データレスクライアントとは
データレスクライアントとは、PCのローカルストレージ(ハードディスクやSSD)に業務データを保存せず、クラウドや社内ファイルサーバなどに集約して管理するセキュリティソリューションです。端末内にデータを残さないため、PCを紛失・盗難した場合でも、第三者による業務データの持ち出しリスクを抑えられます。
VDIやシンクライアントと同じく、端末側にデータを残さない考え方を取り入れていますが、既存のWindows PCを活用しやすく、操作性やコスト面で導入しやすい点が特徴です。テレワークや端末の社外持ち出しが増えるなか、情報漏えい対策と業務効率を両立する手段として注目されています。
端末にデータを残さない仕組み
データレスクライアントは、ユーザーが作成・編集したファイルを、指定されたクラウドストレージや社内ファイルサーバへ自動的に転送・同期する仕組みで動作します。PC上では通常のファイルのように見えても、実際の保存先はサーバ側にあり、端末側にはデータを残さない、または一時キャッシュを自動削除する方式がとられます。
一般的なWindows PCと同じ操作感で利用できる製品も多く、従業員に大きな負担をかけずに導入しやすい点がメリットです。代表的な方式には、仮想ドライブ型・キャッシュ自動削除型・秘密分散型・セキュアコンテナ型などがあり、製品によって保護範囲やオフライン対応の可否が異なります。
VDI・シンクライアントとの違い
データレスクライアントと混同されやすい仕組みに、VDIやシンクライアント、ローカル暗号化があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 方式 | 特徴 | データの保存場所 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| データレスクライアント | 既存PCを活用しながら、端末に業務データを残さない | クラウド・社内サーバなど | コストを抑えて端末の情報漏えい対策を強化したい場合 |
| VDI | サーバ上の仮想デスクトップをネットワーク経由で利用する | サーバ側 | 高セキュリティな集中管理環境を構築したい場合 |
| シンクライアント | 記憶媒体を持たない、または機能を絞った専用端末を利用する | サーバ側 | 専用端末で業務環境を統一したい場合 |
| ローカル暗号化 | PC内のデータを暗号化して保護する | PC内 | 既存PC内のデータを暗号化して保護したい場合 |
VDIはサーバ側でOSやアプリケーションを処理するため、高いセキュリティを確保しやすい一方、サーバ構築や運用に大きなコストがかかります。シンクライアントも端末にデータを残しにくい仕組みですが、専用端末の導入が必要になるケースがあります。
一方、データレスクライアントはPC本体のCPUやメモリを活用しながら、業務データを端末に残さない環境を構築できます。既存PCを活かしつつ、VDIやシンクライアントに近い情報漏えい対策を実現したい企業に適しています。
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データレスクライアントを導入するメリット
データレスクライアントを導入すると、端末紛失時の情報漏えい対策だけでなく、テレワーク環境の整備や運用コストの削減にもつながります。ここでは、主なメリットを解説します。
情報漏えいリスクを低減できる
データレスクライアントの大きなメリットは、PCの紛失・盗難時における情報漏えいリスクを抑えられることです。ローカルドライブに業務データを保存しないため、第三者が端末を入手しても、機密情報を抜き取られるリスクを低減できます。
シャットダウン時のキャッシュ自動削除や、ローカル保存の制御機能を備えた製品であれば、従業員の操作ミスによるデータ残存も防ぎやすくなります。
テレワーク・BYODでも安全に業務データを扱える
自宅や外出先、コワーキングスペースなど、社外で業務を行う機会が増えるほど、端末内に保存されたデータの管理は難しくなります。データレスクライアントを活用すれば、社外ネットワークや私物端末を利用する場合でも、業務データを端末に残さず作業できます。
製品によってはVPNに依存せず、安全なアクセス環境を構築可能なものもあり、テレワークやBYODのセキュリティ強化に役立ちます。
VDIよりも導入・運用コストを抑えやすい
VDIを導入する場合、サーバ環境の構築やライセンス費用、ネットワーク増強などが必要になり、初期費用・運用費用が大きくなりがちです。データレスクライアントは、既存のWindows PCに専用ソフトウェアを導入して利用できる製品が多く、既存資産を活かしながら導入できます。
大規模な仮想デスクトップ環境を構築せずに、端末の情報漏えい対策を強化したい企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。
