CI/CDツールの費用は月額料金だけではない
CI/CDツールの導入費用を見積もる際は、料金表に載っている金額と、それ以外にかかる費用を分けて考えることが大切です。後者を見落とすと、予算を超える原因になる場合があります。まずは費用の全体像と、費用が膨らみやすいタイミングを整理します。
表示価格に含まれない費用の種類
CI/CDツールの費用には、料金表に表示される基本料金のほかに、利用量に応じた追加料金、ツールを動かす環境の費用、導入や運用にかかる人件費があります。基本料金が安くても、ほかの費用を含めると総額が大きくなるケースも考えられます。
比較の際は、これらを項目ごとに書き出し、製品ごとに金額や工数を見積もりましょう。提供会社に見積もりを依頼する際も、追加料金が発生する条件をあわせて確認しておくと、比較の精度が上がります。
費用が膨らみやすいタイミング
費用が想定を超えやすいのは、開発者の増員、新しいプロジェクトの追加、テストの拡充などで利用量が増えたときです。導入時の見積もりが小規模な利用を前提にしていると、数か月後に費用が大きく変わる場合があります。
また、契約の更新時に料金体系が改定されることもあります。利用量の推移を毎月確認し、費用の変化に早めに気づける仕組みを作っておきましょう。上限の設定や利用量の通知ができる製品であれば、活用すると安心です。
利用量に応じて発生するCI/CDの追加料金
クラウド型のCI/CDツールでは、プランに含まれる範囲を超えて利用すると、追加料金が発生する場合があります。どの項目が課金の対象になるかは製品ごとに異なります。代表的な課金項目を2つに分けて解説します。
ビルドの実行時間と同時実行数
実行時間で課金する製品では、プランに含まれる時間やクレジット(利用量の単位)を超えると、超過分に応じた料金がかかる場合があります。OSの種類や実行環境の性能によって、同じ時間でも消費量が異なる製品もあります。
同時実行数は、同時に動かせるジョブ(ビルドやテストなど1回分の処理)の数のことで、プランごとに上限が決まっている場合があります。上限を増やすには上位プランへの変更や追加購入が必要です。超過時に自動で課金されるのか、処理が止まるのかも、契約前に確認しておきましょう。
ユーザー数とストレージ容量
ユーザー課金の製品では、開発者が増えるたびに料金が増えます。課金の対象が、実際にパイプライン(ビルドからデプロイまでの処理の流れ)を操作する人だけか、閲覧のみの人も含むかで、費用は大きく変わります。退職者のアカウントが残ったまま課金されていないかも、定期的に確認しましょう。
また、ビルド成果物やログ、キャッシュ(再利用のための一時保存データ)の保存容量に上限があり、超過すると追加料金が発生する製品もあります。成果物の保存期間を短くする、不要なデータを定期的に削除するといった運用で、容量の増加を抑えられる場合があります。
CI/CD導入で見落としやすい隠れコスト
隠れコストとは、ツールの請求書には表れないものの、導入や運用のために実際に発生する費用のことです。見落としやすい一方で、総コストに占める割合が大きくなる場合もあります。代表的な3つの隠れコストを紹介します。
セルフホストランナーのサーバー費
セルフホストランナーとは、自社で用意したサーバーやクラウドの仮想マシン(ソフトウェアで作った仮のコンピューター)を、CI/CDツールの実行環境として使う仕組みです。実行時間の課金を抑えられる場合がある一方、サーバーの費用は自社の負担です。
クラウドの仮想マシンを使う場合は、稼働時間に応じた料金や通信料がかかります。社内のサーバーを使う場合も、機器の購入や電気代、保守の費用が発生します。ランナーを常時起動するか、必要なときだけ起動するかでも費用は変わるため、運用方法とあわせて試算しましょう。
パイプライン構築と保守の工数
パイプラインを作るには、ビルドやテスト、デプロイ(本番環境への反映)の手順を整理し、設定ファイルを書く作業が必要です。既存の手順が複雑な場合、構築に多くの時間がかかることがあります。
導入後も、連携先サービスの更新への対応や、失敗したビルドの調査など、保守の作業が続きます。担当者の作業時間に時間単価をかけて人件費として換算し、ツールの費用とあわせて評価しましょう。外部に構築を依頼する場合は、その委託費用も含めて考えます。
教育と移行にかかる時間
開発者がCI/CDツールの使い方や設定の書き方を覚えるには、一定の学習時間が必要です。新しいメンバーが加わるたびに、教育の時間も発生します。
既存の手作業からツールへ移行する期間は、旧来の手順と並行して運用するため、一時的に作業量が増える場合があります。移行期間の長さと必要な人員を見積もり、通常の開発業務に影響が出ないよう計画を立てることが大切です。社内向けの手順書づくりの時間も見込んでおきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCI/CDツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
アカウント・拠点の追加と解約時の契約条件
CI/CDツールの費用は、利用を広げるときや、利用をやめるときにも発生する場合があります。契約後に慌てないよう、追加と解約に関する条件を事前に確認しておきましょう。確認したい3つのポイントを解説します。
アカウントや拠点の追加料金
