があります。部門間で起こり得る2つの問題と、その対策を紹介します。どちらか一方の責任と考えず、両部門で取り組むことが大切です。
責任範囲のすき間で対応が滞る
デプロイ(本番環境への反映)が失敗したとき、原因がアプリケーション側にあるのか、環境側にあるのかがすぐにはわからない場合があります。その間、どちらの部門が対応するかが決まらず、復旧が遅れることがあります。
対策として、失敗時に最初に確認する担当と、原因に応じた引き継ぎ先を事前に決めておきましょう。CI/CDツールの実行ログを両部門が同じ画面で確認できるようにしておくと、原因の切り分けを進めやすくなります。対応の経緯は記録に残し、似たトラブルの再発防止に役立てましょう。
変更の情報が相手部門に伝わらない
開発部門がパイプラインの設定を変えたことが運用部門に伝わらず、本番環境で想定外の動きが起こるケースが考えられます。反対に、運用部門が環境の設定を変えたことで、開発部門のビルドが失敗することもあります。
パイプラインや環境の設定を変更する際は、相手部門のレビューを経る決まりを作ると、変更の内容を共有できます。定期的に両部門で運用状況を振り返る場を設けることも、問題の早期発見に役立ちます。
運用を立て直す際に比較したいCI/CDツール
運用体制を見直す際に比較候補にできるCI/CDツールと、DevOps関連のサービスを紹介します。管理機能や支援内容は製品・サービスごとに異なるため、資料で確認しましょう。
DevOpsツール (アトラシアン株式会社)
- Jiraを基盤とするオープンDevOps
- 主要ベンダー・アプリと統合可能
- 自動化、テスト、セキュリティ、観測性を強化。
DevOpsツール&リソース (アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
- AWSアカウントで即利用可能、セットアップ不要。
- フルマネージドで運用不要、製品開発に集中。
- AWSの幅広いパートナーやサードパーティツールと連携可能。
GitHubActions (ギットハブ・ジャパン合同会社)
- 豊富な公式・コミュニティ製アクションで簡単に自動化
- YAMLファイルでワークフローをコードとして管理
- GitHub連携で開発プロセスを自動化
OctopusDeploy (Octopus Deploy)
- 多様な技術・プラットフォームに対応
- 自動デプロイ、リリース管理、環境設定、セキュリティ制御機能
- 数千組織の利用で、ソフトウェアデリバリーパイプラインを効率化
CloudBeesCodeShip (CloudBees, Inc.)
- DockerベースのCI/CD環境を迅速に構築
- 主要コードリポジトリと連携可能
- 高度なセキュリティとコンプライアンス対応
DevOps (アクセンチュア株式会社)
- アジャイルとDevOpsで短期間の価値提供
- 新旧システム対応と運用効率向上。
- 品質確保と継続的リリースを支える開発運用基盤。
まとめ
CI/CDツールの運用の失敗は、管理する人や役割分担が体制にあっていないことから起こる場合があります。1人運用では負担の集中と不在時の停止、情シス不在ではアカウントや契約、セキュリティの管理が課題です。複数拠点では設定と成果物の統一、部門分業では責任範囲と情報共有を見直しましょう。運用の負担を抑えられるCI/CDツールを比較したい方は、ITトレンドの資料請求を活用してください。