端末故障・紛失時も業務を再開しやすい
データレスクライアント環境では、業務データがクラウドやファイルサーバ側に保存されるため、PCが故障・紛失してもデータ消失のリスクを抑えられます。代替端末を用意し、必要な設定を行えば、保存済みのデータにアクセスして業務を再開できます。
リモートワイプや端末ロック機能を備えた製品であれば、紛失時の被害拡大も防ぎやすく、BCP対策としても有効です。
データレスクライアント導入時の注意点
データレスクライアントは情報漏えい対策として有効ですが、導入前の検証が不十分だと、業務アプリとの相性や運用ルールの不備によってトラブルが発生する可能性があります。製品を比較する前に、以下の注意点を確認しておきましょう。
業務アプリや既存環境との相性を検証する
データレスクライアントは、PC上のファイル保存やキャッシュ制御に関わるため、業務アプリケーションやセキュリティソフトと競合する可能性があります。
本格導入前にはPoCや無料トライアルを実施し、基幹システムやOffice製品、チャットツール、ウイルス対策ソフトなどとの相性を確認しましょう。特に利用頻度の高いアプリで、保存エラーや動作遅延が発生しないかを事前に検証することが重要です。
保護対象外となるデータ範囲を確認する
「データレス」と表記されていても、製品によって保護できる範囲は異なります。デスクトップやドキュメントフォルダのみを対象とするものもあれば、ブラウザキャッシュやアプリの一時ファイル、チャットツールのログまで制御できるものもあります。
自社で扱う機密情報がどこに保存される可能性があるかを整理し、保護対象外となる領域がないか確認しましょう。
ネットワーク負荷や同期条件を確認する
データレスクライアントでは、ファイルの同期や転送が発生するため、利用人数やデータ容量によってはネットワーク負荷が高まる場合があります。特に始業時や大容量ファイルの保存時には、通信が集中する可能性があります。
同期タイミングや帯域制御の設定が可能か、既存のネットワーク環境で十分なパフォーマンスを維持できるかを確認しておきましょう。
社内ルールと従業員教育をあわせて整備する
データレスクライアントを導入しても、USBメモリや私物クラウドストレージへの保存を許可したままでは、別の経路から情報漏えいが発生するおそれがあります。
外部メディアの利用可否、ファイルの持ち出しルール、紛失時の報告手順などを明確にしましょう。導入時には従業員向けの説明やマニュアル整備を行い、ツールの設定と運用ルールをセットで定着させることが大切です。
データレスクライアントの選び方
データレスクライアントは、製品によって保護範囲や対応環境、オフライン利用の可否、管理機能などが異なります。自社に合う製品を選ぶために、以下のポイントを確認しましょう。
保護範囲と保存先の制御機能
まず確認したいのは、どのデータをどこまで保護できるかです。デスクトップやドキュメントフォルダに加え、ブラウザキャッシュ、Office製品の一時ファイル、チャットツールのログなども制御できるか確認しましょう。保存先をクラウドや社内サーバへ強制できる機能があると、運用ルールを徹底しやすくなります。
対応OS・端末・既存システムとの連携性
自社で利用しているWindowsのバージョンや端末スペック、Microsoft 365やGoogle Workspace、社内ファイルサーバなどとの連携可否を確認しましょう。製品によっては対応するクラウドストレージが限定される場合もあるため、既存環境を大きく変えずに導入できるかが重要です。
オフライン利用やパフォーマンス
外出先や移動中に作業する機会が多い場合は、オフライン利用に対応しているか確認しましょう。暗号化された一時キャッシュを使って作業を継続し、オンライン復帰後に自動同期できる製品もあります。また、CADや動画編集ソフトなど負荷の高いアプリを使う場合は、トライアルで動作速度を確認すると安心です。
管理機能と運用負荷
情報システム部門の負担を抑えるには、管理コンソールの使いやすさも重要です。端末の状態確認やポリシーの一括適用、ログ収集、アラート通知、リモートワイプなどに対応しているか確認しましょう。管理作業を一元化できる製品であれば、導入後の運用負荷を軽減できます。
導入・運用コスト
ライセンス費用だけでなく、初期設定費用や管理サーバの有無、クラウドストレージ容量、サポート費用まで含めて比較しましょう。月額費用が安く見えても、オプションや運用工数を含めると総額が高くなる場合があります。複数製品から見積もりを取り、トータルコストで判断することが大切です。
導入サポート・トラブル対応体制
導入時の設定支援や、運用開始後のトラブル対応も重要な比較ポイントです。特にWindows UpdateなどOSの大規模アップデート時に、動作検証やパッチ提供が迅速に行われるか確認しましょう。サポート窓口の対応時間、導入実績、日本語対応の有無もあわせて確認すると安心です。
データレスクライアントの料金相場