アカウントを追加する際の料金は、ユーザー課金の製品では1人ごとに発生する場合があります。年間契約の途中で追加した場合に、残りの期間分を日割りで請求するのか、次の更新時にまとめて調整するのかは製品によって異なります。
拠点やグループ会社で利用を広げる場合、組織を分けるごとに別の契約が必要になる製品もあります。組織ごとの管理機能や一括請求が上位プランでのみ提供されるケースもあるため、利用を広げる計画がある場合は事前に確認しておきましょう。
解約時の違約金と契約期間
月単位で契約できる製品は、解約の手続きをすれば翌月以降の料金がかからない場合があります。一方、年間契約や複数年契約では、途中で解約しても残りの期間の料金を支払う必要があったり、違約金が定められていたりすることがあります。
契約前に、最低契約期間、途中解約の可否、解約の申し出期限を利用規約や契約書で確認しましょう。自動更新の契約では、更新日の何日前までに申し出が必要かも重要です。導入直後は短い契約期間を選ぶ方法もあります。
解約後のデータの扱い
解約した後、パイプラインの設定や実行履歴、ビルド成果物がいつまで保存されるかも確認しておきたい点です。保存期間を過ぎると削除され、取り出せなくなる場合があります。
別のツールへ乗り換える場合は、設定やデータを移行する作業が発生し、その工数も費用の一部です。設定ファイルをリポジトリ(ソースコードの保管場所)で管理しておくと、移行時の手間を減らせる場合があります。監査対応で過去の履歴が必要な場合は、解約前に出力して保管しておきましょう。
CI/CDツールの3年間の総コストを試算する
CI/CDツールを長く使う場合は、1年分の費用だけでなく、数年単位の総コストで比較することが大切です。ここでは3年間の総コストの考え方と、試算の例を紹介します。金額は計算の手順を示すための仮の数値です。
試算に含める項目
3年間の総コストには、基本料金と追加料金、実行環境の費用、構築と保守の人件費、教育や移行の時間を含めます。初年度は構築や移行の費用がかかり、2年目以降は保守の費用が中心です。
利用量は年ごとに変わる可能性があるため、開発者数やビルド回数の増加も見込んでおきましょう。年間契約の割引や、為替の変動による料金の変化も、総コストに影響する要因です。項目ごとに初年度と2年目以降を分けて表にすると、年ごとの変化がわかりやすくなります。
3年間の試算例
開発者10名、1人あたり月額2,000円のユーザー課金と仮定すると、基本料金は10名×2,000円×12か月×3年で72万円です。実行時間の追加料金を月5,000円とすると、5,000円×36か月で18万円かかります。
さらに、構築に40時間、保守に月4時間かかり、時間単価を5,000円と仮定します。構築は40時間×5,000円で20万円、保守は4時間×5,000円×36か月で72万円です。合計は182万円となり、構築と保守の人件費が総額の約半分を占める計算です。自社の数値に置き換えて試算しましょう。
総コストの試算に向けて比較したいCI/CDツール
実行時間やサーバー費を含めた総コストを試算する際の候補として、CI/CDツールを紹介します。課金の単位や追加料金の条件は、最新の資料で確かめましょう。
AWS CodeBuild (アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)
- 自動スケーリングで無駄なくビルドを実行
- 使用した時間に対する分単位の従量課金制
- 独自のキーによる暗号化で情報を保護
Cloud Build (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- サーバーレス環境でインフラ管理なしに高速ビルド。
- ソース更新時にビルド自動起動可能。
- 成果物生成とアプリの継続的デリバリーを支援。
CircleCI (CircleCI)
- コード変更ごとに自動テストで品質を検証
- クラウド・サーバー版で多様な開発環境に対応。
- ワークフローとキャッシュでパイプラインを高速化。
Jenkins (CloudBees, Inc.)
- ビルドとテストを自動化し継続的に変更検証。
- パイプライン定義で標準化CI/CDフロー構築。
- 豊富なプラグインで多様なツールや環境と連携可能。
Bitrise (BitriseLtd.)
- モバイルアプリ開発向けの130以上の統合機能を提供。
- モバイル開発者向けCI/CDプラットフォーム
- 無料プランで月200ビルド分のCI/CDが可能
GitHubActions (ギットハブ・ジャパン合同会社)
- 豊富な公式・コミュニティ製アクションで簡単に自動化
- YAMLファイルでワークフローをコードとして管理
- GitHub連携で開発プロセスを自動化
Travis CI (Travis CI GmbH)
- CI/CDパイプラインの短時間構築
- 並列処理や多環境ビルドに対応
- GitHub等と連携し、コード変更時にビルドとテストを自動実行
まとめ
CI/CDツールの費用は、月額料金だけでなく、利用量に応じた追加料金を含めて考えることが大切です。セルフホストランナーのサーバー費や構築と保守の工数といった隠れコストも見込みましょう。アカウントや拠点の追加、解約時の条件も契約前に確認し、3年間の総コストで比較しましょう。総コストを見ながらCI/CDツールを比較したい方は、ITトレンドの資料請求を活用してください。