データレスクライアントの料金は、製品の提供形態や利用人数、保護範囲、オプション機能によって異なります。一般的には、初期費用と月額または年額のライセンス費用を組み合わせた料金体系が多く、月額費用は1ユーザーあたり数百円から数千円程度が目安です。
初期費用は無料から数十万円程度まで幅があり、オンプレミス型や専用管理サーバが必要な製品では、別途インフラ費用が発生する場合もあります。料金に影響しやすい主な要素は以下のとおりです。
- ●利用人数・ライセンス数
- ●保管するデータ容量
- ●リモートワイプやログ管理などのオプション機能
- ●サポートレベル
- ●クラウド型・オンプレミス型などの提供形態
- ●管理サーバやストレージなどの追加費用
公式サイトに料金が明記されていない製品も多いため、複数製品から見積もりを取り、必要な機能とトータルコストを比較しましょう。大規模導入ではボリュームディスカウントが適用される場合もあるため、個別見積もりで確認するのがおすすめです。
データレスクライアントのおすすめ製品を比較
ここからは、おすすめのデータレスクライアント製品を紹介します。保護方式や対応ストレージ、オフライン対応、管理機能などを比較し、自社の要件に合う製品を検討しましょう。
TrueOffice (Eugrid株式会社)
- 完全データレスを実現。
- クラウドとPCのデータを一貫制御。
- 利便性とセキュリティを両立。
FlexWorkPlacePassageDrive (横河レンタ・リース株式会社)
- ローカル書き込み禁止、データ漏えいリスク低減。
- 既存PCを使用でき、専用端末や大掛かりな設備投資が不要。
- OneDriveで共有・同期しテレワークに柔軟対応。
ZeroDrive (ハミングヘッズ株式会社)
- VDI方式と比べコスト10分の1で導入可能
- AI監視でローカルドライブへの業務データ保存を確実に防止
- 物理PC同等の高パフォーマンス
CACHATTO One セキュアコンテナ
e-Janネットワークス株式会社が提供する「CACHATTO One セキュアコンテナ」は、PC上に隔離された業務領域を生成し、セキュアなPC業務環境を実現するデータレスクライアントです。業務領域内のデータ保護と業務終了時のデータ削除により、端末からの情報漏えいを防止します。独自のVPN機能により、クラウドやオンプレミス環境へ安全にアクセスできます。
NEC Cloud File Sync
日本電気株式会社が提供する「NEC Cloud File Sync」は、PC内のファイルデータを国内クラウドサービスへ自動バックアップし、シャットダウン時にローカルデータを削除することでデータレス化を実現するソリューションです。指定ディレクトリ以外への書き込み制御や、PCの盗難・紛失時に管理者がリモートからデータを消去できる機能を備え、持ち出しPCの情報漏えい対策に役立ちます。
データレスクライアントに関するよくある質問
ここでは、データレスクライアントの導入を検討する際によくある質問に回答します。
- ■Q1:データレスクライアントはオフライン環境でも使えますか?
- 製品によって異なります。暗号化された一時キャッシュを使ってオフライン作業に対応する製品もありますが、オンライン接続が必須の製品もあります。外出先や移動中の利用が多い場合は、オフライン対応の有無を事前に確認しましょう。
- ■Q2:VDIからデータレスクライアントへ移行できますか?
- 移行は可能です。VDIのコスト削減や操作性改善を目的に、データレスクライアントへ切り替えるケースがあります。ただし、利用アプリやデータ保管先の整理が必要なため、PoCで段階的に検証することをおすすめします。
- ■Q3:導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 導入期間は、利用人数や既存環境によって異なります。小規模であれば1〜2か月程度、大規模導入では数か月かかる場合もあります。まずは一部部門でトライアルを行い、問題点を確認しながら段階的に展開するとよいでしょう。
- ■Q4:VDIやシンクライアントと併用できますか?
- 併用は可能です。機密性の高い業務はVDI、一般的なオフィスワークはデータレスクライアントといったように、業務内容や利用者に応じて使い分けることで、セキュリティとコストのバランスを取りやすくなります。
まとめ
データレスクライアントは、PCに業務データを残さないことで、端末紛失・盗難時の情報漏えいリスクを抑えられるセキュリティソリューションです。既存PCを活用しやすく、テレワークやBYOD環境の安全性を高めたい企業に適しています。
製品を比較する際は、保護範囲や既存システムとの連携性、オフライン対応、管理機能、サポート体制、トータルコストを確認しましょう。複数製品を比較し、自社の業務環境やセキュリティ要件にあうデータレスクライアントを選定してください。


